もし、あなたの目の中に「カビ」が繁殖し、視力を奪うとしたら…? これはSFの話ではなく、現実に起こりうる「真菌性眼内炎」という恐ろしい目の病気です。普段、健康な方の目には起こらないまれな感染症ですが、治療が遅れると元に戻らない視力障害、場合によっては失明につながる可能性があり、決して軽視はできません。
特に、白内障などの目の手術を受けた方や、糖尿病で治療中の方、大きな手術後などで体の抵抗力が落ちている方は注意が必要です。カビは、目の傷口や体の中の血液を通じて静かに侵入し、気づいたときには深刻な事態を招くこともあります。
この記事では、あなたの視力を守るために知っておくべき真菌性眼内炎の原因から、見逃してはならない初期症状、そして「時間との戦い」とも言われる治療法までを詳しく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。
真菌性眼内炎の概要
真菌性眼内炎(しんきんせいがんないえん)とは、目の中に真菌(カビ)が入り、炎症を起こすまれな目の感染症です。
普段、健康な方の目には、カビが入ってきても撃退する力(免疫)が備わっているため、この病気になることはほとんどありません。
しかし、治療が遅れると視力が大きく下がってしまうなど、元に戻らない視力の障害に繋がる可能性があり注意が必要です。
この病気は、体の抵抗力(免疫力)が落ちているときに特に起こりやすくなります。例えば、大きな手術の後や糖尿病、免疫の働きを抑える治療を受けている方などです。
真菌が目の中に入るルートは、大きく分けて2つあります。
- 目の手術やケガでできた傷口から、空気中などにいるカビが直接目の中に入ってしまうケースです。
- もともと体の中にいたカビが、血液の流れに乗って目にたどり着き、そこで炎症を起こすケースです。血液の中にカンジダというカビが増える「カンジデミア」という状態で起こることがあります。
このように、真菌性眼内炎は特定の状況で発症します。目の見え方の変化や、充血や痛みが続く場合は、早めに眼科を受診することが大切です。
真菌性眼内炎の種類
真菌性眼内炎は、カビがどのように目に侵入するかで、大きく2つの種類に分けられます。 感染ルートが違うため、それぞれ原因や特徴が異なります。
外因性(がいすうせい)真菌性眼内炎
目の外からカビが直接入り込むことで起こるタイプです。 目のけがや手術によってできた傷口が、カビの入り口になります。
- 目のけが 農作業中に土や植物が目に入って傷がつくことなどが原因です。
- 目の手術後 白内障などの手術で作った傷口からカビが侵入することがあります。 手術後に起こる眼内炎では、Fusarium(フザリウム)属や、 Aspergillus(アスペルギルス)属という種類のカビが原因となりやすいです。
内因性(ないいんせい)真菌性眼内炎
体の他の場所にいたカビが、血液に乗って目に運ばれて起こるタイプです。 体の抵抗力(免疫力)が落ちているときに発症しやすくなります。
- リスクが高まる状態 大きな手術の後や糖尿病の方、免疫を抑える薬を使っている方は注意が必要です。
- 原因となるカビ 原因の多くはCandida(カンジダ)というカビです。 普段は体にいても問題ないカビですが、免疫力が下がると血液中で増え、 目にたどり着いて炎症を起こします。
これら2つの種類は、以下のようにまとめられます。
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種類
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感染のしかた
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主な原因
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外因性
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目の外から直接入る
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・目のけが
・目の手術
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内因性
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体の中から血液で運ばれる
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・体の抵抗力の低下
・糖尿病など
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真菌性眼内炎の原因
真菌性眼内炎は、真菌(カビ)が目の中に入ることで起こります。 カビが目に入るルートは、大きく2つのパターンに分けられます。
目の外から直接入ってくる場合(外因性)
目の手術やケガによってできた傷口は、カビの侵入口になります。 そこからカビが直接目の中に入り、炎症を引き起こすのです。
- 目の手術のあと 白内障などの手術で作った傷口から感染することがあります。 原因となるカビには、Aspergillus(アスペルギルス)属や Fusarium(フザリウム)属などが報告されています。
- 目にケガをしたとき 農作業中に植物で目をついたり、土が目に入ったりすると、 傷口からカビが侵入する可能性があります。
体の中から目に広がる場合(内因性)
体の抵抗力(免疫力)が落ちているときに起こりやすいタイプです。 体の他の場所にいたカビが血液の流れに乗って目に運ばれてきます。
血液の中にカンジダというカビが増える「カンジデミア」という状態で 起こることがあり、注意が必要です。
