骨軟骨腫

あなたやお子さんの体に、原因不明の硬い「こぶ」はありませんか?特に膝や肩の周りにできるその出っ張りに、「悪いものではないか」と不安に思うかもしれません。

その正体は、骨にできる良性のできもので最も多い「骨軟骨腫」という病気の可能性があります。骨の成長が活発な10代に多く、ケガのレントゲンで偶然見つかることも少なくありません。実は、診断される方の約7割は1カ所だけにできるタイプで、症状がない場合がほとんどです。

この記事では、骨軟骨腫の原因や症状、遺伝との関係、治療が必要なケースについて詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、不要な心配を解消するためにお役立てください。

骨軟骨腫の概要

骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)は、骨にできる良性のできものです。 骨にできる良性の腫瘍のなかでは、最も多く見られるタイプです。 骨の外側に向かってツノのように飛び出して成長することから、「外骨腫(がいこつしゅ)」とも呼ばれています。

主に骨がぐんぐん成長している10代の子どもによく見られます。 骨の両端の近くにある「成長板」という部分から発生するのが特徴です。 成長板は、骨が長くなるためにとても大切な役割を担っています。

  • できやすい場所
  • 膝の周り(太ももの骨や、すねの骨)
  • 肩の周り(腕の付け根の骨)
  • 手の指の骨

骨の成長が終わる思春期以降には、この腫瘍の成長も止まることがほとんどです。 症状がないことも多く、他のケガでレントゲン検査を受けた際に、偶然見つかることも少なくありません。

まれに、足首や膝に痛みや腫れとして現れる特殊なタイプもあります。 これは「Trevor’s disease」とも呼ばれ、特に足の骨にこぶや痛みが起きることが報告されています。 気になる症状があれば、早めに専門医に相談し、適切な診断を受けることが大切です。

骨軟骨腫の種類

骨軟骨腫は、こぶができる数や場所によって主に分けられます。 ご自身の状態を正しく知るための第一歩になります。 それぞれの特徴をみていきましょう。

単発性骨軟骨腫(たんぱつせい こつなんこつしゅ)

  • できる数
  • 体のどこか1カ所にだけ、こぶができます。
  • 特徴
  • 骨軟骨腫と診断される方のうち、約7割がこのタイプです。
  • 症状がないことも多く、他のケガでレントゲンを撮った際に
  • 偶然見つかることも少なくありません。

多発性骨軟骨腫(たはつせい こつなんこつしゅ)

  • できる数
  • 体のあちこちに、複数のこぶができます。
  • 特徴
  • こちらは遺伝が関係することがあり、
  • 「先天性多発性外骨腫」とも呼ばれます。
  • 複数のこぶが骨の成長をじゃましてしまうことがあります。
  • その結果、手足の変形や身長が伸びにくい原因になることも。

Trevor病(トレバーびょう)

  • できる数
  • 複数(体の片側のみ)
  • 特徴
  • 非常に珍しいタイプの骨軟骨腫です。
  • 体の右側か左側のどちらか片側だけにこぶができます。
  • 特に足首や膝の関節にできやすく、
  • ある研究では足首の「距骨(きょこつ)」という骨に多いです。
  • こぶによる腫れや痛みが主な症状として現れます。
  • このタイプは早期診断と精密な治療が大切です。

種類

できる数

特徴

単発性

1つ

最も多いタイプ。症状がないことも多い。

多発性

複数

遺伝することがあり、骨の変形を伴うことがある。

Trevor病

複数(片側のみ)

骨の端にできる珍しいタイプ。足首や膝に多い。

骨軟骨腫の原因

骨軟骨腫ができる根本的な原因は、遺伝子の異常にあると考えられています。 遺伝子とは、私たちの体の設計図のようなものです。 その設計図に何らかの変化が生じることが、発症のきっかけになります。

子どもの骨の端には「成長軟骨板」という、骨を伸ばす大切な部分があります。 骨軟骨腫は、この成長軟骨板の働きに異常が生じ、骨が外側へ飛び出すことで発生します。

骨の成長を調整する「EXT遺伝子」

多くの骨軟骨腫では、特定の遺伝子が関係していることがわかっています。

  • 関与する遺伝子
  • 「EXT1」と「EXT2」という名前の遺伝子です。
  • これらは骨が過剰に作られるのを防ぐ、ブレーキのような役割を担います。
  • 遺伝子の異常
  • このブレーキ役の遺伝子に異常が起こると、骨の成長を制御できなくなります。
  • その結果、骨の一部が外側に向かって、こぶのように成長してしまいます。

なぜこの遺伝子に異常が起きるのか、その詳しい仕組みはまだ不明です。 そのため、残念ながら現在のところ骨軟骨腫を予防する方法はありません。

遺伝が関係するタイプとしないタイプ

骨軟骨腫は、こぶができる数によって遺伝との関係性が異なります。

  • 多発性骨軟骨腫(遺伝することが多い)
  • 体のあちこちにこぶができるタイプで、遺伝が原因となることが多いです。
  • 親から子へ50%の確率で伝わる「常染色体優性遺伝」という形式をとります。
  • ただし、約10%は遺伝とは関係なく発症するとも報告されています。
  • 単発性骨軟骨腫(遺伝しないことがほとんど)
  • こぶが1つだけできるタイプです。
  • こちらは遺伝とは無関係に、その人自身の遺伝子に変化が生じて発症します。

