急性リンパ性白血病

急な息切れや覚えのないあざ。それは、進行の速い血液のがん「急性リンパ性白血病」のサインかもしれません。この病気は血液をつくる工場である骨髄に異常が起こるもので、誰にでも発症する可能性があります。

ある研究では、2000年から2016年にかけて発生率が増加傾向にあると報告されており、特にお子さんに多い病気ですが、大人も決して無関係ではありません。不安を感じるかもしれませんが、治療法は日々大きく進歩しています。

この記事では、急性リンパ性白血病の原因や症状、そして希望となる最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身や大切な人のために、まずは正しい知識を身につけることから始めましょう。

急性リンパ性白血病の概要

急性リンパ性白血病は、血液のがんの一種です。 体を流れる血液をつくる工場である「骨髄」で、 異常が起こってしまう病気です。

私たちの体には、細菌などから体を守る白血球があります。 その白血球になる前の未熟な細胞を「リンパ芽球」といいます。 このリンパ芽球が、がん細胞(白血病細胞)に変化し、 骨髄の中で無秩序に増え続けてしまうのです。 「急性」という名前の通り、病気の進行が速いのが特徴です。

骨髄ががん細胞でいっぱいになると、正常な血液細胞を つくる場所がなくなってしまいます。 その結果、体に必要な血液細胞が不足し、 以下のようなさまざまな影響が出てきます。

  • 赤血球が減る(貧血) 全身に酸素を運ぶ力が弱まり、めまいや息切れ、 動悸、顔色が悪くなるなどの症状が起こります。
  • 正常な白血球が減る ウイルスや細菌への抵抗力が弱くなってしまいます。 そのため、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
  • 血小板が減る 血を固める力が弱まるため、出血しやすくなります。 鼻血や歯ぐきからの出血、青あざなどが現れます。

ある研究によると、2000年から2016年にかけて、 この病気の発生率は増加傾向にあることが示されています。 お子さんに多い病気ですが、大人になってから発症することもあります。 治療の効果は年齢によって異なり、治療後にどのくらい 生存しているかを示す指標(全生存率)は、 お子さんや若い世代の方が高い傾向にあります。

急性リンパ性白血病の種類

急性リンパ性白血病と診断されたら、次にどの種類(タイプ)か詳しく調べます。 なぜなら、種類によって病気の性質や治療の効き目が異なるからです。 最適な治療法を見つけるために、この分類はとても重要になります。

この病気は、白血球のもとになる「リンパ球」という細胞ががん化するものです。 どのリンパ球ががんになったかで、主に2つのタイプに分けられます。

  • B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)
  • リンパ球の中の「B細胞」ががんになったものです。
  • 急性リンパ性白血病の多くが、このタイプにあたります。
  • T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)
  • リンパ球の中の「T細胞」ががんになったものです。

種類

特徴

B細胞性(B-ALL)

お子さんによく見られます。

T細胞性(T-ALL)

思春期以降の男の子に比較的多く、胸に細胞のかたまり(縦隔腫瘤)ができることがあります。

研究報告によると、治療後に元気に過ごせている割合は、 お子さんや若い世代の方が大人よりも高い傾向にあります。 しかし、両方の世代で年齢が上がるにつれて、その割合は少しずつ変化します。 このように、病気の種類や年齢、性別によっても病気の経過は変わってきます。

さらに、細胞の表面にある目印や、体の設計図である遺伝子の変化など、 より細かい情報をもとに、一人ひとりに合わせた治療計画を立てていきます。

急性リンパ性白血病の原因

この病気がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 しかし、体の設計図である「遺伝子」に傷がつくことが、 病気の始まりに関わっていると考えられています。

遺伝子に傷がつくと、細胞を増やす命令のブレーキが壊れます。 その結果、未熟な血液細胞(リンパ芽球)ががん細胞となり、 無秩序に増え続けてしまうのです。

遺伝子に傷がつくきっかけとして、リスクを高める可能性のある いくつかの要因が知られています。

  • 大量の放射線
  • 一度に多くの放射線をあびた経験がある場合です。
  • 特定の化学物質
  • ベンゼンなど、一部の化学物質に長期間さらされること。
  • 過去の治療の影響
  • 別のがん治療で使われた、一部の抗がん剤によるもの。
  • 生まれつきの病気
  • ダウン症候群など、遺伝子に関連する一部の病気。

ある研究によると、2000年から2016年にかけて、 急性白血病と診断される人の数は、子どもも大人も 増加傾向にあることが示されています。

ただし、これらの要因に当てはまる人はごくわずかです。 ほとんどの場合は原因を特定できず、誰にでも起こりうる病気 といえます。

急性リンパ性白血病の症状

急性リンパ性白血病の症状は、血液をつくる工場である 「骨髄」が、がん細胞(白血病細胞)でいっぱいになることで 起こります。

その結果、正常な血液細胞がつくれなくなり、 体にさまざまなサインが現れ始めます。 以下のような症状に気づいたら注意が必要です。

<自分で気づける症状チェックリスト>

□ 貧血の症状(赤血球が減るため) – 顔色が悪く、青白く見える – 少し動いただけでも動悸や息切れがする – 体が重く、疲れやすい – めまいや立ちくらみがする 赤血球は、体中に酸素を運ぶ大切な役割を担っています。 数が減ると、体が酸素不足になりこれらの症状が現れます。

□ 出血しやすくなる症状(血小板が減るため) – ぶつけた覚えがないのに、あざができやすい – 鼻血や歯ぐきからの出血が止まりにくい – 小さなケガでも血がなかなか固まらない 血小板には、血管が傷ついた時に血を止める働きがあります。 不足すると、小さな刺激でも出血しやすくなります。

