歯を噛んだ時の軽い違和感や、歯が浮いたような感覚。その些細なサインを、気のせいだと見過ごしていませんか?もしかしたらそれは、歯の根の奥深くで静かに進行し、気づいたときには顎の骨を溶かすこともある「根尖性歯周炎」という病気かもしれません。痛みがないからと放置するのは非常に危険です。
さらに驚くべきことに、この病気は口の中だけの問題にとどまりません。近年の研究では、根尖性歯周炎が胃や腸などの消化器疾患と関連する可能性も指摘されており、お口の健康が全身に影響を及ぼす一例とされています。
この記事では、そんな見えない場所で進行する根尖性歯周炎の正体について、その原因からご自身の症状を確認するポイント、最新の治療法までを詳しく解説します。大切な歯とご自身の体を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
根尖性歯周炎の概要
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、歯の根の先端、 つまり「根尖」の周りの組織に炎症が起きる病気です。 炎症によって膿がたまり、歯の根の先に膿の袋ができます。
主な原因は、治療せずに放置されたむし歯です。 細菌が歯の内部にある神経(歯髄)を通り抜けて、 歯の根の先まで到達することで、炎症を引き起こします。
しかし、症状がはっきりと出ないまま、静かに進行することも多く、 気づかないうちに悪化しているケースも少なくありません。 そのため、お口の中だけの問題だと考えられがちです。
近年の研究では、根尖性歯周炎と全身の病気との関連が注目されています。 複数の研究をまとめて分析した信頼性の高い調査によると、 根尖性歯周炎と胃や腸などの消化器疾患との間に、 何らかの関係がある可能性が示唆されています。
この関連性をはっきりとさせるには、さらなる研究が必要ですが、 お口の健康が全身に影響を与えうる一例と言えるでしょう。 放置するとあごの骨が溶けたり、抜歯に至ったりすることもあるため、 歯の違和感を覚えたら早めに歯科医院へご相談ください。
根尖性歯周炎の種類
根尖性歯周炎は、症状のあらわれ方によって、 大きく2つのタイプに分けられます。 ご自身の症状がどちらに近いか、確認してみましょう。
- 急性根尖性歯周炎 何もしなくてもズキズキと脈打つように激しく痛みます。 歯が浮いたように感じたり、噛んだ時に激痛が走ったりと、 はっきりとした症状が急にあらわれるのが特徴です。 歯ぐきが大きく腫れてしまうこともあります。
- 慢性根尖性歯周炎 ほとんど自覚症状がないか、噛んだ時の軽い違和感程度です。 痛みがないため気づきにくく、歯の根の先で静かに進行します。 そのため、歯科医院でのレントゲン検査で偶然見つかることも多いです。
なぜ、このように症状の出方に違いがあるのでしょうか。 近年の研究では、痛みの原因となる細菌の種類が注目されています。 複数の研究結果を分析した信頼性の高い調査によると、 強い痛みを伴う急性タイプでは、「スピロヘータ門」という種類の細菌が、 症状のない慢性タイプに比べて多く見つかることがわかっています。
このことから、特定の細菌の活動が痛みの強さに関わっていると考えられます。 普段は症状のない慢性タイプでも、体調を崩して免疫力が下がると、 急に強い痛みが出て、急性へ移行することがあるため注意が必要です。
根尖性歯周炎の原因
根尖性歯周炎が起こる原因は一つではありません。 歯の根の先に炎症が起きてしまう主なきっかけは、 大きく分けると次の3つのパターンがあります。
- むし歯の放置 最も多い原因です。 むし歯が進行して歯の神経(歯髄)まで達すると、 細菌が歯の内部を通り、根の先まで侵入します。 そこで細菌が巣を作り、炎症を引き起こすのです。
- 過去の治療が不十分だった 以前に歯の根の治療(根管治療)を受けた歯でも、 再び細菌が増えて発症することがあります。 これは治療の際に細菌が完全に取り除けていなかったり、 消毒が不十分だったりしたことが原因です。
- 歯への強い衝撃(外傷) 歯を強くぶつけるなどして神経が死んでしまうと、 死んだ神経が細菌のすみかになります。 そこで細菌が増殖し、根の先に炎症を起こします。 ぶつけた直後は痛みがなくても注意が必要です。
