PURA関連神経発達異常症

お子さんにPURA関連神経発達異常症の疑いが告げられ、聞き慣れない病名に戸惑いや不安を感じていませんか。国内の患者数は約100人と推定される希少疾患であり、情報が少なく孤独を感じている方もいるかもしれません。

この記事では、PURA関連神経発達異常症の基本的な情報から、原因となる遺伝子変異の種類、人種による症状の違いまで詳しく解説します。診断の流れや、現在行われている治療・療育についても網羅しています。

病気への正しい理解は、お子さんの状態を多角的に把握し、今後の見通しを立てるための重要な土台です。この記事を通して、漠然とした不安を和らげ、一人ひとりに合ったケアを考える次の一歩を踏み出すきっかけにしてください。

PURA関連神経発達異常症の概要

PURA関連神経発達異常症とは、脳や神経の発達に影響をおよぼす生まれつきの病気で、5番染色体にある「PURA遺伝子」の異常が原因です。国内の患者数は約100人と推定されている希少疾患であり、多くの場合、中等度から重度の発達の遅れがみられます。

この病気を持つお子さんの多くは、生まれた直後から特徴的なサインを示します。

例えば、8割以上のお子さんで、ぐにゃぐにゃと体が柔らかい「筋緊張低下」や、ミルクをうまく飲めない「哺乳障害」が共通して認められます。※ そのほか、眠りがちであったり、呼吸が一時的に止まる無呼吸といった症状も新生児期によくみられるものです。

症状の現れ方は一人ひとり異なりますが、その背景には遺伝子変異の違いが関係していると考えられています。

具体的には、PURA遺伝子のどの部分で変異が起きたかという「場所」よりも、遺伝子が欠けている範囲などの「規模(大きさ)」の方が、症状の重さにより強く関連する可能性が指摘されています。※

さらに、人種によっても症状の出方に違いがあることがわかっています。

アジア人のお子さんの場合、ささいな物音などに過剰にびっくりしてしまう「病的な驚愕反応」が比較的多くみられる一方で、「てんかん」や「運動障害」の頻度は他の人種と比べて低い傾向にあります。※ ただし、心臓の病気を合併する割合が高いという報告もあり、注意深い観察が求められます。※

これらの症状は成長とともに軽快することは少なく、生涯にわたって医療的なケアや療育などのサポートが必要になります。

PURA関連神経発達異常症の種類

PURA関連神経発達異常症は、原因となる遺伝子異常の「規模」によって、主に「PURA症候群」と「5q31.3欠失症候群」の2つに分類されます。

どちらのタイプもPURA遺伝子の機能が十分に働かない点では共通していますが、遺伝子の変化の仕方が異なるため、症状の現れ方にも違いが見られます。

この2つのタイプの特徴を、下表にまとめました。

タイプ | 遺伝子の異常 | 症状の傾向

PURA症候群 | ・PURA遺伝子そのものに生じた、比較的小さな変化(点変異など) ・遺伝子の設計図における、ごく一部の文字が置き換わるような変化 | ・遺伝子の情報が途中で途切れてしまうような変化(ナンセンス変異など)を持つお子さんでは、そうでない変化(ミスセンス変異など)のお子さんと比べて、言葉の発達の遅れがより目立つ傾向にあります。※

5q31.3欠失症候群 | ・PURA遺伝子だけでなく、その周辺領域も含めて染色体の一部が広範囲に失われること(欠失) ・遺伝子の設計図が、ある部分からごっそり抜け落ちてしまったような変化 | ・PURA症候群に比べて、生まれつき体のどこかに形の問題を抱えていたり、呼吸や歩行に困難が生じやすかったりする特徴が報告されています。※

このように、遺伝子の変化の仕方によって症状の傾向はある程度異なりますが、同じタイプの変異であっても、症状の現れ方は一人ひとり千差万別です。

そのため、遺伝子検査の結果は、お子さんの状態を多角的に理解するための一つの手がかりとして活用し、一人ひとりの発達段階や症状に合わせたケアプランを組み立てていくことが重要になります。

