エドワーズ症候群

3,000人から10,000人に1人の割合で発生し、特に女の子に3〜4倍多く見られるエドワーズ症候群をご存じでしょうか。これは、体の設計図である18番目の染色体が通常より1本多いことで起こる病気です。心臓の病気など重い合併症を伴うことが多く、厳しい病気であることも事実です。

しかし、近年の新生児医療の進歩は目覚ましく、以前よりも長く生きられるお子さんも少しずつ増えています。この記事では、エドワーズ症候群の原因や症状、種類ごとの違い、そして最新の検査や治療法について詳しく解説します。正しい知識を得て、向き合うための第一歩としましょう。

エドワーズ症候群の概要

私たちの体は、体の設計図である「染色体」を持っています。 染色体は通常46本あり、2本1組でペアを作っています。

エドワーズ症候群は、このうち18番目の染色体が、 通常より1本多い3本になることで起こる病気です。 この状態は「18トリソミー」とも呼ばれます。

染色体が1本多い状態を「トリソミー」と呼びます。 トリソミーには他にも種類があり、それぞれ特徴が異なります。

  • ダウン症候群
  • 21番目の染色体が3本あります。
  • パタウ症候群
  • 13番目の染色体が3本あります。

どの番号の染色体が多いかによって、体の特徴や、 合併する病気の種類が変わってくるのが特徴です。

エドワーズ症候群は、3,000人から10,000人に1人の割合で発生し、 男の子よりも女の子に3〜4倍多く見られます。

多くのお子さんが心臓の病気などを生まれつき持っており、 残念ながら、お腹の中や生まれてすぐに亡くなることも少なくありません。

しかし、近年の新生児医療の進歩は目覚ましく、 以前よりも長く生きられるお子さんも少しずつ増えています。

エドワーズ症候群の種類

エドワーズ症候群は、体の細胞の状態によって、 主に3つの種類に分けられます。 どの種類の染色体異常かによって、 お子さんの体の特徴や症状の現れ方が異なります。

体のどの細胞に、どのような染色体の変化があるかで分類されます。

種類

割合

特徴

標準型<br>(フルトリソミー)

約80%

体のすべての細胞で、18番染色体が3本あります。

モザイク型

約10%

正常な細胞と、18番染色体が3本ある細胞が混在しています。

転座型

約5%

18番染色体の一部が、別の番号の染色体に付着しています。

標準型(フルトリソミー)

エドワーズ症候群と診断される方のうち、 最も多いのがこの標準型で、約80%を占めます。

体のすべての細胞において、 18番目の染色体が3本ある状態です。 そのため、エドワーズ症候群に特徴的な症状が、 全身に現れやすい傾向があります。

モザイク型

全体の約10%に見られるタイプです。 体の中に、正常な細胞(18番染色体が2本)と、 異常のある細胞(18番染色体が3本)が混ざっています。

正常な細胞の割合が多いほど、症状は軽くなる傾向があり、 比較的長く生きられるお子さんもいらっしゃいます。

転座型

全体の約5%と、比較的まれなタイプです。 18番染色体の数は2本で変わりありません。 しかし、その一部がちぎれてしまい、 別の番号の染色体にくっついてしまっています。

結果的に18番染色体の情報量が多くなるため、症状が現れます。

このように、エドワーズ症候群にはいくつかの種類があります。 どのタイプかによって、現れる症状やその程度は様々です。 お子さんの体の状態を正しく理解し、 今後の見通しを立てるためにも、 どのタイプかを正確に診断することが非常に重要になります。

エドワーズ症候群の原因

エドワーズ症候群は、体の設計図である「染色体」の 数の変化によって起こる病気です。

多くの場合、この変化は卵子や精子が作られる過程で、 偶然に起こるものです。 細胞が分裂する時に染色体がうまく分かれず、 結果として18番目の染色体が1本多くなってしまいます。

決して、お父さんやお母さんのせいではありません。 誰にでも起こりうる、偶然の出来事なのです。

ただ、お母さんの年齢が高くなるにつれて、 発生する確率が少し高くなることが知られています。 これは卵子の状態が年齢と共に少しずつ変化し、 細胞分裂がうまくいかない可能性が上がることが理由です。

このような染色体が1本多い状態は「トリソミー」と呼ばれます。 ダウン症候群なども同じトリソミーという染色体の変化です。 どの番号の染色体が多いかによって、 その子に現れる体の特徴が変わってきます。

まれに「転座型」というタイプでは、 ご両親のどちらかが見た目や健康には影響のない、 染色体の構造の変化を持っていることが原因の場合もあります。 この場合は再発の可能性も変わるため、 遺伝カウンセリングで詳しく相談することが大切です。

エドワーズ症候群の症状

エドワーズ症候群では、18番染色体が1本多いことで、 体の設計図に通常より多くの情報が書き込まれます。 その結果、体の発達に影響が及び、 全身にさまざまな特徴的な症状が現れます。

