透析アミロイドーシス

長年透析をがんばっている方で、「最近、手や指がしびれる」「肩や膝が痛む」といったお悩みはありませんか。「もう年のせいだから」と諦めてしまいがちですが、その不調は「透析アミロイドーシス」という合併症のサインかもしれません。

この病気は、透析で取り除ききれない老廃物が骨や関節にたまることで起こります。ある調査では、透析期間が5年長くなるごとに発症の可能性が約2倍になるとも報告されており、長く透析を続ける方にとって決して他人事ではないのです。

しかし、近年では原因物質を効率よく取り除く治療法も進歩しています。この記事では、つらい症状の正体から最新の治療法までを詳しく解説します。生活の質を守るための大切な情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。

透析アミロイドーシスの概要

長い間、透析治療をがんばっている方に起こりやすい合併症が、透析アミロイドーシスです。 これは「アミロイド」と呼ばれる、体にとって不要なゴミのような異常なたんぱく質が原因です。 このゴミが、体のあちこちにたまってしまうことで、さまざまな症状を引き起こします。

アミロイドの元になるのは、「β2-ミクログロブリン」という、たんぱく質の一種です。 透析治療では血液をきれいにしますが、この物質は少し大きいため、フィルターで取り除きにくいのです。 そのため、長い年月をかけて少しずつ体の中に蓄積されてしまいます。

たまったアミロイドは、特に骨や関節に影響を与えやすく、以下のような症状の原因となることがあります。

  • 手や指のしびれ、痛み
  • 肩やひざなど、複数の関節の痛み
  • 指がスムーズに曲げ伸ばしできなくなる

しかし、この病気を防ぐための治療も進んでいます。 例えば「オンライン血液透析濾過(HDF)」という治療法は、このアミロイドの元を効率よく取り除けます。 日本やヨーロッパでは広く行われており、透析アミロイドーシスの予防に役立つことが報告されています。

透析アミロイドーシスの種類

アミロイドーシスという病気は、ゴミ(アミロイド)が体のどこにたまるかによって、大きく2つのタイプに分けられます。 ゴミがたまる範囲で、病気の広がり方が変わります。

種類

特徴

全身性アミロイドーシス

ゴミが心臓や腎臓、神経など、全身のさまざまな場所にたまるタイプです。

限局性アミロイドーシス

ゴミが皮膚やのどなど、体の一部分だけに限定してにたまるタイプです。

透析アミロイドーシスは、このうち全身性アミロイドーシスに分類されます。 原因となるβ2-ミクログロブリンは血液の中にあるため、血液の流れに乗って全身に運ばれてしまうのです。

そのため、最初は骨や関節の症状が中心ですが、進行すると血管など全身に影響が及ぶ可能性があります。 だからこそ、原因となるゴミを効率よく取り除く治療法を選ぶことが、将来の健康のために非常に重要です。

近年、ヨーロッパや日本で広く行われている「オンライン血液透析濾過(OL-HDF)」という治療法があります。 この方法は、透析アミロイドーシスの予防だけでなく、透析中の血圧低下を防ぐ効果も報告されています。

透析アミロイドーシスの原因

透析アミロイドーシスの原因は、まだ全てがわかっていません。 しかし、「β2-マイクログロブリン」というたんぱく質が、深く関係していることが知られています。

健康な人の腎臓は、この物質を体の外へ捨てる働きをします。 しかし、透析治療だけでは、このゴミを完全には取り除けません。 そのため、長い年月をかけて体の中に少しずつ蓄積してしまいます。

たまったゴミは、体の中で起こる「炎症」という火事のようなものにより、性質が変わることがあります。 これが「アミロイド」という、より厄介なゴミに変化するのです。 このアミロイドが骨や関節にくっつき、痛みを引き起こします。

特に、以下のような場合に発症しやすくなると考えられています。

  • 透析を受けている期間が長いこと 特に10年以上の透析歴がある方は注意が必要です。 ある調査では、透析期間が5年長くなるごとに、発症する可能性が約2倍になると報告されています。
  • 体に合わない透析の道具 ゴミを取り除く性能が低い膜や、純度が低い透析液を使っていると、ゴミがたまりやすくなります。
  • ご自身の腎臓の働き おしっこがほとんど出ないなど、ご自身の腎臓の機能がほぼ残っていない場合も、リスクが高まります。

だからこそ、原因となるゴミを効率よく取り除く治療が大切です。 ヨーロッパや日本では、ゴミや炎症を減らす効果が報告されている「オンライン血液透析濾過(OL-HDF)」という治療が広く行われています。

透析アミロイドーシスの症状

透析アミロイドーシスは、体のゴミ(アミロイド)が骨や関節にたまることで、さまざまなサインが現れます。 症状はゆっくりと進むことが多く、年のせいだと思い見過ごされてしまうことも少なくありません。

