ユーイング肉腫

お子さんや大切な方が、体の痛みや腫れを訴え、ユーイング肉腫という診断に不安を感じていませんか?この希少ながんは、成長期のお子さんや若い世代に多く見られ、その診断や治療は専門的な知識を要します。特に頭頸部への発生は全体の1%から9%と少なく、治療が困難な場合があるといわれています。

この記事では、ユーイング肉腫の概要から、特定の遺伝子異常が関わる原因、多様な症状、CTや遺伝子検査などの詳細な診断方法、そして現在の治療法までを解説します。

この情報を通じて、ユーイング肉腫に対する理解を深め、病気と向き合う上での不安を軽減し、適切な治療選択の一助となるでしょう。

ユーイング肉腫の概要

ユーイング肉腫は、骨や軟部組織に発生する珍しい悪性腫瘍です。特に成長期のお子さんや若い世代に多く見られます。この腫瘍は、骨に発生する「小円形細胞腫瘍」という種類の一つですが、筋肉などの軟部組織から発生することは稀であるとされています。全身のあらゆる部位に発生しえますが、頭頸部に発生する例は全体の1%から9%と少なく、この部位での治療は特に難しいといわれています※。特に小児期から青年期の男性に多い傾向があると考えられています※。

この病気は、22番染色体にあるEWSR1遺伝子と、ETS転写因子ファミリーに属する遺伝子との間で特有の遺伝子異常(転座)を伴います。転座とは、染色体の一部が切れて別の場所にくっつく現象です。この中でも、EWSR1遺伝子とFLI1遺伝子の融合が主要なドライバー遺伝子として、最も多く見られるものです※。このような融合遺伝子の検出に用いられる分子技術は、診断の確定に広く活用されています※。最近では、アダンティノーマ様ユーイング肉腫といった新しい病型も報告されており、診断の奥深さを示唆しています※。

ユーイング肉腫の組織を顕微鏡で調べるだけでは診断が困難なケースも多いため、免疫組織化学マーカーや遺伝子検査といった専門的な方法が診断には欠かせません。FET/ETS融合遺伝子の検出のための分子技術も、診断の確認に広く用いられる方法の一つです※。治療では、手術による腫瘍の切除に加え、放射線療法、複数の抗がん剤を組み合わせる化学療法といった多面的な治療法を組み合わせて行われます※。Euro Ewing 2012研究以降、化学療法のプロトコルも変化しており、切除縁の状態を再分類することが治療の標準化に役立つ可能性が指摘されています※。患者さんの年齢が高い場合や、すでに他の臓器に転移がある場合は、治療の難度が高まり、生存期間の短縮と関連していることが知られています※。

ユーイング肉腫の種類

ユーイング肉腫は、骨だけでなく、まれに体のさまざまな場所に発生するがんです。その発生部位や、細胞の持つ遺伝子の特徴によって、いくつかの異なるタイプに分類されます。

ユーイング肉腫は主に骨に発生する「小円形細胞腫瘍」ですが、ごくまれに骨以外の軟部組織にも発生することが知られています。その発生部位によって、以下のようないくつかのタイプが報告されています。

・頭頸部に発生するタイプ:

・頭や首の周り(頭頸部)に発生するユーイング肉腫は、全症例の1〜9%と比較的まれなケースです※。

・この部位のユーイング肉腫は、診断や治療が難しいとされています※。

・特に小児期から青年期の男性に多く見られる傾向があります※。

・消化管に発生するタイプ:

・さらに珍しい例として、消化管、特に十二指腸に発生したケースも報告されています※。

・例えば、40代の女性が激しい腹痛や嘔吐、食欲不振を訴え、検査で十二指腸に腫瘍が見つかり、ユーイング肉腫と診断された事例があります※。

・消化管のユーイング肉腫は非常に稀であるため、その治療法や予後についてはまだ十分な知見が集まっていない状況です。特に小腸に発生した場合は、予後がよくない可能性が示唆されています※。

ユーイング肉腫の診断においては、特定の遺伝子の異常が重要な手がかりとなります。多くのケースで、EWSR1遺伝子とETS転写因子ファミリーに属する遺伝子との間で融合(遺伝子の位置が入れ替わること)が見られます。特に、EWSR1とFLI1遺伝子間の融合は、ユーイング肉腫の主要なドライバー遺伝子(病気の発生に大きく関わる遺伝子)として最も多く確認されています※。