研究においても、エドワーズ症候群のようなトリソミーは、 生まれつきの体の特徴や合併症など、 多様で特有の症状を示すことが知られています。

症状は、見た目にわかる特徴と、 体の内部に起こる合併症に大きく分けられます。

見た目にわかる主な特徴

生まれてくるときに、体重が2,200グラム以下と小さいことが多いです。 その他、お顔や手足などに、以下のような特徴が見られます。

  • 頭やお顔 後ろの頭が少し突き出ていたり、あごが小さかったりします。 また、耳の位置が通常より低いことも特徴です。
  • 手足 人差し指が中指に、小指が薬指に重なるように、 手をぎゅっと握っていることが多く見られます。 足の裏が、ゆりかごの底のように丸みを帯びています。 (揺り椅子状足底)

体の内部の主な症状(合併症)

体の内部の臓器にも、注意が必要な症状が見られることがあります。

  • 心臓の病気(先天性心疾患) 9割以上のお子さんに見られる、最も多い合併症です。 心臓の部屋を分ける壁に穴が開いている「心室中隔欠損症」など、 命に関わることもあるため、特に注意深い管理が必要です。
  • その他の合併症 お腹の筋肉が弱かったり、腎臓に病気が見つかったり、 男の子では精巣がお腹の中にとどまることもあります。

これらの症状の現れ方や程度には、大きな個人差があります。 すべてのお子さんに、同じ症状が当てはまるわけではありません。 お子さん一人ひとりの状態を正しく把握することが大切です。

エドワーズ症候群の検査・診断

エドワーズ症候群の診断は、赤ちゃんがお腹にいる時と、 生まれた後の両方で行うことができます。 どちらの時期でも、最終的には赤ちゃんの染色体を直接調べ、 診断をはっきりと確定させます。

赤ちゃんがお腹にいる時の検査(出生前検査)

お腹の赤ちゃんの状態を知るための検査です。 検査は、大きく2つのステップに分かれています。

まずは「可能性」を調べる検査を行い、 必要に応じて「確定」させるための検査に進みます。

可能性を調べる検査(スクリーニング検査)

  • 超音波検査(エコー検査) 妊婦健診で行う検査です。 赤ちゃんの体の特徴や心臓の様子、羊水の量などを確認し、 エドワーズ症候群の可能性に気づくきっかけになります。
  • NIPT(新型出生前診断) お母さんから採った血液で調べる検査です。 赤ちゃんへの負担がなく、染色体の病気の可能性を調べます。

はっきりさせる検査(確定的検査)

スクリーニング検査で可能性が高いと判断された場合などに行います。

  • 絨毛検査・羊水検査 お母さんのお腹に細い針を刺して行います。 胎盤の一部(絨毛)や羊水を少しだけ採り、 そこに含まれる赤ちゃんの細胞の染色体を直接調べます。 この検査で、18番染色体が3本あることを確認し、診断を確定します。

赤ちゃんが生まれた後の診断

生まれた赤ちゃんの体に、エドワーズ症候群に見られる いくつかの特徴があった場合に、この病気が疑われます。

診断をはっきりさせるためには、赤ちゃんの血液を少しだけ採り、 「染色体検査」という検査を行います。 この検査で18番目の染色体が3本あると確認されると、 エドワーズ症候群であるという診断が確定します。

これらの検査は、お子さんの体の状態を正確に知るために大切です。 診断を確定させることは、これからのお子さんに合った、 最適な医療やケアを考えていくための第一歩となります。

エドワワーズ症候群の治療

エドワーズ症候群は染色体の数の変化が原因です。 そのため、染色体の状態を元に戻す根本的な治療法は、 残念ながら今のところありません。

治療の目的は、現れている症状を和らげることです。 また、赤ちゃんの生活の質をできるだけ高めることになります。 これを「対症療法」と呼びます。

治療の方針は、赤ちゃんの体の状態を第一に考えます。 そして、ご家族の希望を大切にしながら、 医師や専門家チームと一緒に丁寧に決めていきます。

主な治療やケア

エドワーズ症候群のお子さんは、 体に様々な合併症を持って生まれてくることが多いです。 特に心臓や呼吸、栄養に関するケアが中心となります。

研究でも、トリソミーは多様な症状を示すとされます。 そのため、一人ひとりに合わせた治療計画が欠かせません。

対象となる症状

具体的な治療・ケアの例

心臓の病気

お薬の治療や、心臓の手術があります。<br>手術は赤ちゃんの体力を考えて慎重に判断します。

呼吸の問題

呼吸を助けるために、人工呼吸器を使うことがあります。

栄養の問題

口からミルクを飲む力が弱い場合、<br>チューブで栄養を補給します(経管栄養)。

感染症

感染症にかかりやすいため、予防や治療を行います。

体の動きや発達

体の動きを支えるためのリハビリを行います。

近年、新生児集中治療室(NICU)の医療は進歩しています。 以前より長く生きられるお子さんも増えてきました。 治療について悩んだ時は、専門家に相談することも大切です。