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このような方は特に注意が必要です
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✅ 大きな手術を受けたあと
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✅ 糖尿病を治療中の方
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✅ 免疫の働きを抑える薬を使っている方
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✅ 点滴の管(中心静脈カテーテル)を長期間入れている方
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例えば、糖尿病で血糖値が高い状態が続くとカビが繁殖しやすく、 体の抵抗力も落ちるため、リスクが高まります。
このように、真菌性眼内炎は特定の背景がある方に起こりやすい病気です。
真菌性眼内炎の症状
真菌性眼内炎の症状は、カビが目に入った原因によって現れ方が異なります。 気になる症状がないか、チェックしてみましょう。
【こんな症状はありませんか?】
- 目の症状 急に見えにくくなった 視界がかすんだり、ぼやけたりする 目の前に虫やゴミのようなものが飛んで見える(飛蚊症) 目が痛い、ゴロゴロする 目が赤くなる(充血) 光をまぶしく感じる
- 体全体の症状 原因のわからない熱が続く 体がだるい
特に、症状の現れ方には2つのパターンがあります。
目のケガや手術が原因の場合
白内障などの手術後に起こる場合、症状が出るまでの時間が短いのが特徴です。 急に強い視力低下が起こり、黒目の表面に膿がたまることもあります。 このような状態は角膜膿瘍(かくまくのうよう)と呼ばれ、注意が必要です。
体の中からカビが広がる場合
体の抵抗力が落ちているときに起こりやすいタイプです。 目の症状よりも先に、原因不明の発熱やだるさといった全身の症状が現れます。 その後、飛蚊症や目のかすみなど、目の症状に気づくことが多いです。
これらの症状を放置すると、目の中の炎症が悪化してしまいます。 治療が遅れると、視力に元に戻らない影響が残る可能性が高まります。 少しでも気になる症状があれば、すぐに眼科を受診することが大切です。
真菌性眼内炎の検査・診断
真菌性眼内炎の診断は、いわば「時間との戦い」です。 視力への影響をできるだけ小さくするため、いくつかの検査を組み合わせて、 原因となっているカビの種類をすばやく特定していきます。
まず、医師は患者さんの状態について、詳しくお話を聞きます。 これは、カビが目に入った原因を探るための、とても大切な手がかりになります。
- 最近、目の手術やケガをしましたか?
- 糖尿病など、体の抵抗力が下がる病気はありますか?
- 体に点滴の管(カテーテル)を入れていますか?
- 原因のわからない熱が出ていませんか?
次に、特殊な機械を使って目を詳しく観察します。
- 細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査 顕微鏡で目を拡大し、炎症の強さなどを細かく見ます。
- 眼底検査 目薬で瞳を広げ、目の奥(網膜や硝子体)を調べます。 カビの塊である、特徴的な黄白色の点がないかを確認します。
- 光干渉断層計(OCT)検査 目の奥を輪切りにしたような精密な画像を撮影します。 この検査で「雨雲サイン」と呼ばれる特徴的な影が見つかると、 診断の大きな助けになることがあります。
目の診察と同時に、原因となっている「犯人」のカビを特定する検査も行います。 診断を確定するため、目の中の液体(硝子体)や血液を少し採取し、 原因菌を特定しますが、培養検査は結果が出るまで数日かかります。
視力を守るためには、一刻も早い治療が必要です。 そのため、検査結果を待たずに、診察の状況から治療を始めることが一般的です。 最近では、遺伝子を調べる技術(次世代シーケンシング)の登場により、 より早く原因菌を見つけられるようになってきました。 どの薬が効くかを調べる薬剤感受性試験も、効果的な治療を選ぶうえで欠かせません。
真菌性眼内炎の治療
真菌性眼内炎の治療は、視力を守るための「時間との戦い」です。 診断されたらすぐに、原因となる真菌(カビ)をやっつけ、 目の中の炎症を抑えるための治療を開始します。
治療の中心となるのは、「抗真菌薬」というカビ専用のお薬です。 ただ、病気の重さやカビがいる場所によって、お薬の使い方が異なります。 主に、以下の3つの方法を組み合わせて治療を進めます。
- 抗真菌薬の点滴(全身投与) 治療の基本となる方法です。 お薬を点滴で体の中に入れ、血液の流れに乗せて目のすみずみまで届けます。 これにより、体の中からカビを攻撃します。 治療には数週間から数ヶ月かかることもあり、根気強く続けることが大切です。
- 目の中への注射(硝子体内注射) 症状が強かったり、点滴だけではカビの勢いを抑えきれなかったりする場合に行います。 目の中に直接、抗真菌薬を注射することで、カビがいる場所に薬を届けます。
- 目の手術(硝子体手術) 目の中がカビでひどく濁ってしまった場合に行われる手術です。 カビのすみかとなっている濁った部分(硝子体)を取り除きます。 これにより、感染の広がりを食い止め、お薬が効きやすい環境を整えます。
近年、お薬が効きにくい「耐性菌」というカビが増えていることが問題です。 そのため、どの薬が効くかを調べる検査(感受性試験)がとても重要になります。 しかし、検査結果を待っていては治療が遅れてしまうため、 まずは最も効果が期待できるお薬で治療を開始することが一般的です。