白血病
私たちの体で酸素を運び、病気から守る大切な血液。その血液が作られる「工場」である骨髄に異常が生じる病気、それが「白血病」です。 白血病は、未熟な白血球が異常に増殖し、正常な血液細胞の働きを邪魔することで、貧血による倦怠感、感染症にかかりやすくなる、出血が止まりにくいといった様々な症状を引き起こします。
小さなお子さんから大人、お年寄りまで誰にでも発症する可能性があり、その診断は時に大きな不安を伴うでしょう。しかし、白血病の診断・治療は日々進歩を続けています。 この記事では、白血病の概要から種類、原因、症状、そして最新の治療法まで、あなたが知りたい情報を詳しく解説します。
白血病の概要
私たちの体には、大切な「血液」が流れています。血液には、酸素を運ぶ「赤血球」、体を病気から守る「白血球」、血を止める「血小板」という、とても小さな細胞が含まれています。これらの血液細胞は、骨の奥にある「骨髄」という場所で毎日新しく作られています。骨髄は、まるで「血液を作る工場」のようなものです。
白血病は、この血液の工場で、白血球になる前の未熟な細胞が異常に増えてしまう病気です。増えすぎてしまった異常な細胞が、正常な血液細胞が十分に作られるのを邪魔してしまいます。その結果、様々な体の不調につながることがあります。
例えば、赤血球が足りなくなると、貧血になって疲れやすくなります。体を守る白血球が少ないと、風邪をひきやすくなったり、病気にかかりやすくなったりします。血小板が足りなくなると、少しぶつけただけでも血が出やすくなることもあります。
白血病は、小さなお子さんから大人、お年寄りまで、誰にでも起こる可能性があります。治療のためには、通常、長い期間の入院が必要になることが多いです。しかし、医療の進歩とともに、治療の形も少しずつ変わってきています。
特に子どもの白血病では、自宅で病院と同じようなケアを受けられる「在宅医療」が注目されています。ある研究では、この在宅医療が、白血病の化学療法だけでなく、新生児の黄疸(おうだん)の治療や、急性細気管支炎(きゅうせいさいきかんしえん)という呼吸の病気で酸素を吸う治療など、様々な病気のお子さんのケアにも検討されていることが分かっています。お家でのケアは、病院で受けるケアと比べて、病状が悪くなったり、再び病院に戻らなければならない危険が増えることはない、と考えられています。
しかし、この在宅医療はまだ新しい取り組みであり、安全で効果的な方法をさらに見つけるために、多くの研究が続けられています。研究の中には、まだ十分な質のデータがそろっていないものもあり、費用がどれくらいかかるのかは、まだはっきり分かっていない部分もあります。
白血病の治療は日々進歩しています。もし、体調の変化や気になることがあれば、私たち医療者に気軽に相談してください。早めに気づいて、適切な治療を始めることが、何よりも大切になります。
白血病の種類
白血病の種類は、病気の進み方と、がんになる細胞の種類で大きく分けられます。どちらのタイプであるかを知ることは、今後の治療を考える上でとても大切です。
1. 病気の進み方で分ける2つのタイプ
- 急性白血病(きゅうせいはっけつびょう)
- 病気がとても速く進みます。
- 治療を急いで始める必要があるタイプです。
- まだ十分に育っていない、未熟な細胞がどんどん増えていきます。
- 正常な血液細胞の邪魔をしてしまうのが特徴です。
- 慢性白血病(まんせいはっけつびょう)
- 病気が比較的ゆっくりと進みます。
- 数か月から数年かけて、少しずつ症状があらわれることが多いタイプです。
- ある程度育った細胞が少しずつ増えていくのが特徴です。
2. どの細胞が変化するかで分ける2つのタイプ
- 骨髄性白血病(こつずいせいはっけつびょう)
