致死率が平均約50%、ウイルスの種類によっては最大で90%にも達する、極めて危険な感染症「エボラウイルス病」。かつて「エボラ出血熱」として知られていましたが、必ずしも出血を伴わないことから現在は名称が改められています。その恐ろしさから、世界各国で厳重な警戒態勢が敷かれています。
1976年にアフリカで初めて確認されたこの病気は、日本でも感染症法において最も警戒レベルの高い「1類感染症」に指定されています。この記事では、エボラウイルス病の恐ろしい症状や感染原因、検査方法から最新の治療法までを詳しく解説します。正しい知識を持つことが、万が一の事態に備える第一歩となります。
エボラウイルス病の概要
エボラウイルス病は、エボラウイルスが原因で起こる、非常に危険な感染症です。 1976年にアフリカで初めてその存在が確認されました。
以前は「エボラ出血熱」という名前で知られていました。 しかし、必ずしも出血がみられるわけではないことがわかり、現在は「エボラウイルス病」と呼ばれています。
この病気は、かかった場合の致死率が平均で約50%と、非常に高いことが特徴です。 ただし、ウイルスの種類や治療環境によって、その割合は25%から90%と大きく変わります。
エボラウイルス病のように、人から人へうつりやすく重い症状を引き起こす病気は「高病原性感染症」と呼ばれます。 世界各国で、感染が広がらないよう厳しい対策が取られています。
例えば英国では、専門の施設で患者さんを治療する体制が整っています。 1962年から2023年の間に、4人のエボラウイルス病患者さんが、この専門施設で治療を受けました。
日本でも、この病気は感染症法という法律で最も警戒が必要な「1類感染症」に指定されています。 国内で発生した場合に備えて、厳重な体制が敷かれています。
エボラウイルス病の種類
エボラウイルス病と一言でいっても、原因のウイルスにはいくつかの種類があります。 ウイルスは「フィロウイルス科」という大きなグループに属しています。 その中の「エボラウイルス属」というウイルスが、この病気を引き起こすのです。
現在、主に6つの種類が知られており、それぞれ特徴が異なります。
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ウイルスの種類
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主な特徴
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ザイールエボラウイルス
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過去に西アフリカで大流行し、最も致死率が高い種類です。
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スーダンエボラウイルス
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ザイール型の次に、大きな流行が報告されています。
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ブンディブギョエボラウイルス
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2007年にウガンダで初めて確認された種類です。
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タイフォレストエボラウイルス
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人への感染が確認された例はごくわずかです。
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レストンエボラウイルス
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サルなどには病気を起こしますが、人には重い症状を引き起こさないとされています。
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ボンバリエボラウイルス
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2018年にシエラレオネで発見された新しい種類です。
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これまでの研究は、大規模な流行を起こしたザイールエボラウイルスに集中しています。 あるシステマティックレビューでも、他の種類に関する研究が不足していると指摘されました。 どのウイルスが流行しても対応できるよう、さらなる研究が求められています。
種類の違いは、ワクチンや治療法の開発においても非常に重要です。 しかし、どの種類であっても危険な「高病原性感染症」として厳重に管理されます。 英国では1962年から2023年の間に4例のエボラウイルス病患者が専門施設で治療を受けました。 このように、種類に関わらず特別な対策が取られています。
エボラウイルス病の原因
エボラウイルス病は、エボラウイルスが体の中に入ることで起こる病気です。 このウイルスは、もともとアフリカの熱帯雨林にいる動物に潜んでいます。 特にフルーツコウモリが、ウイルスを普段から持っていると考えられています。
動物から人への感染 森の中で、ウイルスを持つ動物に人が触れることが最初のきっかけとなります。
- 感染源となる動物の例 フルーツコウモリ、チンパンジー、ゴリラなど これらの動物の血液や分泌物などに、人が直接触れることで感染します。
