群発頭痛
「自殺頭痛」という異名を持つ、群発頭痛をご存じでしょうか。片方の目の奥をえぐられるような、耐えがたいほどの激痛が突然襲いかかるこの病気は、あまりの苦痛にじっとしていられなくなるほどです。
この頭痛には、1〜2ヶ月ほど毎日決まった時間帯に激痛が集中する「群発期」と、痛みが嘘のようになくなる「寛解期」を繰り返すという奇妙な特徴があります。有病率は3%未満とまれですが、特に20代から40代の男性に多く発症することが報告されています。
なぜこのような奇妙な周期で激痛が起こるのでしょうか。この記事では、体内時計との関連が指摘される群発頭痛の原因から、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、つらい痛みを乗り越えるための一歩にしてください。
群発頭痛の概要
群発頭痛は「自殺頭痛」という呼び名があるほど、きわめて強い痛みが特徴の病気です。
片方の目の奥やその周りに、えぐられるような激しい痛みが突然起こります。痛みは数分でピークに達し、あまりの激痛にじっとできず、歩き回ったり頭を抱えたりします。
この頭痛には、痛みが起こる期間と起こらない期間を繰り返す、という大きな特徴があります。
- 群発期 1〜2ヶ月ほど、ほぼ毎日、決まった時間帯に激しい痛みが集中して起こる期間
- 寛解期 痛みがうそのように全く起こらなくなる期間
この特徴から「群発」という名前がついています。
同じように片側に痛みが出る片頭痛と似ていますが、研究により、痛みが起こる脳の仕組みは異なるとわかっています。特に群発頭痛では、体のリズムを調整する「視床下部」という場所の活動が関係すると考えられています。
比較的まれな病気で、アジア人では有病率が3%未満と報告されています。20代から40代の男性に発症することが多いのも特徴の一つです。
群発頭痛の種類
群発頭痛は、痛みが起こる時期のパターンによって、主に2つの種類に分けられます。
自分がどちらのタイプなのかを知ることは、今後の治療計画を立てる上でとても重要です。
反復性(はんぷくせい)群発頭痛
「群発期」と呼ばれる、激しい頭痛が毎日のように起こる期間があります。
この痛みの期間は、数週間から数ヶ月ほど続きます。
そして群発期が終わると、「寛解期(かんかいき)」というお休み期間に入ります。
寛解期は、頭痛が全く起こらない期間が3ヶ月以上続く状態です。
このように、痛い時期とお休みの時期をはっきりと繰り返すのが大きな特徴です。
研究によると、群発頭痛と診断される方の約80〜90%がこのタイプにあたります。
慢性(まんせい)群発頭痛
1年以上にわたって、群発期がずっと続いてしまうタイプです。
頭痛が起こらないお休み期間(寛解期)が全くないのが特徴です。
もし寛解期があったとしても、3ヶ月未満と非常に短くなります。
日本では、群発頭痛の患者さんのうち約4.2%がこのタイプだと報告されています。
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種類 |
頭痛のない期間(寛解期) |
特徴 |
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反復性群発頭痛 |
3ヶ月以上ある |
症状がある「群発期」とない「寛解期」を繰り返します。 |
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慢性群発頭痛 |
ない、または3ヶ月未満 |
1年以上、頭痛の期間が続きます。寛解期が非常に短いです。 |
最初は反復性群発頭痛であっても、経過とともに慢性に変わることもあります。
そのため、ご自身の頭痛がいつからいつまで続いたかなどを記録しておくことが大切です。
いつ痛みが始まったか、どれくらい続いたかを記録しておくと、診察の際にとても役立ちます。
群発頭痛の原因
群発頭痛がなぜ起こるのか、その原因はまだ完全にはわかっていません。 しかし、近年の研究により、痛みが起こる仕組みが少しずつ明らかになってきました。 いくつかの要因が連鎖的に関係していると考えられています。
