眼球突出

「最近、目が飛び出てきたように感じる」「鏡を見て、なんだか顔の印象が変わった?」といった、ご自身の変化に戸惑っていませんか。その症状は「眼球突出」かもしれません。日本人の平均的な眼球突出度は約13mmですが、17mm以上になるとこの状態が疑われます。

「ただの見た目の問題」と軽く考えてはいけません。実は、眼球突出はバセドウ病に代表される甲状腺の病気や、まれには腫瘍といった、体が発する重要な病気のサインである可能性が高いのです。放置すると視力に影響が及ぶ危険性もあります。

この記事では、眼球突出の様々な原因から、ご自身で確認できる症状のチェックリスト、そして手術以外の最新治療法までを詳しく解説します。あなたの不安を解消し、適切な一歩を踏み出すためにお役立てください。

眼球突出の概要

「最近、目が飛び出てきたように見える」と感じることはありませんか。 その症状は「眼球突出」と呼ばれる状態かもしれません。 これは、眼球、つまり「めだま」が通常の位置よりも、 前に突き出てくる状態を指します。

専門的には、目の奥の骨から黒目の表面までの距離を測り、 「眼球突出度」という数値で客観的に判断します。

  • 日本人の平均的な眼球突出度
  • 約13mm
  • 眼球突出が疑われる目安
  • 眼球突出度が17mm以上の場合
  • 左右の目の出っ張りに2mm以上の差がある場合

眼球が前に出てくるのは、目の奥にある脂肪や筋肉が、 炎症で腫れたり大きくなったりすることが主な原因です。 大切なのは、眼球突出が他の病気のサインである可能性です。

例えば、甲状腺の病気である「甲状腺眼症」と、 まぶたが下がる「重症筋無力症」という病気が、 同時に見つかることも報告されています。 このように、眼球突出は、様々な病気が隠れている、 体からの重要なサインなのです。 見た目の変化に気づいたら、早めに医療機関へ相談しましょう。

眼球突出の種類

眼球突出は、原因によっていくつかの種類に分けられます。 原因を正しく知ることが、適切な治療への第一歩です。 目のどの部分に問題が起きているかで、分類されています。

眼球突出の主な原因は、以下の表のように分類されます。

分類

主な原因

特徴

甲状腺眼症

バセドウ病など甲状腺の病気

・眼球突出で最も多い原因です。<br>・多くは両方の目に症状が出ます。<br>・目の奥の筋肉や脂肪が炎症で腫れます。

腫瘍性

目の奥にできる「できもの」

・片方の目に症状が出ることが多いです。<br>・ゆっくりと進行する場合があります。

炎症・感染性

目の周りの組織の炎症や細菌感染

・急に目が腫れたり、痛んだりします。

外傷性

顔や頭のケガ

・事故による骨折や内出血が原因です。

血管性

目の奥の血管の異常

・心臓の拍動に合わせて目が動くように<br> 見えることがあります。

この中で最も多いのが、甲状腺の病気が原因の甲状腺眼症です。 甲状腺眼症では、眼球が前に出るだけでなく、 まぶたが上につり上がって見える「上眼瞼後退」を伴うことがあります。

この上眼瞼後退は、見た目の問題だけでなく、 目が乾きやすくなるなど機能的な問題も引き起こします。 従来は手術が主な治療法でしたが、近年研究が進んでいます。

例えば、ボツリヌス毒素やステロイドの一種(トリアムシノロン)の注射です。 これらのお薬を組み合わせて注射することで、 まぶたの高さを下げる効果が期待できると報告されています。 手術に代わる、体への負担が少ない選択肢となる可能性があります。

眼球突出の原因

目が前に出てくる眼球突出は、なぜ起こるのでしょうか。 目を収めている骨のくぼみ「眼窩(がんか)」の大きさと、 その中にある眼球や脂肪、筋肉とのバランスが崩れるためです。

眼窩の中身が増えたり、何らかの原因で腫れたりすると、 行き場を失った眼球が前に押し出されてしまうのです。 考えられる原因は様々ですが、主に以下のものが挙げられます。

  • 甲状腺の病気
    成人の眼球突出で、最も多い原因が甲状腺の病気です。 特にバセドウ病では、体を守るはずの免疫システムが、 なぜか目の周りにある脂肪や筋肉を異物と間違えて攻撃します。 その結果、組織が炎症で腫れてしまい、眼球が前に出ます。
  • 炎症や感染症
    目の奥の組織が炎症を起こす「眼窩偽腫瘍(がんかぎしゅよう)」や、 細菌に感染する「眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)」でも、 腫れが生じて眼球が突出します。 特にお子さんの場合は、感染症が原因となることが多いです。
  • 腫瘍(できもの)
    目の奥である眼窩の中に、腫瘍ができることも原因の一つです。 これには、良性のものから悪性のものまで様々な種類があります。
  • まれな全身の病気
    頻度は高くありませんが、全身の病気が原因のこともあります。 例えば、血液のがんの一種である「慢性骨髄単球性白血病」は、 体のあちこちで炎症を起こしやすい特徴があります。 この炎症が目の奥で起こると、急激な眼球突出につながります。 また、「多発性骨髄腫」が最初に頭蓋骨に現れ、 そのサインとして眼球突出や視力障害が起こることもあります。

このように、眼球突出の原因は一つではありません。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門医に相談しましょう。

