汎血球減少症

「体がだるい」「息切れがする」「風邪をひきやすい」「青あざができやすい」—もし、こんな症状に心当たりはありませんか?それは、私たちの健康に不可欠な赤血球・白血球・血小板の「3つの大切な血球」が同時に減少する「汎血球減少症」のサインかもしれません。

骨髄の不調、感染症、治療薬の副作用など原因は多岐にわたり、放置すると深刻な不調につながる可能性があります。体からの小さなサインを見逃さず、早期の診断と適切な治療が大切です。この記事では、汎血球減少症の概要から治療法まで詳しく解説します。ご自身の体調と照らし合わせ、ご参考にしてください。

汎血球減少症の概要

私たちの体の中を流れる血液には、大切な細胞がたくさんあります。 これらは「血球」と呼ばれ、それぞれ重要な役割を担っています。

  • 赤血球
  • 体のすみずみまで、酸素を届ける働きをしています。
  • 白血球
  • 体に侵入するウイルスや細菌と戦い、
  • 私たちを病気から守ります。
  • 血小板
  • ケガなどで出血した際に、血を止める大切な役割があります。

汎血球減少症とは、これらの大切な血球が、種類を問わずまとめて少なくなってしまう状態です。 どの血球も健康な体を保つために欠かせません。 一つでも数が減ると、体調に変化が現れることがあります。 全ての血球が減る汎血球減少症では、よりさまざまな不調が起きやすくなります。

例えば、赤血球が少なくなると「貧血」という状態になります。 体がだるく感じたり、階段を上るだけで息切れしたりすることが増えるでしょう。 白血球が少なくなると、風邪を引きやすくなったり、体の抵抗力が弱まって感染症にかかりやすくなったりします。 また、血小板が減ると、ぶつけた覚えがないのに青あざができたり、一度出血すると血が止まりにくくなったりする可能性があります。 これらは、体からの大切なサインとして受け止める必要があります。

汎血球減少症になる原因は、たくさんあります。 血液を作る場所である骨髄(こつずい)の病気や、特定の感染症、体の免疫機能の異常などが考えられます。 また、特定の病気の治療に使われるお薬が原因で、血球が減少することもあります。 例えば、小児の全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎といった病気に対し、「シクロホスファミド」というお薬が使われることがあります。 このお薬は、血球が少なくなる副作用を引き起こす可能性があるのです。

私たち医師は、このような血球に影響を与える可能性のある治療を始める際、細心の注意を払います。 治療前には、必ず血液検査で赤血球、白血球、血小板の数を詳しく確認します。 さらに、腎臓の働きや、B型肝炎、水痘(みずぼうそう)、麻疹(はしか)などの予防接種を受けているかどうかも丁寧に確認し、患者さんの体を安全に守るための準備をします。 これは、治療による効果と安全性のバランスを慎重に見極めるためです。 もし体にいつもと違う変化を感じたら、それがどんなに小さなことでも、早めに医療機関を受診することが大切です。 気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。

汎血球減少症の種類

汎血球減少症には、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは「生まれつきのタイプ」もう一つは「あとからなるタイプ」です。

生まれつきのタイプ(先天性)

  • 生まれた時から体の特徴として持っているものです。
  • 遺伝子の影響などで、血液を作る骨髄の働きが、
  • 十分でないために起こります。
  • とても珍しいタイプで、小さなお子さんの頃から
  • 症状が出始めることが特徴です。

あとからなるタイプ(後天性)

  • 生まれた後に、様々な原因で血球が少なくなってしまうものです。
  • このタイプは、より多くの方に見られます。

あとからなるタイプの中には、特定の病気の治療で使うお薬が原因で、血球が減ってしまうケースもあります。

  • 免疫の働きを調整するお薬
  • 例えば、難病として知られている全身性エリテマトーデスや、
  • ANCA関連血管炎といった病気があります。
  • これらの治療では、「シクロホスファミド」というお薬を使うことがあります。
  • このお薬は、病気の活動を抑えるとても大切な役割がある一方で、
  • 体の血球が少なくなってしまう副作用を起こすことがあります。
  • 私たち医師は、このお薬を使う患者さんに対し、
  • 治療を始める前に必ず血液検査で血球の数を詳しく確認します。
  • もし、お薬の影響で血球が減りすぎてしまわないか、
  • 常に細心の注意を払って経過を見守っています。
  • 体がだるくなったり、風邪を引きやすくなったり、
  • 思いがけない出血が続いたりしないか、
  • 患者さんご自身も体からの小さなサインを見逃さないでください。
  • がん治療の新しい方法
  • 「CAR-T細胞療法」という、がん細胞と戦う免疫細胞を
  • 強力にする治療法もあります。
  • この治療でも、体の免疫細胞の働きに大きな変化が起こり、
  • その結果、血液中の血球が一時的に少なくなる場合があることが
  • 分かっています。
  • このような治療を受ける際には、血球の数が変化していないか、
  • 体調に異変がないかを医療チームが丁寧に確認します。

