「NORSE(ノース)」という聞き慣れない病名に、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは、これまで元気に過ごしていたお子さんの脳に突然炎症が起こり、けいれんが止まらなくなってしまう、非常に難しい病気です。脳の中で電気的なショートが繰り返し起こるような状態を想像してみてください。
大規模な国際調査では、患者さんの脳と脊髄の周りの水分(髄液)に炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質が非常に増えていることが報告されています。この病気は治療が難しいとされてきましたが、近年は免疫の異常に注目した「アナキンラ」や「トシリズマブ」といった新しい治療法が積極的に研究され、希望が見え始めています。
この記事では、NORSEがどのような病気で、なぜ難病とされるのか、そして最新の治療選択肢までを詳しく解説します。大切な方の未来を守るため、ぜひご一読ください。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の概要 この病気の名前は少し難しいですが、「NORSE(ノース)」という愛称で呼ばれています。これは、脳が突然、大きなトラブルを起こしてしまう、とても大変な病気のことです。これまで元気に過ごしていた子どもたちが、ある日急に脳に炎症が起こり、体が勝手にピクピク、ガタガタとけいれんしてしまう状態が、なかなか止まらなくなってしまうことが特徴です。
脳の中で電気的なショートが繰り返し起こり、それが止まらなくなっているような状態だと考えてみてください。このNORSEでは、体を守る「警備隊」のような役割を持つ「免疫」の働きに異常が生じていることがわかってきています。特に、生まれたときから体に備わっている「自然免疫」という守りの仕組みが、うまく機能しないことで脳の炎症が悪化すると考えられています。
多くの研究から、NORSEの患者さんでは、脳と背骨の中にある水分(髄液)に普段よりもたくさんの細胞が見つかることがあります。また、炎症を起こす「サイトカイン」という物質が非常に増えていることも報告されています。大規模な国際的な調査でも、他の重いけいれんの病気と比べて、NORSEの患者さんでサイトカインのレベルが高いことが示されました。
しかし、一人ひとりの患者さんで、脳の炎症のパターンが少しずつ異なっていることも、最近の研究で明らかになっています。このような病状のため、NORSEは治療が難しいとされています。ですが、近年は免疫の異常に注目した新しい治療法が積極的に研究されています。
具体的には、炎症を引き起こす特定の物質を抑える「アナキンラ」や「トシリズマブ」といったお薬が使われることがあります。また、脳の中の炎症を直接鎮める「髄腔内デキサメタゾン」というお薬も有望であると注目されています。さらに、「カナキヌマブ」など、新しいタイプのお薬の研究も進められています。私たち医師も、患者さんの状態を詳しく見極め、それぞれの炎症のタイプに合わせた「オーダーメイド」の治療法を一緒に考えていくことが大切だと考えています。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の種類 このNORSEという病気は、さまざまな原因が考えられるため、いくつかの「種類」に分けられます。 どのタイプかを知ることは、治療を考える上でとても大切です。
特に多く見られるのは、私たちの体を守る「免疫」(体の警備隊)が、 なぜか間違って自分の脳を攻撃してしまうことで起こるタイプです。 これを「自己免疫性てんかん」と呼んでいます。
この自己免疫性てんかんには、具体的な名前のついた種類があります。 例えば、「ラスムッセン症候群」という病気や、 まれに腫瘍が関係する「傍腫瘍性辺縁系脳炎」といったタイプです。 また、脳の神経細胞にある「LGI1」というタンパク質や、 「GAD65」という酵素に対して体が反応してしまう「自己抗体」が見つかるケースもあります。
この「自己免疫性てんかん」は、てんかん発作が起こりやすい 「自己免疫性脳炎」という別の病気と症状が似ているため、区別が難しいことがあります。 私たち医師は、患者さんの症状をしっかり見て、どちらのタイプかを慎重に判断するようにしています。
実は、てんかんという病気全体では、およそ3分の1はまだ原因がはっきりわかっていません。 しかし、国際的な研究によると、原因不明のてんかんの中にも、 約5%は免疫の異常が関係している可能性があると報告されています。 世界のてんかんの専門家グループも、免疫の異常がてんかんの原因の一つであることを認めています。