現在、原因の中心として最も有力視されているのが、脳の「視床下部(ししょうかぶ)」という部分の不調です。
- 視床下部とは 体のリズムを整える「体内時計」の役割を持つ、とても重要な司令塔です。 ホルモンのバランスや自律神経などもコントロールしています。
群発頭痛が毎年決まった季節に、そして毎日ほぼ同じ時間帯に起こりやすいのは、この体内時計の機能に異常が生じるためだと考えられています。 実際に、発作中の脳を特殊な画像で調べると、この視床下部が過剰に活動していることが研究で確認されています。
この視床下部の異常な活動が引き金となり、以下の仕組みで激しい痛みが起こります。
- 三叉神経(さんさしんけい)の刺激 顔の感覚を脳に伝える太い神経が、異常な信号を受けて興奮します。 これが、目の奥をえぐられるような激しい痛みの直接的な原因となります。
- 自律神経への影響 三叉神経の興奮は、近くにある自律神経にも伝わってしまいます。 その結果、涙や鼻水が出たり、目が充血したりといった症状が現れます。
- CGRPの放出 痛みが起きると、CGRPという物質が放出されることがわかっています。 このCGRPは血管を広げて炎症を起こし、痛みをさらに強くしてしまいます。
このように、体内時計の乱れをきっかけに、神経や痛みを強める物質が次々と反応することが、群発頭痛の原因と考えられています。 また、遺伝的な要因も関係している可能性が、最近の研究で示唆されています。
群発頭痛の症状
群発頭痛の症状は、まさに「発作」という言葉がふさわしいものです。 片方の目の奥やその周りに、突然、耐えがたい激痛が襲ってきます。
えぐられるような、焼けるような痛みと表現されることが多いです。 この痛みは数分で一気にピークに達し、じっとしていられなくなります。
痛みの具体的な特徴
群発頭痛の痛みには、以下のようなはっきりとした特徴があります。 このパターンを記録しておくと、診察の際にとても役立ちます。
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項目 |
特徴 |
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痛む場所 |
片方の目の奥、こめかみ、側頭部など |
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痛みの強さ |
えぐられるような、耐えがたい激痛 |
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持続時間 |
1回につき15分〜3時間ほど続きます |
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頻度 |
1日に1〜8回、ほぼ同じ時間帯に起こります |
痛みに伴う体のサイン
激しい痛みと同時に、痛む側と同じ側に様々な症状が現れます。 これは、顔の感覚を伝える三叉神経の興奮が原因と考えられています。
- 目の症状 目が真っ赤に充血する、涙が止まらなくなる、などです。 まぶたが腫れたり、垂れ下がったりすることもあります。 また、瞳が小さくなるのも特徴的なサインの一つです。
- 鼻の症状 鼻水が止まらなくなったり、逆に鼻がつまったりします。
- その他の症状 顔や額に汗をかく、吐き気を感じる、などがあります。 とても興奮した状態になり、落ち着かなくなります。
涙や鼻水といった症状は片頭痛と共通する部分もあります。 しかし、群発頭痛の痛みは特有の激しさを持っているのが違いです。
痛みで落ち着かなくなる行動
あまりの激痛に、静かに横になっていることができません。 部屋の中を歩き回ったり、体を揺すったりしてしまいます。 痛みを紛らわすために、頭を壁に打ち付けてしまうこともあります。
群発頭痛の検査・診断
群発頭痛の診断は、主に患者さんからのお話をもとに進められます。 なぜなら、群発頭痛には非常に特徴的な症状のパターンがあるからです。 正確な診断のため、医師は次のような内容を詳しくお伺いします。
