ぶつけた覚えがないのにできやすい青あざ、なかなか止まらない鼻血や切り傷。こうした症状に心当たりはありませんか? それは、血を固める力が生まれつき弱い「血友病A」のサインかもしれません。日本では約5,500人の方がこの病気と共に生活しています。
特に関節や筋肉の中で起こる内部の出血は、強い痛みを伴い、繰り返すことで日常生活に大きな支障をきたすこともあります。「なぜ自分だけがこんな痛みを」と不安に感じるかもしれませんが、治療法は着実に進化しており、出血そのものを防ぐ新しいお薬も登場しています。
この記事では、血友病Aの原因から、生活の質を大きく改善する可能性を秘めた最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、より良い毎日を送るためのヒントを見つけていきましょう。
血友病Aの概要
血友病Aは、血を固める働きを持つタンパク質の一種、 「第VIII(だいはち)因子」が少ない病気です。
このため、けがをしたときなどに血が止まりにくくなります。 日本では約5,500人の方がこの病気と共に生活しています。
この病気は、第VIII因子の働き具合(凝固因子活性)で、 重症度が3つのタイプに分けられます。
- 重症型 凝固因子活性が1%未満
- 中等症型 凝固因子活性が1%以上5%未満
- 軽症型 凝固因子活性が5%以上
特に問題となるのが、関節や筋肉の中での出血です。 関節の中で出血すると、強い痛みを伴うことがあります。
このつらい痛みを和らげることは治療でとても大切です。 手術などが必要な場合、医師や看護師など専門家が、 チームで患者さん一人ひとりの痛みに合わせた計画を立てます。
血友病Aの種類
血友病Aは、血を固める力の強さによって、 症状のあらわれ方が異なります。
この力の強さを「第VIII(だいはち)因子活性」と呼び、 その値に応じて3つのタイプに分けられます。 ご自身のタイプを知ることは、治療法を決める上で重要です。
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種類(重症度)
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血を固める力(第VIII因子活性)
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主な症状の目安
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重症
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1%未満
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ぶつけていないのに、関節や筋肉で自然に出血します。
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中等症
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1%以上5%未満
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軽いけがでも血が止まりにくく、あざができやすいです。
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軽症
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5%以上40%未満
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歯を抜いた後や手術、大きなけがの時に出血します。
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この分類は、日常生活で気をつけることや、 どのような治療が必要かを考えるための大切な目安です。
最近の研究では、新しいタイプのお薬(非凝固因子製剤)で、 出血を予防する治療法が注目されています。 このお薬は、出血が起きてから治療するのではなく、 定期的に使うことで出血そのものを防ぎます。
研究によると、この予防法は出血回数を大幅に減らし、 出血が全くない人の割合を増やすことがわかっています。 これにより、患者さんの生活の質(QOL)が、 大きく改善される可能性が示唆されています。
生活の質(QOL)とは、毎日をどれだけ快適に、 自分らしく過ごせるかという指標のことです。 注射した場所が赤くなるなどの反応はありますが、 重い副作用のリスクは従来の治療と変わらないとされます。
ご自身のタイプを正しく理解し、医師と相談しながら、 最適な治療法を見つけていきましょう。
血友病Aの原因
血友病Aは、生まれつき持っている体の性質による病気です。 風邪のように、後から他の人からうつることはありません。 このような病気を「先天性(せんてんせい)」の病気と呼びます。
私たちの体は、けがで出血したとき、 血を固めて止血する精巧な仕組みを持っています。 この仕組みを「血液凝固(けつえきぎょうこ)」と呼びます。
血液凝固は、多くの種類のタンパク質が、 チームのように連携して働いています。 血友病Aは、このチームの一員である、 「第VIII(だいはち)因子」がうまく働かないことが原因です。
第VIII因子を作るための体の設計図が「F8遺伝子」です。 この設計図に何らかの変化(変異)があるため、 第VIII因子に次のような問題が起こります。
- 量が少ない 設計図の一部に間違いがあり、十分な量が作られません。
- 働きが悪い 量はあっても形が不完全なため、うまく機能しない状態です。
- 全くない 設計図の重要な部分が失われ、全く作られないこともあります。
このF8遺伝子は、性別を決めるX染色体という部分にあります。 そのため、X染色体を1本しか持たない男性に多く見られます。 しかし、約3分の1は、ご家族に同じ病気の方がいなくても、 遺伝子の変化によって、新たに発症することが知られています。
