お子さんがインフルエンザなどの高熱を出した際、「呼びかけても反応が鈍い」「けいれんを起こす」「急におびえて意味不明なことを言う」といった様子はありませんか?それはただの熱のせいではなく、命を脅かす「急性脳症」の危険なサインかもしれません。
急性脳症は主に乳幼児が発症し、年間数百人が診断されます。致死率は約6%、さらに30%以上のお子さんに何らかの後遺症が残るとも報告されている、非常に恐ろしい病気です。ウイルス感染をきっかけに免疫が暴走し、脳に深刻なダメージを与えてしまいます。
この記事では、急性脳症の初期症状や原因、いざという時の対処法について詳しく解説します。お子さんの異変を見逃さず、大切な命を守るために、ぜひご一読ください。
急性脳症の概要
急性脳症とは、脳の血管が詰まったり切れたり、 ウイルスが直接脳に入り込んだりしていないのに、 脳が急にむくんでしまう病気の総称です。
インフルエンザなどのウイルス感染をきっかけに、 体を守るための反応が過剰に起きてしまい、 脳の機能に異常をきたすと考えられています。
特に注意が必要なのは、乳幼児のお子さんです。 発症年齢の平均は4歳とされ、年間数百人が発症します。 命を落とす危険性が約6%、何らかの後遺症が残る割合は 30%以上と報告されており、注意が必要な病気です。
お子さんに以下のような症状が見られたら注意しましょう。
- 意識がもうろうとする 呼びかけても反応がにぶい状態を指します。
- けいれん 白目をむいて手足が硬直したり、ガクガク震えたりします。
- せん妄 急に興奮したり、幻が見えたりする混乱した状態です。
この「せん妄」は急性脳症の重い症状の一つです。 近年、せん妄の発生を抑えるための研究も進められており、 その一つにミノサイクリンという薬の効果を調べる 臨床研究などがあります。
お子さんの発熱時に意識の状態がおかしいなど、 気になる様子があればすぐに医療機関を受診してください。
急性脳症の種類
「急性脳症」と一言でいっても、実は1つの病気ではありません。 脳が急にダメージを受ける、さまざまな状態をまとめた呼び名です。 原因や脳のダメージの受け方で、いくつかの種類に分けられます。
特に重症になりやすい、代表的な2つのタイプがあります。
- 急性壊死性脳症(ANE) 体を守る免疫の仕組みが暴走し、正常な脳まで攻撃します。 これをサイトカインストームと呼び、脳以外の臓器も傷つけます。
- 遅発性拡散低下をともなう急性脳症(AESD) 脳の神経細胞が興奮しすぎて、壊れてしまうことが原因です。 発熱から数日経って、急に症状が悪化することがあります。
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種類
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主な原因(考えられているもの)
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特徴
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急性壊死性脳症(ANE)
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サイトカインストーム(免疫の暴走)
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脳以外の臓器にも影響が出やすい
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遅発性拡散低下をともなう急性脳症(AESD)
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興奮毒性(神経細胞の過剰な興奮)
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数日後に症状が悪化することがある
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また、発熱時に長いけいれんが続く状態が、急性脳症につながることもあります。 なぜそうなるかについて、特定の遺伝子が関係する場合があることも研究で示唆されています。
このように急性脳症はさまざまな状態を含むため、他の病気と区別することが重要です。 例えば、HIV関連の病気の診断では、まず急性脳症ではないことを確認する手順がふまれます。 それほど慎重な判断が求められるのです。
急性脳症の原因
急性脳症がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 多くの場合、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
主なきっかけは、インフルエンザや突発性発疹などのウイルス感染症です。 ただし、ウイルスが直接脳にダメージを与えるわけではありません。 体を守る「免疫」という仕組みが、過剰に反応することが原因です。
この免疫の暴走は「サイトカインストーム」と呼ばれます。 ウイルスを攻撃する物質(サイトカイン)が大量に放出され、 自分の正常な脳の細胞まで傷つけ、脳のむくみを引き起こします。
ウイルスに感染しても、誰もが急性脳症になるわけではありません。 患者さん側の要因も、発症に大きく関わるとされています。
- 体の代謝の異常 糖尿病や肝臓の病気、体の水分や塩分の乱れなどです。
- お薬の影響や手術後の合併症 特定の薬の使用や、手術が体に与える影響も考えられます。
- 遺伝的な要因 生まれ持った体質が発症に関わることもあります。
最近の研究では、遺伝的な要因の関与も明らかになってきました。 特に、発熱時に長いけいれんが続く状態は、急性脳症の危険なサインです。 ある研究では、この状態になりやすい背景に、特定の遺伝子変異が 関係している可能性が示唆されています。
このように原因が複雑なため、他の病気との区別が非常に重要です。 例えば、HIV関連の脳の病気を診断する際も、まず急性脳症ではないことを 確認する手順がふまれるほど、慎重な判断が求められます。