▼診察で確認する症状のチェックリスト
- 痛みの性質 目の奥をえぐられるような、耐えがたい激しい痛みですか。
- 痛む場所 必ず頭の片側だけで、特に目の周りやこめかみに起きますか。
- 痛みの続く時間 1回の痛みが15分から3時間ほどで自然におさまりますか。
- 痛みが起こる回数 1日に1回から8回ほど、決まった時間帯に起こりますか。
- 痛みに伴う症状 涙、目の充血、鼻水、鼻づまり、まぶたの腫れなどが、 痛みと同じ側に見られますか。
- 発作中の行動 痛みでじっとしていられず、歩き回ったりしますか。
これらの問診内容を、国際的な診断基準と照らし合わせて判断します。 しかし、問診だけで診断を確定させることはありません。
頭痛の症状は、時に命に関わる病気のサインである可能性もあります。 くも膜下出血や脳腫瘍など、他の重大な病気を見逃さないことが重要です。 そのため、頭部のMRI検査やCT検査といった画像検査を行います。
この検査は、群発頭痛そのものを画像で確認するためではありません。 似た症状を起こす、他の病気がないことを確認するための検査です。 近年の神経画像研究では、群発頭痛の発作中に脳の「視床下部」という体内時計を司る部分が過剰に活動していることが明らかになっています。
こうした科学的な知見は、診断の精度をさらに高めるものです。 将来的には、より一人ひとりに合わせた治療法の開発に繋がります。 群発頭痛は診断が遅れることも多いため、正確な診断が治療への第一歩です。
群発頭痛の治療
群発頭痛の治療は、2つの大きな柱で成り立っています。 いま起きている激しい痛みをすぐに和らげる「急性期治療」。 そして、そもそも発作が起きないように予防する「予防療法」です。 これらの治療を組み合わせ、つらい群発期を乗り越えていきます。
急性期治療:今ある激しい痛みを止める
発作が起きてしまった時に、できるだけ早く痛みを取り除く治療です。 あまりの激痛でパニックになりがちですが、有効な対処法があります。
- 純酸素吸入療法 医療用の100%濃度の酸素を、顔に当てたマスクから吸い込みます。 脳の血管を収縮させる作用があり、痛みの軽減が期待できます。 群発頭痛の発作に対して、最初に行われることが多い治療法です。
- トリプタン製剤 痛みの原因となる血管の拡張を抑え、炎症を鎮めるお薬です。 効果が早く現れるように、即効性が期待できる皮下注射や、 鼻の粘膜から吸収させる点鼻薬が主に使われます。
予防療法:そもそも発作が起きないようにする
群発期に入った時に、発作の回数や痛みの強さを減らすことが目的です。 医師の指示に従って、毎日お薬を飲むことで発作を抑えます。
- 飲み薬による予防 主にベラパミルというお薬が使われます。 効果が出るまでに少し時間がかかるため、即効性のあるステロイドを 短期間だけ併用し、痛みをコントロールすることもあります。
- 神経ブロック注射 痛みの原因となっている神経の近くに麻酔薬を注射する方法です。 痛みの信号が脳に伝わるのを一時的にブロックします。
新しい治療の選択肢
お薬だけでは十分に痛みをコントロールできない場合もあります。 その際には、神経に直接働きかける新しい治療法も検討されます。
- 経皮的(けいひてき)電気神経刺激(TENS)療法 皮膚の上から後頭部の神経に、ごく弱い電気を流す治療法です。 海外の研究では、この治療で発作の頻度や痛みの強さが減り、 頓服薬の使用量も減ったと報告されています。 体への負担が少なく、副作用もほとんどないのが特徴です。
- ラジオ波熱凝固術(ねつぎょうこじゅつ) 顔の奥深くにある「蝶形口蓋神経節(ちょうけいこうがいしんけいせつ)」 という神経の集まりに、ラジオ波という特殊な熱を加える方法です。 痛みの信号を伝える神経の働きを抑えることで、効果が期待されます。
これらの治療法は、患者さん一人ひとりの症状に合わせて選択します。 つらい痛みを決して我慢せず、まずは専門の医療機関にご相談ください。













