血友病B

けがをすると血が止まりにくい、軽くぶつけただけなのに大きなあざができてしまう。そんなお悩みはありませんか。もしかすると、それは「血友病B」という病気のサインかもしれません。日本では約1,000人の方が診断されているこの遺伝性の疾患は、「クリスマス病」という意外な別名も持っています。

生まれつき血を固める力が弱いこの病気は、主に男性に発症するとされていますが、女性にも無関係ではありません。軽症の場合は大人になるまで気づかれないこともあります。この記事では、血友病Bの原因から症状のタイプ、そして近年選択肢が大きく広がっている治療法までを詳しく解説します。あなたや大切なご家族のために、正しい知識を身につけましょう。

血友病Bの概要

血友病Bは、血を固める働きが生まれつき弱い病気です。 私たちの体には、出血した際に血を止める仕組みがあります。 その中で「血液凝固第IX因子」は特に重要な役割を担います。

この第IX因子が生まれつき少ない、または働きが弱いために、 けがや抜歯のときに出血が長く続いてしまうことがあります。 一度血が止まっても、後から再び出血することも特徴です。

血友病Bは遺伝によって起こり、主に男性にみられる病気です。 しかし、まれに女性でも出血しやすくなるなどの症状が みられることがわかっています。

日本ではおよそ1,000人の方がこの病気と診断されています。 「クリスマス病」という別名で呼ばれることもあります。 病気の重さには個人差があり、軽症の場合は大人になるまで 診断されないケースも少なくありません。

この病気のポイントを以下にまとめます。

  • どんな病気? 血を固める成分「第IX因子」が少ない、または働きが弱い病気
  • 主な特徴 けがをしたときなどに血が止まりにくい、傷の治りが遅い
  • 原因 生まれつきの遺伝によるもの
  • 注意点 ビタミンKを補っても、出血のしやすさは改善しません

血友病Bの種類

血友病Bは、血を固める力の強さによって種類が分かれます。 血液を固める働きを持つ「第IX(だいきゅう)因子」という たんぱく質の活動量で、重症度が3つのタイプに分類されます。

ご自身の体の状態を正しく知ることが、適切な対応への第一歩です。 特に、お子さんや思春期の方は、大人よりも出血を 経験しやすい場合があるため、注意深く見守る必要があります。

種類

第IX因子の働き(活性)

症状の現れ方や診断の目安

重症

1%未満

理由がなくても関節や筋肉で自然に出血します(月に2~5回ほど)。多くは生後2年以内に診断されます。

中等症

1%以上5%未満

軽いけがでも出血が長引きます。年に数回から月に1回程度の出血を経験し、5~6歳までに診断されることが多いです。

軽症

5%以上40%未満

普段の生活で出血することはまれです。手術や大きなけがの際に出血が止まりにくく、大人になってから診断されることもあります。

また、血友病Bは男性に多い病気ですが、原因となる遺伝子を 持つ女性(保因者)も注意が必要です。 保因者の女性の約3割は、第IX因子の働きが正常より低く、 軽症の患者さんと同じように出血しやすくなることがあります。

このように、同じ血友病Bでも重症度によって付き合い方が 大きく変わるため、ご自身のタイプを把握しておくことが大切です。

血友病Bの原因

血友病Bの原因は、生まれつきの体の設計図である「遺伝子」です。 私たちの体を作るための指示書に、少しだけ変化がある状態です。 この変化は、血を固める働きに直接影響を与えます。

原因となるのは**「F9遺伝子」**という特定の遺伝子です。

  • F9遺伝子の役割 血液を固める「第IX因子」という、たんぱく質を作る設計図です。
  • 遺伝子の変化による影響 この設計図にエラーがあると、第IX因子が十分に作られません。 あるいは、作られても正常に機能しなくなります。

その結果、血液を固める力が弱まり、出血が長引きやすくなります。 このF9遺伝子は「X染色体」という性別を決める染色体にあるため、 遺伝のしかたや症状の出方が男女で大きく異なります。

性別

染色体の組み合わせ

血友病Bとの関係

男性

XY

X染色体は1本です。その遺伝子に変化があると、第IX因子が不足し、血友病Bを発症します。

女性

XX

X染色体は2本あります。片方に変化があっても、もう一方が補うため、通常は発症しません。この状態を「保因者」と呼びます。

診断を確定させる際には、遺伝子を詳しく調べる検査が行われます。 この「分子遺伝学的検査」で、F9遺伝子の変化を直接確認します。 これにより、なぜ血が止まりにくいのか、根本的な原因がわかります。

