慢性乳腺炎
乳房の痛みやしこりが長引き、良くなったり悪くなったりを繰り返していませんか。慢性乳腺炎は授乳期以外にも発症するため、原因がわからず不安を感じている方も少なくありません。
この記事では、慢性乳腺炎の基本的な原因や症状、治療法を解説します。特に原因不明の「特発性肉芽腫性乳腺炎」は、有効な治療法を示す質の高い研究が乏しく、既存の報告の約7割が少数の患者をまとめた症例報告にとどまるとされています。
ご自身の症状と照らし合わせながら読み進めることで、病態への理解が深まります。そして、適切な医療機関で相談するための知識を得て、不安を解消する一助となるはずです。
慢性乳腺炎の概要
慢性乳腺炎は、乳房の組織に炎症が起こり、痛みや腫れ、赤みなどが長期間にわたって続く状態です。
一般的に「乳腺炎」は授乳期に多いとされますが、慢性乳腺炎は授乳とは関係なく発症することも少なくありません。
急性の炎症とは異なり、慢性乳腺炎には以下のような特徴があります。
・症状がゆっくりと進行する
・良くなったり悪くなったりを繰り返す
・しこりや皮膚のただれを伴うことがある
特に「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」と呼ばれるタイプの慢性乳腺炎は、原因がはっきりしておらず、診断や治療方針が確立されていない希少な疾患とされています※。
この疾患に関する医学的研究はまだ十分に進んでおらず、質の高いエビデンス(科学的根拠)が不足しているのが現状です。既存の研究の多くは、少人数の患者さんを対象とした症例報告にとどまっており、治療法の効果を厳密に比較した質の高い研究はほとんど行われていません※。
このような背景から、診断や治療が難航することも考えられます。
また、慢性乳腺炎の症状は乳がんと見分けるのが難しい場合もあるため、自己判断は禁物です。乳房のしこりや痛み、皮膚の変化などが気になる場合は、必ず乳腺を専門とする医療機関を受診してください。
慢性乳腺炎の種類
慢性乳腺炎は、いつ発症したかという「時期」と、どのような炎症が起きているかという「状態」の2つの軸で分類されます。
これらは全く別の病気というより、症状の進行段階として捉えることもできます。
時期による分類
・哺乳期乳腺炎
授乳中に起こる乳腺炎です。主な原因は、母乳がうまく排出されずに乳腺内にたまってしまう「乳汁うっ滞(にゅうじゅううったい)」や、乳頭にできた傷からの細菌感染です。
・非哺乳期乳腺炎
授乳期以外に発症する乳腺炎の総称です。喫煙などが関係するとされる「乳輪下膿瘍(にゅうりんかのうよう)」や、次に解説する原因不明の特殊なタイプも含まれます。
炎症の状態(進行度)による分類
乳腺炎は、炎症が軽度なものから重症化すると膿がたまる段階まで、以下のように進行していきます。
1. 非感染性乳腺炎
細菌感染を伴わず、乳汁のうっ滞などによって炎症が起きている、いわば「詰まり」が原因の状態です。
2. 感染性乳腺炎
乳頭の傷などから細菌が侵入し、感染を引き起こしている状態を指します。
3. 乳房膿瘍(にゅうぼうのうよう)
炎症がさらに進行し、乳腺組織の中に膿がたまってしまった状態です。
特に注意が必要な「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」
非哺乳期乳腺炎の中には「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」と呼ばれる、診断も治療も難しい特殊なタイプが存在します。
これは原因がまだ解明されていない希少な慢性炎症性疾患のため、残念ながら標準的な治療法が確立されていません。
その背景には、質の高い医学的研究が不足しているという現状があります。既存の研究の多くは、少人数の患者さんを対象とした症例報告にとどまっており、治療法の効果を厳密に比較した質の高い研究はほとんど行われていないのが実情です※。
そのため、診断や治療方針の決定に時間がかかることも少なくありません。
慢性乳腺炎の原因
慢性乳腺炎の原因は一つではなく、授乳中かどうかによっても異なりますが、多くのケースで根本にあるのは乳腺内でのトラブルです。
