貧血

「いつもだるい」「めまいがする」といった不調が続いていませんか。貧血は血液中の酸素不足により全身に影響を及ぼします。単なる体質や疲れと見過ごされがちですが、その背景には思いがけない病気が隠れている可能性も考えられます。

この記事では、貧血の概要から主な種類、見過ごされやすい病気「コラーゲン性胃炎」にも触れます。コラーゲン性胃炎の患者さんの61.4%に貧血が、約12.5%で内視鏡所見が正常であったと報告されています。さらに、鉄欠乏性貧血が小児の熱性けいれんリスクを最大1.59倍に高める可能性など、貧血の原因、症状、検査、治療法について詳しく解説します。

この記事を読むことで、ご自身の不調が貧血によるものか、その裏に病気が隠れているのかを理解できます。適切な知識を得て、気になる症状がある場合に、自己判断せずに医療機関を受診する次の一歩を踏み出す手助けとなるでしょう。

貧血の概要

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足し、全身へ酸素が十分に運ばれなくなる状態です。体中の細胞が十分な酸素を受け取れないため、体はエネルギー不足となり、めまいやだるさ、息切れといったさまざまな不調を引き起こします。

貧血の原因はさまざまですが、単なる栄養不足だけではなく、背景に見過ごされやすい病気が隠れている可能性もあります。その一つに、コラーゲン性胃炎(Collagenous Gastritis; CG)というまれな病気が挙げられます。これは、胃の粘膜の下に異常なコラーゲンが沈着し、慢性的な炎症を起こすことで、貧血と腹部の不快感をおもな症状として現れる疾患です。ある研究では、コラーゲン性胃炎の患者さんのうち、実に61.4%に貧血が、60.5%に腹部不快感が認められたと報告されています※。

このコラーゲン性胃炎は、内視鏡検査を受けても、胃の粘膜が正常に見えることが約12.5%の患者さんにあるため、診断がつきにくい場合があります※。そのため、確定診断には胃の組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる病理検査が、病変の特徴である上皮下コラーゲンバンドの沈着や粘膜の炎症性浸潤を確認するために欠かせません※。

このように、貧血は単なる体調不良ではなく、隠れた病気のサインである可能性も考えられます。気になる症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

貧血の種類

貧血は、その原因によっていくつかの種類に分けられます。血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが不足し、全身へ酸素が十分に運ばれなくなる状態が貧血ですが、その根本的な原因は多岐にわたります。主な貧血の種類は次のとおりです。

  • 鉄欠乏性貧血:体内の鉄分が不足することで起こる、最も頻度の高い貧血です。ヘモグロビンを作るために必要な鉄が足りなくなるため、赤血球が正常に作られなくなります。
  • 再生不良性貧血:骨髄(骨の中にある血液を作る工場)の機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板なども作られにくくなる重い病気です。

これらの貧血の中でも、特に多くの方が経験するのが鉄欠乏性貧血です。実は、この鉄欠乏性貧血や体内の鉄の状態を示す指標の異常が、お子さんの健康に意外な影響を与える可能性も指摘されています。

小児科領域でよく見られる「熱性けいれん」は、発熱時に引き起こされるけいれん発作で、5歳未満のお子さんで最も一般的なけいれんの一種です。この熱性けいれんについて、これまでの研究では鉄欠乏性貧血との関連性が明確ではありませんでした。しかし、最近のメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)によって、鉄欠乏性貧血や鉄の指標の異常が、熱性けいれんの発症リスクを高める可能性が示されています※。

具体的には、以下の鉄に関連する指標の異常が熱性けいれんの発症リスクを上昇させると報告されています※。そのリスクは、異常がない場合に比べて1.24倍から1.59倍に増加すると考えられています※。この「〇〇倍」という数字はオッズ比と呼ばれ、ある要因があることで病気になる確率がどれくらい高まるかを示す指標です。