特に、通常のお薬だけではなかなか発作が止まらない「薬剤抵抗性てんかん」の患者さんでは、 複数の「自己抗体」が見つかることがあります。 これは病気の診断を複雑にし、治療も難しくなるため、できるだけ早くこれらの抗体を見つけることが非常に重要です。 一般的な抗てんかん薬だけでは、免疫に関わる発作を抑えきれないことも多いため、 最近では免疫の働きを整える新しいお薬(免疫調節療法)の研究も進められています。
私たちは、一人ひとりの患者さんの体の状態を細かく調べて、 その方に合った最適な治療法を見つけることが大切だと考えています。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の原因 このNORSEという病気の原因は、まだすべてがはっきりわかっていません。 しかし、最近の研究から、脳の中で炎症が起こってしまうことや、 私たちの体を守る「免疫」という仕組みの異常が深く関係していることが分かってきました。 私たち医師も、この「免疫」の働きに注目しています。
特に、原因がはっきりしないNORSE(「c-NORSE」と呼ばれます)では、 私たちが生まれつき持っている「自然免疫」という守りの仕組みがうまく働かないと、 脳の炎症が悪くなってしまうと考えられています。 病気の患者さんの脳の周りの水分を調べると、炎症に関わる細胞がたくさん増えたり、 炎症を起こす「サイトカイン」という物質がたくさん見つかったりすることがあります。 これは、国際的な大規模な調査でも報告されています。 つまり、この自然免疫の働きが、NORSEが始まるのにとても大切だということです。
また、自分の体を守るはずの免疫が、なぜか間違って自分の脳を攻撃してしまうことがあります。 これを「自己免疫」といいます。 全てのてんかんの約3分の1は、まだ原因が分からないと言われています。 しかし、そのうちの約5%は、この「免疫」の異常が関係している可能性があると推測されています。 世界のてんかんの専門家グループも、免疫の異常がてんかんの原因の一つであることを認めています。 例えば、脳の神経細胞にある「LGI1」や「GAD65」といった特定のタンパク質が、 間違って攻撃されてしまうケースも報告されています。
特に、なかなか発作が止まらない「薬剤抵抗性てんかん」の患者さんでは、 自分の体を攻撃してしまう特別な「自己抗体」が複数見つかることもあります。 このような状況は、病気の診断を難しくし、治療も複雑になるため、 できるだけ早くこれらの抗体を見つけることがとても重要だと考えています。 NORSEの患者さん一人ひとりで、脳の炎症のパターンが少しずつ異なることも分かってきています。 そのため、患者さんに合った「オーダーメイド」の治療法を見つけるためにも、 原因を詳しく調べていくことが大切だと考えています。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の症状 この「NORSE(ノース)」という病気にかかると、脳に炎症が起こり、 普段の元気な状態とは異なる、さまざまな体のサイン(症状)が現れます。 中でも一番の特徴は、くり返し起こる「てんかん発作」です。
発作が何度も続いてしまったり、なかなか止まらなかったりすることが多くあります。 これは「てんかん重積状態」と呼ばれる、とても心配な状態です。 特に小さなお子さんの場合、この発作が止まりにくく、 意識がもうろうとする「脳症」という状態になりやすいことが分かっています(Rubin M et al., 2025)。 また、一度てんかん発作が起こると、それが長引き、 「慢性てんかん」に移行してしまうリスクも、小さなお子さんでより多く見られます(Rubin M et al., 2025)。
てんかん発作だけでなく、脳の炎症は心や体の動きにも影響を与えます。 たとえば、以下のような症状が現れることがあります。
気分が不安定になる、幻覚を見る、イライラしやすくなる、
いつもと違う言動をとるなど、心に変化が現れます。
これらの症状は、患者さんの45.5~71.4%で認められると報告されています(Saeed S et al., 2025)。
ものごとを覚えにくくなる、集中力が続かない、
考えがまとまらないなど、考える力に影響が出ます。
およそ30.6%の患者さんに見られる症状です(Saeed S et al., 2025)。
体の一部が動きにくくなる、うまく歩けない、
体が震えるなど、体の動きに問題が生じます。
こちらも約30.6%の患者さんで報告されています(Saeed S et al., 2025)。
これらの症状は、一人ひとりの患者さんで異なり、 時期によって変化することもあります。 NORSEは、他の脳炎(例えば「抗NMDA受容体脳炎」と呼ばれる病気)と 重なって発症することがあり、症状がさらに複雑になる場合もあります(Saeed S et al., 2025)。
