骨密度

「最近、背中が丸くなった」「若い頃より身長が2cm以上縮んだ」。それは、骨が発している静かなサインかもしれません。骨密度は痛みなどの自覚症状がないまま低下し、気づいた時には「骨折」という深刻な事態を招くため「静かな病気」とも呼ばれています。

実は、骨の強さは一般に知られる「骨密度(量)」だけでは決まりません。ある研究では、骨粗しょう症ではない女性の約4割で、骨の内部構造を示す「骨質」が低下していたという報告もあります。この記事では、骨の「量」と「質」の両面から骨の本当の強さを紐解き、将来の健康を守るための検査や治療法まで詳しく解説します。

骨密度の概要

骨密度とは、骨の強さや健康状態を示す「ものさし」です。 骨の中に、カルシウムなどのミネラル成分が、 どれくらいぎゅっと詰まっているかを表す数値のことです。 この数値が高いほど、骨は丈夫で折れにくい状態といえます。

私たちの骨は、実は目に見えないところで常に新しくなっています。 この骨の生まれ変わりは、約10年という長い時間をかけて行われます。

  • 骨吸収(こつきゅうしゅう) 古い骨が少しずつこわされていく働きです。
  • 骨形成(こつけいせい) こわされた部分に新しい骨がつくられる働きです。

健康な骨は、この「こわす働き」と「つくる働き」の、 バランスが保たれていることで維持されます。 しかし、年を重ねることなどが原因でこのバランスが崩れ、 骨をつくる量よりも、こわす量が多くなってしまうことがあります。 すると、骨の中身がスカスカになり、骨密度が低下してしまうのです。

骨の強さを正確に知ることは、骨折の予防にとても大切です。 特に、背骨の手術などが必要になった場合、骨密度は重要です。 骨がもろいと、手術で使う金属がうまく固定できないこともあります。 そのため、手術の前に骨密度を評価しておくことが、 手術を安全に行い、合併症のリスクを減らすために不可欠です。 自分の骨の状態を知り、早めに対策をとることが将来の健康を守ります。

骨密度の種類

骨の強さは、ひとつの要素だけで決まるわけではありません。 骨のじょうぶさを正しく評価するためには、 主に2つの「ものさし」があることを知るのが大切です。 それは、骨の「量」と「質」という2つの側面です。

ひとつめは「骨密度(こつみつど)」です。 これは骨の「量」をあらわす指標で、よく知られています。 骨の中にカルシウムなどのミネラル成分が、 どれくらいぎっしりと詰まっているかを示します。 一般的に「骨の検査」というと、 この骨密度を測る場合が多いです。

ふたつめは「骨質(こつしつ)」です。 これは骨の「質」をあらわす指標です。 骨の内部の構造がどれだけしっかりしているか、 骨の材料自体のしなやかさなどを示します。 たとえ骨の量(骨密度)が多くても、 骨の中の柱のつながりが悪ければ骨はもろくなります。

この骨質を評価する方法のひとつに、 「骨微細構造(こつびさいこうぞう、TBS)」という指標があります。 これは、骨密度を測るDEXA(デキサ)法という検査の画像から、 骨の内部にあるスポンジのような部分の構造を解析するものです。

骨密度とは別に、骨折のしやすさを予測するのに役立ちます。 実際に、骨粗しょう症の治療によってTBSが改善すると、 背骨の骨折リスクが減ることが研究でわかっています。 骨の本当の強さを知るには、量と質の両面から見ることが重要です。

指標の種類

測っているもの

特徴

骨密度 (BMD)

骨の量

骨の中のミネラルの詰まりぐあい。骨の硬さの目安になります。

骨質 (TBS)

骨の質

骨の内部構造の緻密さ。骨折への抵抗力(しなやかさ)に関わります。

骨密度の原因

骨密度が低くなるのは、骨の「生まれ変わり」のバランスが、 「つくる」よりも「こわす」方に傾くことが大きな原因です。 骨の中身がだんだんとスカスカになってしまう状態です。

このバランスが崩れてしまう原因は、一つだけではありません。 主に、次の3つの要因が複雑に関係していると考えられます。

年齢をかさねること(加齢)

骨をつくる力は、20代から30代前半でピークを迎えます。 その後は、年齢とともに骨をつくる細胞の働きが少しずつ衰え、 骨の量はだんだんと減っていくのが自然な流れです。 これは、残念ながら誰にでも起こりうることなのです。

ホルモンの変化

骨の健康には、性別に関わるホルモンが大きく影響します。 そのため、男女で骨密度の下がり方が違うのが特徴です。

  • 女性の場合 閉経を迎えると、骨を守っていた女性ホルモン(エストロゲン)が、 急激に少なくなってしまいます。 このホルモンは、骨がこわされるのを防ぐブレーキ役でした。 そのため、骨をこわす働きが急に強まり、 骨密度が大きく低下しやすくなります。
  • 男性の場合 男性ホルモン(テストステロン)も骨の強さに関わっています。 ある研究では、このホルモンが減ると、 特に足の付け根(股関節)の骨密度が下がることがあります。 実際に、テストステロンを補う治療を半年間おこなうと、 股関節の骨密度が増加したという報告もあります。

生活の中にかくされた原因

日々の何気ない生活習慣も、骨の強さに大きく影響します。 ご自身の生活に心当たりがないか、確認してみましょう。

  • 食事の問題 骨の材料となるカルシウムやタンパク質、 カルシウムの吸収を助けるビタミンDの不足。 また、極端なダイエットも骨を弱くする原因です。
  • 運動不足 骨は、歩いたり走ったりすることで加わる力で強くなります。 動かないでいると、骨は刺激を受けられずにもろくなります。
  • その他の習慣 タバコを吸うことや、お酒の飲み過ぎも骨にはよくありません。 日光を浴びる時間が少ないと、体内でビタミンDが作られず、 食事でとったカルシウムをうまく使えなくなります。

