低ナトリウム血症
「なんとなく体がだるい」「食欲がない」。そんな日常的な不調を、見過ごしていませんか?実はその裏に、血液中の塩分濃度が低下する「低ナトリウム血症」という危険な状態が隠れているかもしれません。
血液が薄くなることで脳細胞がむくみ、頭痛や意識障害、さらには命に関わる事態を引き起こすこともあります。ある調査では、この状態になった赤ちゃんの約85%に腎臓の生まれつきの異常が見つかったという衝撃的な報告も。
この記事では、あなたの体で静かに進行するかもしれない低ナトリウム血症の原因、症状、そして正しい治療法までを詳しく解説します。
低ナトリウム血症の概要
低ナトリウム血症とは、血液に含まれる塩分(ナトリウム)の濃度が薄くなってしまう状態です。血液検査で、ナトリウムの値が136mEq/Lより低い場合に診断されます。
ナトリウムは私たちの体にとって、とても大切な役割を持っています。
- 体の水分バランスの調整 体の水分が多すぎたり少なすぎたりしないように見張っています。
- 筋肉や神経の働きの維持 筋肉を動かしたり、情報を伝えたりする電気信号の役目をします。
健康な体には、腎臓が中心となって水分と塩分の量を一定に保つ仕組みがあります。そのため、普段の生活で低ナトリウム血症になることはほとんどありません。
しかし、何かの病気や薬の影響でこのバランスが崩れると、血液中の塩分濃度が下がってしまいます。特に脳の細胞は、この変化に弱く、頭痛や吐き気、意識がもうろうとするなどの症状が出ることがあります。
また、特別な状況ではより注意が必要です。例えば、新生児の重い腸の病気(壊死性腸炎)では、低ナトリウム血症があると手術が必要になる危険性が高まることが、複数の研究をまとめた調査でわかっています。
さらに、乳児が尿路感染症にかかった際に、一時的に低ナトリウム血症になることも報告されています。この場合、腎臓や尿管の形に生まれつきの特徴が隠れていることもあり、注意深い診察が求められます。
低ナトリウム血症の種類
低ナトリウム血症は、体の水分バランスがどう崩れているかによって、いくつかの種類に分けられます。 なぜ血液中の塩分が薄くなってしまったのか、その原因を探るための大切な分類です。 主に、体全体の水分量に注目して3つのタイプに分けられます。
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分類(体内の水分量) |
体の状態は? |
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水分が減っているタイプ |
体から水分と塩分の両方が失われています。 しかし、水分よりも塩分の不足が大きい状態です。 ひどい脱水症に近いとイメージすると分かりやすいです。 |
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水分がほぼ正常なタイプ |
体の水分量は大きくは変わっていません。 それなのに、血液中の塩分濃度だけが低下しています。 |
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水分が増えているタイプ |
体に水分がたまりすぎてしまっています。 その結果として血液中の塩分が薄まった状態です。 足などがパンパンにむくむ症状(浮腫)が出やすいです。 |
このほかにも、特定の状況でみられる特殊なタイプもあります。 その一つが、赤ちゃんが尿路感染症にかかったときに起こる低ナトリウム血症です。 これは、腎臓で塩分の調節に関わるホルモンの働きが、一時的に乱れることで起こります。
ある系統的レビューによると、この状態になった赤ちゃんの多くは、低ナトリウム血症だけでなく、血中のカリウムが増える「高カリウム血症」や、体が酸性に傾く「代謝性アシドーシス」も同時に起こしていました。
さらに、この状態の赤ちゃんの約85%に、腎臓や尿管の生まれつきの形の異常(先天性奇形)が見つかったという報告もあります。 ただ、この状態は一時的なものであり、感染症の治療を行うことで、通常は約1週間で回復します。 このように、どのタイプかを見極めることが、適切な治療への第一歩となります。
低ナトリウム血症の原因
健康な体には、血液の塩分と水分のバランスを保つ素晴らしい仕組みがあります。 しかし、病気や薬の影響でこのバランスが崩れると、低ナトリウム血症が起こります。
原因は、体の状態によって大きく3つのパターンに分けられます。
- 体の水分が多すぎる 心不全や腎臓の病気などで、体から水分をうまく排出できなくなります。 その結果、血液が薄まって塩分濃度が下がってしまうのです。 また、尿の量を調節するホルモンが過剰になる病気もあります。
- 塩分(ナトリウム)が失われる 激しい下痢や嘔吐、大量の汗をかくと、水分と一緒に塩分も失われます。 また、血圧の薬(利尿薬)の副作用で、塩分が尿に出すぎてしまうこともあります。
- 水分のとりすぎ のどが渇くからといって、一度に大量の水を飲むと、腎臓の処理が追いつきません。 その結果、血液が一時的に薄まってしまうことがあります。
特に注意が必要なのが、小さなお子さんの場合です。 赤ちゃんが尿路感染症にかかった際に、低ナトリウム血症になることがあります。 ある系統的レビューによると、この状態の赤ちゃんの約85%に、腎臓や尿管の生まれつきの形の異常が見つかったと報告されています。
また、生まれたばかりの赤ちゃんが重い腸の病気(壊死性腸炎)にかかった場合も注意が必要です。 低ナトリウム血症があると、手術が必要になる危険性が高まることが、複数の研究をまとめた調査でわかっています。
低ナトリウム血症の症状
低ナトリウム血症の症状は、ゆっくり進行したか、急に悪化したかで大きく異なります。 特に、脳の細胞は血液の塩分濃度の変化にとても敏感です。
血液の塩分が薄くなると、体のバランスをとるため、脳の細胞の中に水分が入り込みます。 その結果、脳が水でむくんだような状態(脳浮腫)になり、様々な症状があらわれます。
症状は、血中のナトリウムの値によって、おおよそ次のように分けられます。
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症状の段階 |