これらの指標は、お子さんの体内の鉄の状態を評価するために血液検査で測定されます。

  • 平均赤血球容積(MCV):赤血球の平均的な大きさを示します。鉄欠乏性貧血では赤血球が小さくなるため、この値が低くなる傾向があります。
  • 血清鉄:血液中にどれくらいの鉄が存在するかを示します。
  • 総鉄結合能(TIBC):鉄を運ぶタンパク質が、どれくらいの鉄と結合できるかを示す能力です。鉄が不足すると、より多くの鉄を結合しようとするため、この値が高くなることがあります。
  • フェリチン:体内に貯蔵されている鉄の量を反映する指標です。

これらの指標の中でも、特に低血清フェリチンレベルは、熱性けいれんとの関連性を評価する際に、他の指標よりも高い診断精度を示すことが明らかになっています※。つまり、フェリチンの値が低いと、熱性けいれんが起こりやすい状態にある可能性が高いと判断できるわけです。

この研究は、お子さんの熱性けいれんのリスクを評価し、適切な対応を考える上で、鉄の状態に注目することの重要性を示唆しています※。もし、お子さんの体調で気になる症状がある場合は、自己判断せず、かかりつけ医や小児科で相談し、必要に応じて血液検査など適切な検査を受けることをおすすめします。

貧血の原因

貧血の原因は多岐にわたり、体内で酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンが不足する、さまざまな背景が考えられます。単なる栄養不足だけでなく、見過ごされやすい病気が隠れているケースも少なくありません。

貧血のおもな原因は、次のとおりです。

  • 鉄欠乏性貧血:体内の鉄分が不足することで起こる最も頻度の高い貧血です。ヘモグロビンを作る材料である鉄が足りなくなるため、赤血球が正常に作られなくなります。女性では月経による出血や妊娠・授乳、消化管からの微量な出血、または食事からの鉄分摂取不足などが原因となることが多くみられます。
  • 巨赤芽球性貧血:ビタミンB12や葉酸の不足によって赤血球が正常に成熟できなくなることで引き起こされる貧血です。
  • 再生不良性貧血:骨髄(骨の中にある血液を作る工場)の機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板なども十分に作られなくなる病気です。
  • 溶血性貧血:何らかの異常で赤血球が通常よりも早く壊されてしまうことで起こる貧血です。
  • 二次性貧血:慢性腎臓病や慢性的な炎症性疾患、悪性腫瘍など、他の病気に伴って貧血が生じる場合です。これらの疾患は、赤血球の産生を抑制したり、鉄の利用を妨げたりすることがあります。

見逃されがちな貧血の原因「Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎)」

貧血の原因の中には、診断が難しいまれな病気が隠れていることがあります。その一つに「Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎; CG)」という胃の病気が挙げられます。これは、胃の粘膜の下に異常なコラーゲンが沈着し、慢性的な炎症を起こすことで貧血や腹部の不快感がおもな症状として現れる疾患です。

ある研究では、コラーゲン性胃炎の患者さんのうち、実に61.4%に貧血が、60.5%に腹部不快感が認められたと報告されています※。しかし、この病気は内視鏡検査を受けても、胃の粘膜が正常に見えることが約12.5%の患者さんにあるため、見過ごされやすく、診断がつきにくい場合があります※。

そのため、確定診断には胃の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる病理検査が欠かせません。この検査では、病変の特徴である「上皮下コラーゲンバンドの沈着」や「粘膜の炎症性浸潤」が確認されることで、コラーゲン性胃炎と診断できることになります※。

コラーゲン性胃炎の治療には、鉄剤補充や胃酸を抑える薬(PPI)、ステロイドなどが用いられることがありますが、患者さんの約64%で症状の改善が見られたとされています※。この病気はまだ稀なため、より明確な診断基準と効果的な治療法の確立に向けた研究が強く求められています※。

このように、貧血は多岐にわたる原因によって引き起こされます。単なる体調不良と自己判断せず、気になる症状が続く場合は医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

貧血の症状

貧血は、全身の細胞に十分な酸素が届かなくなるために、体はさまざまなサインを発している可能性があります。体中の細胞が酸素不足に陥り、まるでエネルギー切れを起こしたような不調を感じるようになるのです。