このように、ほとんどの骨軟骨腫は遺伝を過度に心配する必要はありません。 ご自身の状態を正しく知るためにも、気になる症状があれば専門医に相談しましょう。

骨軟骨腫の症状

骨軟骨腫は、症状がほとんど出ないことも多いです。 骨の成長とともにゆっくり大きくなるため、気づきにくいのです。 他のケガでレントゲン検査を受け、偶然見つかることも少なくありません。

症状が出る場合は、こぶができた場所や大きさによってさまざまです。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門医へ相談しましょう。

主な症状

骨軟骨腫で現れることがある、代表的な症状は以下のとおりです。

  • さわってわかる、かたい「こぶ」 骨のでっぱりとして、皮膚の上からでもかたく触れることができます。 見た目にも、こぶのようにふくらんで見えることがあります。 このこぶ自体に痛みを感じることは、あまりありません。
  • 痛み こぶが大きくなると、その周りにある神経や腱(筋肉と骨をつなぐ組織)を圧迫することがあります。 これにより、体を動かした時などに痛みを感じるようになります。 ある研究では、足首にできる珍しいタイプ(Trevor病)では、こぶと痛みが主な症状だと報告されています。
  • 関節の動きにくさ ひざや肩など、関節のすぐ近くにこぶができると、関節の動きを邪魔してしまうことがあります。 その結果、関節を深く曲げたり、まっすぐに伸ばしたりしにくくなります。

その他の注意すべき症状

こぶができる場所やタイプによっては、次のような症状も現れます。

症状の種類

具体的な内容

しびれ

こぶが神経を強く圧迫することで、手や足にしびれが出ることがあります。

骨の変形

体のあちこちにこぶができる多発性の場合、骨の成長バランスが崩れることがあります。腕や足の長さが左右で変わったり、背骨が曲がったりすることがあります。

急な痛み・はれ

こぶの根元は細くなっていることがあります。この部分が何かの拍子に折れてしまい(骨折)、急に強い痛みやはれが出ることがあります。

爪の変形

指の先にできる「爪下外骨腫」というタイプでは、爪が盛り上がったり変形したりします。

骨軟骨腫の検査・診断

骨のでっぱりや痛みなどの症状から骨軟骨腫が疑われる場合、いくつかの検査を組み合わせて、慎重に診断を進めていきます。

まず基本となるのが、骨の写真を撮るレントゲン(X線)検査です。 骨からキノコやツノのように飛び出している、こぶの形や大きさを確認します。 この検査で、こぶが正常な骨としっかりつながっている様子がわかります。

しかし、レントゲンだけではわからない情報もたくさんあります。 そこで、より詳しく調べるために、次のような画像検査を追加することがあります。

  • CT検査 骨の形を輪切りのようにして、より立体的に見ることができます。 レントゲンでは見えにくい、複雑な場所にあるこぶの状態を詳しく把握します。
  • MRI検査 磁石の力を使って、体の内部を詳しく見る検査です。 こぶの表面をおおう軟骨部分の厚さを測るのに役立ちます。 また、こぶが周りの神経や血管を圧迫していないかも調べることができます。

これらの画像検査で診断が難しい場合や、まれに起こる悪いものへの変化を調べる必要があるときには、生検をおこないます。 これは、こぶの一部を少しだけ取ってきて、顕微鏡でくわしく調べる検査です。 この検査によって、最終的な診断が確定します。

特に足首などにできる珍しいタイプ(Trevor病)の研究では、早期診断がその後の治療に良い影響を与えることがわかっています。 どのようなタイプであっても、気になる症状があれば早めに受診し、定期的な検査で注意深く経過を見ていくことがとても大切です。

骨軟骨腫の治療

骨軟骨腫の治療は、症状があるかどうかで大きく方針が変わります。 痛みなどがなく、生活に困っていない場合は、すぐに治療はしません。 まずは、こぶの状態をじっくり見ていく「経過観察」が基本です。

症状がない場合:経過観察

症状がない骨軟骨腫は、すぐに手術をする必要はありません。 骨の成長が終わる20歳ごろになると、こぶが大きくなるのも止まるからです。 慌てずに、注意深く様子を見ていくことがとても大切になります。

経過観察中は、1年に1〜2回ほど定期的に病院を受診します。 レントゲン検査などで、こぶの大きさや形に変化がないかを確認します。 研究でも、こぶの状態をしっかり見ていくことが重要だとされています。

症状がある場合:手術

次のような症状で生活に困る場合は、手術を考えます。

  • 痛みがあるとき こぶが周りの組織を圧迫して、痛みを感じる場合です。
  • しびれや麻痺があるとき こぶが神経を圧迫し、手足の感覚がおかしくなるときです。
  • 関節が動きにくいとき ひざや肩などの関節の動きを、こぶが邪魔してしまう場合です。
  • 骨が変形してきたとき 特に多発性のタイプで、骨の成長に影響が出ている場合です。

手術では、原因となっている骨のでっぱりを切り取る「切除術」を行います。 足首などにできる珍しいタイプ(Trevor病)でも、この手術が基本です。 ある研究では、手術を受けた人の約9%に再発が見られたと報告されています。

治療後の注意点

手術でこぶを取り除いても、まれに再発することがあります。 そのため、手術後も定期的な検査で、注意深く見ていくことが大切です。 また、頻度は低いですが、悪性の腫瘍に変化する可能性もゼロではありません。

急にこぶが大きくなったり、痛みが強くなったりしたとき。 これは、悪いものに変化しているサインかもしれません。 このような場合は、すぐに専門の医師に相談してください。 早期の診断と治療が、とても重要になります。