人から人への感染 一度人に感染すると、今度は人から人へと病気が広がることがあります。 感染した人の体液や、それが付いた物に触れることが主な原因です。
- 直接触れると危険なもの 血液、吐いたもの、おしっこやうんちなど
- ウイルスで汚染された物 使った注射針やシーツ、衣服など ウイルスは皮膚の小さな傷や、目・口・鼻の粘膜から体の中に侵入します。
これまでの研究は、西アフリカで大流行したザイールエボラウイルスに集中しています。 そのため他の種類のエボラウイルスについては、まだ研究が不足しているのが現状です。
重要なのは、この病気は空気感染はしないということです。 咳やくしゃみで近くにいる人にうつる心配はありません。 正しい知識を持つことが、不要な不安をなくすために大切です。
エボラウイルス病の症状
エボラウイルスに感染しても、すぐには症状は現れません。 ウイルスが体の中に隠れている期間は2日から21日ほどです。 この「潜伏期間」中は、他の人に病気をうつす心配はありません。
潜伏期間が終わると、インフルエンザのように突然症状が出始めます。 これは、体の中でウイルスが増え、体を攻撃し始めたサインです。
主な初期症状
- 突然の高熱 38度以上の熱が急に出て、体温のコントロールが難しくなります。
- 強い倦怠感(体のだるさ) 体が鉛のように重く感じ、起き上がることさえつらくなります。
- 筋肉痛、頭痛 全身の筋肉や関節、頭に強い痛みを感じます。
- のどの痛み ものを飲み込むのが困難なほどの、のどの痛みが出ることがあります。
これらの初期症状に続いて、病気が進むとさらに重い症状が現れます。
- 嘔吐や下痢
- お腹の痛み
- 皮膚の発疹(赤いぶつぶつ)
- 内外の出血(歯ぐきからの出血や、血が混じった便など)
エボラウイルス病は、体だけでなく心にも大きな影響を及ぼします。 病気の重さからくる強い恐怖や不安は、ご本人やご家族にとって大きな心の負担となります。 また、誤った情報によって、周りの人から避けられてしまうのではないかという心配も、心の健康を脅かすことが指摘されています。
症状の出方には個人差がありますが、流行地への滞在歴があり、少しでも気になる症状があれば、ためらわずに医療機関へ相談することが何よりも大切です。
エボラウイルス病の検査・診断
エボラウイルス病の初期症状は、突然の高熱やだるさ、頭痛です。 これらはインフルエンザやマラリアなど、他の病気とよく似ています。 そのため、症状を聞いただけでは医師でも見分けることは困難です。 正確な診断のためには、専門的な検査が絶対に欠かせません。
英国の研究報告でも、迅速な特定と適切な管理が重要とされます。 早く感染がわかれば、専門施設で治療でき、感染拡大も防げます。 実際に英国では、専門の施設で患者さんを治療する体制があります。 診断が遅れると、知らないうちに感染が広がる危険もあるのです。
主な検査方法
診断は、主に血液などを使い、ウイルスの存在を確かめます。 世界保健機関(WHO)も、いくつかの検査方法を推奨しています。
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検査の種類
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どんな検査?
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核酸増幅検査(RT-PCR法)
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ウイルスの遺伝子(体の設計図)を探す検査です。感染しているかをほぼ確実に診断できます。
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抗原検出検査
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ウイルスが持つ特有の目印(抗原)を見つける検査です。専門の機械がない場所でも比較的早く結果がわかります。
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検査の進め方
検査で使う血液などの検体は、ウイルスを含み非常に危険です。 特別な訓練を受けた専門家が、厳重な安全対策を施した検査室で扱います。 万が一、流行地域への渡航後に疑わしい症状が出た場合、直接病院へ行かずに、まずはお住まいの地域の保健所に電話で連絡してください。 ご自身と周りの大切な人を守るために、正しい行動をお願いします。
エボラウイルス病の治療
現在、エボラウイルスを直接攻撃する特効薬はまだありません。 しかし、治療法がまったくないわけではなく、希望はあります。 治療は、患者さんの体を支え、回復を助けることが中心になります。
治療の主役は、つらい症状を和らげる「対症療法」です。 脱水を防ぐための点滴や、高熱や痛みを抑える薬を使います。 体の負担を軽くし、ご自身の免疫力がウイルスに勝つ手助けをします。 この治療を早く始めることが、回復の可能性を高めるために重要です。
また、世界中で新しい薬や治療法の開発が急ピッチで進んでいます。 血液を使った治療や、体の免疫の働きを利用した治療法などです。 いつか、この病気を直接治せる薬が登場する日が期待されています。
病気から回復した後も、後遺症が残ってしまうことがあります。 例えば、視力が落ちる「白内障」はその一つです。 ある研究では、エボラから回復した方の白内障を手術しました。 その結果、視力が長期的に改善したことが報告されています。 さらに、手術で取り除いた目の組織からはウイルスが見つかりませんでした。 これは、後遺症に対する治療も安全に行える可能性を示しています。