原因不明のあざや続く発熱、少し動いただけの息切れ。それは、体が発している危険なサインかもしれません。「血液のがん」とも呼ばれる急性白血病は、骨髄でがん細胞が急激に増殖し、病状が速く進行する深刻な病気です。正常な血液が作れなくなることで、貧血や感染症など様々な症状を引き起こします。
この記事では、急性白血病の詳しい種類や原因、そして化学療法を中心とした治療法について分かりやすく解説します。また、フランスの研究でも重要性が指摘されている、治療の影響で過去のワクチン効果が失われる可能性など、知っておくべき注意点にも触れていきます。ご自身と大切な人を守るための正しい知識を身につけましょう。
急性白血病の概要
急性白血病は「血液のがん」と呼ばれる病気の一つです。 血液をつくる工場である「骨髄(こつずい)」という場所で、がん化した未熟な血液細胞(白血病細胞)が急激に増殖します。 「急性」という名前の通り、病気の進行が速いことが特徴です。
私たちの体の骨髄では、主に3種類の血液細胞が作られています。
- 赤血球 全身に酸素を届け、私たちが活動するためのエネルギーを支えます。
- 白血球 体内に侵入した細菌やウイルスと戦い、体を感染から守ります。
- 血小板 ケガをした際に出血を止め、傷の治りを助ける働きがあります。
しかし、白血病細胞が骨髄を占拠してしまうと、これらの正常な血液細胞を十分に作れなくなってしまいます。 その結果、貧血による息切れやだるさ、感染症にかかりやすくなる、あざができやすく血が止まりにくいといった症状が現れます。
治療は化学療法(抗がん剤治療)が中心となります。 この治療はがん細胞を攻撃しますが、正常な細胞にも影響を与え、一時的に体の免疫力が低下します。
さらに重要な点として、治療の影響で、過去に受けたワクチンの効果が弱まったり失われたりすることがあります。 フランスの研究報告でも、治療後のワクチン再接種の重要性が強調されています。 そのため、体の機能が回復した後に、改めてワクチンを接種し、感染症を予防することが勧められます。
急性白血病の種類
急性白血病は、がんになってしまった血液細胞の種類によって、主に2つのタイプに分けられます。 どちらのタイプかによって治療法が大きく異なるため、この分類はとても重要です。
急性骨髄性白血病(AML)
- がんになる細胞 赤血球や血小板、白血球の一部になるはずだった「骨髄系細胞」が、がん化した状態です。
- 主な特徴 成人の急性白血病では最も多く、全体の約8割を占めています。
急性リンパ性白血病(ALL)
- がんになる細胞 ウイルスなどと戦うリンパ球になるはずだった「リンパ系細胞」が、がん化した状態です。
- 主な特徴 お子さんに最も多い白血病ですが、成人の急性白血病の約2〜3割もこのタイプです。
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種類
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がんになる細胞のもと
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よく見られる年代
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急性骨髄性白血病 (AML)
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骨髄系の細胞
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成人
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急性リンパ性白血病 (ALL)
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リンパ系の細胞
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小児
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また、非常にまれですが「系統転換」という現象が報告されています。 これは治療中にAMLがALLへ、またはその逆へと性質が変わってしまうことです。 研究によると、AMLからALLへと変わるケースの方がより一般的です。
系統転換が起こると、治療計画の予測が難しくなる傾向があります。 そのため、この現象に対応できるような、より効果的で体への負担が少ない治療法の開発が世界中で進められています。
急性白血病の原因
急性白血病がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 多くの場合、たった一つの原因で発症するわけではないのです。 しかし、体の設計図である「遺伝子」に傷がつくことが、病気の始まりだと考えられています。
私たちの骨の中心にある「骨髄」は、血液を作る大切な工場です。 この工場で、血液のもとになる細胞の遺伝子に何らかのきっかけで傷がつくと、異常な細胞(白血病細胞)が無限に増え始めてしまいます。 この遺伝子の傷は、生まれつきではなく、生活する中で後からつく場合がほとんどです。
遺伝子に傷がつくきっかけとなり、病気の可能性を高める要因(リスク因子)として、いくつか知られているものがあります。
- 過去に受けた治療 他のがんの治療で使った抗がん剤や放射線治療が、遺伝子に影響を与えることがあります。
- 特定の化学物質や習慣 ベンゼンという化学物質を扱う環境や、タバコを吸う習慣もリスクを高めることが知られています。