特に授乳期に多い原因は、作られた母乳がうまく排出されずに乳腺内にたまってしまう「乳汁うっ滞(にゅうじゅううったい)」です。
乳汁うっ滞を引き起こす、あるいは悪化させる要因には、以下のようなものが挙げられます。
・乳汁の排出不足
授乳間隔が空きすぎたり、急に授乳を中断したりすると、作られた母乳が行き場を失い、乳腺内にたまって炎症のきっかけになります。
・乳頭の傷と細菌感染
赤ちゃんの抱き方や吸い方が浅いことなどで乳頭に小さな傷ができると、そこから皮膚にもともと存在する「黄色ブドウ球菌」などが侵入し、感染を引き起こすことがあります。
・乳房への物理的な圧迫
サイズの合わない下着や、抱っこ紐・シートベルトなどによる締め付けは、乳管を物理的に圧迫し、母乳の流れをせき止めてしまう可能性があります。
・乳腺の詰まり
乳頭の先にできる乳脂肪の塊「白斑(ホワイトスポット)」などが乳管の出口を塞ぎ、詰まりの原因となることもあります。
・心身のストレスや疲労
育児による疲れや精神的なストレスは、ホルモンバランスや免疫機能に影響を与え、乳腺炎を発症・悪化させやすい状態を作ると考えられています。
一方で、これらの典型的な原因に当てはまらない、特殊なタイプの慢性乳腺炎も存在します。
その代表が「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」です。この病気は「特発性」という名前のとおり、現代の医学でも原因がはっきりわかっていません。
原因が不明であるため、診断や治療の方針も確立されておらず、非常に対応が難しい希少疾患とされています。背景には、IGMに関する質の高い医学研究が世界的に不足しているという深刻な問題があります。
実際、既存の医学論文を網羅的に調査した研究では、治療法の有効性を証明する上で最も信頼性が高いとされる研究(レベル1エビデンス)は一件も存在せず、報告の約7割が少数の患者さんをまとめた症例報告(レベル4エビデンス)にとどまることがわかっています※。
このように、一般的な乳腺炎から原因不明の希少疾患まで、その背景はさまざまです。
慢性乳腺炎の症状
慢性乳腺炎のサインは、炎症が起きている乳房そのものに現れる症状と、それに伴って全身に広がる症状の2つに分けられます。
多くの場合、症状は突然、片方の乳房に現れますが、両方にあらわれるケースも少なくありません。
【乳房にあらわれる症状】
乳腺に炎症が起きることで、以下のような局所的な変化が見られます。
・しこりや腫れ
・皮膚の赤み
・乳房が熱を持つ(熱感)
・押したときの痛み(圧痛)、あるいは何もしなくても痛む(自発痛)
【全身にあらわれる症状】
乳房の炎症が体全体に影響を及ぼすことで、インフルエンザに似た症状が出ることがあります。
・38.5℃以上の高熱
・悪寒や体のだるさ(倦怠感)
・関節痛や筋肉痛
ただし、これらの典型的な症状とは少し異なる経過をたどる特殊なタイプの慢性乳腺炎も存在します。
特に「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」は、硬いしこりや皮膚の潰瘍、膿など、乳がんと非常に紛らわしい症状を引き起こすことがあります。
この病気は原因不明の希少疾患であり、残念ながら診断や治療の方針が確立されていません。その背景には、質の高い医学研究が世界的に不足しているという深刻な問題があります。
実際、既存の医学論文を網羅的に調査した研究でも、治療法の有効性を証明する上で最も信頼性が高いとされる研究(レベル1エビデンス)は一件もなく、報告の約7割が少数の患者さんをまとめた症例報告(レベル4エビデンス)にとどまることがわかっています※。
このように、症状だけでは他の病気との区別が難しいケースもあるため、乳房のしこりや痛み、皮膚の変化に気づいた際は、決して自己判断せず、必ず専門の医療機関を受診してください。
慢性乳腺炎の検査・診断
慢性乳腺炎の診断は、まず問診で症状の経過を詳しく伺い、医師が直接乳房の状態を確かめる視診・触診から始まります。
乳房のしこり、赤み、熱っぽさ、痛みの有無や範囲などを丁寧に確認し、これらの臨床症状から診断するのが基本です。
しかし、症状だけでは判断が難しい場合や、より詳しい状態を把握するために、必要に応じて以下の検査を追加します。