小さなお子さんで、上記のような症状に気づいたら、 早く専門の医療機関に相談することが大切です。 私たちは、患者さんの症状を詳しく見て、適切な対応を一緒に考えていきます。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の検査・診断 NORSEという病気は、脳に大きなトラブルが起きるため、できるだけ早く病気を見つけ、適切な治療を始めることが大切です。診断が遅れると、脳への負担が大きくなるだけでなく、体の他の部分にも悪い影響が出てしまう可能性があるからです。私たち医師も、早く診断をして、お子さんが少しでも楽になるようサポートしたいと考えています。
病気を診断するためには、いくつかの検査を組み合わせて、脳と体の状態を詳しく調べていきます。
脳がどんな電気的な活動をしているかを見る検査です。
見た目にはけいれんしていなくても、脳の中では発作が続いていることがあります。
「非けいれん性てんかん重積状態」と呼ばれる状態は、発見が難しいものです。
時間をかけて脳波を記録し続けることで、隠れた発作も早く見つけられます。
早期に発見することは、お子さんの未来を守るためにとても重要です。(Iglesias AH et al., 2025)
脳の形や様子を写真のように詳しく見る検査です。
NORSEの患者さんの約75%で、脳に何らかの異常な変化が見つかることがわかっています。(Saeed S et al., 2025)
脳と背骨の中にある水分(髄液)や血液を調べることで、体の「免疫」という守りの仕組みに異常がないかを探ります。
検査では、「抗NMDA受容体抗体」という、脳を攻撃してしまう目印が見つかることがあります。
また、「MOG抗体」や「AQP4抗体」といった別の種類の目印も、同時に見つかる場合があります。(Saeed S et al., 2025)
複数の異常が重なると、診断が複雑になることもあります。(Saeed S et al., 2025)
間違った結果が出ないよう、専門の施設で信頼できる方法を使って、慎重に検査を進めます。
標準化された方法で調べることで、より正確な診断につながります。(Saeed S et al., 2025)
すべての検査結果を総合して、私たち医師がNORSEであるかを診断していきます。お子さんの状態を細かく見極めることが、適切な治療への第一歩となるのです。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎の治療 「NORSE(ノース)」という病気の治療は、お子さんの命と未来を守るために、早く対応することが何よりも大切です。私たち医師は、主に次の3つのステップで治療を進めていきます。
くり返す発作を早く止めること
病気の根本原因を見つけて治すこと
全身の状態をしっかり守ること
発作が続く時間は、お子さんの脳だけでなく、体全体に大きな影響を与えてしまいます。てんかんの発作が長く続けば続くほど、治療が難しくなるだけでなく、命に関わる危険性も高まることがわかっています。もし、発作が止まらない状態が続くと、「超難治性てんかん重積状態」というさらに重い状態に進んでしまい、命を落とす危険性が大きく上がることが報告されています。だからこそ、できるだけ早く、確実な方法で発作を止めることが非常に重要です。
1. 発作を早く、確実に止める薬 発作を止めるためには、点滴などで強い薬を使って、脳の興奮を鎮めます。一般的に使われる抗てんかん薬だけでなく、この病気では、脳の炎症を抑える「免疫療法」という特別な治療がとても大切になってきます。
2. 体の警備隊(免疫)を整える「免疫療法」 NORSEの原因が、体の警備隊(免疫)が間違って自分の脳を攻撃してしまう「自己免疫」の病気であったり、脳に強い炎症が起きていることが原因だと考えられる場合には、免疫の働きを調整する治療を行います。脳の中で炎症を起こす「サイトカイン」という悪い物質がたくさん出ていることが分かっており、この物質の働きを抑える薬を使うことがあります。
具体的には、以下のようなお薬が使われます。
アナキンラ:炎症を起こす物質の一つである「IL1(アイエルワン)」の働きをブロックします。
トシリズマブ:もう一つの炎症物質「IL6(アイエルシックス)」の働きをブロックします。
これらの薬は、発作を抑えることに期待が持てることが多くの報告で示されています。
また、最近では脳の炎症を直接鎮める新しい治療法も注目されています。
髄腔内デキサメタゾン:脳と脊髄の周りの水分の中に直接入れるお薬で、有望な効果と少ない副作用が報告されています。
カナキヌマブ:炎症を起こす「IL1」という物質を抑える新しいタイプのお薬です。
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)阻害薬:これらも、炎症を抑えるための新しい治療として研究が進められています。
この病気は、一人ひとり炎症のパターンが少しずつ違うため、お子さんの状態に合わせて最適な「オーダーメイド」の治療法を私たち医師が一緒に考えていきます。