- 白血球の中でも、「顆粒球(かりゅうきゅう)」や「単球(たんきゅう)」という細胞のもとが、がんになってしまうタイプです。
- リンパ性白血病(りんぱせいはっけつびょう)
- 白血球の中でも、「リンパ球」という細胞のもとが、がんになってしまうタイプです。
これらの組み合わせで、主に次の4つの白血病の種類があります。
- 急性骨髄性白血病(AML)
- 急に進む白血病で、骨髄の未熟な細胞ががんになります。
- 特に再発してしまったり、これまでの治療が効きにくかったりするケースでは、新しい治療法として、免疫の力を借りる「CAR-T細胞療法」という研究が進められています。
- これは、がんになった細胞を見つけて攻撃する特別な免疫細胞を作る治療ですが、多くの研究から、まだ十分な効果を出すためには課題が多いことがわかっています。
- 一人ひとりの病気の状態が違うことや、がん細胞の特徴をしっかり見つけること、そして免疫細胞が頑張り続けることなど、今後の解決すべき課題が多く残されています。
- 急性リンパ性白血病(ALL)
- 急に進む白血病で、リンパ球のもとになる未熟な細胞ががんになります。
- 小さなお子さんに多く見られることがあります。
- 慢性骨髄性白血病(CML)
- ゆっくりと進む白血病で、骨髄のある程度育った細胞ががんになります。
- 慢性リンパ性白血病(CLL)
- ゆっくりと進む白血病で、リンパ球がある程度育った状態でがんになります。
- ご高齢の方に多く見られます。
このように、白血病の種類によって、病気の進み方も、どんな治療をするのが良いかも異なります。そのため、まずご自身の白血病がどのタイプなのかを正確に知ることが、治療の最初の、そして最も大切な一歩となります。
白血病の原因
白血病は、私たちの体の中で大切な血液を作る「骨髄(こつずい)」という場所で起こる病気です。骨髄は、血液を作る大切な場所です。ここでは毎日、赤血球、白血球、血小板という、体に必要な血液の細胞の「もと」となる細胞が作られています。そして、これらの「もと」となる細胞は、時間をかけて成長し、元気な血液の細胞になっていきます。
しかし、この血液を作る場所で、何らかの理由で細胞の成長がうまくいかなくなってしまうことがあります。具体的には、白血球の「もと」となる細胞が、途中で「悪い細胞」に変わってしまうのです。この「悪い細胞」は、未熟なままでどんどん増え続け、正常な血液の細胞が十分に作られるのを邪魔してしまいます。
なぜこのような「悪い細胞」が生まれてしまうのか、その詳しい原因はまだすべてがはっきりとわかっているわけではありません。ですが、いくつかのことが関係していると考えられています。大きな原因の一つは、細胞の設計図である「遺伝子(いでんし)」や「染色体(せんしょくたい)」に「キズ」がついてしまうことです。この「キズ」は、生まれつき持っている場合もありますが、多くは生活の中で後からついてしまうものです。
例えば、たくさんの放射線を浴びたり、特定の化学物質(ベンゼンという種類など)に触れたりすることが、「遺伝子」に変化を起こし、白血病になる可能性を高めることが指摘されています。また、喫煙や一部のウイルス感染も、関係していると考えられています。
最近の研究では、体の中で「遺伝子」の働きを細かく調整している「マイクロRNA」という小さな「司令官」のようなものが、白血病の発症や進行に関わることがわかってきました。特に、「miR-155(エムアイアール・イチゴーゴー)」という名前の「マイクロRNA」の働きがおかしくなると、白血病をはじめとしたがんの診断や、今後の病状の見通し(予後)を予測する上で、とても大切な目印になる可能性があると多くの研究から報告されています。この「miR-155」は、がんを見つけたり、患者さん一人ひとりの治療計画を考えるのに役立つかもしれません。