【しこりの正体を見極める】
・乳房超音波(エコー)検査
しこりの内部がどうなっているのか、特に膿のたまり(膿瘍)ができていないかを確認するために行います。もし膿瘍が見つかった場合は、超音波で場所を確認しながら針を刺して膿を抜き取る処置(穿刺吸引)が必要になることもあります。
【効く薬を見つける】
・乳汁培養・薬剤感受性試験
抗生物質を2日間ほど使用しても症状が良くならない場合や、乳腺炎を何度も繰り返すケースで行われる検査です。乳汁や膿を少量採取して原因となっている細菌の種類を特定し、どの抗生物質が最も効果的かを調べます。
【他の病気ではないかを確認する】
・細胞診・組織診(生検)
慢性乳腺炎の症状、特に硬いしこりや皮膚のただれは、乳がんと見分けがつきにくいことがあります。そのため、超音波で確認しながら細い針で細胞を吸引したり(細胞診)、組織の一部を採取したり(組織診)して、がん細胞が含まれていないかを顕微鏡で詳しく調べます。
特に、原因不明の希少疾患である「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」が疑われる場合は、乳がんとの鑑別が極めて重要になるため、組織診が欠かせません。
IGMは診断や治療法が確立されておらず、その背景には、質の高い医学的研究が世界的に不足しているという問題があります。
実際、既存の医学論文を網羅的に調査した研究によると、治療法の有効性を証明するうえで最も信頼性が高いとされる研究(レベル1エビデンス)は一件もなく、報告の約7割が少数の患者さんをまとめた症例報告(レベル4エビデンス)にとどまることがわかっています※。
このような状況から、IGMの確定診断には時間がかかることもありますが、他の病気の可能性を一つひとつ丁寧に取り除いていく、非常に大切なプロセスといえます。
慢性乳腺炎の治療
慢性乳腺炎の治療は、乳腺にたまった乳汁を効果的に排出することを基本とし、炎症の程度や細菌感染の有無に応じて、薬物療法や外科的な処置を組み合わせて行います。
治療の土台となるのは、授乳や搾乳によって乳汁の滞りを解消することです。ご自宅でのケアも症状の緩和に役立つため、医療機関での治療と並行して行いましょう。
ご自宅でできるケア
・十分な休息と水分補給:体を休め、脱水を防ぐことは回復の基本です。
・授乳前の温湿布:乳房を温めることで、母乳の通りが良くなり排出を促します。
・授乳後の冷湿布:腫れや痛みが強い部分を冷やすと、炎症が和らぎます。
医療機関では、これらのセルフケアを基本としながら、症状に合わせて次のような専門的な治療を進めます。
医療機関で行う治療
治療法 | 内容
薬物療法 | 【痛みや炎症を和らげる薬】 ・イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛・抗炎症薬を使い、つらい痛みを軽減します。 【細菌感染を抑える薬】 ・細菌感染が明らかな場合や、24時間経っても症状が改善しないケースで抗生物質が処方されます。 ・標準的な治療期間は10〜14日ほどです。
外科的処置 | ・炎症が進んで膿がたまってしまった状態(乳房膿瘍)では、薬だけでは治りません。 ・超音波で膿の位置を確認しながら注射針で吸い出したり(穿刺吸引)、小さく皮膚を切開して膿を外に出したりする処置が必要です。
しかし、慢性乳腺炎の中には、原因不明で標準的な治療法が確立されていない「特発性肉芽腫性乳腺炎(IGM)」のような特殊なタイプも存在します。
この病気の治療が難しい背景には、質の高い医学研究が世界的に不足しているという深刻な問題があります。
実際、既存の医学論文を網羅的に調査した研究によると、治療法の有効性を証明するうえで最も信頼性が高いとされる研究(レベル1エビデンス)は一件もなく、報告の約7割が少数の患者さんをまとめた症例報告(レベル4エビデンス)にとどまることがわかっています※。
このように、エビデンスが乏しい疾患の場合は、治療方針の決定に時間がかかることもありますが、症状が改善しない、あるいは繰り返す場合は自己判断で対処せず、必ず専門の医療機関にご相談ください。