もし血友病Bと診断されたら、ご家族にも関わる大切な情報です。 特に女性のご親族は、ご自身が保因者と気づかないことがあります。 リスクのあるご親族が検査を受ければ、早期の備えにつながります。

血友病Bの症状

血友病Bの主な症状は、出血がなかなか止まらないことです。 しかし、その症状の現れ方は一人ひとり異なります。 特に、活発に動くお子さんや思春期の方は、大人よりも 出血を経験する回数が多くなることがあります。

症状の重さは、血液を固める「第IX因子」の働き具合で、 「重症」「中等症」「軽症」の3つのタイプに分けられます。

【重症度ごとの症状と出血の目安】

重症度

主な症状と出血の頻度の目安

重症

・特別な理由なく関節や筋肉で出血します(自然出血)。

・出血の目安は、月に2〜5回程度です。

・多くは生後2年以内に診断される傾向があります。

中等症

・軽いけがや打撲でも出血が長引きます。

・出血の目安は、年に数回から月に1回程度です。

・通常、5〜6歳頃までに診断されます。

軽症

・普段の生活で出血することはまれです。

・出血の目安は、年に1回〜10年に1回程度です。

・手術や抜歯の際に初めて気づかれることもあります。

出血は、特に以下の場所で起こりやすいという特徴があります。

  • 関節の中 ひざやひじ、足首など、体を支え、よく動かす部分です。
  • 筋肉の中 太ももやおしりなど、大きな筋肉で起こることがあります。
  • 皮下 軽くぶつけただけでも、広い範囲にあざができやすいです。

これらの症状は、病気の重さに関わらず注意が必要です。 例えば、手術や抜歯、大きなけがをした後には、 出血が長く続いたり、一度止まっても再び出血したりします。

気になる症状があれば、ためらわずに専門の医師へ相談しましょう。

血友病Bの検査・診断

出血が止まりにくい、または青あざができやすいなどの症状は、 体が発している大切なサインかもしれません。 ご家族に出血しやすい方がいる場合も、検査をおすすめします。

診断は、主に以下のステップで丁寧に進められます。

  • 1. 問診 まず、患者さんやご家族から詳しいお話をお伺いします。 いつから出血しやすいか、どんな時に出血したかなど、 診断のための重要な手がかりになります。
  • 2. 血液検査 血液を少し採って、血を固める力を詳しく調べます。
  • スクリーニング検査 血が固まるまでの時間(APTT)を測定します。 血友病Bの場合、この時間が通常より長くなります。
  • 凝固因子活性検査 血を固める「第IX因子」の働き具合を調べます。 この数値が低い場合に、血友病Bと診断されます。
  • 3. 遺伝子検査 診断をより確かなものにするために行う検査です。 第IX因子を作る設計図である「F9遺伝子」の変化を 直接確認し、病気の根本原因を特定して診断を確定します。

これらの検査結果から、病気の有無や重症度がわかります。 診断は、ご自身の体を守り、安心して生活するための第一歩です。 また、ご家族、特に女性のご親族も検査を受けることで、 早期の備えにつながるため、とても重要です。

血友病Bの治療

血友病Bの治療目標は、出血を防ぎ、関節などを守ることです。 そして、出血した際には速やかに血を止めることが重要です。 これにより、安心して日常生活を送ることが可能になります。

治療の基本は、体に足りない「第IX因子」を注射で補うことです。 これを**「補充療法」**と呼び、目的別に2つの方法があります。

  • 定期補充療法 けがなどによる出血を未然に防ぐための治療法です。 週に1〜2回など、定期的に第IX因子を注射します。 関節を健康に保つために、とても大切な役割を果たします。
  • 出血時補充療法 実際に出血してしまった時に、止血のために行います。 けがや手術など、出血が起きた際に注射をします。

近年、補充療法とは違う仕組みで出血を防ぐ新しい薬も登場し、 治療の選択肢は大きく広がっています。 これらの薬は、補充した薬の効果を邪魔してしまう抗体である 「インヒビター」を持つ方にとっても、有効な選択肢となります。

新しい薬の働き方

薬の種類の例

特徴

血を「固まりにくくする物質」が作られるのを邪魔する

フィツシランなど

・補充療法と比べて注射の回数が少なく済む可能性があります。

・インヒビターの有無にかかわらず使えます。

血が固まるのを「邪魔する物質」の働きをブロックする

コンシズマブなど

・安定した効果を得るため、毎日の注射で治療します。

・インヒビターを持つ患者さんの出血予防にも有効です。

どの治療を選ぶかは、病気の重さやインヒビターの有無、 年齢や生活スタイルによって一人ひとり異なります。 主治医とよく相談し、ご自身に最も合った治療法を選びましょう。