「最近、背中が丸くなった気がする」「昔より身長が縮んだかも」。その何気ない変化を、単なる年齢のせいだと見過ごしていませんか? それは、骨が静かにもろくなっていく病気「骨粗しょう症」の危険なサインかもしれません。この病気は自覚症状がないまま進行するため「サイレント・ディジーズ」とも呼ばれ、気づいた時にはくしゃみ一つで骨折する事態も起こり得ます。
骨粗しょう症が引き起こす骨折は、あなたの生活を一変させる可能性があります。実際に国の調査でも「骨折・転倒」は介護が必要となる主な原因の一つと報告されており、決して他人事ではありません。手術が必要になった場合、体内でコップ1杯分以上の「隠れた失血」が起こる可能性も指摘されています。
この記事では、骨粗しょう症の本当の怖さから、CT画像を用いた最新の検査、体への負担が少ない治療法までを詳しく解説します。手遅れになる前に正しい知識を身につけ、将来の骨折リスクからご自身の生活を守るための一歩を踏み出しましょう。
骨粗しょう症の概要
骨粗しょう症とは、骨の強さが低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気のことです。骨に含まれるカルシウムなどが減少し、中身がスポンジのようにスカスカの状態になります。
はじめは痛みなどの自覚できる症状がほとんどありません。そのため、ご自身では気づかないうちに病気が静かに進行してしまう、注意が必要な病気です。病気が進むと、次のようなことが起こりやすくなります。
- ささいなことでの骨折 転んだだけで手首や足の付け根を骨折します。 くしゃみや咳をしただけで背骨を骨折することもあります。
- 見た目の変化 背中や腰がだんだん曲がってきます。 背骨が潰れることで身長が縮むこともあります。
特に、足の付け根や背骨の骨折は、歩くことが難しくなったり、寝たきりになったりする原因になります。実際に『骨折・転倒』は、介護が必要となる主な原因の一つです。(令和元年度国民生活基礎調査より)
私たちの骨は、古い骨が壊され(骨吸収)、新しい骨が作られる(骨形成)というサイクルを繰り返すことで、健康を保っています。このバランスが崩れ、骨を壊す働きが上回ると骨粗しょう症になります。
最近の研究では、別の病気の検査で撮影したCT画像を使い、骨折リスクを早期発見する試みが進んでいます。CT画像から骨の強度をコンピューターで詳しく分析し、従来の検査より高い精度で骨折のしやすさを予測できる可能性が期待されています。
骨粗しょう症の種類
骨粗しょう症は、その原因によって大きく2つの種類に分けられます。 ご自身がどちらのタイプかを知ることが、適切な治療への第一歩です。
- 原発性(げんぱつせい)骨粗しょう症 特別な病気が原因ではなく、主に加齢や閉経が引き金となります。 閉経すると女性ホルモンが減り、骨を壊す働きが強まります。 骨粗しょう症のほとんどが、この原発性骨粗しょう症です。 長年の食事の乱れや運動不足なども、発症に深く関わります。
- 続発性(ぞくはつせい)骨粗しょう症 関節リウマチや糖尿病など、何か特定の病気が原因で起こります。 また、治療でステロイド薬を長く使っている場合も注意が必要です。 この場合は、原因となっている病気の治療も一緒に行います。
どちらのタイプであっても、骨がもろくなると背骨がつぶれる骨折(圧迫骨折)を起こしやすくなります。 その治療法の一つに、骨セメントという医療用の接着剤をつぶれた骨に注入して固める手術(椎体形成術)があります。
この手術では、体の外からは見えない「隠れた失血」が起こることがあります。 ある研究では、手術中に平均でコップ1杯分以上(約278mL)の血液が失われる可能性が示されています。 特に、胸の高さの背骨を骨折した場合や、骨折した骨の数が多いと、この見えない出血が増える傾向があります。
そのため、患者さんの負担をできるだけ少なくする工夫が重要です。 最近では、手術時間を短くしたり、レントゲンで体の中を見る回数を減らしたりできる新しい手術方法も開発されています。 これにより、体への負担を軽くしながら治療を行うことが目指せるようになっています。
骨粗しょう症の原因
骨の中では、古い骨が壊され、新しい骨が作られています。 この新陳代謝のバランスが崩れることが、根本的な原因です。 骨を壊す働きが、骨を作る働きを上回ってしまうのです。
主な原因として、以下の3つが考えられます。
- 加齢と閉経 女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は重要です。 骨が過剰に壊されるのを防ぐ、ブレーキのような役割があります。 閉経を迎えると、このエストロゲンが急激に減少します。 そのため骨を壊す働きが強まり、骨がもろくなるのです。
- 生活習慣の問題 長年の生活習慣も、骨の強さに大きく影響します。 * 食事の偏り 骨の材料となるカルシウムや、その吸収を助けるビタミンD、 骨の質を高めるビタミンKなどの不足が挙げられます。 * 運動不足 骨は運動などで力がかかると、より丈夫になります。 動かない生活は、骨を弱くする原因の一つです。 * その他の習慣 喫煙や過度なアルコール摂取も骨にはよくありません。 また、日光を浴びる時間が短いことも原因となります。
- 病気や薬の影響 特定の病気や薬が原因で、骨が弱くなることもあります。 関節リウマチや糖尿病、またステロイド薬の長期使用などです。 このような原因で骨がもろくなると、背骨の圧迫骨折が起きやすくなります。 特に胸の高さの骨折や複数箇所の骨折は注意が必要です。 手術の際に、体の内部で見えない出血が増える要因になるとの研究報告もあります。
骨粗しょう症の症状
