お子さんのがんと聞くと、非常にまれな病気だと思われるかもしれません。しかし、「小児急性白血病」は子どもが発症するがんの中で最も多く、全体の約3分の1を占める、決して他人事ではない病気なのです。
幸いにも、近年の医療の進歩は目覚ましく、今では急性リンパ性白血病(ALL)の場合、80%以上のお子さんが元気になることができる、治癒を十分に期待できる病気へと変わりました。
ただし、その治療を安全に進めるためには、病気の正しい知識と、治療中に起こりうる合併症への備えが不可欠です。この記事では、小児急性白血病の基本からご家族が知っておくべき注意点まで、専門的な情報をわかりやすく解説します。
小児急性白血病の概要
小児急性白血病は、子どもがかかるがんの中で最も多い病気です。 全体の約3分の1を占め、決してめずらしいものではありません。
私たちの体の中には、血液をつくる「骨髄」という工場があります。 小児急性白血病は、この工場で異常な血液細胞(白血病細胞)が増え、 正常な血液をつくる働きを邪魔してしまう病気です。
しかし、医療の進歩により、今では治る可能性がとても高い病気です。 主に2つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
- 急性リンパ性白血病(ALL) 小児白血病の約7割を占める、最も多いタイプです。 治療がうまくいけば、80%以上の子が元気になることができます。
- 急性骨髄性白血病(AML) 小児白血病の約25%を占めるタイプです。 こちらも治療によって、60〜70%の子が元気になることができます。
ただし、治療中は体の抵抗力(免疫力)が大きく下がります。 そのため、さまざまな感染症に注意しなくてはなりません。
特に注意したいのが、「侵襲性アスペルギルス症」です。 これは、カビ(真菌)が原因で起こる重い感染症です。 ある研究では、ALLの患者さんの約3.2%、 AMLの患者さんの約5.2%に起こると報告されています。
この感染症にかかると、命を落とす危険性も指摘されています。 白血病の治療と同時に、こうした合併症を予防し、 早く見つけて対応することが非常に大切になるのです。
小児急性白血病の種類
子どもの白血病は、病気が進むスピードで分けると、ほとんどが急に症状の出る「急性白血病」です。 これは血液をつくる細胞が、未熟なまま、がんになってしまうためです。
この急性白血病は、がんになる血液細胞の種類で2つに分けられます。 ばい菌と戦う「リンパ球」のもとになる細胞ががんになるか、それ以外の血液(赤血球や血小板など)のもとになる細胞ががんになるかで決まります。
- 急性リンパ性白血病(ALL:エーエルエル) リンパ球のもとになる細胞ががんになるタイプです。 子どもの白血病で最も多く、全体の約7割を占めます。 ある研究では、発症は2歳から5歳にピークを迎えると報告されています。
- 急性骨髄性白血病(AML:エーエムエル) リンパ球以外の血液細胞のもとががんになるタイプです。 子どもの白血病の約4分の1、およそ25%を占めています。
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種類
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特徴
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急性リンパ性白血病(ALL)
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・子どもの白血病で最も多い(約7割)
・免疫を担うリンパ球のもとががんになる
・2~5歳での発症が多いと報告されている
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急性骨髄性白血病(AML)
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・子どもの白血病の約25%を占める
・赤血球や血小板などのもとががんになる
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このように、どの細胞ががんになるかで種類が分かれます。 どちらのタイプでも、治療中は体の抵抗力が弱まります。 特にカビが原因の「侵襲性アスペルギルス症」には注意が必要です。 この感染症で命を落とす割合は、ALLで約13%、AMLで約8%という報告もあり、予防と早期発見がとても大切です。
小児急性白血病の原因
なぜこの病気になるのか、はっきりとした原因はまだわかっていません。 ご家族が「何か悪かったのでは」と心配になるお気持ちはよくわかります。 しかし、この病気は誰のせいでもなく、偶然に起こることがほとんどです。
私たちの体を作る細胞には、その作り方が書かれた「設計図(遺伝子)」があります。 小児急性白血病は、この設計図に何らかの変化が起こることがきっかけです。 変化が起きると、正常な血液の細胞を作れなくなり、がん細胞(白血病細胞)が増えてしまいます。
では、なぜ設計図に変化が起こるのでしょうか。 いくつかの要因が考えられていますが、多くは防ぎようのない偶然です。
- 遺伝子の変化 体の細胞が新しくなる時、設計図をコピーしますが、その際に偶然ミスが起こることがあります。
- 生まれつきの病気 ダウン症候群など、一部の生まれつきの病気を持つお子さんは、少し発症しやすいことが知られています。
親から子へ遺伝するタイプの白血病は、きわめてまれです。 また、食事や生活環境の影響については、現在も研究が進められています。 最近では、多くの研究を分析した結果、母乳で育つことが急性リンパ性白血病になる危険性を少し下げる可能性があると報告されました。
このように、小児急性白血病は、たった一つの原因で起こるわけではありません。 いくつかの要因が偶然に重なって発症すると考えられています。 ご家族がご自身を責める必要はまったくないのです。
小児急性白血病の症状
小児急性白血病のサインは、風邪や成長痛の症状と似ています。 「これが出たら白血病」という特徴的なサインがないのが特徴です。 そのため、見過ごされてしまうことも少なくありません。