PURA関連神経発達異常症の原因

PURA関連神経発達異常症は、5番染色体にある「PURA遺伝子」が正常に機能しなくなることで起こります。

私たちの体の設計図である遺伝子は、通常、両親から1つずつ受け継いだ2つで1セットです。しかし、この病気ではPURA遺伝子の片方に異常が生じ、設計図が1つしか正常に働かない「ハプロ不全」という状態に陥っています。

この遺伝子の変化は、ご両親から受け継がれるケースは極めてまれです。

ほとんどは、お子さんがお母さんのお腹の中で成長していく過程で、PURA遺伝子に偶然生じる「de novo(デノボ)変異」と呼ばれる新たな変化が原因です。

そのため、ご自身を責める必要はまったくありません。ごきょうだいが同じ病気になる可能性も、基本的には非常に低いと考えられています。

PURA遺伝子の異常とひとことで言っても、その変化の仕方はさまざまです。そして、その「変化の仕方」が、お子さんの症状の現れ方に深く関わっています。

具体的には、遺伝子の変化が起きた「場所」よりも、変化の「規模(大きさ)」の方が、症状の重さにより強く関連する可能性が指摘されています。※

遺伝子の変化の主なパターンと、それに伴う症状の傾向は以下のとおりです。

変化のパターン | 特徴 | 症状の傾向

広範囲の欠失 | ・PURA遺伝子だけでなく、その周辺領域も含めてごっそり失われる変化 ・「5q31.3欠失症候群」がこれにあたる | ・遺伝子の一部分のみに変化がある場合に比べて、呼吸器の障害や歩行障害などが起こりやすいと報告されています。※

点変異など | ・遺伝子の設計図の一文字が書き換わるような、比較的小さな変化 ・「PURA症候群」がこれにあたる | ・同じPURA症候群の中でも、タンパク質の設計図が途中で途切れてしまう変化(ナンセンス変異など)を持つお子さんは、言葉の発達の遅れがより目立つ傾向にあります。※

このように、遺伝子レベルでの変化の違いが、一人ひとりの症状の多様性につながっているのです。

また、人種によっても症状の出方に違いがあることがわかっています。

例えば、アジア人のお子さんの場合、ささいな物音に過剰に驚く「病的な驚愕反応」が比較的多くみられる一方で、「てんかん」や「運動障害」の頻度は他の人種に比べて低いと報告されています。※

PURA関連神経発達異常症の症状

PURA関連神経発達異常症の症状は、中等度から重度の発達の遅れを中核として、生まれた直後から生涯にわたり全身に現れます。

ただし、症状の現れ方やその重さには大きな個人差があり、これからお話しする症状がすべてのお子さんに見られるわけではありません。

新生児期にみられる主なサイン

この病気を持つお子さんの多くは、生まれてすぐの赤ちゃんのうちから、特徴的なサインを示します。

特に、以下の2つの症状は8割以上のお子さんに共通して認められます。※

・筋緊張低下:抱っこした時にぐにゃぐにゃと体が柔らかく、力が入りにくい状態です。

・哺乳障害:ミルクを吸う力が弱かったり、うまく飲み込めなかったりします。

このほか、新生児期には以下のような様子が見られることもあります。

・眠っている時間が長く、あまり泣かない(過眠傾向)

・呼吸が一時的に止まる、または浅くなる(無呼吸発作)

・しゃっくりが頻繁に出る(吃逆過多)

成長とともに現れる症状

成長するにつれて、発達の遅れやその他の症状がよりはっきりとわかるようになります。

1. 発達の遅れ(中核症状)

