チェディアック・東症候群

生まれつき髪の色が銀色がかっていたり、少しぶつけただけですぐに大きなあざができてしまったり。もし、お子さんにこのようなサインが見られたら、それは「チェディアック・東症候群」という、非常にまれな病気のサインかもしれません。

この病気は遺伝子の異常が原因で、体を守る免疫の力が弱くなる先天性の疾患です。日本では約15人の患者さんしか報告されておらず、感染症の繰り返しや出血傾向、神経の症状など、全身に様々な特徴があらわれます。

この記事では、まだあまり知られていないチェディアック・東症候群について、その詳しい症状や原因、そして根本的な治療法について、専門的な内容をわかりやすく解説していきます。

チェディアック・東症候群の概要

チェディアック・東症候群は、遺伝子の異常が原因で、 生まれつき体を守る「免疫」の力が弱くなる病気です。 「先天性免疫不全症」という病気のグループの一つです。 私たちの体には、細菌などと戦う仕組みがありますが、 この病気ではその働きが十分ではありません。

このため、体にいくつかの特徴的なサインがあらわれます。 主に、以下の4つの症状が知られています。

  • 感染症をくり返す 体を守る免疫の力が弱いため、 普通ならすぐ治る風邪が肺炎にまで悪化するなど、 重い感染症にかかりやすくなります。
  • うすい体の色 皮膚や髪の毛、目の色がうすくなる 「部分的白子症(はくししょう)」という特徴です。 色素を作る細胞の働きが影響を受けます。
  • 血がとまりにくい(出血傾向) 血液を固める「血小板」の働きが弱いため、 少しぶつけただけですぐにあざができたりします。 また、鼻血がとまりにくいこともあります。
  • 神経の症状 成長するにつれて、体のバランスがとりにくくなったり、 手足の感覚がおかしくなるなどの症状が あらわれることがあります。

この病気は世界でも報告が少ない、とてもまれな病気です。 日本では約15人の患者さんがいると報告されています。 国が定める「小児慢性特定疾病」に指定されているため、 医療費の助成といった公的な支援が受けられます。

チェディアック・東症候群の種類

チェディアック・東症候群は、同じ遺伝子の異常で起こりますが、 症状の重さや現れ方には、人によって大きな違いが見られます。 これは、遺伝子の壊れ方が一人ひとり少しずつ違うためです。 そのため、症状の程度によって、大きく2つのタイプに分けて 考えられることがあります。

典型的(古典型)

こちらは、病気の症状がはっきりと現れるタイプです。 赤ちゃんの頃から、肺炎や皮膚がうんでしまうような、 重い感染症を何度も繰り返すなど、免疫の弱さが目立ちます。

髪や肌、目の色がうすい「部分的白子症」もはっきりわかります。 また、成長するにつれて、歩くときにふらついたり、 体のバランスがとりにくくなったりする神経の症状が、 ゆっくりと進んでいくことが多いのも特徴です。

非典型的(軽症型)

こちらは、症状が比較的おだやかなタイプです。 感染症にかかることはありますが、典型的なタイプほど 頻繁ではなかったり、症状が軽かったりします。

体の色素のうすさも、あまり目立たないこともあります。 神経の症状が現れるのが遅かったり、進行がゆっくりなため、 大人になってから診断される方もいるのが特徴です。

特徴

典型的(古典型)

非典型的(軽症型)

気づく時期

赤ちゃんや小さい子の頃

子どもから大人の頃

感染症

重いものを何度も繰り返す

比較的軽い、または少ない

体の色

色のうすさがはっきりわかる

軽くて目立たないこともある

神経の症状

ゆっくりと進むことが多い

進みが遅い、または現れない

このように、同じ病名でも症状の現れ方はさまざまです。 そのため、専門の医師が一人ひとりの状態をしっかりと見極め、 その方に合った対応を考えることがとても大切になります。

チェディアック・東症候群の原因

この病気は、私たちの体の設計図である「遺伝子」に、 生まれつき変化があることで起こります。 原因となるのは「CHS1/LYST」という名前の遺伝子です。 この遺伝子は、体を作る小さな部屋である「細胞」の中で、 とても大切な働きをしています。

私たちの細胞の中には、いらなくなったものをお掃除したり、 外から入ってきたバイキンをやっつけたりする 「ライソゾーム」という小さな器官があります。 CHS1/LYST遺伝子は、このライソゾームが正しく作られ、 細胞の中をスムーズに動くための交通整理係のような役割です。

遺伝子に変化があると、この交通整理がうまくいきません。 その結果、体の中では次のような問題が起こります。

  • 免疫の力が弱くなる バイキンと戦う免疫細胞が、助けが必要な場所に うまくたどり着けなくなります。 また、バイキンを攻撃する武器(ライソゾーム)が 異常に大きくなってしまい、うまく使えません。 このため、感染症にかかりやすくなります。
  • 体の色がうすくなる 髪や肌の色を作る細胞の中でも、色の素が うまく運ばれなくなってしまいます。 その結果、髪や肌、目の色がうすくなる 「部分的白子症」という特徴があらわれます。

この病気は、「常染色体潜性(せんせい)遺伝」という形式で お子さんに伝わります。 人は誰でも、お父さんとお母さんから遺伝子を 1つずつ、ペアで受け継ぎます。 ご両親がともに変化のある遺伝子を1つずつ持っていて、 お子さんがその両方を受け継いだ場合に、この病気が起こります。 そのため、ご両親には症状がないことがほとんどです。