3. 全身の状態をしっかり守る治療 発作が長く続くと、脳だけでなく、体の他の大事な部分(臓器)にも大きな影響が出てしまうことがあります。例えば、心臓のリズムが乱れたり(不整脈)、呼吸が難しくなったり(呼吸不全)、腎臓や胃腸の働きが悪くなったりと、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
そのため、集中治療室などで、お子さんの全身の状態を細かく観察しながら、それぞれの臓器の働きを支える治療も同時に行っていきます。早期に体の合併症を見つけて対処することは、お子さんの回復にとってとても大切です。
私たち医師は、お子さんが一日も早く元気な生活に戻れるよう、全力を尽くします。心配なことや気になることがあれば、いつでもご相談ください。
まとめ 「NORSE(ノース)」は、脳に突然重い炎症が起こり、けいれんが止まらなくなる大変な病気です。体を守る免疫の働きに異常が生じ、脳の中で炎症を引き起こす物質が増えてしまうことが原因と考えられています。治療は難しいとされますが、近年では炎症の原因となるサイトカインを抑える「アナキンラ」や「トシリズマブ」、脳に直接作用する「髄腔内デキサメタゾン」など、免疫の異常に注目した新しい治療法が積極的に研究され、使われています。
症状は繰り返し起こるてんかん発作のほかに、気分や認知機能、運動の障害など様々です。お子さんにこうした症状が見られたら、早期の診断と治療が回復への第一歩となります。脳波検査やMRI、血液・髄液検査などを組み合わせて詳しく調べ、お子さんの状態に合わせた「オーダーメイド」の治療を始めることが大切です。
もし、小さなお子さんに気になる症状がある場合は、一日も早く専門の医療機関にご相談ください。私たち医師も、お子さんが元気な生活に戻れるよう、全力でサポートさせていただきます。
参考文献 Hanin A, Hirsch LJ. “Immune dysregulation in new-onset refractory status epilepticus (NORSE): current insights and therapeutic perspectives.” Brain & development 47, no. 5 (2025): 104406. Reyes-Cuayahuitl A, Estrada-Garcia DA, Orea-Méndez N, Vega-Garcia A, Chew-Irra ML, -López ER, Orozco-Suarez S. “Immune-mediated inflammatory conditions in epilepsy: role of autoimmunity.” Epilepsy & behavior : E&B 172, no. (2025): 110675. Rubin M, Cutillo G, Viti V, Margoni M, Preziosa P, Zanetta C, Bellini A, Moiola L, Fanelli GF, Rocca MA, Filippi M. “MOGAD-related epilepsy: a systematic characterization of age-dependent clinical, fluid, imaging and neurophysiological features.” Journal of neurology 272, no. 8 (2025): 508. Saeed S, Wang H, Jia M, Liu TT, Xu L, Zhang X, Hu SH. “The spectrum of overlapping anti-NMDAR encephalitis and demyelinating syndromes: a systematic review of presentation, diagnosis, management, and outcomes.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2517813. Iglesias AH, Balabanov A, Raedy A. “Systemic Complications of Status Epilepticus.” Current neurology and neuroscience reports 25, no. 1 (2025): 66. 追加情報 参考論文
Immune dysregulation in new-onset refractory status epilepticus (NORSE): current insights and therapeutic perspectives. 新規発症難治性てんかん重積状態(NORSE)における免疫異常:現在の知見と治療の展望 【要約】
原因不明の新規発症難治性てんかん重積状態(c-NORSE)は、自然免疫の機能不全に起因する炎症の悪化から生じることが示唆されている。
NORSE患者における炎症バイオマーカーを報告した研究、または標的免疫療法を評価した研究の文献レビューを実施した。
29件の研究を分析した結果、c-NORSEでは、入院時に髄液細胞増多(通常はリンパ球性で軽度)が頻繁に認められ、自然免疫関連の炎症性サイトカインの上昇が一貫して報告された。
大規模な国際研究では、他の難治性てんかん重積状態患者と比較して、c-NORSEで有意に高いサイトカインレベルが示され、c-NORSEの病態生理における自然免疫の重要性が示唆された。
最近の研究では、c-NORSEの中で異なる炎症プロファイルを持つサブグループが特定され、異なる治療アプローチが示唆されている。
NORSEに対する標的免疫療法の使用は、30件以上の症例シリーズまたは報告で文書化されており、アナキンラ(IL1拮抗薬)とトシリズマブ(IL6拮抗薬)が最も一般的に使用されており、どちらも発作抑制において同等の効果を示しているようである。
最近では、髄腔内デキサメタゾンが特に関心を集めており、有望な有効性を示し、副作用は報告されていない。
その他の新たなアプローチとしては、カナキヌマブ(抗IL1抗体)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)阻害薬などがある。
c-NORSEの発症と進行における自然免疫障害の理解が進み、患者の不均一性が強調され、特定の炎症経路を標的とする個別化された戦略の必要性が強調されている。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40712353
Hanin A and Hirsch LJ. “Immune dysregulation in new-onset refractory status epilepticus (NORSE): current insights and therapeutic perspectives.” Brain & development 47, no. 5 (2025): 104406.
参考論文
Immune-mediated inflammatory conditions in epilepsy: role of autoimmunity. てんかんにおける免疫介在性炎症状態:自己免疫の役割 【要約】
てんかんと神経炎症の関連を示す研究は多い。ラスムッセン症候群や傍腫瘍性辺縁系脳炎、難治性てんかん重積例などがその代表例である。
自己免疫性脳炎の患者は、てんかん発作を起こしやすい、またはてんかんのリスクが高いため、自己免疫性てんかんとの関連が混同されることがある。
全てんかんの約3分の1は原因不明であり、原因不明の焦点てんかんの約5%は免疫介在性である可能性があると推定されている。
自己免疫病態生理学的メカニズムは、国際抗てんかん連盟による最新の分類で、てんかんの原因の一つとして含まれている。
自己免疫起源のてんかんと最も関連する抗原は、主にグルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)などの細胞内抗原、および不活化グリオーマロイシンリッチタンパク質-1(LGI1)などのニューロン表面抗原である。
薬剤抵抗性てんかん患者では、複数の自己抗体が存在することが最近示されている。これにより、臨床症状が重複し、診断と治療が複雑になる可能性があるため、厳密な臨床診断、画像検査、および免疫療法への反応の評価に加えて、複数の自己抗体の早期特定が非常に重要である。
抗てんかん薬(ASM)は通常、免疫介在性発作を止めず、多くの場合、対症療法として使用されるため、有望な効果を示す新しい免疫調節療法が出現している。
本稿では、自己免疫関連てんかんの発症における炎症、その病態生理、診断、および最近の治療における最新の進歩をレビューする。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40885027
Reyes-Cuayahuitl A, Estrada-Garcia DA, Orea-Méndez N, Vega-Garcia A, Chew-Irra ML, -López ER and Orozco-Suarez S. “Immune-mediated inflammatory conditions in epilepsy: role of autoimmunity.” Epilepsy & behavior : E&B 172, no. (2025): 110675.