ご自身の体で気になることがないか、以下のリストで確認してみましょう。 これらの症状は、生活の質(QOL)を大きく下げる原因となるため、早期発見が大切です。

【透析アミロイドーシスの主な症状】

  • 手や指のしびれ、痛み(手根管症候群) 親指から中指にかけて、しびれや痛みが出ます。 特に朝方や夜中に症状が強くなり、手を振ると少し楽になるのが特徴です。
  • 関節の痛み(多関節痛) 肩やひざ、股関節など、体の複数の関節に痛みが生じます。 体を動かしていない安静時にも痛むことがあります。
  • 指の動きにくさ(弾撥指:ばねゆび) 指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。 指を伸ばそうとすると、カクンとばねのように跳ねる現象が起こります。
  • 首や腰の痛み(破壊性脊椎関節症) 背骨にアミロイドがたまり、神経が圧迫されることで生じます。 首や腰の痛みのほか、手足のしびれを引き起こすこともあります。
  • 骨がもろくなる(骨嚢胞:こつのうほう) 骨の中に空洞ができてしまい、骨が弱くなります。 わずかな衝撃で骨折しやすくなるため、注意が必要です。

これらのつらい症状は、生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。 しかし、近年では治療法も進歩しており、QOLの改善をもたらす可能性のある治療法も報告されています。 気になる症状があれば我慢せず、早めに主治医や透析施設のスタッフに相談しましょう。

透析アミロイドーシスの検査・診断

長年透析をがんばっている方の手足のしびれや関節の痛みは、年のせいとは限りません。 透析アミロイドーシスのサインかもしれないため、詳しく調べるための検査を行います。

診断は、問診で症状をしっかりお聞きしたうえで、以下の検査結果を総合的にみて判断します。 どの検査も、これからの治療方針を決めるための大切なステップです。

【透析アミロイドーシスの主な検査】

  • 画像検査(レントゲン・CT・MRI) 骨や関節の中を写真に撮って、詳しく調べる検査です。 体のゴミ(アミロイド)がたまってできた骨の空洞(骨嚢胞)や、関節の変形がないかを確認します。
  • 血液検査 血液を少し採って、ゴミの元になる「β2-マイクログロブリン」という物質の量を測ります。 また、体の中で炎症という火事が起きていないかや、他の病気の可能性がないかも一緒に調べます。
  • 神経の検査(神経伝導速度検査) 手のしびれ(手根管症候群)が疑われる時に行います。 神経にとても弱い電気を流し、その伝わる速さを測定します。 これにより、ゴミで神経が圧迫されていないかを確認します。
  • 組織の検査(生検) 診断をはっきりさせるための最終確認の検査です。 ゴミがたまっていると考えられる部分の組織を、ほんの少しだけ取ります。 その組織を顕微鏡で見て、アミロイドがいることを直接確認します。

これらの検査で早く診断を確定させることが、症状の悪化を防ぐことにつながります。 近年では、原因物質を効率よく取り除く治療も報告されており、早期発見が生活の質を守る鍵となります。

透析アミロイドーシスの治療

今のところ、この病気を完全に治す特効薬はありません。 しかし、つらい症状を和らげたり、病気の進行を遅らせたりするための治療法は進歩しています。

治療の目的は、大きく分けて2つあります。 一つは「守りの治療」で、今ある痛みを軽くすることです。 もう一つは「攻めの治療」で、病気の原因に立ち向かい、これ以上悪くならないようにすることです。

1. 症状を和らげる「守りの治療」 関節の痛みやしびれなど、日常生活でのつらさを軽くするための治療です。 生活の質を保つためにとても大切です。

  • お薬での治療 痛みや炎症を抑えるお薬を使って、症状を和らげます。
  • 手術での治療 指のしびれがひどい場合や、背骨の変形で痛みが強い時に行います。
  • リハビリ 関節が硬くなるのを防ぎ、動きをスムーズにするための運動です。

2. 進行を抑える「攻めの治療」 病気の原因であるゴミ(β2-ミクログロブリン)を、体からしっかり取り除くことが重要です。 これにより、病気の進行を食い止めることを目指します。

  • 高性能な透析の道具を使う ゴミをより多く取り除ける、性能の高いフィルターを選びます。
  • オンライン血液透析濾過(HDF) 近年注目されている、ゴミを効率よく洗い流す特別な透析法です。 ヨーロッパや日本では広く行われており、透析アミロイドーシスの予防に役立つと報告されています。 ある研究では、この治療法が元気に過ごせる時間を長くする可能性も示されています。

3. 根本的な治療

  • 腎移植 新しい腎臓が働くことで透析が不要になります。 そのため、病気の治療と予防の両方で、最も効果が期待できる方法です。

どの治療法を選ぶかは、お一人おひとりの体の状態によって異なります。 主治医とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけていきましょう。