紫斑病

ぶつけた覚えがないのに、いつの間にか腕や足にあざができていて、不思議に思った経験はありませんか?「ただの打ち身だろう」と軽く考えてしまいがちですが、そのあざは皮膚の下で出血が起きている「紫斑病」という病気のサインかもしれません。

ほとんどの紫斑は心配いりませんが、中には重篤な病気が隠れている可能性もあります。例えば、年間100万人に2〜4人という非常にまれな確率で発症する「血栓性血小板減少性紫斑病」は、腎臓や神経に深刻な影響を及ぼすこともあり、早期発見が何より重要です。

この記事では、紫斑病の種類や原因、そして見逃してはいけない危険な症状について詳しく解説します。あなたの気になるそのあざの正体を知り、適切な対処法を見つけるための一歩としてお役立てください。

紫斑病の概要

紫斑病とは、皮膚の下で出血が起こる病気の総称です。 肌が赤色や紫色に見え、一般的に「あざ」と呼ばれます。 ぶつけた覚えがないのにあざができていたり、 一度できたあざがなかなか消えなかったりするのが特徴です。

紫斑、つまり「あざ」ができる仕組みは、 大きく分けて以下の3つに分けられます。

  • 血小板の異常 けがをした時に血を止める「血小板」の数が減ったり、 働きが悪くなったりして血が固まりにくくなります。
  • 血管の異常 血液が通るトンネルである「血管」の壁がもろくなり、 中の血液が漏れやすくなってしまいます。
  • 凝固因子の異常 血を固める接着剤の役割を持つ「凝固因子」が、 うまく働かなくなってしまいます。

ほとんどの紫斑は心配いりませんが、 中には注意が必要な病気が隠れていることもあります。 例えば、非常にまれな病気として 「血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)」があります。 ある特定の酵素の働きが悪くなることで発症します。

研究によると、このTTPの一種(iTTP)は、 年間100万人に2〜4人程度の割合で起こるとされます。 妊娠や感染症がきっかけで発症することもあり、 腎臓や神経の病気を引き起こすこともあります。 また、不安や抑うつといった心の問題にもつながるため、 早期の診断と治療がとても大切です。

このように、ひとくちに紫斑と言っても背景は様々です。 気になる症状があれば自己判断せず、 まずは医療機関に相談することをおすすめします。

紫斑病の種類

ひとくちに「紫斑病」と言っても、原因によって いくつかの種類に分けられます。 原因が違えば、治療の方法も変わってきます。 そのため、どの種類の紫斑病なのかを 正しく診断することがとても大切です。

代表的な紫斑病には、以下のようなものがあります。

種類

主な特徴

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

自分の体を守るはずの免疫が、血を固める血小板を

間違えて攻撃し、壊してしまう病気です。

原因がはっきりしないことが多く、「特発性」と呼ばれます。

まれにインフルエンザワクチン接種後、

平均13.5日で発症するとの報告もあります。

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

全身の細い血管に血の塊(血栓)ができて詰まってしまう、

非常にまれな病気です。

研究によると、年間100万人に2〜4人程度の割合で起こります。

妊娠や感染症がきっかけとなることもあります。

アレルギー性紫斑病

細い血管にアレルギーによる炎症が起こり、

血液が漏れやすくなる病気です。

特にお子さんに多く、少し盛り上がった紫斑が

足などにできるのが特徴です。

お腹や関節の痛みを伴うこともあります。

老人性紫斑

年齢を重ねることで皮膚や血管が弱くなることが原因です。

腕や手の甲など、少しぶつけたりこすったりしただけで、

あざができやすくなります。

薬剤性紫斑病

特定のお薬が原因で、血小板が減ったり

血管がもろくなったりして起こる紫斑病です。

この他にも、若い女性にみられる単純性紫斑など、 さまざまな種類があります。 気になるあざがあれば自己判断せず、 まずは医療機関に相談してください。

紫斑病の原因

紫斑病が起こる原因は一つではありません。 原因は大きく2つのタイプに分けられます。 血を止める仕組みに問題がある場合と、 血液の通り道である血管に問題がある場合です。

1. 血液の成分が原因のもの 血液には、出血を止めるための大切な成分があります。 これらの成分に異常が起きると、血が固まりにくくなります。 その結果、皮膚の下で出血しやすくなり紫斑ができます。

  • 血小板の数が減る、働きが悪くなる 自分の体を守る免疫が、血を固める血小板を 間違えて攻撃し、壊してしまうことがあります。 ごくまれですが、インフルエンザワクチン接種後、 平均13.5日で発症するとの報告もあります。
  • 凝固因子の働きが悪くなる 血を固める接着剤の役割を持つ「凝固因子」が、 うまく働かなくなる病気が原因のこともあります。

2. 血管の壁が原因のもの 血管の壁がもろくなったり炎症を起こしたりすると、 血液が血管の外に漏れやすくなり、紫斑の原因になります。

  • 血管に炎症が起きる アレルギー反応などが原因で血管に炎症が起き、 血液が漏れやすくなることがあります。 (アレルギー性紫斑病など)
  • 血管が弱くなる 年齢を重ねることで皮膚や血管が弱くなることも、 あざができやすい原因の一つです。(老人性紫斑)

また、ウイルス感染やワクチン接種がきっかけとなり、 免疫の仕組みが変化して紫斑病が起こることもあります。 例えば、COVID-19のワクチン接種が、 血の塊ができやすくなる特定の紫斑病(TTP)と 関連することが報告されています。

このように原因は様々ですので、気になる症状があれば、 自己判断せず専門の医療機関に相談してください。

紫斑病の症状

紫斑病の最もわかりやすいサインは、皮膚にあらわれるあざです。 ぶつけた覚えがないのに、主に足や腕にできるのが特徴です。

あざの現れ方は、病気の種類によってさまざまです。

  • 点状出血 針で刺したような、1〜2mmほどの小さな赤い点々です。
  • 紫斑 いくつかの点状出血が集まって、しみのように見えるあざです。
  • 斑状出血 さらに大きく広がり、手のひらほどの大きさになるあざです。

しかし、症状は皮膚だけにとどまらないことが多く、 体の内側にも、さまざまなサインが出ることがあります。

【主な皮膚以外の症状】

  • 粘膜からの出血 鼻血が出やすい、歯ぐきから血が出るなどがあります。
  • 関節の症状 関節の痛みや腫れがみられることがあります。
  • お腹の症状 腹痛や吐き気、血便などが現れることもあります。
  • 全身の症状 原因がはっきりしないだるさや、発熱を伴うこともあります。

まれですが、紫斑病の種類によっては腎臓に影響が出たり、 頭痛やしびれといった神経の症状が出たりすることもあります。 また、病気への不安から気分が落ち込むなど、 心に影響が出ることも少なくありません。 ある研究では、紫斑病が不安や抑うつにつながることも示されています。

以下の症状に気づいたら、自己判断せず、 早めに医療機関を受診してください。

【症状のチェックリスト】

  • □ ぶつけた覚えがないのにあざができやすい
  • □ 足や腕に小さな赤い点々がたくさんできている
  • □ 鼻血や歯ぐきからの出血が気になる、または止まりにくい
  • □ 関節が痛んだり、腫れたりする
  • □ 強いだるさを感じる

紫斑病の検査・診断

紫斑病の診断では、まず紫斑の状態を丁寧に観察します。 そして、原因を特定するための問診と検査を行います。 原因によって治療法が大きく異なるため、正確な診断が重要です。

はじめに、いつから紫斑があらわれたかなどを詳しく伺います。 最近の体調の変化や、ワクチン接種の経験も大切な情報です。 ある研究では、COVID-19のワクチン接種が、 特定の紫斑病(TTP)と関連することが報告されています。 そのため、問診で詳しくお話を伺うことが診断の第一歩です。

問診の次に行われる主な検査は以下のとおりです。

  • 血液検査 最も基本的な検査です。血液中の血小板の数や、 血液を固める機能(凝固機能)に異常がないかを調べます。 免疫が血小板を壊していないかも確認します。
  • 尿検査 紫斑病の種類によっては腎臓に影響が出ることがあります。 そのため、尿に血やたんぱく質が混じっていないかを調べます。
  • 皮膚生検 診断を確定するために、皮膚の一部を少量採取します。 そして顕微鏡で血管の状態を詳しく調べる検査です。

これらの検査結果を総合的にみて、どの紫斑病かを診断します。 そのうえで、一人ひとりに合わせた治療方針を決めていきます。

紫斑病の治療

紫斑病の治療は、原因によって方法が大きく異なります。 そのため、検査で原因を正確に突き止めることが治療の第一歩です。 治療は、原因に直接アプローチする方法と、 つらい症状を和らげる方法を組み合わせて行います。

原因ごとの主な治療法は、以下のようになります。

  • 血管の炎症が原因の場合(アレルギー性紫斑病など) まずは安静にして、体を休めることが基本です。 関節やお腹の痛みが強い場合や、腎臓に炎症が見られる場合は、 ステロイドという炎症を抑えるお薬を使います。 研究によると、このステロイド治療は、 腎臓の働きを長期的に守るのに有効とされています。 症状が重い場合には、免疫の働きを調整する シクロスポリンというお薬を一緒に使うことで、 より高い治療効果が期待できるという報告もあります。
  • 血小板の減少が原因の場合(特発性血小板減少性紫斑病など) ステロイド治療や、免疫グロブリンという 血液から作られたお薬の点滴が中心となります。 また、胃の中にいるピロリ菌という細菌が 関係している場合は、その菌を取り除く治療も行います。
  • お薬が原因の場合 特定のお薬が原因で紫斑病が起こることもあります。 その場合は、まず原因と考えられるお薬をやめたり、 他の種類のお薬に変えたりすることが治療の基本です。

これらの治療と並行して、出血を抑えるための止血剤を使ったり、 ケガを防ぐために安静に過ごしたりすることも大切です。 ご自身の判断で治療を中断せず、必ず医師の指示に従ってください。