参考論文
MOGAD-related epilepsy: a systematic characterization of age-dependent clinical, fluid, imaging and neurophysiological features. MOGAD関連てんかん:年齢依存的な臨床、体液、画像、神経生理学的特徴の系統的評価 【要約】
背景:ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体関連疾患(MOGAD)は、中枢神経系(CNS)の脱髄疾患であり、生涯にわたって多様な症状を呈する。てんかんは頻繁に見られるものの、MOGAD関連症状としての特徴付けは不十分である。
方法:MOGAD患者における年齢関連性の臨床、体液、画像、神経生理学的特徴を記述するため、2025年4月までのオンラインリポジトリを系統的に調査し、178件の適格な研究を特定した。
結果:臨床研究から合計2487人のMOGAD患者、症例報告/シリーズから337人の患者が組み入れられ、うち140人が成人発症、197人が小児発症であった。てんかんの有病率は、小児発症コホートで30.6%(95%信頼区間[95%CI] = 28%; 33.3%)、成人発症コホートで7%(95%CI = 4.1%; 11.2%)であった。小児発症患者は、女性である可能性が有意に高かった(p = 0.003)。皮質脳炎は両年齢群で最も一般的な症状であり、次いで小児発症では急性散在性脳脊髄炎、成人発症では急性脱髄症候群であった。両群において、てんかん症状は主に発症時に発生した。小児発症患者は、てんかん重積状態(p = 0.005)および脳症(p = 0.002)を経験する可能性が高く、成人発症患者は脳脊髄液の細胞数増加の頻度が高かった(p < 0.001)。他の脳炎に関連する抗体との同時陽性は患者の37.3%に見られ、最も一般的であったのは抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(抗NMDAR)IgG(88.3%)であり、年齢依存的な差は認められなかった。髄膜造影における有意な年齢関連差は観察されなかった。成人発症患者は、小児発症患者と比較して、頭頂葉の関与(p = 0.018)がより頻繁に見られ、側頭葉病変は少なかった(p = 0.004)。両群間で免疫療法と抗てんかん薬の使用は同程度であったにもかかわらず、慢性てんかんは小児発症患者でより多く見られた(p < 0.001)。
結論:てんかんはMOGAD関連の重要な状態であり、慢性化するリスクがある。年齢特異的な治療アプローチを確立するためには、前向き研究が必要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40659898
Rubin M, Cutillo G, Viti V, Margoni M, Preziosa P, Zanetta C, Bellini A, Moiola L, Fanelli GF, Rocca MA and Filippi M. “MOGAD-related epilepsy: a systematic characterization of age-dependent clinical, fluid, imaging and neurophysiological features.” Journal of neurology 272, no. 8 (2025): 508.