急性脳症の症状
急性脳症の症状は、インフルエンザなどの発熱をきっかけに、 急激にあらわれることが大きな特徴です。 脳の機能が一時的にうまく働かなくなることで、 お子さんの体に以下のようなSOSのサインが出ます。
【急性脳症で注意すべき主な症状】
- 意識がおかしくなる ぐったりして、呼びかけへの反応が鈍くなります。
- けいれん 5分以上けいれんが続いたり、短いけいれんを繰り返します。
- せん妄(せんもう) 急に興奮し、意味のわからないことを言ったりおびえたりします。
- くり返す嘔吐や強い頭痛 脳のむくみによって、頭の中の圧力が高まることで起こります。
- 呼吸のリズムが乱れる 生命維持に重要な脳幹に影響が及んでいるサインです。
これらの症状の中でも「意識障害」と「けいれん」は、 急性脳症で最もよくみられる初期症状です。 普段と違って視線が合わない、うとうとし続けるなど、 少しでもおかしいと感じたら注意深く観察してください。
「せん妄」は、急性脳症の重い症状の一つです。 ある研究では、せん妄は急性脳症の重篤な形態とされており、 その発生を抑えるための研究も進められています。 これは物事を考える力や覚える力といった認知機能が、 一時的に大きく低下していることを示しています。
もしお子さんにこれらの症状が一つでもみられたら、 様子を見ずに、すぐに医療機関を受診してください。
急性脳症の検査・診断
急性脳症は、症状だけでは診断がとても難しい病気です。 発熱やけいれんなど、他の病気でも見られる症状が多いためです。 そのため、似た症状の病気(髄膜炎など)ではないことを確かめ、 正確に診断するために、いくつかの検査を組み合わせて判断します。
一般的には、お子さんの体の状態に合わせて、 以下のような検査が行われます。
- 血液検査 体の中で強い炎症が起きていないか、栄養状態はどうか、 また肝臓などの臓器が正常に働いているかを調べます。
- 画像検査(CT・MRI) 脳の断面写真を撮り、脳がむくんでいないかを確認します。 特にMRI検査は、急性脳症に特徴的な脳のわずかな変化も、 はっきりと映し出すことができるため、非常に重要です。
- 髄液検査(ずいえきけんさ) 背中から針を刺し、脳や脊髄の周りを流れる液体を調べます。 ウイルスが直接脳を攻撃していないかを確認するために行います。
- 脳波検査 頭に小さな電極を貼り、脳の活動を波の形で記録します。 この検査で、けいれんの有無や脳の機能低下の程度がわかります。 重症の患者さんでは、「リズム性」や「周期性」といった、 規則的なパターンを持つ特徴的な脳波が見られることがあります。 これらの脳波を詳しく読み解くことで、急性脳症の状態を より深く理解し、診断の助けとすることが重要です。
これらの検査をしても、発症してすぐの段階では、 はっきりとした異常が見つからないことも少なくありません。 そのため、お子さんの症状の経過を注意深く見守りながら、 繰り返し検査を行うことで、総合的に診断を下していきます。
急性脳症の治療
急性脳症には、残念ながら「これをすれば治る」という 決まった治療法(特効薬)はまだありません。 そのため、今出ているつらい症状を和らげる「対症療法」と、 原因の病気の治療を同時に進めることが基本です。
治療は、お子さんの状態を慎重に見ながら進められます。
主な治療方法
急性脳症の治療で最も大切なのは、まず全身の状態を安定させ、 命を守ることです。症状に応じて、以下の治療を組み合わせます。
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治療の目的
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具体的な方法の例
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命を守る(全身管理)
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呼吸が苦しければ人工呼吸器を使うなど、<br>集中治療室(ICU)で専門的な管理を行います。
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けいれんを抑える
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けいれんの発作を止め、くり返さないように<br>抗けいれん薬というお薬を点滴します。
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脳のむくみを和らげる
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脳のむくみで高くなった脳の圧力を下げるため、<br>おしっこを増やす薬(利尿薬など)を使います。
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原因への対応
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インフルエンザが原因なら抗インフルエンザ薬など、<br>原因となっている感染症の治療を行います。
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正確な診断と新しい治療法の研究
急性脳症の治療では、原因を正確に見極めることが重要です。 似た症状でも、詳しく調べると他の珍しい病気が隠れている場合もあり、 慎重な診断が、正しい治療への第一歩となります。
また、世界中でより良い治療法を見つける研究も進んでいます。 例えば、意識が混乱する「せん妄」という重い症状があります。 このせん妄に対し、ミノサイクリンという薬が有効かもしれない という研究報告があります。
ある研究では、この薬でせん妄の発生が少なくなり、 病院での死亡率も低下したとされています。 ただし、まだ研究段階のため、今後のさらなる検証が期待されます。