- もともと持っている病気 「骨髄異形成症候群」という、正常な血液を作りにくくなる病気から、急性骨髄性白血病へ進行することがあります。 また、ダウン症候群など一部の遺伝性の病気も、発症と関連することが報告されています。
- その他の要因 ご高齢であることや、ご家族に白血病の方がいる場合も、リスクの一つと考えられています。
ただし、これらのリスク因子がまったくない人でも発症します。 反対に、リスクがあるからといって必ず病気になるわけでもありません。 原因が特定できないケースが多いため、ご自身を責める必要は決してありません。
急性白血病の症状
急性白血病になると、血液を作る工場である骨髄が、がん細胞(白血病細胞)に占拠されてしまいます。 その結果、正常な血液細胞を作れなくなり、体はSOSサインを出し始めます。 ご自身の体調で当てはまるものがないか、確認してみましょう。
<体調チェックリスト>
- 赤血球が減ることによる症状(貧血) 顔色が悪く、少し動いただけでも息切れや動悸がします。 これは全身に酸素を運ぶ赤血球が不足するためです。 体がだるく、常に疲れを感じるのも特徴です。
- 血小板が減ることによる症状(出血傾向) 身に覚えのないあざ(青あざ)ができやすくなります。 また、鼻血や歯ぐきからの出血が止まりにくくなります。 これは、血を固める働きを持つ血小板が減るためです。
- 正常な白血球が減ることによる症状(免疫力低下) 風邪でもないのに38度以上の原因不明の熱が出ます。 細菌やウイルスと戦う力が弱まり、肺炎などの感染症を繰り返しやすくなります。
- その他の症状 骨髄で白血病細胞が増えることで、骨や関節が痛むことがあります。 また、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れることもあります。
特に注意したいのが、皮膚に現れるサインです。 急性骨髄性白血病の前段階である「骨髄異形成症候群」という病気があります。 ある研究レビューでは、この病気と診断されるより前に、約35%の患者さんで原因不明の発疹や血管の炎症といった皮膚症状が現れたと報告されています。
これらの皮膚症状のパターンを認識することは、病気の早期発見につながる可能性があります。 もちろん、リストの症状は他の病気でも起こり得ます。 しかし、複数の症状が当てはまったり、長く続いたりする場合は、早めに血液内科を受診してください。
急性白血病の検査・診断
急性白血病が疑われるとき、病気の正体を正確に突き止める検査が行われます。 これは、一人ひとりに合った最適な治療法を決めるための、とても大切なステップです。
まず、最初に行うのは血液検査です。 腕の血管から少しだけ血を採って、血液中の細胞の数や種類を調べます。
- 血球数算定 赤血球、白血球、血小板の数を確認します。 白血病では正常な細胞が減り、異常な細胞が増える傾向があります。
- 血液像 血液を顕微鏡でじっくり観察します。 がん細胞(白血病細胞)がいるか、どんな形をしているか調べます。
血液検査で病気の疑いが強まると、診断を確定するために骨髄検査をします。 血液を作る工場である「骨髄」の状態を、直接調べるための大切な検査です。 部分的に麻酔をして、胸や腰の骨に細い針を刺し、骨の中の血液(骨髄液)を少しだけ採ります。
この骨髄液を使って、さらに詳しい分析をします。
- 白血病細胞の割合や形の確認
- 染色体・遺伝子検査 白血病細胞の設計図である遺伝子を調べ、病気の詳しいタイプを特定します。 この結果は、どんな治療が効果的かを予測するのに役立ちます。
診断が確定すると、速やかに治療が始まります。 治療中は体の抵抗力(免疫力)が大きく下がるため、感染症の予防が非常に重要です。 研究では、治療中に薬を予防的に使うことで、感染症のリスクを下げられると報告されています。
例えば、ある研究では、カビ(真菌)の感染を防ぐ薬をあらかじめ使うことで、白血球が減って危険な期間を短くできる可能性が示されました。 また、細菌感染を予防する抗菌薬の使用も、重い感染症を減らすのに役立つと考えられています。
急性白血病の治療
急性白血病の治療目標は、がん細胞をなくすことです。 そして、血液を作る骨髄の働きを正常に戻すことを目指します。 治療は「化学療法」と「造血幹細胞移植」が大きな柱です。
治療はいくつかの段階に分けて、計画的に進められます。
- 寛解(かんかい)導入療法 治療の第一歩で、がん細胞をできるだけ減らす強力な治療です。 まず体の中のがん細胞を、一気に叩くイメージです。
- 地固め(じがため)療法 寛解導入療法で目に見えなくなったがん細胞を、完全になくすための治療です。 隠れているかもしれない敵を、徹底的に掃討します。
化学療法を行うと、がん細胞だけでなく正常な細胞も影響を受けます。 特に体を守る白血球が減り、免疫力が著しく低下します。 この時期は、普段なら問題ない細菌やカビで重い感染症を起こす危険があります。
そのため、感染症を防ぐ「支持療法」が極めて重要になります。 小児の急性白血病の研究では、抗生物質を予防的に使うことで、細菌が引き起こす重い感染症のリスクを減らせることが報告されています。
また、カビによる感染症も大きな問題です。 バングラデシュで行われた研究では、カビを防ぐ薬(フルコナゾール)をあらかじめ使った場合、免疫力が極端に下がる危険な期間が短縮されたと報告されています。 この研究では、薬を使ったグループの危険な期間が平均約13日だったのに対し、使わなかったグループでは約17日でした。
化学療法で十分な効果が得られない時や再発した場合は、造血幹細胞移植が選択肢となります。 これは、健康な血液を作るもとになる細胞を移植する治療法です。
どの治療を選ぶかは、白血病のタイプや体の状態をみて慎重に判断します。 担当医とよく話し合い、ご自身に合った治療を進めることが何より大切です。