貧血が引き起こすおもな症状は、次のとおりです。

  • 全身倦怠感:これまで難なくできていた動作でも、すぐに疲れを感じるようになります。ぐったりとしただるさが続き、日常生活にも影響が出ることがあります。
  • めまい・立ちくらみ:立ち上がった際に、視界が真っ白になったり、ふらつきを感じたりすることが多くなります。脳に一時的に酸素が届きにくくなるために起こる症状です。
  • 息切れ・動悸:階段を少し上るだけでも息が上がったり、心臓が普段よりも速くドキドキしたりすると感じるかもしれません。体が必要とする酸素を補うため、心臓がいつも以上に働くことが原因です。
  • 顔色不良:顔色が悪く、唇や爪が青白く見えることがあります。これは、血液中のヘモグロビン(赤色色素)が減少しているためです。
  • 頭痛・集中力の低下:脳に酸素が十分に運ばれないことで、頭が重く感じたり、物事に集中しづらくなったりします。
  • 手足の冷え:血流が悪くなることで、特に手足の末端が冷えやすく感じるでしょう。体が酸素を優先的に重要な臓器に送ろうとするため、末梢への血流が減ることが背景にあります。
  • 爪の変形:爪が薄くなり、真ん中がへこんでスプーンのように反り返る「スプーンネイル」と呼ばれる状態になることもあります。

見過ごされやすい貧血のサイン:腹部の不快感

貧血の症状は多岐にわたりますが、中には見過ごされやすい病気が隠れているケースもあります。例えば、「Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎; CG)」という稀な病気では、貧血と同時に腹部の不快感を訴える患者さんが多いことが報告されています。

ある研究では、CGの患者さんの実に61.4%に貧血が、60.5%に腹部不快感が認められたとされています※。このように、貧血とともに「お腹の調子も悪い」と感じることが、貧血の原因を探る上で重要な手がかりとなる場合があります。

このCGは、内視鏡検査をしても胃の粘膜が正常に見えるケースが約12.5%あるため、診断が見過ごされやすい傾向があるのも特徴です※。そのため、貧血の症状が続くのに原因がわからない場合や、腹部の不快感も伴う場合は、稀な病気の可能性も視野に入れることが大切です。

貧血の症状は、単なる体調不良と片付けられがちですが、その裏に隠れた病気のサインであることもあります。もし、これらの症状が続くようでしたら、自己判断せずに医療機関でご相談ください。

貧血の検査・診断

貧血の検査・診断は、患者さんの自覚症状や身体診察、そして血液検査を通して、貧血の有無、種類、背景に潜む原因までを明らかにする重要なステップです。

診察ではまず、だるさ、めまい、息切れといった貧血のサインについて詳しくお話を伺います。その後、顔色や目の下の粘膜の状態などを確認し、貧血の兆候がないかを調べます。血液検査は、貧血の有無やその種類を見極める上で不可欠な第一歩です。この検査では、酸素を運ぶヘモグロビン濃度や、赤血球の平均的な大きさを示す平均赤血球容積(MCV)などを測定し、貧血の全体像を把握していきます。

貧血の原因特定には、一般的な検査だけでは見過ごされやすい病気が隠れていることもあります。その一つに「Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎; CG)」という稀な胃の病気が挙げられます。これは、胃の粘膜の下に異常なコラーゲンが沈着し、慢性的な炎症を起こすことで貧血や腹部の不快感がおもな症状として現れる疾患です。

コラーゲン性胃炎が原因の貧血は診断が難しい場合があります。なぜなら、内視鏡検査を受けても胃の粘膜が正常に見えるケースが約12.5%あるため、通常の検査では見過ごされやすい傾向にあるからです※。そのため、確定診断には胃の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる病理検査が不可欠となります。この病理検査では、コラーゲン性胃炎の特徴である「上皮下コラーゲンバンドの沈着」や「粘膜の炎症性浸潤」といった病変を直接確認することになります※。

コラーゲン性胃炎の治療には、鉄剤補充や胃酸を抑える薬(PPI)、ステロイドなどが用いられることがあり、ある研究では約64%の患者さんで症状の改善が見られたと報告されています※。この病気はまだ稀なため、より明確な診断基準と効果的な治療法の確立に向けた研究が強く求められているといえます※。