言葉を話せるようになるお子さんは1割未満とされ、多くの場合、自力で安定して歩くことも困難です。

遺伝子の変化の仕方によっては、特に言葉の発達の遅れが目立つ傾向があることもわかっています。※

2. 神経系の症状

発達の遅れに加え、さまざまな神経症状が現れることがあります。

症状の種類 | 具体的な内容

てんかん | ・約半数のお子さんで、けいれん発作がみられます。 ・ただし、アジア人のお子さんの場合、てんかんの発生率は他の人種に比べて低い傾向にあります。※

病的な驚愕反応 | ・ささいな物音などに、全身でビクッと過剰に驚く反応です。 ・この症状は、特にアジア人のお子さんで多く報告されています。※

不随意運動 | ・自分の意思とは関係なく、体が動いたり、変な力が入ったりします。(ジストニア、ジスキネジアなど)

3. 全身にあらわれる合併症

神経系の問題だけでなく、全身にわたってさまざまな合併症を伴うことがあります。

・消化器:食べ物が胃から逆流する「胃食道逆流症」や便秘は、比較的よくみられる症状です。

・骨格:成長期には、背骨が横に曲がる「側弯症」や股関節の問題に注意が必要です。

・眼:斜視や強い近視、眼球が揺れる「眼振」など、目の問題も多く報告されています。

・心臓・呼吸器:PURA遺伝子だけでなく、その周辺領域も含む広範囲の遺伝子が失われているお子さんでは、呼吸器の障害が起こりやすいことがわかっています。※ また、アジア人のお子さんでは、命に関わることもある不整脈など、心臓の病気を合併する割合が高いという報告もあり、特に注意深い観察が求められます。※

PURA関連神経発達異常症の検査・診断

PURA関連神経発達異常症の診断は、まずお子さんに現れている特徴的な症状から可能性を考え、最終的には血液を用いた遺伝子検査によって確定します。

単に病名を特定するだけでなく、遺伝子の変化の「種類」や「規模」まで詳しく調べることで、お子さんの将来の見通しや、一人ひとりに合ったケアプランを立てるための重要な情報を得ることができます。

診断のきっかけとなるお子さんのサイン

この病気を持つお子さんの多くは、生まれた直後から特徴的なサインを示します。特に、以下の3つの症状が診断を考える上で重要な手がかりとなります。

・重度の筋緊張低下:抱っこした時にぐにゃぐにゃと柔らかい

・中等度〜重度の発達の遅れ:首のすわりやお座りなどがゆっくり

・哺乳・食事の困難:ミルクをうまく飲めない、むせやすい、食べ物が胃から逆流する(胃食道逆流症)

特に、新生児期に見られる「筋緊張低下」と「哺乳障害」は、この病気を持つお子さんの8割以上に共通するサインです。※

これらの症状が見られる場合、専門医がPURA関連神経発達異常症の可能性を念頭に置き、確定診断のための詳しい検査へと進みます。

遺伝子検査による確定診断

症状だけでは診断を確定できないため、血液を採取して遺伝子を調べる検査が不可欠です。

この検査(シーケンス解析やマイクロアレイ染色体検査)によって、PURA遺伝子に病気の原因となる変化(変異)や、遺伝子を含む染色体の一部分が失われていないか(欠失)を明らかにします。

遺伝子検査でわかることは、病気の確定だけではありません。遺伝子の変化の仕方が、症状の現れ方と深く関わっていることがわかってきました。

遺伝子の変化 | 関連する症状の傾向

PURA遺伝子を含む 広範囲の欠失 (5q31.3欠失症候群) | ・遺伝子の一部分のみに変化がある場合に比べて、呼吸器の障害や、自力で歩くことが困難になるなどの歩行障害が起こりやすいと報告されています。※

PURA遺伝子内の 小さな変化 (PURA症候群) | ・同じPURA症候群の中でも、タンパク質の設計図が途中で途切れてしまうような変化(ナンセンス変異など)を持つお子さんは、言葉の発達の遅れがより目立つ傾向にあります。※

