反応性関節炎

下痢や排尿時の痛みが治まった数週間後、急にひざや足首が痛み出したという経験はありませんか。その原因不明の痛みは「反応性関節炎」のサインかもしれません。この病気は、感染した細菌そのものではなく、体を守るはずの免疫システムが自分の関節を誤って攻撃することで引き起こされます。

最近では、多くの人が経験した新型コロナウイルス感染症の後に関節痛を訴えるケースも報告されており、ある研究では感染者の2%から65%にみられたとされています。決して他人事ではない、この不思議な関節痛の正体とは何なのでしょうか。

この記事では、反応性関節炎のメカニズムから特徴的な症状、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、不安解消の第一歩としてお役立てください。

反応性関節炎の概要

お腹をこわしたり、おしっこの病気になったりした後、急に関節が痛みだすことがあります。 これは「反応性関節炎」という病気のサインかもしれません。

この病気は、体に入った細菌が直接関節で悪さをするわけではありません。 細菌と戦うはずの体の免疫システムが、なぜか自分の関節を敵と間違えて攻撃してしまうことで起こります。

以前は、次の3つの症状がそろうことが多いため「ライター症候群」と呼ばれていました。

  • 関節炎
    ひざや足首などの関節が、熱をもって腫れたり痛んだりします。
  • 尿道炎
    おしっこをするときに痛みを感じたり、違和感があったりします。
  • 結膜炎
    目が赤く充血したり、目やにが出たりします。

きっかけは、お腹の感染症だけではありません。 例えば、膀胱がんの治療で使うBCGというお薬が原因となることもあります。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった後に関節が痛くなる人もいます。 ある研究では、感染した人の2%から65%に関節の痛みがみられたという報告もあります。

ただし、感染した人すべてがこの病気になるわけではありません。 「HLA-B27」という特別な遺伝子を持つなど、もともとの体質が関係していると考えられています。

反応性関節炎の種類

反応性関節炎には、「〇〇型」というようなはっきりとした分類名はありません。 しかし、何がきっかけになったかや症状の経過によって、いくつかのパターンに分けて考えます。

主に、原因となった感染症の種類によって分けられます。

きっかけになる病気

主な原因菌の例

お腹の感染症

サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア菌など

おしっこの通り道の感染症

クラミジア・トラコマチスなど

お腹の感染症は食中毒などが、おしっこの通り道の感染症は性感染症がきっかけになることが多いです。

また、最近の研究では、新型コロナウイルス感染症にかかった後に関節炎が起こることもわかっています。 ある研究では、コロナ後に反応性関節炎とよく似た急な関節の痛みが報告されました。 このように、細菌だけでなくウイルスも関節炎の引き金になる可能性があります。

そのほか、症状が続く期間によっても分けられます。

  • 急性
    ほとんどの場合、数ヶ月で症状は自然に良くなります。
  • 慢性
    一部の方では、症状が半年以上続いたり、再発を繰り返したりすることがあります。

反応性関節炎の原因

反応性関節炎は、体に入った細菌などが引き金となって起こります。 ただし、関節の中で細菌が増えて悪さをするわけではありません。 体を守るはずの免疫システムが、何かのきっかけで勘違いを起こし、自分の関節を攻撃してしまうことで発症するのです。

主なきっかけは、お腹の感染症や、おしっこの通り道の感染症です。

  • お腹の感染症
    食中毒の原因になるサルモネラ菌や赤痢菌などです。
  • おしっこの通り道の感染症
    性感染症の原因となるクラミジア・トラコマチスなどです。

しかし、これらの菌に感染した人全員が関節炎になるわけではありません。 「HLA-B27」という特別な遺伝子の型を持つなど、もともとの体質が大きく関係していると考えられています。

また、最近では細菌感染以外にも、様々な原因がわかってきました。 例えば、膀胱がんの治療で使うBCGというお薬が原因になることがあります。 ある研究では、BCG治療を5回ほど受けた後に発症するケースが多いと報告されています。

さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後に関節が痛くなることもあります。 研究によると、感染した人の2%から65%に関節の痛みがみられたという報告もあり、ウイルス感染も引き金になりうるのです。

このように、特定の感染症や治療をきっかけとして、もともと持っている体質が合わさることで発症すると考えられています。

反応性関節炎の症状

反応性関節炎の症状は、関節だけでなく全身に現れるのが特徴です。 関節が痛む1〜4週間ほど前に、下痢や排尿時の痛みなど、感染症のサインが見られることが多くあります。

主な症状は、次の3つの場所に現れます。

  • 関節の症状
  • 目やおしっこの通り道の症状
  • 皮膚や粘膜の症状

関節の症状

関節の腫れや痛みが主な症状ですが、いくつか特徴的な点があります。 以下のような症状に心当たりがないか、確認してみましょう。

  • 痛む場所 ひざや足首、足の指など、主に下半身の大きな関節に起こりやすいです。
  • 痛む数 一度にたくさんの関節ではなく、数カ所の関節だけが痛みます(少関節炎)。
  • 左右の差 左右対称ではなく、片側の関節だけに症状が出ることが多いです。
  • 腱の付け根の痛み アキレス腱の付け根やかかとなど、筋肉が骨にくっつく部分(腱付着部)に痛みが出ることがあります。

