急性中耳炎
風邪をひいた後、お子さんが急に耳を痛がったり、夜中に泣き出したりして、不安な思いをした経験はありませんか?それは「急性中耳炎」かもしれません。この病気は決して珍しいものではなく、世界的には全人口の約11%もの人が経験すると言われています。
驚くことに、その患者さんの約半数は5歳までのお子さんです。なぜ、子どもは何度も中耳炎を繰り返してしまうのでしょうか。そこには、お子さん特有の体のつくりや、保育園などでの集団生活が大きく関係しています。
この記事では、急性中耳炎の根本的な原因から、ご家庭で気づける症状のサイン、そして最新の治療法までを詳しく解説します。何度も繰り返す中耳炎への対策や、予防接種の効果についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
急性中耳炎の概要
急性中耳炎は、鼓膜の奥にある「中耳」という空間に、 ウイルスや細菌が入り込んで急な炎症が起こる病気です。 風邪をひいたときに、鼻やのどの炎症が原因で起こります。
この病気は決して珍しいものではありません。 世界的には、全人口のおよそ11%が経験するといわれ、 その約半数は5歳までのお子さんが占めています。
お子さんに急性中耳炎が多いのには、主に2つの理由があります。
- 耳と鼻をつなぐ管(耳管)が未熟なため お子さんの耳管は、大人に比べて短く、傾きが水平です。 そのため、鼻やのどのウイルスや細菌が中耳に届きやすくなっています。
- 体の抵抗力が弱いため まだ免疫の機能が十分に発達していないため、 大人よりも感染症にかかりやすい傾向があります。
急性中耳炎は繰り返してしまうことも少なくありません。 しかし、予防接種によって重症化を防ぐことが期待できます。 ある研究では、肺炎球菌ワクチンを接種することで、 何度も中耳炎を繰り返すリスクが下がることが報告されました。 また、症状が重くなって鼓膜にチューブを入れる処置の 必要性を減らす効果も示されています。
急性中耳炎の種類
急性中耳炎は、経過や症状のあらわれ方によって、 いくつかの種類に分けられます。 それぞれの特徴を知ることで、病気への理解が深まります。
急性中耳炎は、主に以下の3つのタイプに分類されます。
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種類 |
主な特徴 |
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一般的な急性中耳炎 |
細菌やウイルスが原因で、急に強い炎症が起きた状態です。<br>耳の痛みや発熱といった、わかりやすい症状が出ます。 |
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再発性急性中耳炎 |
急性中耳炎を何度も繰り返す状態を指します。<br>目安として、6ヶ月に3回以上、1年に4回以上などが該当します。 |
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滲出性中耳炎 |
急な炎症が治まった後も、鼓膜の奥に液体が残る状態です。<br>痛みはほとんどなく、主な症状は聞こえにくさです。 |
特に、何度もつらい症状を繰り返す「再発性急性中耳炎」は、 お子さんやご家族にとって、心身ともに大きな負担となります。 ある研究では、肺炎球菌ワクチンを接種することで、 この再発性急性中耳炎の発生率が下がることが示されました。 また、症状が重くなり鼓膜にチューブを入れる処置の 必要性を減らす効果も報告されています。
一方で、「滲出性中耳炎」は痛みが少ないため気づきにくく、 聞こえにくさが続いてしまうことがあります。 鼻から耳へ空気を送る「自己耳管通気法」という方法も ありますが、その効果はまだはっきりとわかっていません。 また、肺炎球菌ワクチンは滲出性中耳炎の予防には、 残念ながらあまり効果が期待できないと考えられています。
急性中耳炎の原因
急性中耳炎は、風邪をきっかけに起こることがほとんどです。 鼻やのどの奥にいるウイルスや細菌が原因となります。 これらが「耳管(じかん)」という管を通り、 鼓膜の奥にある「中耳(ちゅうじ)」に入り込んで炎症を起こします。
多くは、まずウイルス感染が起こり、 体の抵抗力が落ちたところで細菌が増えて発症します。 原因となりやすい細菌の種類は、年齢によって少し異なります。
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年齢 |
主な原因となりやすい細菌 |
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赤ちゃん(新生児) |
大腸菌、黄色ブドウ球菌 など |
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子ども(14歳未満) |
肺炎球菌、インフルエンザ菌 など |
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大人(14歳以上) |
肺炎球菌、黄色ブドウ球菌 など |
また、体のつくりや生活環境も、かかりやすさに影響します。 特にお子さんに中耳炎が多いのは、次のような理由があるためです。
- 耳管のつくり お子さんの耳管は、大人に比べて短く、角度も水平に近いです。 そのため、鼻やのどの細菌が中耳までたどり着きやすくなっています。
- 集団生活 保育園や幼稚園などでは、どうしても風邪をもらう機会が増えます。 これが、中耳炎のリスクを高めることにつながります。