このように原因が遺伝子レベルで詳しく分かってきたことで、 治療法の研究も大きく進んでいます。 最近では出血そのものを予防するお薬も登場しており、 生活の質を高める効果が期待されています。
血友病Aの症状
血友病Aの症状は、体の表面だけでなく、 体の内部、特に関節や筋肉で起こる出血が大きな特徴です。
症状は、血を固める力の強さによって人それぞれですが、 主に次のようなサインとしてあらわれます。
- あざ(皮下出血) ぶつけた覚えがないのに、手足などに青あざができやすいです。
- 止まりにくい出血 鼻血や歯ぐきからの出血、小さな切り傷の血が止まりにくいです。
- 関節の中での出血(関節内出血) 関節の中で出血が起こると、パンパンに腫れて強い痛みを伴います。 この出血を繰り返すと、関節が変形して動きにくくなることもあります。
- 筋肉の中での出血 筋肉の中で出血が起き、腫れや痛みの原因になります。
- 命に関わる場所での出血 頻度は低いですが、頭やお腹の中などでの出血は特に危険です。
特に関節の中で起こる出血は、強い痛みを伴うことが多く、 日常生活に大きな影響を与える可能性があります。
これらの出血による痛みや不便さは、生活の質を下げてしまいます。 しかし、適切な治療で出血の回数を減らし、症状を抑えることで、 生活の質の改善が期待できることが研究でも示されています。
気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医師へ相談しましょう。
血友病Aの検査・診断
「あざができやすい」「血が止まりにくい」などの症状や、 ご家族に同じ病気の方がいる場合に検査をします。 診断は、主に血液検査によって2段階で行われます。
ステップ1:止血スクリーニング検査 まず、血液が固まる力に異常がないかを大まかに調べます。 「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」を測定し、 血が固まるまでの時間が正常よりも長くないかを確認します。
ステップ2:確定診断のための検査 ステップ1で異常が見つかった場合、原因を特定します。 血を固める「第VIII(だいはち)因子」の働きを調べ、 この働きが低い場合に、血友病Aと診断されます。
診断と同時に、病気の重さ(重症度)も判定します。 これは、今後の治療計画を立てるうえで非常に重要です。
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重症度
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血を固める力(第VIII因子活性)
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重症
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1%未満
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中等症
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1%以上~5%未満
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軽症
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5%以上~40%未満
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診断後の生活では、出血以外の合併症にも目を向けます。 例えば、関節の出血を繰り返すと関節が傷んでしまい、 人工関節に置き換える手術が必要になることもあります。
手術では、血の塊が血管に詰まる「血栓症」が心配です。 しかし研究によると、血友病の方が手術を受ける際、 血栓症が起こる割合は比較的低い傾向にあるとされます。
検査でご自身の体の状態を正確に知ることが、 一人ひとりに合った適切な治療への第一歩となります。
血友病Aの治療
血友病Aの治療は、出血を防ぎ、関節などを守ることが目的です。 これにより、日常生活を安心して送れるようになります。 治療は主に「お薬による治療」と「手術による治療」があります。
お薬による治療
治療の中心は、足りない「第VIII(だいはち)因子」を補う、 あるいはその働きを助けるお薬を使うことです。 治療法には、主に次の2つの考え方があります。
- 補充療法 第VIII因子そのものを注射で補う、基本的な治療法です。 出血を防ぐために定期的に注射する方法(定期補充療法)と、 出血した時に注射する方法(予備的補充療法)があります。
- 非凝固因子製剤による治療 近年、新しい仕組みで出血を防ぐお薬が登場しました。 このお薬は、出血の回数を大きく減らすことが研究でわかっています。 また、出血を全く経験しない人の割合を増やす効果も期待できます。 これにより、生活の質(QOL)の改善につながる可能性があります。 注射した場所が赤くなるなどの副作用はありますが、 重い副作用のリスクは従来の治療と大きく変わらないとされます。
関節の症状が進んだ場合の治療
出血を繰り返して関節が傷つくと(血友病性関節症)、 強い痛みや動きにくさが出ることがあります。 その場合は、外科的な手術を検討することもあります。
- 関節の手術 例えば、足の関節の手術(足関節固定術)は、痛みを和らげ、 関節の機能を改善させる効果が高いと報告されています。 他の手術方法に比べ、合併症や再手術のリスクが低い傾向です。
- 手術の際の管理体制 手術の際は、医師や看護師、麻酔科医などの専門家が、 チームで一人ひとりの痛みに合わせた計画を立てます。 また、血友病の方は血が固まりにくい一方、 手術後には血の塊(血栓)ができる心配もゼロではありません。 しかし研究では、血友病の方の血栓症リスクは、 比較的低い傾向にあると報告されています。
治療法は進化しており、選択肢も増えています。 ご自身の体の状態や生活スタイルに合わせて、 医師と相談しながら最適な治療法を選びましょう。