血友病

けがをした時、私たちの血が自然に止まるのは、血液を固める「血液凝固因子」というたんぱく質の働きによるものです。しかし、この凝固因子が生まれつき不足していたり、働きが弱かったりするために、血が止まりにくくなる病気が「血友病」です。

日本には約7,000人の患者さんがおり、そのほとんどが男性です。約3割はご家族に血友病の方がいなくても突然発症します。この病気の特徴は、体の表面の出血よりも、関節や筋肉といった体の内部で出血しやすいという点にあります。

治療法が進歩した現在では、出血を予防し、多くの方が健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。この記事では、血友病の原因や症状、具体的な治療法について詳しく解説します。ご自身と大切な人のために、正しい知識を深めていきましょう。

血友病の概要

けがをした時、血が自然に止まるのはなぜでしょう。 それは血液の中に、血を固める働きを持つ 「血液凝固因子」というたんぱく質があるからです。 この凝固因子は、複数が順番に働くことで血を固めます。

血友病は、この血液凝固因子の一部が少ない、 あるいは働きが弱いために起こる病気です。 そのため、血が固まるのに時間がかかったり、 一度止まっても再び出血したりすることがあります。

血友病は、不足する凝固因子の種類によって、 主に2つのタイプに分けられます。

種類

特徴

血友病A

第VIII(8)因子が不足、または働きが弱い

血友病B

第IX(9)因子が不足、または働きが弱い

2021年の調査によると、日本の患者さんは約7,000人です。 そのうち血友病Aが約8割を占めています。 また、遺伝子の仕組みにより、患者さんのほとんどは男性です。

約7割はご家族から遺伝しますが、残りの3割は、 ご家族に血友病の方がいなくても突然発症します。 凝固因子の働き具合で重症度が分類され、 症状の現れ方が異なります。

現在は治療法が進歩したため、出血を予防し、 多くの方が日常生活を送ることが可能になっています。

血友病の種類

血友病は、どの種類の「血液凝固因子」が足りないか、 あるいは働きが弱いかによって、主に2つに分類されます。 どちらのタイプも生まれつきのもので、症状は似ています。

種類

不足している血液凝固因子

血友病A

第VIII(8)因子

血友病B

第IX(9)因子

日本の血友病患者さんのうち、血友病Aの方が多く、 全体の約8割を占めると報告されています。

また、血友病は「凝固因子の働き(活性)」の強さで、 重症度が3段階に分けられます。 この活性とは、血を固める力がどのくらい残っているかの目安です。 重症度によって、出血のしやすさや症状の現れ方が異なります。

重症度

凝固因子の働き(活性)の目安

重症

1%未満

中等症

1%以上5%未満

軽症

5%以上

重症の場合、特に原因がなくても関節の中などで自然に出血します。 一方で軽症の場合は、普段の生活で出血に困ることは少ないです。 手術や大きなケガをした時に、血が止まりにくいことで、 初めて病気に気づかれる方もいらっしゃいます。

血友病の原因

血友病の原因は、生まれつき持っている遺伝子にあります。 遺伝子とは、私たちの体を作るための設計図のようなものです。 この設計図に、血を固める成分(血液凝固因子)の 作り方が書かれています。

血友病は、この設計図の一部に問題があるため、 血液凝固因子をうまく作れずに起こる病気です。 原因となる遺伝子は、性別を決める「性染色体」のうち、 X染色体という部分に存在します。

人の性染色体はXとYの2種類で、組み合わせで性別が決まります。

男性

女性

性染色体

XY(Xが1本、Yが1本)

XX(Xが2本)

男性はX染色体を1本しか持っていません。 そのため、その1本に異常があると症状が現れます。 一方、女性はX染色体が2本あるため、片方に異常があっても、 もう一方の正常なX染色体が働き、症状が出にくいのです。 この仕組みから、血友病の患者さんのほとんどは男性です。

血友病の原因の約7割は、ご家族から受け継がれる遺伝です。 しかし、残りの約3割は遺伝子の「突然変異」で起こります。 突然変異とは、設計図に予期せぬ変更が生じることです。 そのため、ご家族に血友病の方がいなくても発症することがあります。

血友病の症状

血友病の症状は、血が固まりにくいことによる「出血」です。 ただし、すり傷のように体の外への出血が止まらないというより、 体の深い部分で出血しやすい、という特徴があります。

症状の現れ方は、血を固める力の強さ(重症度)で変わります。 特に、関節や筋肉といった体の内部での出血が多く見られます。 これらの出血は、外からは見えにくいため注意が必要です。