骨粗しょう症は骨がもろくなっても、初期には痛みが出ません。 そのため「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれます。 ご自身では気づかないうちに進行していることが多い病気です。
症状が進むと、次のようなサインが現れることがあります。 ご自身の状態と比べてみましょう。
【骨粗しょう症の主な症状チェックリスト】
- 背中や腰の痛み 最近、背中や腰に痛みを感じるようになった。
- 身長の低下 昔と比べて身長が2cm以上縮んだ気がする。
- 姿勢の変化 周りの人から「背中や腰が丸くなった」と言われる。
- ささいな動作での激痛 重い物を持つ、くしゃみなどで腰に激痛が走ることがある。
特に注意が必要なのが、ささいなきっかけで起こる骨折です。 骨がスカスカのため、転んだり軽く手をついたりして骨折します。 重症化すると、咳の衝撃だけで背骨が潰れる圧迫骨折も起きます。
太ももの付け根の骨折は、歩行が難しくなり寝たきりの原因です。 また、背骨の圧迫骨折は強い痛みを引き起こすだけではありません。 治療のための手術で、体内で見えない出血が起こることがあります。
この「隠れた失血」は、高齢の方の体力を奪う一因になります。 ある研究では、手術中に平均でコップ1杯分以上(約278mL)もの血液が、体の内部で失われる可能性が示されています。
これらの症状を、単なる加齢のせいだと見過ごさないでください。 気になるサインがあれば、お早めに専門医へ相談することが大切です。
骨粗しょう症の検査・診断
骨粗しょう症は静かに進行するため、検査で骨の状態を知ることが重要です。 将来の骨折という「未来の事故」を防ぐための健康診断のようなものです。 ご自身の骨が今どのような状態なのか、詳しく調べていきましょう。 診断は、主に次のような検査を組み合わせて丁寧に行います。
- 問診 普段の食事や運動習慣、過去の骨折経験などをお聞きします。 ご家族に骨粗しょう症の方がいるかなども、大切な情報です。
- 骨密度測定(DXA法:デキサほう) 骨の中身がどれくらい詰まっているか(骨密度)を測る検査です。 ベッドに横になるだけで、痛みもなく短時間で調べられます。 特に骨折しやすい腰の骨や、足の付け根の骨を正確に測定します。
- X線(レントゲン)検査 主に背骨の写真を撮り、骨の形や骨折の有無を確認します。 ご自身が気づかないうちに起きていた圧迫骨折が見つかることもあります。
- 血液検査・尿検査 骨の新陳代謝、つまり「作る力」と「壊す力」のバランスを調べます。 骨を壊す働きが強くなっていないかなどを確認することができます。
また最近の研究では、新しい骨折リスクの評価方法が注目されています。 他の病気で撮影したCT画像を使い、骨の強度を詳しく分析するのです。 これは、骨の密度だけでなく、骨の立体的な構造まで評価します。
コンピューターで分析し、どこに力がかかると折れやすいかを予測します。 この方法は、従来の検査よりも正確に骨折を予測できる可能性があります。 偶然撮った写真から、骨折リスクの早期発見につながるかもしれません。
これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定させていきます。 早めに骨の状態を把握することが、骨折のない生活を守る第一歩です。
骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症の治療の目的は、骨がもろくなるのを抑えることです。 そして、つらい骨折を防ぎ、今の生活を守ることがゴールになります。 治療は、主に次の3つの方法を組み合わせて進めていきます。 一人ひとりの骨の状態に合わせて、最適なプランを立てます。
- お薬による治療(薬物療法)
- 食事や運動による治療
- 骨折してしまった場合の手術
お薬による治療(薬物療法)
治療の基本となるのが、お薬を使った治療(薬物療法)です。 お薬には、骨の状態を良くするための大切な役割があります。 主に、働き方の違う3つのタイプのお薬を使い分けます。
- 骨がこわされるのを防ぐお薬(ブレーキ役) 古くなった骨が、必要以上にこわされるのを防ぎます。 骨の量が減っていくスピードを、ゆるやかにするお薬です。
- 新しい骨づくりを助けるお薬(アクセル役) 新しい骨を作る細胞を元気にし、骨作りを活発にします。 骨の質を高め、丈夫な骨を作るのを助ける働きがあります。
- 骨の材料を補うお薬(栄養補給役) 骨の主成分であるカルシウムや、その働きを助けるビタミンを補います。 丈夫な骨を作るための、材料そのものを補給するお薬です。
これらの薬は、医師の指示通りに続けることが何よりも大切です。 ご自身の判断でお薬をやめると、骨折のリスクが高まります。
食事や運動による治療
お薬による治療と合わせて、食事や運動で骨を支えることも重要です。 お薬と運動を組み合わせることで、骨がさらに強くなる可能性が期待されます。 ある研究では、お薬だけの治療よりも運動を一緒に行った方が、腰や足の骨の密度が高まる傾向が示されました。
しかし、この効果がどれほど確実なものなのかは、まだ研究の途中です。 運動が骨折をはっきりと防ぐかどうかについても、今後のさらなる研究で明らかになっていくでしょう。
手術による治療
残念ながら転んで骨折してしまった場合は、手術が必要になることがあります。 例えば、背骨がつぶれてしまう「圧迫骨折」という状態です。 この骨折には、医療用のセメントで骨を補強する手術があります。
最近では、患者さんの体への負担をできるだけ減らす工夫が進んでいます。 ある研究では、従来の方法と同じくらいの効果を保ちながら、手術時間を短くしたり、レントゲンで体を見る回数を減らしたりできる新しい手術方法も報告されています。