骨密度の症状

骨密度が低くなっても、痛みやかゆみなどの症状は全くありません。 骨がスカスカになっていく過程では、体に何も合図がないのです。 そのため「静かな病気」とも呼ばれ、気づかぬうちに進行します。

症状がはっきりと現れるのは、残念ながら骨が限界を超えた時です。 つまり、骨粗しょう症が進んで「骨折」してしまった時なのです。 骨折が起きて初めて、多くの方がご自身の骨の危険な状態に気づきます。

▼骨折によって現れる症状の例

  • 背中や腰の骨折(椎体骨折) 背中や腰に痛みを感じたり、背中が丸くなったりします。 若い頃より身長が2cm以上縮んだら、注意が必要なサインです。
  • 足の付け根の骨折 転んだ後などに、足の付け根がひどく痛み、立てなくなります。 この骨折をきっかけに、生活が一変してしまうこともあります。
  • 手首や腕の付け根の骨折 転んで手をついた時に、手首が強く痛んだり腫れたりします。

骨の強さは、骨の量を示す「骨密度」だけでは決まりません。 骨の中にある柱の構造、つまり「骨質」も大きく影響します。 近年の研究では、この骨質が骨折のしやすさに関わることが判明しました。

ある研究では、骨粗しょう症ではない女性の約4割で、 骨の質が低下している状態だったという報告もあります。 症状がないからと安心していると、骨折しやすい状態かもしれません。

骨密度の検査・診断

骨の健康状態を正確に知るには、専門の検査を受けることが大切です。 骨の強さは「量(骨密度)」と「質(骨質)」で決まるため、 検査では、これらの状態を調べて骨折の危険度を予測します。

主な検査方法

骨の強さを調べる検査には、いくつかの種類があります。 それぞれの特徴を知って、ご自身の状態に合う検査を受けましょう。

検査方法

特徴

DEXA(デキサ)法

骨折しやすい腰の骨や足の付け根の骨密度を正確に測ります。骨粗しょう症の診断で最も基本となる、信頼性の高い検査です。ベッドに寝ているだけで、痛みもなく数分で終わります。

超音波法

かかとの骨などに超音波をあてて測定します。エックス線を使わないため、健康診断などで広く行われています。

CT検査

他の病気で撮影したCT画像から、骨の密度を評価できます。背骨の変形が強い方などの補助的な情報として役立ちます。ある研究では、CT画像のHU値という数値が110より低いと、骨粗しょう症の可能性が高いことが示されています。

骨粗しょう症と診断されるとき

検査結果は、骨の量が一番多い20代の平均(YAM値)と比べて、 ご自身の骨密度が何%かで示されます。

一般的に、次のいずれかに当てはまると骨粗しょう症と診断されます。

  • YAM値が70%未満の場合
  • 転んだだけなどの軽い衝撃で骨折(脆弱性骨折)したことがある場合

最近では、骨の「量」だけでなく「質」も非常に重視されています。 DEXA検査のデータから「TBS」という骨質を評価する数値もわかります。 ある研究では、骨粗しょう症ではない女性の約4割で、 この骨質が低下していたという報告もあります。 骨の量と質の両方を見ることで、より正確に骨折リスクを予測し、 適切な対策を立てることにつながるのです。

骨密度の治療

骨密度が低いとわかったら、治療の目標は骨折を防ぐことです。 骨をじょうぶにして、将来の骨折から体を守ることが目的です。 特に足の付け根や背骨の骨折は、生活に大きく影響します。 ご自身の状態に合った治療を、早めに始めることが大切です。

治療の基本は、次の3つを組み合わせることです。

  • 食事療法 骨の材料になるカルシウムや、その吸収を助けるビタミンD、 骨をつくるために大切なビタミンKなどを食事でとります。
  • 運動療法 ウォーキングなど、骨に少しだけ重さがかかる運動は、 骨を刺激して強くするのに役立ちます。
  • 薬物療法 骨折のリスクが特に高い場合は、お薬による治療を行います。 食事や運動だけでは、改善がむずかしいときに中心となります。

お薬による治療

お薬には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 骨がこわされすぎるのを防ぐ「骨吸収抑制薬」
  • 新しい骨がつくられるのを助ける「骨形成促進薬」

これらのお薬は、骨の生まれ変わりのバランスを整えます。

骨の「質」も高めるお薬

最近では、骨の「量」だけでなく「質」も良くするお薬があります。 例えば「アバロパラチド」というお薬は、骨の内部の構造を改善し、 特に背骨の骨折リスクを減らすことが研究でわかっています。 治療後、骨がこわされるのを防ぐお薬を続けることで、 改善した骨の状態を長く保つことができると報告されています。

男性特有の治療法

男性の場合、「テストステロン」という男性ホルモンを補う治療法も、 選択肢のひとつになることがあります。 ある研究では、この治療を半年間おこなうと、 足の付け根(股関節)の骨密度が高まることが示されました。

お薬選びは慎重に

お薬は、医師が効果と安全性を考えて慎重に選びます。 過去には、骨密度を上げる効果が期待されながらも、 脳卒中など別の病気のリスクを高める可能性がわかり、 開発が中止されたお薬(オダナカチブ)もありました。

治療方針は、年齢や性別、骨の状態などをみて総合的に決めます。 自己判断で治療をやめず、医師とよく相談しながら、 ご自身に合った治療を続けることが何よりも重要です。