大腿骨骨折
「ただの骨折」と軽く考えていませんか?人間の体で最も太く丈夫な骨である「大腿骨」。この骨が折れることは、単に歩けなくなるだけでなく、あなたの人生を根底から揺るがす「寝たきり」の入り口になるかもしれません。
特にご高齢の方は、骨粗しょう症によって骨がもろくなっているため、家の中で少しつまずいただけでも骨折に至ることがあります。そして、その骨折をきっかけに肺炎や血栓症といった、命に関わる病気を引き起こす危険性も潜んでいるのです。
この記事では、大腿骨骨折の知られざる本当の怖さから、原因、最新の治療法までを詳しく解説します。あなたと、あなたの大切な家族の未来を守るために、ぜひ正しい知識を身につけてください。
大腿骨骨折の概要
足の付け根にある太ももの骨、これを大腿骨と呼びます。 大腿骨は人間の体の中で最も太くて丈夫な骨です。 しかし、この骨が折れると歩けなくなり生活が一変します。
若い世代では、交通事故やスポーツ中の激しい衝突が原因です。 一方、ご高齢の方は骨がもろくなる「骨粗しょう症」により、 家で少しつまずいただけでも折れてしまうことがあります。
大腿骨骨折の本当の怖さは、その後の影響にあります。 骨折がきっかけで寝たきりになってしまう危険があるのです。 長く動けないと、以下のような命に関わる病気を招くこともあります。
- 肺炎
- 寝ている時間が長くなることで、肺の機能が落ちてしまいます。
- 血栓症
- いわゆるエコノミークラス症候群です。
- 血の塊が血管に詰まってしまう病気です。
そのため、この骨折ではできるだけ早い治療が重要になります。 治療は手術を行うことがほとんどですが、 手術では、患者さんの体への負担を軽くする工夫がされます。
例えば、手術で使う麻酔の方法にも選択肢があります。 いくつかの研究報告によると、部分的な麻酔(地域麻酔)は、 全身麻酔と比べて、以下のような利点があるとされています。
- 手術時間が短くなる
- 手術中の出血量が減る
- 手術後の痛みが軽くなる
- 入院期間が短くなる
このように、医療現場では常に安全で負担の少ない治療法が選択されます。
大腿骨骨折の種類
大腿骨骨折と一言でいっても、実はいくつかの種類があります。 骨が折れた場所や、どのように折れたかによって分類されます。 どの種類の骨折かによって治療方法が大きく変わるためです。 まずは骨折の種類を正しく知ることが、治療への第一歩です。
大腿骨骨折は、主に足の付け根である股関節の近くで起こります。 折れた場所によって、大きく2つのタイプに分けられます。
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骨折の場所 |
特徴 |
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大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)骨折 |
股関節を包む袋(関節包)の内側で起こる骨折です。 この部分は血の巡りが悪く、骨がつきにくい傾向があります。 |
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大腿骨転子部(だいたいこつてんしぶ)骨折 |
股関節を包む袋(関節包)の外側で起こる骨折です。 こちらは血の巡りが良く、骨がつきやすいのが特徴です。 |
さらに、骨の折れ方によっても以下のように分けられます。 医師はこれらの状態を正確に判断して、治療方針を決定します。
- 開放骨折(かいほうこっせつ) 折れた骨が皮膚を突き破り、外に飛び出してしまった状態です。 「複雑骨折」とも呼ばれ、傷口から細菌が入る危険があります。 感染症を防ぐため、緊急で手術が必要になる深刻な骨折です。
- 閉鎖骨折(へいさこっせつ) 骨は折れていますが、皮膚は傷ついていない状態の骨折です。 「単純骨折」とも呼ばれ、多くの骨折はこちらに分類されます。
- 転位骨折(てんいこっせつ) 折れた骨の断片が、本来あるべき位置からずれている状態です。 ずれた骨を元の位置に戻して固定するために、手術が必要になります。
大腿骨骨折の原因
大腿骨が折れる原因は、年齢によって大きく異なります。 これは、骨の強さが年齢とともに変化するためです。 若い世代とご高齢の方では、骨折に至る状況が全く違います。
若い世代に多い原因
若い人の骨は密度が高く、とても丈夫で簡単には折れません。 そのため、骨が耐えられないほどの強い力が加わることが原因です。
- 交通事故 自動車事故やバイク事故、歩行中の衝突などが挙げられます。 非常に大きなエネルギーが体にかかることで骨折に至ります。
- スポーツによるケガ ラグビーやサッカーなど、選手同士が激しくぶつかるスポーツで起こります。 また、スキーやスノーボードでの転倒も原因の一つです。
ご高齢の方に多い原因
ご高齢の方で最も多い原因は、日常生活でのささいな転倒です。 背景には、骨がもろくなる病気「骨粗しょう症」が関係しています。
骨粗しょう症になると、骨の中がスカスカのもろい状態になります。 そのため、若い人なら何ともないような軽い力で折れてしまいます。
- 家の中での転倒 カーペットの段差でつまずく、ベッドから落ちるなどです。
- 体をひねる動作 骨が非常に弱くなっていると、立ち上がって体をひねっただけで折れることもあります。
このように、ご高齢の方の骨折は、骨自体の弱さが大きな原因です。 そのため、転倒予防だけでなく、骨を強く保つことも大切になります。
