虫歯や事故などで歯を失ったとき、食事や会話を支えてくれるのが「義歯(入れ歯)」です。しかし、「一度作ればずっと安心」というわけではないことをご存知でしょうか。実は、丈夫なジルコニアという素材を使った最新のインプラント義歯でさえ、5年後には約3割の人に作り直しなどのトラブルが起きているというデータもあるのです。
なぜ義歯は合わなくなったり、壊れたりするのでしょうか。この記事では、義歯の種類ごとの特徴から、長持ちさせるためのポイントまでを詳しく解説します。ご自身に最適な治療法を見つけ、いつまでも快適な毎日を送るためのヒントがここにあります。
義歯の概要
義歯(ぎし)とは、失った歯の代わりになる人工の歯です。 一般的には「入れ歯」と呼ばれ、なじみ深いかもしれません。 虫歯や歯周病、あるいは事故などで歯を失ったときに使います。
歯が抜けたままの状態を放置すると、様々な問題が起こります。 義歯には、これらの問題を解決する大切な役割があります。 健康で快適な生活を送るための、重要なパートナーなのです。
義歯の主な役割は、以下の3つです。
- しっかり噛めるようにする 食べ物をきちんと噛み砕けるようになり、消化を助けます。 栄養をしっかり摂れるようになり、食事も楽しめます。
- はっきり話せるようにする 歯がないと隙間から空気が漏れて、発音がしにくくなります。 義歯を使うことで、言葉がはっきりして会話がスムーズになります。
- 顔の形を整える 歯がなくなると、頬や口元が内側に落ち込んで見えがちです。 義歯が内側から支えることで、自然で若々しい顔つきを保ちます。
近年では、ジルコニアという丈夫な素材が注目されています。 見た目も白く、天然の歯に近い仕上がりが期待できます。 ある研究では、前歯を補う固定式の義歯(ブリッジ)の場合、3年から10年の期間で8割以上の人が問題なく使用できたと報告されています。
また、インプラントで支える総入れ歯にもジルコニアが使われます。 骨組みが壊れる可能性はゼロではありませんが、5年後も約7割の人が使い続けられているというデータもあり、従来の入れ歯より長持ちする可能性が示唆されています。
義歯の種類
失った歯を補う義歯には、いくつかの種類があります。 お口の中の状態や生活スタイルに合わせて、最適なものを選びます。 義歯は、大きく次の3つのタイプに分けられます。
|
種類
|
特徴
|
|
入れ歯(取り外し式)
|
ご自身で取り外しができるタイプです。部分入れ歯から総入れ歯まで幅広く対応できます。
|
|
ブリッジ(固定式)
|
失った歯の両隣の歯を土台にし、橋をかけるように固定します。ご自身での取り外しはできません。
|
|
インプラント(固定式)
|
あごの骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付けます。こちらも固定式です。
|
これらの義歯には、保険が使えるプラスチック製のもののほかに、 金属やセラミックなど、様々な素材が使われます。 中でも「ジルコニア」は、白くて丈夫なため近年注目されています。
ジルコニアを使った義歯の研究も進んでいます。 例えば、前歯をジルコニアのブリッジで補う治療法があります。 ある研究では、3年から10年後も8割以上の人が問題なく使用できています。 接着が剥がれても、多くは付け直すことが可能と報告されています。
一方で、インプラントとジルコニアで全ての歯を補う方法もあります。 この場合、骨組みの強度が非常に重要です。 強い力がかかると、骨組みが壊れる可能性もゼロではありません。 5年後に問題なく使用できている割合が約72.5%という研究もあります。
このように、義歯の種類や素材によって特徴は様々です。 それぞれの利点や注意点を理解したうえで、 歯科医師と十分に相談して治療法を決めていきましょう。
義歯の原因
義歯が必要になるのは、虫歯や歯周病、事故で歯を失った時です。 しかし、一度作った義歯も、永遠に使えるわけではありません。 合わなくなったり、壊れたりして作り直しが必要になることがあります。
その原因は、大きく分けて次の3つが考えられます。
- 毎日使うことで、プラスチックの部分がすり減ったりします。
- 強い力がかかると、ひびが入ったり割れたりすることもあります。
- 丈夫なジルコニアという素材を使った義歯でも、壊れる可能性はあります。
- ある研究では、インプラントで支えるジルコニア製の総入れ歯でも、
- 5年後には約7割の人しか問題なく使えていないと報告されています。
- これは主に、義歯の骨組み部分が壊れてしまうことが原因です。
- 噛む力や義歯の設計などが、破損に関係すると考えられています。
- 歯を失った部分の歯ぐきやあごの骨は、時間とともに痩せていきます。
- そのため、最初はぴったり合っていた義歯も、だんだん隙間ができます。
- この隙間が、がたつきや痛みを引き起こす原因になるのです。
- あごの骨が非常に少ない場合でも、特殊なインプラントで義歯を支える
- 治療法がありますが、治療後に小さなトラブルが起こる可能性も
- ゼロではないと報告されています。
- 部分入れ歯の場合、バネをかけている健康な歯がとても大切です。
- この土台となる歯が虫歯や歯周病になると、
- 義歯をしっかり支えられなくなってしまいます。
これらの原因を防ぎ、義歯を長く快適に使うためには、 歯科医院での定期的なメンテナンスが非常に重要です。
義歯の症状
義歯(入れ歯)は、失った歯の代わりになる頼もしい味方です。 しかしお口の中は、時間とともに少しずつ変化していきます。 そのため、最初はぴったりだった義歯も合わなくなることがあります。 「あれ?なんだか変だな」と感じるサインを見逃さないことが大切です。
