多血症

健康診断の結果を見て、「血液が濃い」「赤血球が多い」と指摘されたことはありませんか?それは、血液がドロドロになる「多血症」のサインかもしれません。放置すると頭痛やめまいだけでなく、血管が詰まる血栓症など、命に関わる深刻な病気を引き起こすリスクも潜んでいます。

この多血症、実は原因が一つではありません。ストレスや喫煙によるものから、骨髄の遺伝子異常、さらにはお腹の中の双子の赤ちゃんにまで関わることがあります。ある研究では、特殊な治療後も約24%で胎盤にリスクが残ると報告されており、決して軽視できない病気なのです。

この記事では、多血症の知られざる種類と原因、そして見逃しがちな症状について詳しく解説します。自分には関係ないと思わずに、正しい知識でご自身の健康と向き合ってみませんか。

多血症の概要

多血症とは、血液中の赤血球が異常に増えてしまう病気です。 血液が濃く、ドロドロになった状態をイメージすると分かりやすいでしょう。

健康診断の血液検査で、以下の項目が高いと指摘されて気づく方が多いです。

  • ヘモグロビン(Hb) 赤血球に含まれ、酸素を運ぶタンパク質
  • ヘマトクリット(Ht) 血液全体に占める赤血球の割合

一般的に、赤血球の数は次の範囲が基準とされています。 この基準を超えると、多血症の可能性を考えます。

基準値(血液1μLあたり)

成人男性

400万~550万個

成人女性

350万~500万個

多血症には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 絶対的多血症 体内の赤血球の総量が、実際に増えている状態
  • 相対的多血症 脱水などで血液の水分(血漿)が減り、見かけ上、赤血球の濃度が高くなった状態

また、多血症は大人だけの病気ではありません。 生まれる前の双子の赤ちゃんに起こることもあります。

お母さんのお腹の中で胎盤を共有している双子の場合、胎盤の血管を通じて血液の流れが偏ってしまうことがあります。 その結果、片方が貧血、もう片方が多血症になる「双胎貧血多血症シークエンス」という状態が起こり得ます。

ある研究では、この状態を含む「双胎間輸血症候群」のレーザー治療後でも、約24%で胎盤の血管のつながりが残ることが報告されています。 この残った血管が、双胎貧血多血症シークエンスのリスクを高めることが分かっています。

赤血球が増えすぎると血液の流れが悪くなり、頭痛やめまいなどが起こります。 重篤な場合は血管が詰まる血栓症のリスクも高まるため注意が必要です。

多血症の種類

多血症は、原因によって大きく3つの種類に分けられます。 どのタイプかを知ることは、治療方針を決める上でとても重要です。

まず、多血症は「本当に赤血球が増えているか」で2つに大別されます。

分類

状態の説明

絶対的多血症

血液をつくる骨髄の働きが活発になり、赤血球の数そのものが本当に増えている状態です。

相対的多血症

脱水などで血液の水分量が減少し、赤血球の数が見かけ上、増えているように見える状態です。

さらに、本当に赤血球が増えている「絶対的多血症」は、原因によって2つのタイプに分けられます。

1. 真性多血症(絶対的多血症)

血液をつくる骨髄の細胞そのものに異常が起きる病気です。 細胞に「増えろ」と命令を出すスイッチ(JAK2遺伝子)が壊れ、命令が止まらなくなり、赤血球が過剰に作られてしまいます。

2. 二次性多血症(絶対的多血症)

他の病気や体の状態が原因で、赤血球が増えるタイプです。 赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)が、過剰に分泌されることで起こります。

  • 主な原因
  • 体の酸素不足 喫煙や睡眠時無呼吸症候群などにより、体が酸素不足と判断し、酸素を運ぶ赤血球を増やそうとします。
  • エリスロポエチンをつくる腫瘍 腎臓がんや肝臓がんなどが、このホルモンを異常に作り出してしまうことがあります。