近年では、これまでのユーイング肉腫の分類には当てはまらない「アダンティノーマ様ユーイング肉腫」といった新しい病型も報告されています※。これは、ユーイング肉腫が骨に発生する特徴を持ちながら、別の腫瘍である「アダンティノーマ(エナメル上皮腫)」に似た細胞構造を持つものを指します。このように、ユーイング肉腫は多様な特徴を持つ疾患群であり、診断には専門的な知識と検査が不可欠であるといえます※。

ユーイング肉腫の原因

ユーイング肉腫は、遺伝子の異常によって引き起こされるがんです。この病気の原因は、体細胞の遺伝情報が書き換わる「転座(てんざ)」と呼ばれる現象にあります。

細胞の核にある染色体には、体を形作る設計図である遺伝子が収められています。通常、遺伝子の情報は厳密に守られていますが、何らかの理由で染色体の一部が切れてしまい、別の場所にくっつくことがあります。この現象が転座です。ユーイング肉腫の場合、特に以下の遺伝子に異常が見られます。

・22番染色体にある「EWSR1遺伝子」

・「ETS転写因子ファミリー」に属する別の遺伝子

・このファミリーは、細胞の成長や分化を調節する役割を担う遺伝子群です。

・多くのケースで、FLI1遺伝子という種類のものが関与しています。

なぜ遺伝子異常が病気を引き起こすのか

ユーイング肉腫では、22番染色体にあるEWSR1遺伝子と、ETS転写因子ファミリーに属するFLI1遺伝子との間で「相互転座(そうごてんざ)」という遺伝子の入れ替わりが特徴です。これは、特定の染色体と染色体の間で遺伝子の一部が交換されるような現象で、「反復平衡転座」とも呼ばれます※。

この遺伝子異常によって、EWSR1:FLI1という新しい「融合遺伝子」が形成されます。融合遺伝子は、がん細胞の成長を異常に促進するタンパク質を作り出す「ドライバー遺伝子」として機能します。つまり、正常な細胞の増殖システムが狂い、コントロールを失った細胞が無制限に増え続けることで、ユーイング肉腫が発症すると考えられています。

診断における遺伝子検査の重要性

このような遺伝子レベルの変化を詳しく調べることは、ユーイング肉腫の正確な診断を確定するために非常に重要です。特に、FET/ETS融合遺伝子と呼ばれる特定の融合遺伝子を検出するための「分子技術」が、診断の確認に広く用いられています※。病気の根源となる遺伝子異常を特定することで、適切な治療方針を立てることにつながります。

ユーイング肉腫の症状

ユーイング肉腫の症状は、腫瘍ができる場所や病気の進行度によって、さまざまな形で現れます。初期には見過ごされやすい症状もありますが、進行すると全身に影響が及ぶ可能性もあります。

ユーイング肉腫は、骨や軟部組織のどこにでも発生する可能性がありますが、特に手足の骨や骨盤などによく見られます。初期段階では、次のような症状が主な特徴として現れることがあります。

痛み

多くの場合、腫瘍のある部位に痛みが生じます。この痛みは最初軽微でも、病気の進行とともに徐々に強くなる傾向があります。特に、運動していない安静時や夜間に痛みが続く場合は注意が必要です。これは、腫瘍が周囲の神経を圧迫したり、骨を破壊したりすることで生じる痛みと考えられます。成長期のお子さんや若年層の場合、成長痛や他の骨の病気と間違われやすく、診断が遅れる原因となることもあります。

腫れ・しこり

腫瘍が発生した部位が腫れたり、皮膚の上からしこりのように触れたりすることがあります。この腫れやしこりは、腫瘍そのものが大きくなることに加え、周囲の組織が炎症を起こしている可能性もあります。時間が経つにつれて徐々に大きくなり、特に足や腕など、比較的体の表面に近い部分にできると気づきやすいといえます。もし関節の近くに腫瘍ができた場合は、関節の動きが悪くなったり、痛みを伴ったりすることもあります。

病気が進行すると、腫瘍のある部位だけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼす症状が現れることがあります。

・発熱: 特別な原因が思い当たらないのに、微熱や高熱が続くことがあります。これは、がん細胞が特定の物質を放出し、体内で炎症反応が起きることで生じると考えられます。

・体重減少: 食欲不振ではないにもかかわらず、体重が減ってしまうことがあります。がん細胞が急速に増殖するために体のエネルギー消費が増え、栄養バランスが崩れることで生じるといえるでしょう。