参考論文
The spectrum of overlapping anti-NMDAR encephalitis and demyelinating syndromes: a systematic review of presentation, diagnosis, management, and outcomes. 抗NMDA受容体脳炎と脱髄症候群の重複スペクトル:臨床像、診断、治療、予後の体系的レビュー 【要約】
抗NMDA受容体脳炎は、脱髄疾患(MOG抗体関連疾患、NMOSD、多発性硬化症)と頻繁に重複し、多様な臨床像を示し、治療が困難な複合症候群を形成する。
2024年3月までにMEDLINE、Google Scholar、Embase、Scopus、Cochrane Library、Web of Scienceなどのデータベースを体系的に検索し、抗NMDA受容体脳炎と脱髄症候群の併存に関する研究を収集した。臨床的特徴、診断、治療、予後に関するデータを抽出した。
25件の研究から、抗NMDA受容体脳炎と脱髄症候群が併存する256例(16.2%)の患者が同定された。主にMOG抗体関連疾患(94.5%)が多く、NMOSDや多発性硬化症は少なかった。抗NMDA受容体脳炎+MOG抗体関連疾患のサブグループでは、痙攣(51~72.7%)、精神症状(45.5~71.4%)、認知機能障害(30.6%)、運動障害(30.6%)などが認められた。全例で脳脊髄液中に抗NMDA受容体抗体が検出され、MOG抗体(60%)またはAQP4抗体(25%)も陽性であった。偽陽性を避けるには、標準化された細胞ベースアッセイと確立された基準への遵守が不可欠である(特にMOG抗体)。75%の患者でMRI異常が認められた。第一選択の免疫療法は70%の症例で有効であり、難治性の症例では80%が第二選択療法に奏効した。
抗NMDA受容体脳炎と脱髄疾患の重複は治療が困難である。詳細な免疫プロファイルに基づいた個別化治療が、良好な予後を得るための鍵となる。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40611612
Saeed S, Wang H, Jia M, Liu TT, Xu L, Zhang X and Hu SH. “The spectrum of overlapping anti-NMDAR encephalitis and demyelinating syndromes: a systematic review of presentation, diagnosis, management, and outcomes.” Annals of medicine 57, no. 1 (2025): 2517813.
参考論文
Systemic Complications of Status Epilepticus. てんかん重積状態の全身性合併症 【要約】
難治性てんかん重積状態(RSE)は、高い死亡率と多臓器にわたる合併症を伴う神経学的緊急事態である。迅速な診断と合併症の早期発見は、早期死亡率を低下させ、重度の長期的な影響を軽減する可能性がある。
てんかん重積状態(SE)は、主要な臓器に影響を与える多臓器系の合併症を引き起こし、急速なニューロンの細胞死、重度の心肺機能障害、血行動態の破綻、その他の臓器不全を引き起こす。
神経炎症と炎症性サイトカイン(IL-1βおよびTNF-α)が、てんかん重積状態の誘導と悪化に果たす役割は、活発な研究分野である。動物モデルと血清バイオマーカーは、SEを引き起こす病原性プロセスの開始と持続における神経炎症の中心的な役割を明らかにした。
自己免疫疾患と難治性てんかん重積状態、特にNMDA受容体脳炎、傍腫瘍性脳炎、およびループス血管炎との関連性、およびこれらの症例における免疫療法の必要性。炎症経路とサイトカインを標的とすることは、SEによって誘発された損傷の治療と軽減に不可欠である。
非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)の診断の課題、その有病率の増加(特に高齢者)、およびより悪い転帰と特定の併存疾患との関連性。継続的なビデオ脳波およびその他の脳波法を使用すると、NCSEをより早期に検出でき、転帰が改善され、RSEの神経学的および全身性の後遺症が減少する可能性がある。
てんかん重積状態の持続時間は、合併症を決定する上で重要なポイントである。てんかん重積状態(SE)が超難治性てんかん重積状態(SRSE)に進行するにつれて、死亡率は大幅に増加する。
てんかん重積状態(SE)は、脳機能を破壊し、一連の全身性合併症を引き起こす遷延性発作を特徴とする重度の神経学的緊急事態である。これらの合併症は、神経学的欠損、不整脈、呼吸不全、腎機能障害、胃腸障害など、複数の臓器系に及び、しばしば発作の代謝要求と治療の副作用によって悪化する。
基礎疾患の迅速な診断と管理、および潜在的な合併症に対する警戒が、転帰を改善し、SE、特に難治性および非けいれん性の形態に関連する高い死亡率を低下させるために重要である。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41068542
Iglesias AH, Balabanov A and Raedy A. “Systemic Complications of Status Epilepticus.” Current neurology and neuroscience reports 25, no. 1 (2025): 66.