私たちは、まだ白血病のすべての原因を解明できていません。しかし、このように一つひとつの手がかりを追いながら、研究を進めることで、病気への理解を深め、より良い治療法を見つける努力を続けています。多くの場合、特定の一つの原因だけではなく、様々な要因が複雑に絡み合って白血病が発症すると考えられています。
白血病の症状
白血病の症状は、病気のタイプや進み方によってさまざまです。 病気が急に進む急性白血病では、比較的早く症状を感じることが多いです。 一方、ゆっくり進む慢性白血病では、初期には症状に気づかないこともあります。 そのため、健康診断などで偶然見つかるケースも少なくありません。
私たちの体には、酸素を運ぶ「赤血球」、体を病気から守る「白血球」、血を止める「血小板」という大切な血液細胞があります。 白血病になると、骨の奥にある「血液を作る工場(骨髄)」で、異常な白血球が増えすぎます。 その結果、元気な赤血球、白血球、血小板が十分に作られなくなってしまうのです。 それぞれの細胞が足りなくなることで、以下のような困った症状があらわれます。
- 貧血(ひんけつ)による症状
- 体に酸素を運ぶ赤血球が減ってしまうと、貧血の状態になります。
- 顔色が青白くなったり、少し動くだけで息切れしたり、疲れやすくなったりします。
- 小学生のお子さんの場合、朝起きるのがつらくなったり、集中力が続かなくなったりするかもしれません。
- 出血しやすくなる症状
- 血液を固める役割の血小板が減ると、血が止まりにくくなります。
- 覚えのない青あざができやすくなったり、鼻血や歯ぐきからの出血が続くことがあります。
- 小さな傷でも血が止まりにくいと感じたら、注意が必要です。
- 感染症(かんせんしょう)にかかりやすくなる症状
- 体を守る働きをする白血球が正常に働かないと、病原菌と戦う力が弱まります。
- そのため、熱が出たり、のどが腫れたり、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。
- 風邪のような症状が長引いたり、治りにくかったりすることもあります。
- その他の症状
- まれに、体のあちこちにあるリンパ節が腫れることがあります。
- また、お腹の中にある脾臓(ひぞう)や肝臓(かんぞう)が大きくなることもあります。
これらの症状は、毎日の生活に大きな影響を与えることがあります。 病気と向き合い、治療を進める中で、不安や心配な気持ちを抱えることも少なくありません。 特に、急性白血病の集中化学療法では、入院が長期間にわたることが多いため、患者さんの心の状態や生活の質(QoL)が大きく低下することが知られています。 しかし、最近の研究では、患者さんの心のケアを目的とした心理モバイルアプリが開発されています。 このアプリは、診断された時の心のショックへの対処法を学んだり、病気について正しく理解するための情報提供を行います。 さらに、病気とうまく向き合うための心理的なスキルを身につけたり、自分自身を大切にするセルフケアの方法を学ぶことができます。 ある研究では、このようなアプリを使った患者さんの方が、不安や抑うつといった心のつらさや、病気による症状の負担が和らぐ可能性が示されました。 また、自分自身の力で病気と向き合う「自己効力感」も高まることがわかっています。 心理的なサポートは、治療を安心して受け、患者さんが前向きに毎日を過ごすための大切な支えとなります。 もし、体調の変化や心の不調を感じたら、遠慮なく医師や看護師に相談してくださいね。
白血病の検査・診断
白血病の疑いがあるときには、まず、どんな病気なのかを正確に知ることがとても大切です。病気の種類や進み方を知ることで、患者さんにぴったりの治療方法を見つけることができます。私たち医師は、患者さんの体を守るために、いくつかの検査を丁寧に行っていきます。
1. どんな検査をするの?