3. 相対的多血症

脱水や強いストレス、喫煙などで血液中の水分が減ってしまう状態です。 赤血球の数自体は正常ですが、血液が濃くなることで赤血球の割合が高くなります。 そのため、「ストレス多血症」とも呼ばれることがあります。

多血症の原因

多血症と診断されても、その原因は一人ひとり異なります。 原因は大きく3つに分けられ、どれに当てはまるかを知ることが重要です。

1. 真性多血症:血液を作る工場の異常

血液を作る骨髄の細胞に、設計図である遺伝子の異常が起きてしまう病気です。 「赤血球を増やせ」という命令を出す「JAK2遺伝子」のスイッチが壊れ、命令が止まらなくなり、赤血球が過剰に作られ続けます。 このJAK2遺伝子の異常は、真性多血症の患者さんのほぼ100%で見つかります。

2. 二次性多血症:体のSOSサイン

他の病気や体の状態が原因で、赤血球が増えてしまうタイプです。 体が「酸素が足りない」というSOSを出すと、赤血球を増やすホルモン(エリスロポエチン)がたくさん分泌されて起こります。

  • 主な原因
  • 喫煙 タバコで肺の働きが落ち、体が酸素不足になります。
  • 睡眠時無呼吸症候群 寝ている間に呼吸が止まり、酸素不足に陥ります。
  • 心臓や肺の病気 体に十分な酸素を届けられなくなります。
  • 腎臓がんなどの腫瘍 腫瘍が勝手にホルモンを作り出すことがあります。

3. 相対的多血症:血液の水分不足

赤血球の数自体は正常ですが、血液の水分が減ってしまう状態です。 脱水や強いストレスで血液が濃くなり、見かけ上、赤血球の割合が高くなります。 そのため、「ストレス多血症」とも呼ばれています。

種類

主な原因

真性多血症

骨髄の細胞の遺伝子(JAK2遺伝子)の異常

二次性多血症

体の酸素不足(喫煙、睡眠時無呼吸症候群など)、腫瘍

相対的多血症

脱水、ストレス、喫煙

多血症の症状

多血症は、症状がはっきりと出ないことが少なくありません。 そのため、健康診断で偶然、赤血球の多さを指摘されて気づく方が多いです。

しかし、血液がドロドロになると血流が悪くなり、体はSOSサインを出します。 全身の血流が悪くなることで、以下のような症状が現れることがあります。

  • 頭痛やめまい 脳への血流が滞ることで起こります。
  • 耳鳴り 内耳の血流が悪くなることが原因の一つです。
  • 体のだるさ(倦怠感) 酸素を運ぶ赤血球が増えても、血流が悪いため全身に酸素が行き渡りにくくなります。

特に、骨髄の異常が原因の「真性多血症」では、見た目に特徴が出やすいです。

症状

なぜ起こるの?

赤ら顔

赤血球の色素(ヘモグロビン)が増え、顔の毛細血管が透けて赤く見えます。

目の充血

白目の血管が拡張して、赤く見えるようになります。

皮膚のかゆみ

入浴後など、体が温まり血行が良くなると、かゆみを感じやすくなります。

手足の痛み

手足の指先の細い血管が詰まりやすくなり、赤くなってズキズキ痛みます。

また、多血症は大人だけの病気とは限りません。 特殊なケースとして、お腹の中の双子の赤ちゃんに起こることもあります。

胎盤の血管を共有する双子の場合、血液の流れが偏ることがあります。 その結果、片方が貧血、もう片方が多血症になる「双胎貧血多血症シークエンス」という状態が起こり得ます。

この原因となる胎盤内の血管のつながりは、治療後も約24%で残ることが報告されています。 この残った血管が、赤ちゃんの多血症のリスクを高めることが分かっているのです。