このように、遺伝子レベルの情報を得ることは、今後の見通しを立て、必要な医療的ケアを予測する上で非常に重要です。

また、診断にあたっては、人種による症状の違いも考慮されます。

例えば、アジア人のお子さんの場合、ささいな物音に過剰に驚く「病的な驚愕反応」が多く見られる一方で、てんかん発作は比較的少ないという特徴があります。ただし、命に関わる不整脈など心臓の病気を合併する割合が高いことも報告されており、注意深い観察が求められます。※

似た症状を持つ他の病気との見極め

新生児期の筋緊張低下や発達の遅れは、他の病気でも見られる症状です。

そのため、正確な診断のためには、似た症状を示す以下の病気の可能性も慎重に除外していく必要があります。

・プラダー・ウィリ症候群

・レット症候群

・アンジェルマン症候群

・先天性中枢性低換気症候群 など

これらの病気と丁寧に見分けることで、お子さんにとって最も適切な治療や支援につなげていきます。

PURA関連神経発達異常症の治療

PURA関連神経発達異常症そのものを治す根本的な治療法は、残念ながらまだ見つかっていません。

そのため、治療の目標は、お子さんに現れている症状を一つひとつ和らげ、成長と発達を最大限にサポートすることに置かれます。

具体的には、「症状に対する治療(対症療法)」と「発達を支えるための療育」が治療の2本の大きな柱です。

お子さんの状態に合わせて、下記のような治療や管理を組み合わせて行います。

症状の種類 | 主な治療・ケアの内容

発達の遅れ | ・理学療法(PT):座る、立つ、歩くなどの基本的な運動能力を促す ・作業療法(OT):手先の細かな動きや日常生活の動作を練習する ・言語聴覚療法(ST):言葉の理解やコミュニケーション能力を高める

哺乳・嚥下障害 | ・ミルクをうまく飲めない場合は、鼻から胃へ管を入れる「経管栄養」で栄養を補う ・長期にわたる場合は、お腹に小さな穴を開ける「胃ろう」を造ることもある

てんかん | ・抗てんかん薬を服用し、けいれん発作の回数を減らしたり、症状を軽くしたりする

無呼吸 | ・睡眠中に呼吸が止まっていないか、呼吸モニターで安全を確保する

消化器の問題 | ・食べ物が逆流する「胃食道逆流症」には、体の向きの工夫や薬物療法を行う ・便秘に対しては、食事内容の調整や下剤を使用する

骨格の問題 | ・背骨が曲がる「側弯症」や股関節の問題がないか、定期的に診察やレントゲンで確認する ・必要に応じて、装具による治療や手術を検討する

近年、遺伝子検査の進歩により、遺伝子の変化の仕方によって、将来起こりやすい症状をある程度予測できるようになってきました。

この遺伝子レベルの情報は、画一的な治療ではなく、お子さん一人ひとりの未来を見据え、先回りしたケアを行うための大切な「道しるべ」になります。

例えば、遺伝子の変化がPURA遺伝子の一部分にとどまらず、その周辺も含めて広範囲に失われているお子さん(5q31.3欠失症候群)は、呼吸器の障害や歩行障害が起こりやすいことがわかっています。※

そのため、早い段階から理学療法士による歩行訓練を行ったり、呼吸器専門医と連携して呼吸状態を注意深く観察したりすることが重要です。

また、人種による症状の違いも考慮する必要があります。

特にアジア人のお子さんの場合、命に関わることもある不整脈(心臓の伝導障害)を合併する割合が、他の人種に比べて高いと報告されています。※

このため、診断がついた時点から定期的に心電図検査を行い、心臓の状態を継続的に見守っていくことが不可欠です。

このように、PURA関連神経発達異常症のケアは、小児科医を司令塔として、神経科、リハビリテーション科、消化器科、整形外科、循環器科など、多くの専門家がチームを組んでお子さんの成長を生涯にわたって支えていく「チーム医療」そのものといえます。

定期的な診察を通じて、発達の段階や合併症の状態を継続的に評価し、その時々で最も適した治療を提供していきます。