・倦怠感: 体がだるく、疲れやすいといった倦怠感が続くこともあります。これは、貧血や炎症、精神的なストレスなどが複合的に影響している可能性があります。

非常に稀なケースとして、消化管、特に小腸の一部である十二指腸にユーイング肉腫が発生することがあります。これは、消化管型ユーイング肉腫と呼ばれ、報告例がごくわずかである珍しいタイプです※。消化管に腫瘍ができると、消化器特有の症状が現れます。

最近の報告では、44歳女性の十二指腸ユーイング肉腫の症例が挙げられます。この患者さんは、次の症状を訴えていました※。

症状 | 詳細

激しい腹痛

嘔吐

食欲不振

これらの症状は、十二指腸の内腔(食べ物が通る管の内部)が腫瘍によって狭くなることで、食べ物の消化や通過が妨げられたために起こったと考えられます※。この症例では、内視鏡検査で十二指腸の壁に約4.5cmの巨大な隆起が確認されています※。消化管、特に小腸に発生したユーイング肉腫は非常に稀であるため、その予後(病気の経過や結末)についてはまだ十分に確立されていませんが、小腸の症例に関するレビューでは、予後が不良である可能性が示唆されています※。

ユーイング肉腫の症状は、一般的な風邪や他の病気と似ているため、初期段階では見過ごされやすいことがあります。しかし、もし上記のような症状が長く続いたり、徐々に悪化したりする場合は、自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診し、専門医による詳しい診察と検査を受けることが重要です。早期発見が、適切な治療への第一歩となります。

ユーイング肉腫の検査・診断

ユーイング肉腫の検査・診断は、病気を早期に見つけ、適切な治療につなげるために、さまざまな方法を組み合わせて行われます。腫瘍が疑われる場合、まず画像検査で腫瘍の有無や特徴を確認し、最終的に生検(組織検査)で診断を確定するという流れです。

診断の第一歩:画像検査で腫瘍の全体像を把握する

ユーイング肉腫が疑われる場合、まず画像検査で腫瘍の有無や特徴を確認します。これらの検査は、腫瘍の正確な位置や広がりを把握するために不可欠です。

・X線検査(レントゲン):

・最初に手軽に行われる検査であり、骨の状態や腫瘍があるかどうかの手がかりを見つけるのに役立ちます。

・CT検査(コンピュータ断層撮影):

・X線を使い、体の断面を詳しく撮影する検査です。

・腫瘍の大きさや、骨や周囲の組織にどの程度広がっているかを立体的に確認できます。

・MRI検査(磁気共鳴画像):

・強力な磁石と電波を使い、体の内部をさまざまな角度から鮮明に描出する検査です。

・特に軟部組織への浸潤や、骨髄内部の状態など、CTでは見えにくい詳細な情報を得るのに優れているといえます。

より詳細な情報:核医学検査で腫瘍の活動性を評価する

画像検査でユーイング肉腫が強く疑われる場合、腫瘍の活動性や転移の有無を調べるために、核医学検査が重要な役割を担います。核医学検査は、体の機能を画像化することで、通常の画像検査では得られない情報を提供するものです。

核医学検査の種類と役割は次のとおりです。

検査の種類 | 目的 | 特徴

骨シンチグラフィ | 骨の異常な代謝活動を検出します。 | 骨の病変に対して高い感度で、腫瘍が複数箇所に飛んでいる「多巣性病変」や、別の場所に離れて発生した「スキップ病変」の検出に役立つ可能性があります※。ただし、病変の種類を特定する「特異性」は限られると考えられています※。

[¹⁸F]FDG PET/CT(陽電子放出断層撮影) | 腫瘍細胞の代謝活動を直接可視化します。 | ユーイング肉腫の病期診断や治療効果の評価において不可欠な検査とされています※。特に、骨への転移を見つける際には、骨シンチグラフィよりも優れていることが報告されています※。

ハイブリッドSPECT/CT | 核医学の機能情報とCTの解剖学的情報を組み合わせます。 | 腫瘍の正確な位置や広がりを、機能的な情報と重ね合わせて評価できます。これにより、診断の信頼性が高まるといえるでしょう※。

これらの検査は、腫瘍の「代謝(エネルギー活動)」を可視化することで、病変の悪性度や転移の範囲を把握するための機能的な情報を提供します※。

確定診断:生検(組織検査)で病気の正体を突き止める

画像検査や核医学検査でユーイング肉腫が強く疑われたとしても、最終的な診断を下すためには、生検(組織検査)が不可欠です。生検とは、疑わしい腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査を指します。