関節以外の症状

関節以外にも、体の様々な場所に症状が現れることがあります。 関節の痛みと一緒に、次のような症状がないか注意してみてください。

場所

具体的な症状

目

充血、目やに、痛み(結膜炎)

おしっこの通り道

おしっこをする時の痛み、頻尿、膿が出る(尿道炎)

皮膚・爪

手のひらや足の裏に、乾癬(かんせん)という皮膚の病気に似た赤い発疹や膿ができます。

爪が厚くなったり、変形したりすることもあります。

口の中

痛みを感じないタイプの口内炎ができることがあります。

全身

微熱、だるさ、体重が減るなど、体全体の不調を感じます。

また、膀胱がんの治療でBCGというお薬を使っている場合、治療を5回ほど受けた後に関節炎や目の症状が出ることが報告されています。

最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった後に関節が痛くなる人もいます。 ある研究では、感染した人の2%から65%に関節の痛みがみられたという報告もありました。 このように、様々な感染症が引き金になる可能性があるのです。

ほとんどの場合、症状は数ヶ月から1年以内に自然に良くなります。 しかし、一部の方では症状が長く続いたり、再発を繰り返したりすることもあります。 気になる症状があれば、自己判断せずに医師に相談しましょう。

反応性関節炎の検査・診断

反応性関節炎かどうかを調べるために、「これをすれば一発でわかる」という特別な検査はありません。 そのため、診断はいくつかの情報をパズルのように組み合わせて総合的に判断します。

まず、医師が最も大切にするのは、患者さんからのお話を聞くことです。

  • 最近の体調の変化 関節が痛くなる数週間前に、下痢やおしっこの時の痛みがなかったかなどを詳しくお伺いします。
  • かかったことのある病気 最近の研究で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後に関節が痛くなることがあるとわかってきました。
  • 今受けている治療 膀胱がんの治療で使うBCGというお薬が原因となることもあります。 ある研究では、BCG治療を5回ほど受けた後に発症するケースが多いと報告されています。

診察では、どの関節がどのように腫れて痛むのか、アキレス腱などに痛みがないか、目や皮膚に異常はないかなどを丁寧に確認します。

これらの情報をもとに、原因を特定したり、体の状態を詳しく調べたりするために、次のような検査を行います。

検査の種類

何を調べるのか

具体的な検査の例

原因菌を探す検査

関節炎のきっかけになった細菌を見つけるため

・尿検査

・のどや性器を綿棒でこする検査

・便の検査

血液検査

体の炎症の程度や、病気になりやすい体質かを調べるため

・炎症の数値(CRPなど)

・HLA-B27(遺伝子の型)

画像検査

関節の中の状態を詳しく確認するため

・レントゲン検査

・MRI検査

特に「HLA-B27」という遺伝子の型を持っていると、この病気になりやすいことが知られています。 しかし、陽性だからといって必ず発症するわけではなく、あくまで診断の参考情報の一つです。

反応性関節炎の治療

反応性関節炎の治療は、主に2つの目標を同時に進めます。 一つは「原因となった感染症の治療」です。 もう一つは「今起きている関節の痛みや腫れを和らげる治療」です。

1. きっかけになった感染症の治療

まず、関節炎の引き金となった細菌をしっかり治療することが基本です。 原因菌に合わせた「抗菌薬(抗生物質)」という、ばいきんをやっつけるお薬を使います。

特にクラミジアが原因の場合、ご自身だけでなくパートナーも一緒に検査や治療を受けることが非常に重要です。 お互いに感染を繰り返すことを防ぐために、協力して治療に取り組みましょう。

2. 関節の痛みや腫れを和らげる治療

つらい関節の症状を軽くするため、お薬を使った治療が中心となります。 症状の強さや続く期間に応じて、以下のようなお薬を使い分けます。

お薬の種類

どんな時に使うか

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)

最初の治療や、症状が軽い時に使います。

痛みや熱を抑える基本のお薬です。

抗リウマチ薬

症状が数ヶ月以上続く「慢性」の状態になった時に考えます。

ステロイド薬

痛みがとても強い関節への注射や、症状が重い時に飲み薬として使います。

生物学的製剤

他の治療で効果が不十分な、特に症状が重い場合に検討します。

  • 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) 痛みや炎症を抑えるため、最初に使われることが多いお薬です。 ある研究では、膀胱がんの治療(BCG)が原因の関節炎でも、このお薬が症状のある期間を短くするのに役立ったと報告されています。
  • 抗リウマチ薬 症状が長引く場合には、免疫の働きを調整するお薬を使います。 例えば、お腹の感染症がきっかけの場合は、スルファサラジンというお薬が効果的なことがあります。
  • その他の治療 痛みが一つの関節に集中している場合、ステロイド薬を直接注射して炎症をすばやく抑えることもあります。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後に関節が痛くなることも報告されており、原因を見極めて治療を選ぶことが大切です。 どの治療法が最適かは一人ひとり違うため、必ず医師と相談しながら治療を進めていきましょう。