私たち医療者は、患者さんの汎血球減少症がどのタイプであるかを、しっかりと見極めます。そして、それぞれのタイプに合った適切な治療法を、患者さんと一緒に考えていくことが最も重要だと考えています。

汎血球減少症の原因

汎血球減少症とは、体に必要な血球が種類を問わずまとめて減ってしまう状態です。 なぜ、このような状態が起きてしまうのでしょうか。 その原因は一つではなく、いくつかのパターンに分けられます。 大きく分けると、血球を作る場所の問題と、作られた血球が壊される問題です。 私たち医師は、患者さんの安全を最優先に考え、原因を突き止めることが治療の第一歩だと考えています。

血球を作る工場が不調になる場合

私たちの体の中には、血液を作る大切な工場があります。 それは「骨髄(こつずい)」と呼ばれる場所です。 骨髄には、赤血球、白血球、血小板のもとになる「造血幹細胞」という細胞があります。 この造血幹細胞がうまく働かなかったり、病気になったりすると、新しい血球を十分に作れなくなります。 例えば、「再生不良性貧血」や「骨髄異形成症候群」といった病気がこれにあたります。 骨髄の機能が低下すると、健康を保つために必要な血球が足りなくなってしまうのです。

せっかく作られた血球が壊されてしまう場合

血球は骨髄で作られますが、何らかの原因で体の中で早く壊されてしまうことがあります。 お腹の左上にある「脾臓(ひぞう)」という臓器が大きくなりすぎることが、その原因の一つです。 脾臓が大きくなると、たくさんの血球をため込みすぎてしまい、結果的に血球を壊してしまうことがあります。 また、体の「免疫」の仕組みが関係することもあります。 免疫は、体に侵入する悪いものをやっつけて体を守る大切な働きです。 しかし、時に自分の血球を「敵」と間違えて攻撃し、壊してしまう病気もあるのです。

お薬が原因になる場合

特定の病気を治すためのお薬が、血球が減る原因になることもあります。 例えば、お子さんの「全身性エリテマ トーデス」や「ANCA関連血管炎」という難病があります。 これらの病気では、体の免疫の異常を抑えるために、「シクロホスファミド」というお薬を使うことがあります。 このお薬は、病気の活動を抑える上でとても大切な役割を果たすため、小児の治療において現在も多く選ばれている治療薬です。 小児のリウマチ専門医や腎臓専門医は、このお薬を月に1回、点滴で約半年間使うことが多いとされています。 これは、米国国立衛生研究所(NIH)が推奨する治療方法に沿ったものです。 シクロホスファミドは、病気を抑える効果が高い一方で、血球減少症という副作用を引き起こすことがあります。 また、時に「出血性膀胱炎」という膀胱の炎症を起こす可能性も考えられます。

私たち医師は、このお薬を使う際には細心の注意を払い、患者さんの安全をしっかりと見守ります。 治療を始める前には、必ず血液検査で赤血球、白血球、血小板の数を詳しく確認します。 さらに、腎臓の働きをチェックするだけでなく、B型肝炎や水痘(水ぼうそう)、麻疹(はしか)などの予防接種を受けているかどうかも確認します。 これは、治療中に体が弱くなったときに、別の感染症にかかりにくくするための大切な準備です。 また、お子さんの将来に影響が出ないよう、性腺(卵巣や精巣)を守るための対策を考えることもあります。

その他の原因

汎血球減少症の原因は、これら以外にもいくつかあります。 特定のウイルスに感染したことがきっかけになることもあります。 例えば、一部のウイルスは骨髄の働きに影響を与えることがあります。 また、がん細胞が骨髄に広がり、正常な血球を作る働きを邪魔してしまうことも考えられます。 このように、汎血球減少症の原因は多岐にわたります。 もし体調に気になる変化があれば、それがどんなに小さなことでも遠慮せずに医療機関にご相談ください。 早めに原因を突き止め、適切な治療へとつなげることが非常に大切です。

汎血球減少症の症状

私たちの体は、たくさんの血球が元気いっぱいに働くことで、毎日の健康を保っています。もし、これら大切な血球が全体的に減ってしまうと、体にはさまざまな「おかしいな」というサインが現れることがあります。

まず、酸素を運ぶ赤血球が少なくなると、「貧血」の症状が出ます。

  • いつもなら平気な通学路でも、なんだか体がだるく感じます。
  • 階段を上るだけで、すぐに息が上がってしまうかもしれません。
  • お友だちから「なんだか顔色が白いよ」と言われることもあるでしょう。 これは、体に必要な酸素が足りなくなってしまうためです。

次に、体を守る白血球が減ると、免疫力が弱まってしまいます。

  • 風邪にかかりやすくなり、熱が出たり、のどが痛くなったりします。
  • 一度病気にかかると、なかなか治りにくくなることがあります。
  • 体が細菌やウイルスと戦う力が、十分に出せない状態だからです。