チェディアック・東症候群の症状

この病気の症状は、生まれつきのものから、 成長するにつれてあらわれるものまで様々です。 主に、次の4つの特徴的なサインが見られます。 お子さんの様子で気になることがないか、確認してみましょう。

主な症状のチェックリスト

  • 見た目の特徴(部分的白子症) 生まれつき髪の毛が銀色っぽかったり、 瞳の色が薄茶色だったりと、体の色素が薄いのが特徴です。 肌の色も白く、日光にとても弱いです。 日焼けすると、色がつく部分とつかない部分ができて、 肌がまだら模様になることもあります。
  • 繰り返す感染症(免疫不全) 体をバイキンから守る力が弱いため、 何度も感染症にかかってしまうのが大きな特徴です。 特に、気管支炎や肺炎などの呼吸器の病気や、 皮膚が化膿する病気にかかりやすい傾向があります。 熱がなかなか下がらず、お薬を使っても治りにくいなど、 入退院を繰り返すことも少なくありません。
  • 血が止まりにくい症状(出血傾向) 血液を固める働きが弱いため、出血しやすいです。 例えば、机の角に軽くぶつけただけでも、 びっくりするような大きなあざができてしまいます。 また、鼻血がよく出て、一度出ると なかなか止まらないといったことも見られます。
  • 神経の症状 年齢が上がるにつれて、少しずつあらわれることがあります。 歩くときにふらふらしてしまったり、 手足の感覚が鈍くなったりすることがあります。 時には、体が自分の意思と関係なく震える、 「けいれん」という発作を起こすこともあります。

これらの症状は、赤ちゃんのときから気づかれることもあれば、 幼児期に感染症を繰り返すことでわかる場合もあります。 もし、お子さんにこのようなサインが見られたら、 専門の医療機関に相談することが大切です。

チェディアック・東症候群の検査・診断

この病気が疑われる場合、体の中のヒントを探すために、 いくつかの検査を組み合わせて慎重に診断を進めます。 主に、血液を詳しく調べることから診断は始まります。

血液を顕微鏡で見る検査

まず、採血した血液を顕微鏡でじっくりと観察します。 特に注目するのは、体をバイキンから守る働きを持つ 「白血球」という細胞の形です。

チェディアック・東症候群の患者さんの白血球には、 「巨大な顆粒(きょだいなかりゅう)」という、 普通よりもとても大きい粒が見られる特徴があります。 この特別なサインを見つけることが、診断の重要な手がかりです。

免疫の働きを調べる検査

次に、体を守る「免疫」のチームが、 きちんと働けているかを確認する検査も行います。 特に、以下の細胞の働きを詳しく調べます。

  • NK(ナチュラルキラー)細胞 ウイルスに感染した細胞など、体に良くない細胞を 見つけ出して攻撃する、見張り役の細胞です。
  • 細胞障害性T細胞 一度覚えた敵を狙って攻撃する、 免疫チームの中でも特に頼りになる細胞です。

この病気では、これらの細胞が持つ攻撃力が 弱くなっていることが確認されます。

診断を確定させる遺伝子検査

上記の検査でこの病気の可能性が非常に高いと判断された場合、 診断をはっきりとさせるための最終確認を行います。 それが、病気の根本的な原因を調べる「遺伝子検査」です。

この検査では、体の設計図である遺伝子の中の、 「CHS1/LYST」という部分に変化がないかを調べます。 この遺伝子の変化が見つかることで、 チェディアック・東症候群であるという診断が確定します。

チェディアック・東症候群の治療

この病気の治療は、大きく分けて2つの大切な柱があります。 一つは、病気の根本原因に働きかけるための治療です。 もう一つは、今あらわれている症状を和らげるための治療です。 患者さん一人ひとりの状態を丁寧に見ながら、 これらの治療を組み合わせて進めていくことが重要になります。

病気の根本に働きかける治療

現在、この病気を根本から治すことを目指せる唯一の方法が 「造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)」です。 これは、健康な方から提供してもらった、血液をつくる 「もと」になる細胞を、患者さんの体に入れる治療法です。

この治療によって、体の中で正常な働きをする免疫細胞や、 血液の細胞が新しく作られるようになります。 その結果、病気の大きな問題である、感染症にかかりやすい 状態を改善することが期待できます。 そのため、できるだけ早い時期に移植を行うことが勧められます。

ただし、この治療で免疫の働きが改善しても、 生まれつきの皮膚や髪の色のうすさや、 一度あらわれた神経の症状が完全に元に戻るわけではありません。

症状を和らげるための治療

根本的な治療と同時に、それぞれの症状を和らげる治療も とても大切です。つらい症状を軽くして、 できるだけ普段通りの生活が送れるように支えていきます。

症状の種類

具体的な治療法や対策

繰り返す感染症

・感染症が起きたら、細菌と戦うお薬(抗生物質)などを使って治療します。

・感染を防ぐために、予防としてお薬を飲んだり、体の守る力を助けるお薬(インターフェロンγ)を使ったりすることもあります。

皮膚の色素が薄いこと

・お日様の光(紫外線)に弱いため、肌を守ることがとても大切です。

・日焼け止めクリームをこまめに塗ったり、帽子や長袖の服を着たりする工夫をします。

神経の症状

・体が意思と関係なく震える「けいれん」が起きる場合は、それを抑えるお薬を使います。

・歩くときにふらつく場合は、転んでケガをしないように、車いすや歩行器を使うことも考えます。