生検の重要性は、次のとおりです。

・病理医による詳細な検査:

・採取された組織は、病理医という専門家が顕微鏡で細胞の形や配列などを詳細に観察します。

・他の病気との鑑別:

・ユーイング肉腫と似た症状を示す良性腫瘍や、別の種類のがんも存在します。

・生検は、これらの他の病気と正確に区別し、ユーイング肉腫であるかを確定するために非常に重要です※。

・例えば、間葉性軟骨肉腫が膵臓に転移し、当初は他の一般的な膵臓がんが疑われたケースでも、詳細な組織学的検査によって初めて真の診断に至った事例があります※。

・遺伝子検査:

・ユーイング肉腫に特徴的な遺伝子異常(EWSR1遺伝子とETS転写因子ファミリーに属する遺伝子との融合など)を調べる検査も行われます。これは、診断の精度を高める上で重要な情報となるでしょう。

生検によってユーイング肉腫と確定診断された後、これまでの検査結果を総合的に評価し、病気の進行度(病期)を決定します。この病期の評価が、その後の治療方針を立てる上で極めて重要な指針となるといえます。

ユーイング肉腫の治療

ユーイング肉腫の治療は、病気の進行度や患者さんの状態に合わせて、複数の治療法を組み合わせて行われます。近年、放射線療法、化学療法、手術といった従来の治療法に加え、免疫療法などの登場により、ユーイング肉腫を含む固形腫瘍の治癒率は全体的に向上していると考えられています※。

主な治療法は次のとおりです。

・手術: 腫瘍を直接切除し、病巣を取り除くことを目指します。可能な限り、がん細胞を完全に除去することが目標です。

・化学療法: 抗がん剤を使い、全身のがん細胞に働きかける治療です。手術で取りきれなかった微小ながん細胞の排除や、手術前に腫瘍を小さくするために用いられます。

・放射線療法: 腫瘍のある部位に放射線を当て、がん細胞を攻撃する局所的な治療です。手術が難しい場合や、手術後の再発予防のためにも使われることがあります。

これらの治療はユーイング肉腫に効果的ですが、体への負担も考慮が必要です。特に、骨の健康に影響を及ぼす可能性があるため、治療中は注意深く経過を見ていく必要があります。

治療に伴う骨への影響と対策

ユーイング肉腫の治療、特に化学療法や放射線療法は、がん細胞だけでなく、骨の健康を保つ上で重要な細胞にも影響を与える場合があります。私たちの骨は、常に古い骨が壊され(破骨細胞という細胞の働き)、新しい骨が作られる(骨芽細胞という細胞の働き)というサイクルを繰り返すことで、丈夫さを維持しています。この骨の新陳代謝のバランスを「骨代謝恒常性(こつたいしゃこうじょうせい)」と呼びますが、がん治療はこのバランスを乱してしまう可能性があるのです※。

骨代謝のバランスが崩れると、次のような骨の合併症を引き起こす可能性があります。

・骨壊死(こつえし):

・骨の一部が血流不足によって死んでしまう状態を指します。

・高線量の放射線治療や、ビスホスホネート、デノスマブ、特定の抗血管新生薬、免疫調節剤といった化学療法薬の使用が、この骨壊死のリスクを高める可能性があります※。

・骨量減少:

・骨密度が低下し、骨がもろくなる状態です。

・特定の化学療法薬やホルモン剤(性ホルモン、グルココルチコイド、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなど)が、骨量の減少に影響を及ぼすことが考えられています※。

・二次性骨腫瘍(二次性ユーイング肉腫を含む):

・がん治療後に、新しく別の種類のがんが骨に発生することです。これは元のユーイング肉腫が転移したものではありません。

・特に放射線療法がその発生に深く関わり、悪性であることが多いとされています。中でも骨肉腫が最もよく見られます。

・化学療法も、骨の二次性ユーイング肉腫の発生リスク因子となる可能性が指摘されています※。

これらの骨の合併症は、患者さんの治療後の生活の質や予後に大きな影響を与える可能性があるため、がん治療を受けている期間中も、骨の健康状態には細心の注意を払い、適切な管理を行うことが非常に重要です※。

治療方針を決定する際には、それぞれの治療法のメリットだけでなく、こうした副作用のリスクについても医師と十分に話し合い、ご自身が納得した上で治療を進めることが大切です。治療中に体調の変化や気になる症状があれば、ためらわずに担当の医師や看護師に伝えてください。