血友病でよく見られる出血の症状を以下に示します。

  • 関節内出血 ひじやひざ、足首など、よく動かす関節の内部で出血します。 ぶつけた覚えがなくても急に関節がパンパンに腫れ上がり、 曲げ伸ばしができないほどの強い痛みを感じることがあります。 この出血を繰り返すと、関節が変形して固まってしまう 「血友病性関節症」という後遺症につながる恐れがあります。
  • 筋肉内出血 おしりや太ももなど、大きな筋肉の中で出血が起こります。 筋肉の中にできた血のかたまり(血腫)が周りの神経を圧迫し、 強い痛みやしびれを引き起こす原因となります。
  • 皮下出血 軽くぶつけたり、ぶつけた記憶がなかったりするのに、 体のあちこちに大きな青あざ(皮下出血)ができます。
  • その他の出血 歯ぐきからの出血や血尿、鼻血なども見られます。 頻度は低いですが、頭をぶつけた後の頭蓋内出血は、 命に関わるため、最も注意が必要な症状です。

重症の方は、歩くなどの日常的な動作でも自然に出血します。 一方、軽症の方は普段は無症状で、大きなケガや手術の際に、 血が止まりにくいことで初めて病気に気づくこともあります。

血友病の検査・診断

出血が止まりにくい、あざができやすいなどの症状から 血友病が疑われる場合、まず血液検査を行います。 血液が固まるまでの時間を調べる「血液凝固検査」です。

この検査には主に2つの種類があります。 血友病の場合、APTTという検査の数値が長くなりますが、 PTという検査の数値は正常な範囲に収まります。

  • APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
  • PT(プロトロンビン時間)

APTTの時間が長いと分かったら、次に詳しい検査へ進みます。 どの凝固因子が、どのくらい足りないのかを特定するため、 「凝固因子活性検査」という検査を行います。

この検査で、第VIII(8)因子と第IX(9)因子の働き(活性)を 具体的に測定し、血友病のタイプと重症度を確定させます。 凝固因子の働き(活性)によって、重症度は以下のように分類します。

重症度

凝固因子の働き(活性)

重症

1%未満

中等症

1%以上5%未満

軽症

5%以上40%未満

このほか、治療方針を決めるために、 以下のような検査を合わせて行うことがあります。

  • 画像検査 レントゲンやMRIなどで、関節の状態を詳しく調べます。 関節内出血を繰り返している場合、骨や軟骨の損傷を評価します。
  • インヒビター検査 治療薬の効果を弱めてしまう抗体(インヒビター)がないかを確認します。 この抗体の有無は、治療計画を立てる上で非常に重要です。
  • 遺伝子解析 血友病の原因となっている遺伝子の状態を調べます。 診断の確定や、ご家族の遺伝に関する相談にも役立ちます。

これらの検査結果を総合的に判断し、 一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。

血友病の治療

血友病の治療は、足りない血を固める成分(血液凝固因子)を お薬の注射で補う「補充療法」が中心です。 この治療の目的は、出血を未然に防ぎ、出血に備えることです。 これにより、健康な人とほとんど変わらない生活を目指せます。

補充するお薬(製剤)の種類

補充するお薬は、血友病のタイプによって異なります。

  • 血友病Aの場合 第VIII(8)因子製剤を使います。
  • 血友病Bの場合 第IX(9)因子製剤を使います。

お薬には、人の血液から作る「血漿由来製剤」のほか、 遺伝子組換え技術で作られる製剤もあります。 それぞれに特徴があるため、医師と相談して選択します。

目的で使い分ける3つの補充療法

補充療法は、目的によって大きく3つの方法に分けられます。 特に出血を予防する「定期補充療法」が治療の基本となります。

治療法の種類

目的と内容

定期補充療法

出血そのものを予防するため、定期的に注射をする治療です。お薬の種類にもよりますが、週に1〜3回ほど行います。

出血時補充療法

関節の痛みなど、実際に出血が起きてしまった時に、血を止める目的で注射をします。できるだけ早く行うことが大切です。

予備的補充療法

運動会や旅行など、出血の可能性がある活動の前に、あらかじめ出血に備える目的で注射をします。

治療を続ける上での注意点

治療を続ける中で、お薬の効き目を弱めてしまう「インヒビター」 という抗体が体の中にできることがあります。 これは、補充した凝固因子を体が「異物」と判断し、 攻撃してしまうために起こる反応です。

インヒビターができた場合は、その影響を受けない別の種類のお薬 (バイパス止血製剤)を使って止血を行います。 また、患者さんやご家族がご自宅で注射を行う「在宅自己注射」も 広く行われており、出血時に素早く対応できます。