骨髄炎

骨折などの大きなケガや手術、あるいは放置した虫歯が、骨の内部を侵す「骨髄炎」という病気の引き金になることをご存知でしょうか。骨髄炎は、硬い骨の中に細菌が侵入し、血液を作る大切な工場である「骨髄」で炎症を起こす病気で、強い痛みや腫れ、発熱を伴います。

原因菌は黄色ブドウ球菌が一般的ですが、ある研究では、特定の持病を持つ患者さんの場合、子どもではサルモネラ菌、大人では黄色ブドウ球菌が原因となりやすいなど、年齢で傾向が異なるという意外な事実も報告されています。

この病気は放置すると骨が変形したり壊れたりする危険もあり、早期発見と適切な治療が何よりも重要です。この記事では、骨髄炎の原因から種類、治療法までを詳しく解説します。ご自身やご家族を守る知識として、ぜひ参考にしてください。

骨髄炎の概要

骨髄炎は、骨の中に細菌が侵入し、炎症を引き起こす病気です。 硬い骨の内部にある「骨髄」は、血液を作る大切な工場です。 この工場が細菌に感染すると、強い痛みや腫れ、発熱が起こります。

骨髄炎には、主に以下のような特徴があります。

  • 感染のルート
    けが(骨折)や手術によって、体の外から細菌が直接侵入するケースや、血液の流れに乗って体の他の場所から運ばれてくるケースがあります。
  • かかりやすい方
    骨が成長している途中の子どもや、糖尿病などの持病をお持ちの方、体の抵抗力が落ちている高齢者などがかかりやすい傾向にあります。

原因となる細菌は、年齢や体の状態によっても変わってきます。 一般的には黄色ブドウ球菌という細菌が多いとされています。

しかし、ある研究では、特殊な血液の病気(鎌状赤血球貧血)を持つ方の場合、原因菌に次のような違いが見られました。

  • 子ども(平均6.8歳)
    サルモネラ菌が多い
  • 大人(平均22.1歳)
    黄色ブドウ球菌が多い

このように、年齢によってかかりやすい細菌の種類が異なることがわかります。 また、この研究では、住んでいる地域や医療機関へのアクセスのしやすさも、診断に影響を与える可能性が示唆されています。

骨髄炎は、放置すると骨が変形したり壊れたりする危険があります。 気になる症状があれば、早めに医療機関を受診することが非常に重要です。

骨髄炎の種類

骨髄炎は、病気の進み方や感染のきっかけによって、いくつかの種類に分けられます。 種類によって特徴が違うため、状態に合わせた治療を選ぶことがとても大切です。

病気の進み方による分類

骨髄炎は、症状の現れ方によって大きく2つのタイプに分けられます。

  • 急性骨髄炎 急に発症し、骨の強い痛みや高熱など、はっきりした症状が現れます。
  • 慢性骨髄炎 急性の炎症が治りきらずに長引いたり、再発を繰り返したりする状態です。

慢性化すると、原因となる細菌の種類が変わることがあります。 例えば、戦争でのケガが原因の骨髄炎を調べた研究があります。 その研究では、病気の初期と慢性化した後で、治療の標的とすべき細菌の種類が異なる可能性が示されました。 このように、病気の段階に合わせた治療が重要になります。

感染経路による分類

細菌が骨にたどり着くまでのルートによっても、種類が分けられます。

種類

特徴

血行性骨髄炎

体の他の場所で感染した細菌が、血液の流れに乗って骨に運ばれて発症します。

外傷性骨髄炎

骨が皮膚を突き破るような骨折や手術など、ケガで細菌が骨に直接侵入して発症します。

特に、大きなケガが原因となる外傷性骨髄炎では、原因菌が複雑になることがあります。 骨髄炎の種類を正しく見極めることが、適切な治療への第一歩となるのです。

骨髄炎の原因

骨髄炎は、細菌などが骨の中に侵入することで起こる病気です。 私たちの体を守る皮膚のバリアが破られると、細菌が骨にたどり着き、炎症を引き起こします。

細菌が骨に侵入するルートは、主に次の3つが考えられます。

1. 体の外から直接侵入する

骨折で骨が皮膚を突き破ったり、手術で骨に器具を入れたりする際に、細菌が直接骨に付着して感染します。

  • 開放骨折 骨が皮膚を突き破って外に出てしまうケガ
  • 手術 人工関節を入れる手術など
  • 深い傷 釘を踏み抜くなど、骨にまで達するケガ

特に、開放骨折のような大きなケガでは、早めの処置が重要です。 ケガをしてから6~8時間以内に傷口をきれいに洗浄することで、骨髄炎になるリスクを下げることが期待できます。

2. 血液の流れに乗って運ばれる

体の他の場所で増えた細菌が、血液の流れに乗って骨に運ばれることがあります。 例えば、虫歯を放置すると、口の中の細菌が血液に入り込み、骨髄炎の原因になることもあります。 骨が成長している途中のお子さんや、体の抵抗力が落ちている方は特に注意が必要です。

3. 周囲の組織から感染が広がる

糖尿病による足の傷や、寝たきりの方の床ずれ(褥瘡)など、治りにくい傷(潰瘍)から感染がじわじわと骨にまで広がることがあります。

骨髄炎の原因菌で最も多いのは「黄色ブドウ球菌」です。 しかし、体の状態やケガの状況によって、原因となる菌の種類は変わってきます。

ある研究では、特殊な血液の病気(鎌状赤血球貧血)を持つ方の場合、年齢で原因菌に違いが見られました。

  • 子ども(平均6.8歳) サルモネラ菌による感染が多い
  • 大人(平均22.1歳) 黄色ブドウ球菌による感染が多い

また、戦争による深い傷が原因の骨髄炎を調べた研究もあります。 その報告によると、感染してすぐの時期と、時間が経って慢性化した後とでは、原因となる細菌の種類が異なることがわかっています。