□ 感染症にかかりやすくなる症状(正常な白血球が減るため) – 38度以上の熱が続く – のどの痛みや咳がなかなか治らない – 肺炎など、重い感染症にかかりやすくなる 白血球は、体内に侵入した細菌などと戦う兵隊です。 正常な白血球が減ると、体を守る力が弱まってしまいます。

<その他の症状>

増えすぎた白血病細胞が骨髄の外にあふれ出すと、 以下のような症状が出ることもあります。

  • 骨や関節の痛み
  • 首やわきの下、足の付け根にあるリンパ節の腫れ
  • お腹の張り(肝臓や脾臓が腫れるため)

<心の健康について>

病気の診断や治療は、心にも大きな負担をかけます。 しかし、デンマークとスウェーデンの研究によると、 小児期にこの病気を乗り越えた人の多くは、 精神的な病気になるリスクは周りの人と大きくは 変わらないことがわかっています。

ただし、移植治療を受けたり、病気が再発したりした場合は、 心のケアがより大切になることも報告されています。 体だけでなく、心の健康にも目を向けることが重要です。

気になる症状があれば、自己判断せず早めに医療機関を 受診してください。

急性リンパ性白血病の検査・診断

体からのサインに気づいたら、病気の正体を突き止めます。 そのために、いくつかの大切な検査を段階的に行います。 主に「血液検査」と「骨髄検査」の2つが中心です。

<ステップ1> 血液検査

まず最初に行うのが、腕の血管から血を採る血液検査です。 この検査で、血液の中を流れる細胞たちを調べます。

▼血液検査でチェックすること

  • 血液細胞の数 赤血球、白血球、血小板の数が正常な範囲にあるか、 バランスは崩れていないかを確認します。
  • 異常な細胞の有無 がん細胞である「白血病細胞」がいないかを探します。

この検査で異常が見つかった場合、病気を確定させるため、 さらに詳しい検査へと進みます。

<ステップ2> 骨髄検査

診断を確定するために、非常に重要な検査です。 血液をつくる工場である「骨髄」を直接調べます。

胸や腰の骨に細い針を刺して、骨髄液を少し採ります。 痛みを和らげる工夫をしてから行うので安心してください。

▼骨髄検査でわかること

  • 白血病細胞の割合 骨髄という工場が、どのくらい白血病細胞に 占領されてしまっているかを確認します。
  • 白血病細胞の詳しい情報 細胞の設計図である染色体や遺伝子を調べ、 白血病細胞の「正体」を突き止めます。

なぜ遺伝子まで詳しく調べるかというと、 最適な治療法を見つけるためです。 ある研究では、年齢が上がるにつれて治療の効果が 変わりやすいことがわかっています。 そのため、年齢などの情報と遺伝子の情報を組み合わせ、 一人ひとりに合った「治療の設計図」をつくるのです。

これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定します。 正確な診断が、効果的な治療への大切な第一歩となります。

急性リンパ性白血病の治療

急性リンパ性白血病の治療は、まず体からがん細胞を なくす「寛解(かんかい)」という状態を目指します。 寛解とは、検査をしてもがん細胞が見えなくなる状態です。

治療は主に「化学療法」と「造血幹細胞移植」が中心です。 患者さん一人ひとりの年齢や体の状態、病気の種類に 合わせて、最適な治療の設計図をつくっていきます。

治療法

内容(わかりやすく言うと)

化学療法

何種類かのお薬を使い、がん細胞を攻撃する治療です。治療の基本となります。

分子標的薬

特定の目印を持つがん細胞だけを狙い撃ちする、ミサイルのようなお薬です。

造血幹細胞移植

血液をつくる工場(骨髄)を、丸ごと新しく入れ替える強力な治療法です。

化学療法と新しい選択肢

化学療法は、がん細胞を徹底的にやっつけるために、 段階を踏んで計画的に行われます。

  • 寛解導入療法 最初にがん細胞をできるだけ減らすための強力な治療です。
  • 地固め療法 寛解になった後、目に見えないほど少数になった がん細胞を完全にゼロにするための治療です。

もし治療がうまくいかなかったり、再発してしまったり した場合でも、希望となる新しいお薬があります。 例えば、ある研究では「イノツズマブオゾガマイシン」 というお薬で、約74%の方に効果が認められました。

これは、がん細胞の表面にある目印にくっついて攻撃する お薬で、実臨床でも良好な効果が示されています。 ただし、肝臓の機能などに注意しながら慎重に進めます。

造血幹細胞移植の進歩

造血幹細胞移植は、再発のリスクが高い場合などに行われる、 とても強力な治療法です。 以前は、ドナー(提供者)の方と白血球の型(HLA)が 完全に一致する必要があり、探すのが大変でした。

しかし近年、型が半分だけ合うご家族から移植する 「ハプロ同一移植」も有効な選択肢となっています。 ある研究では、この方法は完全に一致するドナーからの 移植と比べて、再発が少ないことが報告されています。

移植した細胞が、患者さんの体を攻撃してしまう合併症 (移植片対宿主病:GvHD)が起こる可能性はあります。 しかし、この合併症をうまく管理する技術も進んでおり、 世界中で安全に行われるようになってきています。

どの治療法を選ぶかは、病気や体の状態によって大きく 異なります。主治医とよく相談し、ご自身に合った 治療法を一緒に見つけていくことが大切です。