これらの症状は他の病気でも見られるため、気になる場合は自己判断せず、必ず医療機関へ相談しましょう。

多血症の検査・診断

健康診断で赤血球が多いと指摘されたら、原因を探る検査を行います。 患者さんの体に負担が少ない検査から、段階的に進めるのが一般的です。

まず、医師がお話を聞き、体を診察することから始まります。

  • 問診 今の症状や、喫煙などの生活習慣、過去の病気について伺います。 まれですが、双子の妊娠では片方の赤ちゃんが多血症になることがあります。 これは「双胎貧血多血症シークエンス」と呼ばれる状態です。 原因となる胎盤の血管のつながりは、治療後も約24%で残ることが報告されています。
  • 身体診察 脱水がないか、顔色や目の充血などを確認します。 お腹を触って脾臓(ひぞう)という臓器の腫れを調べることもあります。 指先にクリップのような機械をつけ、血液中の酸素濃度も測定します。

次に、原因を詳しく調べるために、血液検査を行います。 この検査で、多血症のタイプを見分けるための重要な手がかりを得ます。

検査項目

この検査でわかること

血球算定

赤血球の数や割合を測り、多血症の程度を確認します。

エリスロポエチン(EPO)濃度

赤血球を作るホルモンの量を調べ、原因が骨髄にあるか推測します。

JAK2遺伝子検査

血液を作る細胞の設計図に異常がないかを調べます。

これらの検査で診断が難しい場合は、さらに詳しい検査が必要です。 骨に細い針を刺して骨髄を調べる「骨髄検査」を行うこともあります。 また、超音波(エコー)やCTなどの画像検査も大切な検査の一つです。 ホルモンを異常に作り出す腫瘍が隠れていないかなどを確認します。

多血症の治療

多血症の治療は、その原因によってアプローチが全く異なります。 まずはご自身のタイプを正確に知り、適切な治療を受けることが大切です。 自己判断で放置せず、医師と一緒に治療計画を立てていきましょう。

1. 真性多血症の治療:血液の量をコントロールする

骨髄の異常で赤血球が増え続けるこのタイプは、治療目標が明確です。 それは、血液が固まって血管が詰まる「血栓症」を予防することです。 年齢や過去の病歴から血栓症のリスクを評価し、治療法を決めます。

治療法

どんな治療?

瀉血(しゃけつ)療法

献血のように定期的に血液を抜き、赤血球の量を直接減らします。

低用量アスピリン療法

血液をサラサラにする薬で、血の塊ができるのを防ぎます。

細胞減少療法

骨髄で血液が過剰に作られるのを、薬で抑える治療法です。

血栓症のリスクが比較的低い方には、瀉血療法とアスピリン療法が中心です。 60歳以上の方など、リスクが高い場合は細胞減少療法もあわせて検討します。

2. 二次性多血症の治療:大元の原因を治す

他の病気が原因で赤血球が増えているため、その原因を取り除きます。

  • 睡眠時無呼吸症候群が原因なら 寝ている間の酸素不足を改善する治療(CPAP療法など)を行います。
  • 喫煙が原因なら 禁煙が最も大切で、効果的な治療法となります。
  • 腫瘍が原因なら 手術で原因となっている腫瘍を取り除きます。

特殊な例として、お腹の中の双子の赤ちゃんの治療が挙げられます。 ある病気のレーザー治療後も、胎盤の血管のつながりが約24%で残ることがあります。 この残った血管が原因で、片方の赤ちゃんが多血症になることがあるのです。 このような場合は、専門的な管理のもとで慎重な治療が必要です。

3. 相対的多血症の治療:生活習慣を見直す

このタイプは、脱水やストレスで一時的に血液が濃くなっている状態です。 そのため、薬に頼るのではなく、生活習慣の改善が治療の中心となります。

  • こまめに水分をとる
  • 禁煙を心がける
  • ストレスを上手に解消する
  • 肥満気味であれば減量する

どのタイプの多血症でも、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。