このように、骨髄炎の原因は一つではありません。 年齢や持病、ケガの状況など、様々な要因が複雑に関係しているのです。

骨髄炎の症状

骨髄炎の症状は、急に始まるか、ゆっくり進行するかで異なります。 また、体のどこで起きているかによっても、症状の出かたは変わります。

主な症状には、感染した場所に起こるものと、体全体に起こるものがあります。

  • 感染した場所の症状 骨のズキズキとした強い痛みや、腫れ、熱っぽさが現れます。 皮膚が赤くなったり、膿(うみ)がたまって外に出てきたりもします。
  • からだ全体の症状 急に始まった骨髄炎では、高熱や寒気、体のだるさが出やすいです。 一方で、慢性化すると全身の症状は軽く、骨の痛みが続きます。

小さなお子さんの場合、痛みをうまく言葉で伝えられないことがあります。 「手足を動かしたがらない」「抱っこすると痛がって泣く」といったサインが、病気に気づくきっかけになることも少なくありません。

また、年齢によって原因となる細菌の種類が異なることもあります。 ある研究では、特殊な血液の病気を持つ患者さんにおいて、次のような傾向が示されました。

  • 若い患者さん(平均6.8歳) サルモネラ菌が原因となりやすい
  • 成人の患者さん(平均22.1歳) 黄色ブドウ球菌が原因となりやすい

このように、年齢によってかかりやすい菌が違うことも、診断のヒントになります。

虫歯や抜歯が原因で、顎の骨に炎症が起きる「顎骨骨髄炎」もあります。 抜歯後に強い痛みが続く場合は、歯槽骨炎(ドライソケット)という状態かもしれません。 痛みを和らげるための治療法も研究されているため、我慢せずに受診しましょう。

骨髄炎の検査・診断

骨髄炎が疑われるとき、医師は原因を突き止める探偵のように検査を進めます。 いくつかの検査を組み合わせ、病気の正体や広がりを正確に把握します。 まるでパズルのピースを一つひとつ集めて、全体像を明らかにする作業です。

主な検査には、次のようなものがあります。

  • 血液検査 まず体の中で「事件(炎症)」が起きているかを確認します。 白血球の数やCRPという値を見て、炎症の強さを調べます。
  • 画像検査 骨やその周りの状態を、目で見て確認するための検査です。
  • X線(レントゲン)検査 骨の形に大きな変化がないかを調べる、基本的な検査です。
  • MRI検査 磁気の力で骨の内部を詳しく見ることができます。 炎症がどこまで広がっているかを知るために、非常に重要です。
  • CT検査 骨の細かい部分を輪切りにして、小さな変化も見逃さないようにします。
  • 培養検査 膿(うみ)や骨の一部を採って、原因の「犯人(細菌)」を特定します。 どの細菌が原因か分かれば、それに効く薬を選ぶことができます。

特に、糖尿病で足に傷がある方の骨髄炎診断では、特別な方法があります。 ある研究では、X線検査と、ある簡単なテストを組み合わせる方法が注目されました。

そのテストとは「プローブ・トゥ・ボーンテスト」と呼ばれるものです。 これは、専用の細い器具で傷の奥に骨が直接触れるかを確認する検査です。 このテストとX線を組み合わせると、MRIに匹敵するほど正確に診断できる可能性が示されています。

この方法は、患者さんの体の負担や費用を抑えられるという利点があります。 このように検査をうまく組み合わせ、慎重に診断を進めていくのです。

骨髄炎の治療

骨髄炎の治療は、骨の中に住みついた細菌との根気強い戦いです。 治療の柱は、お薬による治療と、必要に応じた手術の2つです。 これらを組み合わせて、骨を細菌から守り抜きます。

お薬による治療(薬物療法)

治療の基本は、原因となっている細菌をやっつけるお薬(抗菌薬)です。 まず、どの細菌が原因かを突き止め、その細菌に効くお薬を選びます。

骨の中は血の流れが少ないため、お薬が届きにくい場所です。 そのため、4〜6週間、場合によってはそれ以上、根気強くお薬を使います。 治療を途中でやめると、細菌が再び増えてしまう可能性があります。

骨髄炎の原因として最も多いのは、黄色ブドウ球菌という細菌です。 ある研究では、手術と抗菌薬を組み合わせることで、約8割の方で良い結果が得られたと報告されています。

また、特定の抗菌薬を使った治療の研究も進んでいます。 ある報告では、ダルババンシンというお薬を使った治療の成功率は約79.3%でした。 特に、1週間ごとに3回お薬を投与する方法で、成功率が約92.3%まで高まったというデータもあります。

手術による治療

お薬だけでは治らない場合や、骨が死んでしまっている(壊死)場合には、手術が必要です。 手術は、お薬の効果を最大限に引き出すためにも非常に重要です。

  • 膿(うみ)の排出
    骨の中にたまった、細菌のかたまりである膿を体の外に出します。
  • 壊死した組織の除去
    感染で死んでしまった骨や組織は、細菌のすみかになってしまいます。 このすみかをきれいに取り除くこと(デブリードマン)が、治療成功の鍵です。
  • 洗浄
    感染した場所を大量の水で洗い流し、細菌の数を一気に減らします。

これらの治療は、患者さんの体の状態や病気の進み具合で変わります。 医師とよく相談し、自分に合った治療を一緒に進めていきましょう。