また、近年の研究では、特に強い痛みを伴う場合に、 特定の細菌が多く存在することがわかってきました。 複数の研究を分析した信頼性の高い調査によると、 「スピロヘータ門」という種類の細菌が、 痛みのない場合に比べて多く見つかっています。 この細菌が、激しい痛みを引き起こす原因の一つと考えられます。
根尖性歯周炎の症状
根尖性歯周炎の症状は、とても静かな顔と、 とてもつらい顔の二面性を持っているのが特徴です。 ご自身の状態がどちらに近いか、確認してみましょう。
症状の出方には、歯の根の先にいる細菌が関係します。 複数の研究を分析した信頼性の高い調査によると、 特に強い痛みを伴う場合では、症状がない場合と比べて、 「スピロヘータ門」という細菌が多く見つかっています。 この細菌が、つらい痛みを引き起こす原因の一つと考えられます。
【主な症状のチェックリスト】
- 痛み 食事などで物を噛んだ時や、歯の周りを指で押すと痛みます。 急性の場合は、ズキズキと脈を打つような激痛を感じます。
- 歯ぐきの変化 歯の根元あたりがぷくっと腫れることがあります。 膿がたまり、おできのような出口(瘻孔)ができることもあります。
- その他の違和感 歯が浮いたような、ムズムズするような感じがします。 噛み合わせた時に、他の歯と違う違和感を覚えます。
慢性の場合は、ほとんど自覚症状がないまま進行します。 そのため、歯科医院でレントゲンを撮って初めて見つかることも珍しくありません。 気になる症状があれば、放置せずに歯科医院で相談することが大切です。
根尖性歯周炎の検査・診断
根尖性歯周炎は、歯の根の先という見えない場所で起こる病気です。 そのため、正確な診断には専門的な検査が欠かせません。 まずは歯を直接見たり、軽く叩いて痛みを確認したりします。
しかし、最終的な診断のためにはレントゲン検査が重要です。 レントゲン写真に写る、歯の根の先の黒い影が病気のサインです。 この検査には、主に次の2つの方法があります。
- デンタルX線写真 お口に小さなフィルムを入れ、特定の歯を詳しく撮影します。 拡大して見られるため、細かい部分の確認に優れています。
- パノラマX線写真 お顔の周りを機械が回り、あごの骨や歯全体を撮影します。 お口全体のバランスや、あごの状態も一度に確認できます。
複数の研究をまとめた信頼性の高い調査によると、 病気を見つける精度はデンタルX線写真の方が少し高いとされます。 そのため、歯の場所によって、より適した検査方法が選ばれます。
|
歯の場所
|
おすすめの検査方法
|
|
上の歯、下の前歯
|
デンタルX線写真
|
|
下の奥歯
|
どちらの検査も有効です
|
これらの検査結果と、問診や診察で得られた情報をあわせて、 総合的に診断を確定し、一人ひとりに合った治療計画を立てます。
根尖性歯周炎の治療
根尖性歯周炎の治療目的は、歯の根の中の細菌を取り除くことです。 そして、炎症を治し、大切な歯をできるだけ長く残すことを目指します。 この治療は、お口の中だけでなく全身の健康にも良い影響を与えます。
歯の根の先の炎症は、体の中で静かに続く小さな火事のようなものです。 近年の信頼性の高い研究では、適切な歯の根の治療(根管治療)により、 血液中の炎症を示す数値(hs-CRPなど)が下がることがわかっています。 これは、歯の治療が体全体の炎症を抑えることにつながる証拠です。
治療法は、歯の状態に応じていくつかの選択肢があります。
|
治療法
|
どのような時に選ばれるか?
|
|
根管治療
|
ほとんどの場合、まずこの治療から始めます。
細菌に汚染された神経などを取り除き、歯の根の中を丁寧に消毒します。
|
|
外科的処置
|
根管治療だけでは治らない頑固な病巣がある場合に行います。
歯ぐきを少し切って、直接細菌の巣を取り除く手術です。
|
|
お薬での治療
|
痛みや腫れが非常に強い時に、まず症状を落ち着かせるために行います。
痛み止めや抗生物質が使われます。
|
|
抜歯
|
歯の破壊が激しい場合や、根が割れている場合など、
残念ながら歯を残すことが難しい時の最終的な選択肢です。
|
最近では、レーザーなどを使った新しい治療法が紹介されることもあります。 しかし、複数の研究結果を分析した信頼性の高い調査によると、 これらの方法が従来の丁寧な根管治療より優れているという、 はっきりとした科学的証拠はまだ十分にありません。
どの治療法が最適かは、患者さん一人ひとりの歯の状態によって異なります。 まずは歯科医師による正確な診断を受け、治療の方針についてよく相談しましょう。