大腿骨骨折の症状
大腿骨を骨折すると、体にいくつかのサインが現れます。 転んだ後などに、これから説明する症状が見られたら要注意です。 主な症状は「痛み」「見た目の変化」「動かせない」の3つです。
1.足の付け根や太ももの激しい痛み
骨が折れるため、立ったり歩いたりできないほどの痛みが出ます。 少しでも足を動かそうとすると、激痛が走るのが特徴です。 安静にしていても、ズキズキとした痛みが続くこともあります。
2.見た目の変化
骨折した場所では、特徴的な見た目の変化が起こります。 これらは、骨折による内部での出血や骨のずれが原因です。
- 腫れとあざ 骨の中にはたくさんの血管が通っています。 骨が折れると、この血管が傷つき内出血を起こします。 そのため、足の付け根の周りがパンパンに腫れ上がります。 また、出血した血液が皮膚の下に広がり紫色になることもあります。
- 足の変形 折れた足が、健康な足と比べて短く見えることがあります。 これは、太ももの強い筋肉が折れた骨を引っ張り上げるためです。 また、足の力が抜けて、足先がだらんと外側を向いてしまいます。
3.足を動かせなくなる
激しい痛みと、体を支える骨が折れているため動けません。 自分の力で立ち上がったり、歩いたりすることは困難になります。 もちろん、骨折した足に体重をかけることはできません。
ご自身やご家族に以下の症状がないか、確認してみましょう。 一つでも当てはまる場合は、すぐに救急車を呼ぶか医療機関を受診してください。
【大腿骨骨折セルフチェック】
- ☐ 転んだ後、立ち上がることができない
- ☐ 足の付け根や太ももに激しい痛みがある
- ☐ 痛くて足をまったく動かせない
- ☐ 足の付け根が紫色に腫れている
- ☐ 左右の足の長さが明らかに違う
- ☐ 足先がだらんと外側を向いている
大腿骨骨折の検査・診断
大腿骨骨折が疑われる場合、医師は正確な診断をします。 診断は、丁寧な問診と診察から始まり、画像検査で確定します。 これにより、骨折の場所や状態を正確に把握できるのです。
まず、医師は患者さんから詳しくお話を聞きます(問診)。 いつ、どこで、どのようにケガをしたのかは重要な情報です。 その上で、足の状態を丁寧に観察します(身体診察)。
- 見た目の確認 足の腫れやあざ、変形がないかを目で見て確認します。 足が不自然な方向を向いていることは、骨折のサインです。
- 痛みの場所の確認 どこが一番痛むのかを優しく触って確かめます。
多くの場合、これらの診察で骨折の可能性が高いと判断できます。 次に、骨の状態を直接見るために画像検査を行います。
- X線(レントゲン)検査 骨折の診断で最も基本となる、重要な検査です。 骨折の有無や場所、骨のずれ具合を正確に確認できます。 ほとんどの大腿骨骨折は、この検査だけで診断がつきます。
- CT検査やMRI検査 レントゲンではっきりとわからない骨折を調べる検査です。 例えば、ごく小さな骨のひび(骨裂)などが疑われる時に行います。 痛みが続くのにレントゲンで異常がない場合に役立ちます。
大腿骨骨折の治療
大腿骨を骨折した場合、治療の目標はただ一つです。 それは、できるだけ早く痛みを取り、再び歩けるようにすることです。 寝たきりを防ぐため、多くの場合で手術が選ばれます。
治療は主に、以下の3つを組み合わせて進められます。
- 手術
- 折れた骨を元の位置に戻して固定します。
- リハビリテーション
- 弱くなった筋肉を鍛え、歩く練習をします。
- 薬物療法
- 痛みを和らげ、リハビリに集中できるようにします。
手術の方法
手術には、骨折の場所や骨のずれ方によって種類があります。 患者さんの年齢や体の状態に合わせて最適な方法が選ばれます。
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手術の種類 |
内容 |
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骨接合術(こつせつごうじゅつ) |
折れた骨を元の位置に戻し、金属の板やネジで固定します。 自分の骨をそのまま使えるのが特徴です。 |
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人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ) |
壊れてしまった骨の部分を、人工の関節に入れ替えます。 手術のあと、比較的早くから歩く練習を始められます。 |
手術を支える麻酔
手術の際には、痛みをなくすために麻酔を使います。 意識がなくなる「全身麻酔」と、下半身の感覚だけをなくす「地域麻酔」があります。
特にご高齢の方の手術では、どちらの麻酔が体への負担が少ないか、慎重に検討されます。 いくつかの研究報告をまとめた分析によると、地域麻酔には以下のような利点があるとされています。
- 手術にかかる時間が短くなる
- 手術中の出血量が少なくなる
- 手術後の痛みが軽くなる
- 入院している期間が短くなる
- 腎臓への負担が減る可能性がある
一方で、手術後に一時的に頭が混乱してしまう「せん妄」のリスクなどについては、どちらの麻酔が優れているか、まだはっきりとした結論は出ていません。 医師はこれらの情報を元に、一人ひとりに最適な麻酔方法を選びます。
手術が終わった後は、すぐにリハビリを開始することがとても大切です。 専門家の指導のもとで筋力を取り戻し、再び自分の足で歩くことを目指します。





