乳汁漏
妊娠や授乳をしていないのに、おっぱいから母乳のようなものが出て戸惑っていませんか?実はこの症状、女性だけでなく男性にも起こることがあり、報告によっては女性の5%から32%もの方が経験するとも言われる、決して珍しくない体のサインなのです。
予期せぬ体の変化に、一人で不安や恥ずかしさを感じているかもしれません。多くは心配いりませんが、その背景にはお薬の副作用やホルモンの異常、まれに脳の病気が隠れている可能性も。この記事では、乳汁漏の原因から検査、治療法までを詳しく解説します。あなたの不安を解消し、適切な一歩を踏み出すための情報がここにあります。
乳汁漏の概要
乳汁漏(にゅうじゅうろう)とは、妊娠や授乳をしていないのに、おっぱい(乳房)から母乳に似た分泌物が出てくる状態のことです。
この症状は主に女性に見られますが、実は男性や生まれたばかりの赤ちゃん、思春期の子どもにも起こることがあります。決して珍しいことではなく、報告によって幅はありますが、女性の5%から32%が経験するといわれています。
多くの場合、乳汁漏は心配のいらない良性のものです。しかし、予期せぬ体の変化は、ご本人にとって大きなストレスになることもあります。研究では、薬の副作用などで体に変化が現れると、恥ずかしさや悲しみを感じ、人との交流を避けてしまうなど、社会生活に影響が出ることがわかっています。
乳汁漏の基本的なポイントを以下にまとめました。
- 対象となる人 女性だけでなく、男性や子どもにも起こります。
- どのような状態? 片方または両方のおっぱいから、自然に、あるいはしぼると分泌物が出ます。
- なぜ注意が必要? ほとんどは心配いりませんが、まれにホルモンの異常や脳の病気のサインである可能性もあります。
気になる症状があれば、それは体からの大切なメッセージかもしれません。一人で悩まずに、まずは専門の医療機関へご相談ください。
乳汁漏の種類
乳汁漏は、母乳を作る働きを持つ「プロラクチン」というホルモンの血液中の量によって、大きく2つの種類に分けられます。
血液検査でプロラクチンの値を調べることで、どちらのタイプかを知ることができます。
- 高プロラクチン血症(こうぷろらくちんけっしょう)による乳汁漏 血液中のプロラクチン濃度が、基準値よりも高い状態です。 乳汁漏の多くがこのタイプにあたります。 脳の一部にあるホルモンの司令塔(下垂体)の病気や、 一部のお薬の副作用が原因で起こることがあります。
- 正プロラクチン血症(せいぷろらくちんけっしょう)による乳汁漏 血液検査ではプロラクチンの濃度が正常な状態です。 「潜在性高プロラクチン血症」などがこれに含まれます。 普段の値は正常でも、何かの刺激で一時的にホルモンが 過剰に作られてしまうことで、症状が現れます。
このような予期せぬ体の変化は、ご本人にとって大きなストレスになります。
ある研究では、お薬の副作用で乳汁漏などが起こると、ご自身の体の変化に恥ずかしさや悲しみを感じることが報告されています。そのつらい気持ちから、人と会うのを避けたり、病気の治療を続ける意欲に影響が出たりすることもあるのです。
気になる症状があれば、それがどのタイプかを知ることが、適切な対応への第一歩になります。
乳汁漏の原因
妊娠や授乳をしていないのに母乳のようなものが出るのは、多くの場合「プロラクチン」というホルモンの影響が考えられます。
プロラクチンは、脳の中心部にある司令塔(下垂体)から分泌され、母乳を作る働きを担うホルモンです。このプロラクチンの量が増えすぎてしまう原因は、主に4つに分けられます。
1. 脳の司令塔(下垂体)のトラブル
プロラクチンを作る脳の司令塔(下垂体)に、良性のできもの(プロラクチノーマ)ができてしまうことがあります。
このできものが原因で、プロラクチンが過剰に作られてしまうのです。これは乳汁漏の原因として最も一般的なものの一つです。
2. お薬の副作用
一部のお薬は、脳に働きかけてプロラクチンの分泌を増やすことがあります。
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お薬の種類 |
具体的な例 |
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胃薬 |
一部の吐き気止め、胃潰瘍のお薬など |
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精神科のお薬 |
一部の抗うつ薬、抗精神病薬など |
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血圧のお薬 |
一部の降圧剤など |
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その他 |
経口避妊薬(ピル)など |
お薬の副作用による体の変化は、ご本人にとって大きな心の負担になることがあります。ある研究では、乳汁漏などの副作用を経験した方が、恥ずかしさや悲しみを感じ、人と会うのを避けてしまうことがあると報告されています。
そのつらい気持ちから、病気の治療を続ける意欲に影響が出てしまうこともあります。ご自身の判断でお薬をやめることはせず、まずは必ず主治医へご相談ください。
3. 他の体の病気の影響
体の新陳代謝を調整する甲状腺の働きが弱くなる病気(甲状腺機能低下症)も、原因の一つです。
甲状腺の元気がなくなると、体全体のホルモンバランスが乱れ、その影響でプロラクチンの分泌が増えることがあります。
4. その他の原因
強いストレスを感じたり、胸に繰り返し刺激が加わったりすることも、プロラクチンを増やすきっかけになることがあります。
また、詳しい検査をしても、約半数のケースではっきりとした原因が見つからないことも少なくありません。
乳汁漏の症状
乳汁漏のサインは、おっぱいから母乳のようなものが出ることだけではありません。
原因であるホルモンバランスの乱れは、体の他の部分にも変化を引き起こします。女性と男性では、あらわれる症状が異なることがあるため、チェックしてみましょう。
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女性にあらわれる症状 |
男性にあらわれる症状 |
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・月経が不規則になる、または止まる |