主に次のような検査を行います。
- 血液検査
- 腕から少し血を採らせていただきます。
- 血液の中には、酸素を運ぶ「赤血球」、体を病気から守る「白血球」、血を止める「血小板」という大切な細胞が流れています。
- この検査では、これらの細胞の数や形を詳しく見て、異常な細胞がないかを確認します。
- 白血病の可能性があるかどうかを、この段階で推測することができます。
- 骨髄検査
- 骨の中心にある「骨髄」という場所から、ごく少量の液体や組織を採ります。
- この検査は、白血病の細胞の種類や数を詳しく確認するために行われます。
- この検査によって、白血病であるかどうかをはっきりと診断することができます。
- 病気を正確に知るために、とても重要な検査です。
- 染色体検査・遺伝子検査
- 白血病の種類をさらに細かく調べるための検査です。
- 細胞の中にある「遺伝情報」を詳しく見て、どのような変化が起きているかを確認します。
- この検査で得られた情報は、患者さん一人ひとりに最適な治療計画を立てる手助けとなります。
- 新しい検査の目印「miR-155」
- 最近の研究では、「miR-155(エムアイアール・イチゴーゴー)」という小さな物質が、白血病を含むがんの診断にとても役立つことが分かってきています。
- ある研究では、miR-155はがんの診断において高い診断的価値を持つバイオマーカーであると報告されています。
- これは、病気をより早く見つけたり、今後の病状の見通しを予測したりする上で、大切な手がかりになる可能性があります。
- 私たち医療者は、このような新しい研究結果も参考にしながら、より正確な診断を目指しています。
2. 診断が治療へつながる道
正確な診断があるからこそ、その人に合った最も良い治療法を選ぶことができます。
- 例えば、通常の治療が難しかったり、病気が再発してしまったりした急性骨髄性白血病の場合には、CAR-T細胞療法という新しい治療法も検討されることがあります。
- この治療法は、患者さん自身の免疫細胞を遺伝子操作して、がん細胞を攻撃するようにするものです。
- ある研究では、この治療を受けた患者さんの約半数で病状の改善が見られたと報告されています。
- しかし、サイトカイン放出症候群と呼ばれる副作用が比較的高い頻度で起こることも分かっています。
- そのため、私たち医師は、詳細な検査と診断に基づいて、治療のメリットとデメリットを慎重に検討し、患者さんとご家族にとって最善の治療法を一緒に考えていきます。
もし体調に気になる変化があれば、早めに医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。
白血病の治療
白血病の治療は、病気の種類や進み具合、患者さんの年齢、体の強さに合わせて、一人ひとりに最適な方法が丁寧に計画されます。まるで、一人ひとりの患者さんにぴったり合うオーダーメイドの服を作るようなものです。主に、お薬を使う「化学療法」と、血液を作る大切な細胞を入れ替える「造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)」という治療があります。
例えば、「急性骨髄性白血病」という白血病では、最初にお薬で病気が落ち着いた後、次にどんな治療をするかとても大切になります。ある研究では、全身の血液を作る細胞を入れ替える「同種造血幹細胞移植」と、お薬で治療を続ける方法を比べました。その結果、移植を行った方が病気が再び現れる可能性が低いことがわかりました。しかし、移植は回復に時間がかかり、感染症など他の病気になるリスクが少し高くなることもあります。もし化学療法で一度病気が落ち着いても、また病気が戻ってきてしまったら、後から移植治療に進むことも多いです。
病気と向き合う期間は、体だけでなく心にも大きな負担がかかります。特に、強いお薬を使う化学療法で入院している間は、元気が出なくなったり、不安な気持ちになったりすることがあります。そのような時、心のサポートもとても大切です。最近では、患者さんの心を支えるための「心理モバイルアプリ」が注目されています。ある研究で使われた「DREAMLAND」というアプリは、病気について正しく知り、不安な気持ちと上手に向き合う方法を学ぶ手助けをします。このアプリを使った患者さんは、使わなかった患者さんと比べて、不安な気持ちや落ち込みが軽くなり、病気と向き合う力が強くなる可能性が示されています。
私たち医師は、体への治療と同時に、患者さんの心の状態にも寄り添い、安心して治療を受けられるように、できる限りのサポートをしていきます。どんな小さなことでも、困ったことや心配なことがあれば、いつでも私たち医療者に声をかけてくださいね。