この病気は、血液をつくる工場である「骨髄」が、 がん細胞(白血病細胞)に乗っ取られることで症状があらわれます。 正常な血液が作れなくなるため、以下のような変化に注意しましょう。
お子さんの様子をチェックしてみましょう
- 赤血球が足りない(貧血) 顔色が悪く、青白く見えることが増えます。 少し動いただけですぐに息切れしたり、疲れやすくなります。
- 血小板が足りない(出血しやすい) ぶつけた覚えがないのに、手足にあざができやすくなります。 鼻血や歯ぐきからの出血が、なかなか止まりません。
- 正常な白血球が足りない(感染しやすい) ばい菌と戦う力が弱まり、風邪でもないのに熱が続きます。 いろいろな感染症にかかりやすくなります。
- 白血病細胞が増えすぎている 骨の中でがん細胞が増え、骨や関節を痛がることがあります。 お腹が張るのは、肝臓などが腫れているサインかもしれません。
特に、体を守る力が弱まると、普段は無害なカビが原因で、 「侵襲性アスペルギルス症」という重い感染症を起こす危険があります。 ある研究では、この感染症で命を落とす割合は、 急性リンパ性白血病(ALL)で約13%、 急性骨髄性白血病(AML)で約8%と報告されています。
これらのサインが一つだけでなく、複数重なって見られる場合は、 できるだけ早く小児科を受診してください。
小児急性白血病の検査・診断
小児急性白血病が疑われる場合、いくつかの検査で診断を確定します。 病気の詳しい状態を知り、最適な治療法を見つけるための大切な検査です。
まず、基本となるのが腕などから血をとる「血液検査」です。 血液中の赤血球や白血球、血小板の数や形に異常がないかを調べます。 がん細胞(白血病細胞)が増えていないかなどを確認する第一歩です。
血液検査で白血病の可能性が高いとわかった場合、 診断を確定させるために「骨髄検査」という検査を行います。 血液を作る工場である骨髄から、直接細胞を採って詳しく調べます。 お子さんが不安や痛みを感じないよう、眠くなるお薬を使って行います。
診断が確定した後は、さらに詳しい検査で病気の状態を把握します。 一人ひとりに合わせた、より効果的な治療計画を立てるためです。
- 髄液検査 脳や背骨の周りを流れる液体に、がん細胞がいないか調べます。 とても大切な場所への影響を確認する検査です。
- 染色体・遺伝子検査 がん細胞の設計図(遺伝子)を分析し、病気のタイプを特定します。 どの治療薬が効きやすいかを判断する重要な手がかりになります。
- 画像検査(超音波、CTなど) お腹の中の臓器など、体の他の部分に影響がないかを確認します。
これらの検査が終わると、すぐに治療が始まります。 治療中は体の抵抗力が下がるため、感染症の予防が非常に重要です。 特にカビ(真菌)による感染症は、時に重くなることがあります。 そのため、治療の早い段階から抗真菌薬を予防的に使うことがあります。 ある研究では、この予防を行ったお子さんの約83%で感染症を防ぐことに成功し、発熱が続く期間も短くできたと報告されています。
小児急性白血病の治療
小児急性白血病の治療は、お薬でがん細胞を攻撃する「化学療法」が基本です。 お子さんの病気の種類や体の状態に合わせて、いくつかの治療を組み合わせます。
化学療法:お薬による治療
複数の抗がん剤というお薬を使い、体の中にいる白血病細胞を攻撃します。 治療は主に、目的の違う3つのステップに分けて、計画的に進められます。
- 寛解(かんかい)導入療法 まず、体の中のがん細胞を急激に減らすための、最初の強力な治療です。 検査でがん細胞が見つからない状態(寛解)を目指します。
- 強化療法 見た目上はがん細胞がいなくなっても、まだ隠れている可能性があります。 残ったがん細胞を徹底的に攻撃し、再発を防ぐための治療です。
- 維持療法 再発を確実に防ぐため、比較的弱いお薬を長期間にわたって続けます。 入院だけでなく、お家で飲み薬を続けることもあります。
感染症への対策:治療中の大切な備え
化学療法中は、体をばい菌から守る「白血球」が大きく減ってしまいます。 そのため、普段なら問題にならないようなカビや細菌にも注意が必要です。 感染症を防ぐため、予防的にお薬を使うことが非常に重要になります。
- カビ(真菌)への備え ある研究では、フルコナゾールという抗真菌薬を予防的に使うことで、 83.3%のお子さんで真菌による感染症を防げたと報告されています。
- 細菌への備え 細菌が血液の中に入り込む「菌血症」は、命に関わる危険な状態です。 予防的に抗菌薬を使うことで、この菌血症や、 感染症で重い状態になるリスクを減らせる可能性が示されています。
その他の治療法
化学療法だけでは治すのが難しい場合、より強力な治療法を考えます。 お子さんの状態に合わせて、最適な方法が選ばれます。
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治療法
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どんな治療?
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造血幹細胞移植
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健康な人の血液をつくる細胞を移植し、血液工場を入れ替える治療です。
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免疫療法
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患者さん自身の免疫の力を使い、がん細胞を狙い撃ちする新しい治療法です。
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分子標的薬
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がん細胞だけが持つ特別な目印を攻撃する、副作用が少ないと期待される薬です。
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治療は入院と通院を合わせて数年にわたることが多く、長い道のりです。 医師とご家族がチームとなり、一つひとつの治療を乗り越えていきます。