合わなくなった義歯を使い続けると、様々な問題が起こります。 次のような症状がないか、チェックしてみましょう。
- 痛みや傷ができる 歯ぐきに義歯が強く当たり、赤くなったり傷ついたりします。 ひどくなると、つらい口内炎ができてしまうこともあります。
- ゆるい、ガタガタする 食事中や話しているときに、義歯が浮き上がったり外れそうになります。 安定しないため、安心して食事や会話を楽しめなくなります。
- 食べ物が噛みにくい 硬いものが噛めない、食べ物が細かくならないと感じます。 義歯と歯ぐきの間に、食べ物のかすが挟まりやすくなります。
- 話しにくい 歯の隙間から空気が漏れるような感じがして、特に「サ行」や 「タ行」の音がはっきりと発音しにくくなります。
インプラントで支える固定式の義歯も、ずっと使えるわけではありません。 ある研究では、ジルコニアという丈夫な素材で作られた インプラント義歯の5年後のデータが報告されています。 それによると、約72.5%の人が問題なく使い続けられていました。
これは、5年後には約3割近くの人の義歯に、 作り直しなどの何らかのトラブルが起きたことを意味します。 最も多い原因は、義歯の骨組み部分(フレームワーク)の破損でした。 強い噛む力などが原因で、丈夫な素材でも壊れることがあるのです。
また、あごの骨が非常に少ない場合に行う特殊なインプラント治療では、 大きなトラブルは少ないものの、小さな不具合が起こる可能性は ゼロではないと報告されています。
このような症状を感じたら、決してご自身で調整しないでください。 合わない義歯は、お口の中を傷つけるだけではありません。 残っている歯やあごの骨にも悪い影響を与えてしまいます。 少しでも気になったら、すぐに歯科医師に相談しましょう。
義歯の検査・診断
自分にぴったりの義歯を作るためには、精密な検査と診断が欠かせません。 これは、オーダーメイドの服を作るための採寸と同じくらい大切です。 お口の状態を正確に知ることで、快適で長持ちする義歯が作れます。
検査では、主に次のようなことを詳しく調べます。
- お口の中のチェック 虫歯や歯周病がないか、残っている歯や歯ぐきの状態を見ます。 また、舌や頬の粘膜に傷や異常がないかも確認します。
- レントゲン撮影 目では見えない、あごの骨の量や密度を撮影して調べます。 歯の根の状態も確認できる、とても重要な検査です。
- 噛み合わせやあごの動きの確認 普段どのように噛んでいるか、あごがスムーズに動くかを見ます。 力のバランスを調べて、義歯の設計に役立てます。
インプラントで義歯を支える場合は、さらに詳しい検査が必要です。 あごの骨が非常に少ない方でも、頬骨や鼻の近くの管(鼻口蓋管)を 利用する治療法が研究されており、安全性を確認するために CT撮影などでより精密に骨の状態を調べることがあります。
検査結果をもとに、最適な義歯の形を診断(設計)していきます。 例えば、丈夫なジルコニアという素材で作るインプラント義歯も、 設計を誤ると壊れることがあります。 ある研究では、5年後も問題なく使えたのは約72.5%で、 失敗の主な原因は義歯の骨組み(フレームワーク)の破損でした。
このようなトラブルを防ぐため、診断の段階で噛む力などを計算し、 一人ひとりに合わせて壊れにくい設計を考えることが重要です。 検査と診断の結果、そして患者さんのご希望を丁寧にお聞きした上で、 最適な治療計画を一緒に決めていきましょう。
義歯の治療
失った歯を補う治療は、見た目や発音を取り戻すだけではありません。 しっかり噛んで食事を楽しむ、健康な毎日を送るための大切な一歩です。 治療はまず、お口の状態を詳しく知ることから始まります。 そして、一人ひとりの希望に合わせた計画を一緒に立てていきます。
主な治療の流れ
義歯の治療は、一般的に次のステップで進められます。
- 診察と治療計画 レントゲンなどでお口の中を調べ、最適な治療法を考えます。
- お口の中の準備 残っている歯の治療や、精密な型取りなどを行います。
- 義歯の製作 歯科技工士が、あなた専用の義歯を丁寧に作ります。
- 装着と調整 完成した義歯を装着し、痛みや違和感がないか細かく調整します。
義歯の種類とそれぞれの特徴
治療法にはいくつかの選択肢があり、特徴や注意点が異なります。
|
治療法
|
特徴
|
|
ブリッジ
|
失った歯の両隣の歯を土台にし、橋をかけるように固定します。
特に前歯では、ジルコニアという丈夫で自然な素材が使われます。
ある研究では、3年から10年後も8割以上の人が問題なく使えています。
|
|
インプラント
|
あごの骨に人工の歯根を埋め込み、その上に歯を固定する方法です。
骨が少ない場合でも、頬骨などを利用した特殊な方法もあります。
ジルコニア製のインプラント義歯の5年後のデータでは、
約72.5%の人が問題なく使用できたと報告されています。
しかし、強い力で土台が壊れる可能性もゼロではありません。
|
|
入れ歯
|
ご自身で取り外しができるタイプの義歯です。
部分的に歯を補う「部分入れ歯」と、
すべての歯を補う「総入れ歯」があります。
|
どの治療法にも、良い点と注意すべき点があります。 また、治療が終わった後のケアは、お口の将来を左右するほど重要です。
実は、歯磨きなどの丁寧なお手入れは、お口の健康だけにとどまりません。 認知機能の低下をゆるやかにするなど、全身の健康にも 良い影響を与える可能性が研究で示されています。 あなたに最適な治療法を一緒に見つけるために、まずはご相談ください。