そして、血を止める血小板が減ると、血が止まりにくくなります。

  • 歯磨きをしたときに、歯ぐきから血が出やすくなることがあります。
  • ぶつけた覚えがないのに、いつの間にか青あざができているかもしれません。
  • 鼻血が出ると、なかなか止まらないということもあります。

このような汎血球減少症は、実は特定のお薬の副作用として現れることもあります。例えば、お子さんがかかる可能性のある難病で、「全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいエリテマトーデス)」や「ANCA関連血管炎(アンカかんれんけっかんえん)」という病気があります。これらの病気を治療するために、「シクロホスファミド」というお薬を使うことがあります。このお薬は、病気を治すためにとても大切ですが、血球を減らしてしまうという副作用があることが知られています。

私たち医師は、このお薬を使い始める前に、患者さんの安全を一番に考えています。必ず血液検査で赤血球や白血球、血小板の数を詳しく確認します。また、腎臓の働きや、B型肝炎、水痘(みずぼうそう)、麻疹(はしか)などの予防接種を受けているかどうかも丁寧にチェックします。これは、治療中に体が弱くなったときに、別の病気にかかるのを防ぐための大切な準備です。このお薬は、月に1回ほど点滴で6ヶ月間治療することが多く、まれに「出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)」というおしっこの通り道の炎症を起こすこともあります。

もし、ご自身やお子様の体調に「いつもと違うな」と感じることがあれば、どんなに小さなことでも、すぐに私たち医療機関にご相談ください。早めに気づき、原因を見つけることが、元気な体を取り戻すための第一歩となります。

汎血球減少症の検査・診断

汎血球減少症の診断には、血液を詳しく調べる検査がとても大切です。 先生たちはまず「血算(けっさん)」という血液検査を行います。 この検査では、私たちの血液の中にある赤血球、白血球、血小板という、3つの大切な細胞の数を数えます。 もし、これらの細胞すべてが健康な状態と比べて少なくなっていると、「汎血球減少症」が疑われます。

さらに、なぜ血球が減っているのか、その原因を突き止めるために、 「骨髄(こつずい)検査」を行うこともあります。 骨髄は、新しい血球を作る『工場』のような場所です。 この検査で、骨の内部にある工場がきちんと働いているか、 病気になっていないかを直接確認することができます。

特に、全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいエリテマトーデス)やANCA関連血管炎(アンカかんれんけっかんえん)などの病気で、 「シクロホスファミド」というお薬を使う場合、私たちは細心の注意を払います。 このお薬は病気を治すためにとても重要ですが、血球が少なくなる副作用を引き起こすことがあります。 そのため、お薬を始める前には、必ず血液検査で血球の数を詳しく確認するのです。

加えて、腎臓の働きを調べたり、B型肝炎や水痘(水ぼうそう)、 麻疹(はしか)などの予防接種を受けているかどうかも丁寧に確認します。 これは、治療中に体が弱くなったときに、別の感染症にかかりにくくするための大切な準備です。 まれに「出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)」というおしっこの通り道に炎症が起こる副作用も考えられるため、 安全に治療を進めるために、事前の検査は欠かせません。 もし、気になる症状があれば、どんなに小さなことでもお医者さんにご相談ください。 早めに原因を見つけることが、元気な体を取り戻すための第一歩です。

汎血球減少症の治療

汎血球減少症の治療は、まずその原因をしっかりと見つけることから始まります。体の中で何が血球を減らしているのかを突き止め、その根本的な病気を治すことが最も大切です。これと同時に、血球が減ったことで現れるつらい症状を和らげるための治療も行われます。

例えば、体の免疫機能が自分の血球を攻撃してしまうような病気が原因の場合、私たちは免疫の働きを抑えるお薬を使って治療します。特に、小児の特定の難病、例えば全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎の治療では、「シクロホスファミド」というお薬が選ばれることが多くあります。これは、病気の活動を抑える効果が高く、多くの医師がこのお薬を治療の始めに選ぶ傾向にあるためです。

このお薬を使う際には、患者さんの体を守るために細心の注意を払います。治療を始める前には、血液検査などで体の中の状態を詳しく確認します。また、このお薬は病気にとても効果がある一方で、将来お子さんが大人になったときに、子どもを授かる力に影響を与える可能性も指摘されています。そのため、私たち医師は、そのような可能性についてもきちんと説明し、必要に応じて「性腺温存(せいせんおんぞん)介入」といって、将来の体への影響をできるだけ少なくするための工夫をすることもあります。

もし貧血がひどく、体がだるくて動けない時や、感染症にかかりやすくなっている、または出血が止まりにくいといった症状が強い場合は、足りない赤血球や白血球、血小板などを補うために「輸血(ゆけつ)」を行うことがあります。これは、一時的に体の状態を良くして、元気を取り戻すための大切な治療です。

治療は、患者さん一人ひとりの状態や原因、年齢などに合わせて、最も良い方法を医師が提案します。大切なのは、体調に変化があったら、どんな小さなことでも主治医に伝えて相談することです。一緒に病気と向き合い、健康な体を取り戻していきましょう。