このように、一般的な検査で貧血の原因が特定できない場合や、治療に反応しない場合は、便潜血検査や内視鏡検査など、さらに専門的な検査が必要となることがあります。気になる症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

貧血の治療

貧血の治療は、その根本原因と種類に応じてアプローチが異なります。ただ鉄分を補うだけでなく、なぜ貧血が起きているのかという背景を特定し、それに合わせた治療を行うことが大切です。

鉄欠乏性貧血の治療

貧血の中で最も多く見られるのが「鉄欠乏性貧血」です。この場合の治療は、体内の鉄分を適切に補充することが基本となります。

  • 鉄剤の服用・注射
    体内の鉄分を補うために、鉄剤を内服することが一般的です。しかし、鉄剤が体質に合わず、胃の不調などの副作用を感じる方や、消化管からの吸収が難しい方には、点滴や注射で直接鉄分を補給する方法がとられることもあります。貧血の改善には、ある程度の期間、継続して鉄剤を使用することが求められるため、症状が良くなったと感じても自己判断で中断せず、必ず医師の指示に従いましょう。
  • 食事の見直し
    日々の食事内容を見直すことも、鉄欠乏性貧血の改善には欠かせません。ヘモグロビンを作る材料となる鉄分を多く含む食材(赤身肉、レバー、ほうれん草、ひじきなど)を積極的に取り入れることが推奨されます。さらに、鉄分の吸収を助けるビタミンCを豊富に含む食品(ブロッコリー、パプリカ、柑橘類など)を一緒に摂るよう意識すると、より効果的な鉄分摂取につながると考えられます。
  • 原因疾患の治療
    鉄欠乏性貧血は、単に食事からの鉄分が不足しているだけではなく、子宮筋腫による月経量の増加、胃潰瘍や痔、消化管からの微量な出血など、体のどこかで鉄分が失われていることが原因である場合も少なくありません。そのため、貧血の背景に隠れた病気がある場合は、その病気そのものを治療することが最も重要です。原因疾患が特定され、適切に治療されれば、貧血の症状も改善に向かうことが期待できます。

見過ごされやすい貧血の原因と治療:Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎)

貧血の原因は多岐にわたり、中には診断が難しいまれな病気が隠れていることがあります。その一つが「Collagenous Gastritis(コラーゲン性胃炎; CG)」という胃の病気です。これは、胃の粘膜の下に異常なコラーゲンが沈着し、慢性的な炎症を起こすことで貧血や腹部の不快感がおもな症状として現れる疾患です。ある研究によると、コラーゲン性胃炎の患者さんのうち、実に61.4%に貧血が、60.5%に腹部不快感が認められたと報告されています[※](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367069/)。

この病気の診断は難しいとされています。なぜなら、内視鏡検査を受けても胃の粘膜が正常に見えることが、患者さんの約12.5%にあるためです[※](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367069/)。通常の検査では見過ごされやすい傾向があるため、貧血が続くにもかかわらず原因がはっきりしない場合は、この病気の可能性も視野に入れる必要があります。

確定診断のためには、胃の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる「病理検査」が不可欠です。この検査では、コラーゲン性胃炎に特徴的な「上皮下コラーゲンバンドの沈着」や「粘膜の炎症性浸潤」といった病変が確認されることで、診断が確定します[※](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367069/)。

コラーゲン性胃炎の治療には、貧血に対する鉄剤補充や、胃酸を抑える薬(PPI)、炎症を抑えるステロイドなどが用いられることがあります。これまでの治療では、約64%の患者さんで症状の改善が見られたと報告されており、これらの治療法が有効である可能性が示されています[※](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367069/)。しかし、コラーゲン性胃炎はまだ稀な疾患であるため、より明確な診断基準の確立や、効果的な治療法を特定するためのさらなる研究が強く求められているといえます[※](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36367069/)。

貧血の治療は、原因によっては時間がかかることもあります。症状が改善したからといって、自己判断で治療を中断してしまうと、再び貧血の状態に戻ってしまう可能性があります。そのため、定期的に医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を継続していくことが、健康な状態を維持するために重要です。