- 受動喫煙 ご家族にタバコを吸う方がいるご家庭では、 お子さんが中耳炎になりやすいことがわかっています。
細菌が原因の炎症では、耳だれが出ることがあります。 その場合、治療として抗生物質が検討されます。 海外のある研究では、飲み薬と点耳薬の抗生物質の効果を 比べる試みがありました。 限られたデータですが、飲み薬は耳の痛みを和らげ、 耳だれの期間を短くするのに効果的な可能性が示されました。 一方で、点耳薬はお腹の不調や発疹といった 副作用が少ない傾向にあることも報告されています。
急性中耳炎の症状
急性中耳炎になると、耳やからだに様々なサインが現れます。 これは、鼓膜の奥で起きた急な炎症が原因です。 代表的な症状は、主に次の3つです。
- 耳の痛み(耳痛) 突然始まる、ズキズキとした強い痛みが特徴です。 炎症で鼓膜の奥にうみがたまり、内側から圧迫されることで起こります。
- 熱が出る(発熱) 体がウイルスや細菌と一生懸命戦っているサインとして熱が出ます。 ときには、全身のだるさを感じることもあります。
- 耳からうみが出る(耳だれ・耳漏) 炎症が強くなり、たまったうみの圧力に鼓膜が耐えきれなくなると、 自然に破れてうみが外へ流れ出ることがあります。
症状のあらわれかたは、年齢によって少し異なります。 特に、まだ言葉でうまく伝えられないお子さんや赤ちゃんの ささいな変化に、周りの大人が気づいてあげることが大切です。
大人の場合
耳の痛みに加えて、次のような症状もよくみられます。
- 聞こえにくさ(難聴)
- 耳がつまった感じ(耳閉感)
子ども・赤ちゃんの場合のチェックリスト
次のようなサインがないか、注意深く見てあげましょう。
- ☐ 理由もなく機嫌が悪く、泣きやまない
- ☐ 耳をしきりにさわったり、引っ張ったりする
- ☐ ミルクやごはんをあまり欲しがらない
- ☐ 呼びかけへの反応がにぶい
これらの症状が続く期間は、治療によって変わることもあります。 ある研究では、飲み薬の抗生物質で治療すると、 耳の痛みや熱といった症状が改善しやすい可能性が示されました。 また、耳だれが出ている期間も短くなる傾向が報告されています。 気になる症状があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。
急性中耳炎の検査・診断
急性中耳炎の診断は、お話を聞くことと、 耳の中を直接見ることから始まります。 まず、いつからどんな症状があるかをお聞きします。 特に、48時間以内に始まった急な耳の痛みは、 診断のためのとても重要な手がかりになります。
言葉でうまく伝えられない小さなお子さんの場合は、 ご家族から見える変化が大切な情報です。 例えば、機嫌が悪い、耳をしきりに触るといった 普段と違う様子がないかなどを確認します。
次に、「耳鏡(じきょう)」というカメラを使い、 鼓膜の状態を詳しく観察します。 その際に、医師は次のようなポイントをチェックしています。
- 鼓膜の色の変化 健康な鼓膜は半透明ですが、炎症があると真っ赤に腫れます。
- 鼓膜の奥の状態 鼓膜の奥(中耳)に、うみなどの液体がたまっていないか見ます。
- 鼓膜のふくらみ うみがたまると、その圧力で鼓膜が外側にふくらんで見えます。
これらの観察結果と症状をあわせて、総合的に診断します。 また、これまでの病気の経験や予防接種の状況も参考にします。 ある研究では、赤ちゃんの時に肺炎球菌ワクチンを接種すると、 将来の耳の重い後遺症を減らす可能性が示されました。 早めに医療機関で正確な診断を受けることが大切です。
急性中耳炎の治療
急性中耳炎の治療は、主に2つの柱で進めていきます。 まず、耳の痛みや熱といった、今あるつらい症状を和らげること。 次に、原因となっている細菌の増殖を抑えることです。
治療法は、お子さんの年齢や症状の重さに合わせて選びます。 すぐに薬を使うのではなく、体の治る力を待つこともあります。
痛みや熱を和らげる治療
耳の痛みが強い時や、熱でつらい時には、 まず症状を楽にすることを優先します。 アセトアミノフェンやイブプロフェンといった、 解熱鎮痛薬という種類のお薬が使われます。
原因に対する治療
細菌が原因と考えられる場合には、抗生物質を使います。 しかし、軽症の場合はすぐに使わずに、 48〜72時間ほど様子を見ることも少なくありません。
抗生物質には、飲み薬と耳に直接入れる点耳薬があります。 ある研究では、この2つの効果や副作用が比べられました。 限られたデータですが、以下のような可能性が示されています。
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治療薬 |
メリットの可能性がある点 |
デメリットの可能性がある点 |
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飲み薬 |
・耳の痛みや熱、耳だれの改善が早い傾向 |
・お腹の不調や発疹などの副作用が出ることがある |
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点耳薬 |
・体全体への副作用が少ない傾向 |
・症状の改善に時間がかかることがある |
うみを出す治療(鼓膜切開)
痛みがとても強い、高熱が続く、お薬の効果が乏しい。 このような場合には、鼓膜を少しだけ切る処置をします。 これは「鼓膜切開(こまくせっかい)」と呼ばれる治療です。 鼓膜の奥にたまったうみを外に出すことで、 痛みが和らぎ、熱も下がりやすくなります。
どの治療法が最適かは、鼓膜の状態や症状によって異なります。 医師とよく相談しながら、一緒に治療方針を決めていきましょう。













