血小板機能異常

ぶつけた記憶がないのに、いつの間にかできている青あざ。歯磨きのたびに繰り返す歯ぐきからの出血や、なかなか止まらない鼻血。もし、このような症状に心当たりがあるなら、それは血液中の「血小板」の働きに異常があるサインかもしれません。

血小板は「血を止める」働きで知られていますが、その異常は単に出血しやすくなるだけではありません。近年の研究では、生まれつき心臓に病気があるお子さんの場合、逆に血の塊(血栓)ができやすくなることもわかってきました。

この病気は健康診断の一般的な血液検査だけでは見つかりにくく、普段使っている解熱鎮痛薬などが原因となることもあります。この記事では、そんな見過ごされがちな「血小板機能異常」について、その原因から最新の検査・治療法まで詳しく解説します。

血小板機能異常の概要

私たちの血液の中には、血小板という成分があります。 けがをした時に血を止める「体の中のばんそうこう」です。 血管が傷つくと、血小板が集まって固まり傷口をふさぎます。

血小板機能異常とは、この血小板の働きに問題がある状態です。 血小板の数は正常でも、うまく働けないため血が止まりにくくなります。 そのため、以下のような症状がみられやすくなります。

  • なかなか血が止まらない
  • ぶつけた記憶がないのにあざができている
  • 鼻血や歯ぐきからの出血がよくある

健康診断の血液検査では、血小板の数を数えるのが一般的です。 そのため、働きだけが悪いこの病気は見つかりにくいことがあります。

また、血小板の機能異常は出血しやすくなるだけではありません。 生まれつき心臓に病気があるお子さんでは、血小板が過剰に働きやすくなることが最近の研究でわかってきました。 その結果、かえって血の塊(血栓)ができやすくなるのです。 このように、血小板の働きの異常は、出血だけでなく、体の状態によってさまざまな影響を及ぼします。

血小板機能異常の種類

血小板機能異常は、その原因によって大きく2つのタイプに分けられます。 生まれつきの体質によるものと、生まれた後になんらかの原因で起こるものです。

1. 遺伝性血小板機能異常症(生まれつきのもの)

生まれながらに持つ遺伝子の特徴によって、血小板の働きに問題が生じる状態です。 代表的な病気には、以下のようなものがあります。

  • フォン・ヴィレブランド病 血小板が傷口にくっつくために必要な「のり」の役割をする、たんぱく質がうまく働かない病気です。
  • グランツマン病 血小板同士がくっついて固まる働きが弱い病気です。
  • ベルナール・スーリエ症候群 血小板が血管の壁にくっつく働きが弱い病気です。

2. 後天性血小板機能異常症(後から起こるもの)

生まれたときは問題がなくても、お薬や他の病気が原因で機能が低下する状態です。 血小板機能異常症の中では、こちらの方が比較的多くみられます。

最近の研究では、血小板の数だけでなく、その「質」も注目されています。 例えば、骨髄から新しく作られた「未熟な血小板」は、サイズが大きく非常に活発です。 この若い血小板の割合を調べることは、体の中で血小板がどのくらい入れ替わっているかを知る手がかりになります。

また、血小板は「血小板由来細胞外小胞」という、情報を運ぶ小さな袋のような物質を放出します。 この物質が細胞から細胞へと情報を伝え、組織の修復や免疫の働きを助けるなど、体にとって重要な役割を担っていることもわかってきました。

血小板機能異常の原因

血小板の働きが悪くなる原因は、大きく2つに分けられます。 生まれつきの体質によるものと、後から別の原因で起こるものです。

近年の研究では、血小板の新たな働きが注目されています。 それは、細胞同士で情報を伝え合う「小さな袋」を出すことです。 この袋が体の修復や免疫の調整を手伝うこともわかってきました。 このように血小板は複雑な仕事をしているため、様々な要因で機能が低下します。

1. 遺伝性の原因

生まれつき持つ体の設計図(遺伝子)の特徴が原因で起こります。 血小板が傷口にくっついたり、お互いに固まったりするのに必要な、 特定のたんぱく質がうまく作られないことで機能が低下します。

2. 後天性の原因

生まれた後にかかった病気や、使っているお薬が原因となる場合です。 血小板機能異常の原因としては、こちらの方が多くみられます。

  • お薬によるもの 普段使っているお薬が血小板の働きを弱めることがあります。
  • 解熱鎮痛薬 アスピリンやイブプロフェンなど一部のお薬。
  • 血液をサラサラにするお薬 血の塊(血栓)を防ぐために使われるお薬。
  • 一部の抗生物質 細菌による感染症を治療するお薬。
  • 病気によるもの 他の病気の治療や、病気そのものが影響する場合です。
  • 腎臓や肝臓の病気 腎不全や肝硬変など、体の重要な臓器の機能低下。
  • 血液や骨髄の病気 白血病や骨髄増殖性疾患など、血液を作る場所の異常。
  • その他 人工心肺を使った心臓の手術の後などにみられることもあります。