血中ナトリウム濃度の目安 |
主な症状 |
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軽度 |
約125~135 mEq/L |
・なんとなく体がだるい、疲れやすい ・食欲がない ・吐き気を感じる |
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中等度 |
約115~125 mEq/L |
・頭痛がする ・ぼーっとする、わけがわからないことを言う ・性格が変わったように見える |
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重度 |
115 mEq/L未満 |
・けいれん発作を起こす ・呼びかけに反応しない(意識障害) ・昏睡状態になり、命に関わることもある |
また、ふらつきや注意力の低下が起こり、転倒して骨折する危険性も高まります。 ある種の抗うつ薬など、お薬の副作用で低ナトリウム血症が起こり、転倒や骨折が増えるという研究報告もあります。
赤ちゃんの場合は、自分で症状をうまく伝えられません。 「ぐったりして元気がない」「ミルクの飲みが悪い」といったサインが見られたら注意が必要です。
特に尿路感染症にかかった赤ちゃんが、一時的に低ナトリウム血症になることがあります。 原因のわからないだるさや、いつもと違う様子が見られたら、早めに医療機関へご相談ください。
低ナトリウム血症の検査・診断
低ナトリウム血症の診断は、腕からの採血で行う血液検査から始まります。 血液に含まれる塩分(ナトリウム)の値が、基準である136mEq/Lより低い場合に診断がつきます。 この検査は健康診断などでも行われるため、診断自体は難しくありません。
しかし、本当に大切なのは、診断がついた後です。 「なぜ血液の塩分が薄くなってしまったのか」その原因を突き止めることが、適切な治療への鍵となります。 原因によって治療法が大きく異なるため、丁寧な問診や追加の検査を進めていきます。
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検査の種類 |
主に調べること |
なぜ調べるの? |
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問診 |
・心臓や腎臓、肝臓などの持病の有無 ・飲んでいるお薬(特に血圧の薬など) ・最近の下痢、嘔吐、汗をかいた量 |
病気やお薬が原因のことが多いため、生活背景は重要な手がかりになります。 |
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詳しい血液検査 |
・血液の濃さ(浸透圧) ・カリウムなど他のミネラルの値 ・水分を調節するホルモンの値 |
体全体の水分バランスや、ホルモンの異常がないかを確認します。 |
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尿検査 |
・尿の濃さ(浸透圧) ・尿にどれくらいの塩分が出ているか |
腎臓が塩分を捨てているのか、必死に保とうとしているのかがわかります。 |
これらの検査結果を総合的に判断し、原因を絞り込んでいきます。 特に赤ちゃんの場合は、より慎重な診察が必要です。 尿路感染症をきっかけに、一時的にホルモンのバランスが崩れ、低ナトリウム血症になることがあります。
ある系統的レビューによると、この状態になった赤ちゃんの多くは、低ナトリウム血症だけでなく、血中のカリウムが増える「高カリウム血症」なども同時に起こしていました。 さらに、この状態の赤ちゃんの約85%に、腎臓や尿管の生まれつきの形の異常が見つかったと報告されています。 そのため、お腹の超音波検査(エコー検査)で、腎臓の形などを詳しく調べることもあります。 このように、丁寧な診察と検査で隠れた原因を見つけ出すことが大切なのです。
低ナトリウム血症の治療
低ナトリウム血症の治療は、原因によって方法が全く異なります。 そのため、なぜ血液の塩分が薄くなったのかを突き止めることが大切です。
治療の基本は、原因への対処とバランスの正常化の二本柱です。 原因となっている病気の治療や薬の見直しを行いつつ、崩れた水分と塩分のバランスを元に戻していきます。
具体的な治療法は、主に体の水分バランスによって分けられます。
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体の状態 |
主な治療法 |
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水分が多い場合 |
1日に飲む水分量を制限します。 心臓の病気などが原因なら、余分な水分を出すお薬(利尿薬)を使うこともあります。 |
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水分が少ない場合 |
下痢や嘔吐で水分と塩分が失われた状態です。 この場合は、塩分を含んだ点滴を行い、水分と塩分の両方を補います。 |
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水分が正常な場合 |
ホルモンの異常など、隠れた病気が原因のことが多いです。 そのため、原因となっている病気の治療が中心になります。 |
病気だけでなく、お薬が原因になることも少なくありません。 例えば、脳卒中後のうつ病治療で使われることがある特定のお薬は、副作用で低ナトリウム血症を起こす可能性が研究で報告されています。 この場合は、原因のお薬を中止したり、他の種類に変更したりします。
赤ちゃんが尿路感染症で低ナトリウム血症になった場合は、抗生物質による感染症の治療と、適切な水分補給が治療の中心となります。
意識がもうろうとするなど症状が重い場合は、入院が必要です。 濃度の高い食塩水を点滴しますが、急激に塩分濃度を上げると脳にダメージを与えかねません。 そのため、専門の医師が状態を慎重に見ながら、時間をかけてゆっくりと治療を進めていきます。