眼球突出の症状

「目が前に出てきた」という見た目の変化は、氷山の一角かもしれません。 実は、ご自身では気づきにくい症状が隠れていることも多いのです。 これらの症状は、生活の質に大きく影響することもあります。

以下のチェックリストで、当てはまるものがないか確認してみましょう。

  • 目のまわりの変化
  • まぶたがパンパンに腫れる、または赤くなる
  • 白目がいつも血走っているように充血する
  • まぶたが上につり上がり、びっくりしたような目つきに見える
  • まぶたが完全に閉じにくく、少しすき間ができてしまう
  • 目に関する不快な感覚
  • 目が乾く感じや、ゴミが入ったようなゴロゴロゴロした感じがする
  • 理由もなく涙が出やすくなる
  • 目の奥が痛む、または内側から押されるような圧迫感がある
  • 見え方の異常
  • 片目で見ると普通なのに、両目で見ると物が二重にダブって見える
  • 以前より視力が落ちたと感じる

これらの症状の多くは、目の奥で起きている炎症が原因です。 まぶたが閉じにくくなると、目の表面が乾燥して傷つきやすくなります。 また、目を動かす筋肉が腫れると、左右の目の動きがそろわなくなり、 物が二重に見える「複視(ふくし)」という状態になります。

まれですが、血液のがんの一種である「慢性骨髄単球性白血病」が原因で、 急激に目が飛び出し、視力が低下したという報告もあります。 また、「多発性骨髄腫」が頭の骨に最初に現れることで、 強い頭痛とともに眼球突出が起こるケースも知られています。

症状が長く続くと、目の奥の大切な視神経が圧迫され、 視力に後遺症が残る危険性もあります。 見た目の変化だけでなく、気になる症状があれば、 自己判断せず早めに専門の医療機関を受診しましょう。

眼球突出の検査・診断

「目が前に出てきたかも」と感じて病院を訪れた場合、 見た目だけで判断せず、原因を探るための検査を行います。 なぜなら、目の奥に隠れた原因を正確に突き止めることが、 適切な治療への何よりの近道になるからです。 診断は、主に以下の検査を組み合わせて総合的に判断します。

  • 眼球突出度の測定 「ヘルテル眼球突出計」という特別なものさしを使用します。 目のくぼみの骨から、黒目の表面までの距離を精密に測定し、 目がどのくらい前に出ているかを客観的な数値で評価します。
  • 画像検査(CT・MRI) CTやMRIは、体の内部を詳しく見るための「写真」です。 目の奥(眼窩)にある筋肉や脂肪が炎症で腫れていないか、 また、腫瘍(できもの)が隠れていないかを詳細に調べます。
  • 血液検査 眼球突出で最も多い「バセドウ病」の可能性を調べるため、 甲状腺ホルモンの数値を測定します。 しかし、まれに血液の病気が原因のこともあるため注意が必要です。
    例えば、血液のがんの一種である「多発性骨髄腫」が、 頭の骨に最初に現れることで、強い頭痛や視力障害とともに、 眼球突出が起こることが研究で報告されています。
    また、「慢性骨髄単球性白血病」という病気も、 体の中で炎症を起こしやすいという特徴を持っています。 この炎症が目の奥で起こることで、急激な眼球突出や、 視力低下につながることがあるのです。

これらの検査結果を総合的に分析し、眼球突出の根本原因を探ります。 そして、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てていきます。

眼球突出の治療

眼球突出の治療は、原因や症状の段階に合わせて進められます。 治療の目的は、主に以下の3つです。

  • 原因となっている病気そのものを治す
  • 目のつらい症状や炎症を和らげる
  • 見た目の問題や目の働きを改善する

原因に対する根本的な治療

まず基本となるのは、眼球突出を引き起こしている原因への治療です。 例えば、バセドウ病が原因なら甲状腺の機能を整える治療を、 感染症が原因なら、抗菌薬で感染を抑える治療を行います。

目の症状を和らげる治療

原因の治療と並行して、目の症状を改善する治療も重要です。 この治療は、炎症の強さに応じて2つの時期に分けて考えます。

時期

主な治療法

目的

活動期<br>(炎症が強い時期)

・ステロイド療法<br>・放射線療法

目の奥の組織で起きている<br>炎症という「火事」を消し止める

非活動期<br>(炎症が落ち着いた後)

・手術療法<br>・注射による治療

火事が収まった後に残る<br>見た目や機能の問題を整える

手術以外の選択肢も進歩しています

炎症が落ち着いた後、まぶたの形や目の動きを整えるために、 以前は手術が主な選択肢でした。 しかし近年、体への負担が少ない治療法の研究が進んでいます。

特に、バセドウ病などで見られるまぶたのつり上がりに対して、 注射による治療が注目されています。

  • ボツリヌス毒素注射 緊張して硬くなった筋肉をゆるめ、まぶたのつり上がりを和らげます。
  • ステロイド(トリアムシノロン)注射 まぶたの腫れを直接抑える効果が期待できます。

ある研究では、これら2種類の薬を一緒に注射することで、 それぞれ単独で使うよりも効果的にまぶたの位置を下げられた、 という良好な結果が報告されています。 これは、手術以外の有望な選択肢となる可能性を示しています。

一人ひとりの状態に合わせ、これらの治療法を組み合わせることで、 より良い治療結果を目指せるようになってきました。 どの治療が最適か、専門の医師とよく相談して決めましょう。