血小板機能異常の症状

血小板の働きが悪いと、血が止まりにくくなるのが一番の特徴です。 血小板の数は正常でも、その機能に問題があると症状があらわれます。 以下のようなサインがないか、チェックしてみましょう。

  • 皮膚や粘膜にあらわれる症状
  • あざができやすい 軽くぶつけただけなのに、大きな青あざや紫色のあざができます。 ぶつけた記憶がないのに、いつの間にかあざができていることもあります。
  • 鼻血や歯ぐきからの出血 鼻血が頻繁に出たり、一度出ると10分以上止まらなかったりします。 歯みがきのたびに、歯ぐきから血がにじむのもサインの一つです。
  • 赤い点々(点状出血) 皮膚に、針で刺したような赤紫色の小さな点々ができることがあります。
  • 女性の場合 生理の出血量が多かったり(過多月経)、期間が長引いたりします。
  • けがをしたときの症状
  • 血が止まりにくい 小さな切り傷や擦り傷でも、血がなかなか止まらないことがあります。 歯を抜いた後など、簡単な処置の後に出血が続くこともあります。

実は、血小板は単に血を固めるだけの細胞ではありません。 最近の研究で、血小板は「情報を運ぶ小さな袋」を出すことがわかってきました。 この袋が細胞から細胞へと大切な情報を伝え、血管を健康に保ったり、傷ついた組織の修復を助けたりしているのです。

血小板の機能が低下すると、この重要な情報のやりとりがうまくいきません。 その結果、血が止まりにくくなるだけでなく、体の修復機能にも影響が出ることがあります。 まれに、お腹の中や頭の中で出血することもあるため注意が必要です。 気になる症状があれば、些細なことと思わずに医療機関へ相談しましょう。

血小板機能異常の検査・診断

あざができやすかったり、血が止まりにくかったりすると心配になりますよね。 その原因を探るため、いくつかの検査を行って詳しく調べていきます。 私たちは、まず基本的な検査から始め、体の負担を考えながら進めます。

検査は、大きく分けて2つのステップで行います。 最初に血小板の「数」を、次に「働き」をチェックします。 これにより、問題がどこにあるのかを突き止めていきます。

検査の種類

この検査でわかること

血算(けっさん)

血液の中に、十分な数の血小板があるかを調べる基本の検査です。

血液凝固検査

血小板以外の、血液を固める他の成分が正常に働いているかを確認します。

血小板機能検査

血小板が傷口に集まり、固まる力(働き)が十分にあるかを調べます。

骨髄検査

血液を作る工場である骨髄で、血小板がきちんと作られているかを見ます。

遺伝子検査

生まれつきの病気が疑われる場合に、原因となる遺伝子を特定します。

最近では、検査技術が大きく進歩しています。 特に注目されているのが「未熟血小板画分(IPF)」という検査です。 これは、骨髄から生まれたばかりの元気な血小板の割合を調べるものです。

新しい研究では、このIPFの測定がとても役立つことがわかってきました。 血液を分析する機械で、簡単かつ迅速に調べられるようになったのです。 血小板が少ない原因の特定や、心臓病のリスク評価にも使われています。

さらに、血小板が活動するためのエネルギーの使い方(脂質代謝)が、 血小板の機能にどう影響するかの研究も進んでいます。 このような研究は、将来の新しい診断法につながる可能性があります。 これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定します。

血小板機能異常の治療

血小板の働きが悪いときの治療は、原因や出血の程度で変わります。 治療の目的は「今ある出血を止めること」と「未来の出血を防ぐこと」。 患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療法を慎重に選びます。

治療の基本は、まず原因となっているものを取り除くことです。

  • 原因となるお薬の中止 血小板の働きを弱めるお薬が原因なら、医師が判断し中止します。 または、影響の少ない別のお薬に変更することを検討します。
  • もとにある病気の治療 腎臓や肝臓の病気などが原因の場合は、その病気の治療が最も大切です。 もとの病気が良くなることで、血小板の機能も改善が期待できます。

すでに出血していたり、手術で出血の危険性が高かったりする場合、 より直接的な治療を行います。

  • お薬による治療
  • 止血剤 血が固まるのを助けるトラネキサム酸などのお薬を使います。
  • 血小板の放出を促すお薬 デスモプレシンというお薬で、体内に蓄えられた血小板を増やし、 一時的に働きを高めることがあります。
  • 血小板輸血 出血がひどい場合や、命に関わる危険があるときに行います。 他の人から提供された血小板を点滴で補充する治療法です。 しかし、血小板は体外で長く保存できないという課題があります。 そのため、血小板のエネルギー源(脂質代謝)を調整し、 機能を保ったまま長く保存する新しい技術の研究が進んでいます。

また、血小板には組織の修復を助ける力も秘められています。 この力を応用し、ご自身の血液から血小板を濃縮して作る、 多血小板血漿(PRP)を用いた再生医療の研究も世界中で行われています。 どのような治療を選ぶかは、担当の医師とよく相談することが大切です。