・性欲が低下する |
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・不妊 |
・勃起障害(ED) |
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・腟が乾燥し、性交時に痛みを感じる |
・不妊 |
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・(まれに)体毛が濃くなる |
プロラクチンというホルモンが増えすぎると、女性ホルモンや男性ホルモンの働きが抑えられてしまうため、このような症状が起こるのです。
また、脳の司令塔(下垂体)にできた腫瘍が原因の場合は、次のような男女共通の症状が見られることもあります。
- 頭痛
- 視野が狭くなる(トンネルの中から見ている感じ)
- ものが二重に見える
これは、腫瘍が大きくなることで、近くにある視力に関わる神経を圧迫するために起こる症状です。
予期せぬ体の変化は、ご本人にとって大きなストレスになります。特に、お薬の副作用でこの症状が出た場合、身体の変化に戸惑い、強い恥ずかしさや悲しみを感じる方もいらっしゃいます。
ある研究では、このような体の変化を経験した方が、無価値に感じたり、怒りを覚えたりすることもあると報告されています。そのつらい気持ちから、人と会うのを避けたり、病気の治療を続ける意欲に影響が出たりすることも考えられます。
気になる症状があれば、ひとりで悩まずに医療機関へご相談ください。
乳汁漏の検査・診断
乳汁漏の症状がある場合、その原因を特定することがとても大切です。 原因によって対応がまったく異なるため、丁寧な問診と検査を行います。 ここでは、どのような検査を行うのか、その流れを詳しく見ていきましょう。
問診
まず、お体の状態や生活について、いくつか質問をさせていただきます。 これは、原因を探るための、とても大切なヒント集めのようなものです。
- 確認する主な内容
- 月経の状態
- 周期が乱れていないか、止まっていないかなどを聞きます。
- 妊娠や授乳の可能性
- 症状が自然なものかどうかを確認します。
- 最近感じている体の変化
- 頭痛やものが二重に見える、見えにくいなどがないか伺います。
- 現在飲んでいるお薬やサプリメント
- 種類や飲み始めた時期などを詳しくお聞きします。
特にお薬が原因の場合、ご自身の体の変化に戸惑うかもしれません。 ある研究では、副作用による体の変化で恥ずかしさや悲しみを感じ、人と会うのを避けてしまうことがあると報告されています。 つらいお気持ちも含めてお話しいただくことが、診断の重要な手がかりになります。
血液検査
次に、少量の血液を採って、ホルモンの値を詳しく調べます。 特に「プロラクチン」という、母乳を作る働きを持つホルモンの量が診断の鍵を握ります。
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検査項目 |
わかること |
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プロラクチン |
母乳を作るホルモンの量を調べ、原因を探ります。 |
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甲状腺ホルモン |
体の新陳代謝に関わる甲状腺の機能が影響していないか確認します。 |
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女性ホルモン |
月経不順など、他の症状との関わりを調べます。 |
プロラクチンの値が100ng/mL以上と非常に高いこともあります。 その場合は、脳のホルモンの司令塔(下垂体)に原因がある可能性を考え、さらに詳しい画像検査へと進みます。
画像検査
血液検査の結果などから、脳の司令塔(下垂体)を詳しく調べる必要があると判断された場合、頭部のMRI検査を行います。
MRI検査は、強力な磁石と電波を使って脳の断面図を撮影する検査です。 この検査で、プロラクチンを過剰に作ってしまう小さなできものがないかなどを、詳しく確認することができます。
これらの検査結果を総合的に判断し、原因を診断していきます。 そして、一人ひとりに合った治療方針を一緒に決めていきましょう。
乳汁漏の治療
乳汁漏の治療は、原因や症状の重さ、年齢、そして将来妊娠を希望するかどうかなど、あなた自身の状況に合わせて方針を決めていきます。
症状がとても軽い場合は、すぐに治療を始めずに、しばらく様子を見る「経過観察」という選択をすることもあります。治療が必要な場合の主な選択肢は、次のとおりです。
- お薬による治療(薬物療法)
- 原因となっている病気への対応
- 手術による治療
お薬による治療
乳汁漏の治療で、最も中心となるのがお薬を飲む方法です。 主に「ドパミン作動薬」という種類のお薬が使われます。 このお薬は、母乳を作るホルモン(プロラクチン)が出すぎるのを抑える、ブレーキのような働きをします。
<お薬に期待できること>
- 乳汁の分泌が止まる ホルモンの量が正常になり、症状が改善します。
- 乱れていた月経が整う ホルモンバランスが整い、不順だった月経が正常に戻ります。
- 原因となるできものが小さくなる 脳にできた良性のできもの(プロラクチノーマ)が原因の場合、 そのサイズを小さくする効果も期待できます。
原因となっている病気への対応
他のお薬の副作用や、甲状腺の病気などが原因の場合は、まずその原因への対応を考えます。
例えば、今飲んでいる胃薬や精神科のお薬が原因の可能性があれば、主治医と相談して、お薬の変更などを検討します。ご自身の判断でお薬をやめることは絶対にしないでください。
心と体のケアの大切さ
お薬の副作用などで体に予期せぬ変化が起きると、強い戸惑いやつらさを感じることがあります。
ある研究では、乳汁漏などの体の変化を経験した方が、恥ずかしさや悲しみ、時には怒りを感じることが報告されています。そのつらい気持ちから、人と会うのを避けてしまったり、病気の治療を続ける意欲に影響が出たりすることもあるのです。
あなたのその気持ちは、決して特別なことではありません。不安なことや気になることがあれば、一人で抱え込まず、どうぞ私たち医師や看護師にご相談ください。体の変化について正しく理解し、安心して治療を続けることが何よりも大切です。









