ビタミンK欠乏症

なんとなく体がだるい、肌荒れや口内炎が治りにくいと感じていませんか。飽食といわれる現代でも、食生活の偏りや特定のライフステージによって、ビタミンが不足することは珍しくありません。

この記事では、ビタミン欠乏症が起こる原因、種類ごとの症状、そして適切な検査・治療法を解説します。海外の報告では、妊娠可能な年齢の女性や妊産婦において、ビタミンB12の欠乏が最大で約3割にのぼる可能性も指摘されています。

ご自身の不調の背景にある原因を理解し、的確な対策を講じるためのヒントが見つかるはずです。自己判断でサプリメントを試す前に、まずは体のサインを正しく読み解くことが大切です。

ビタミン欠乏症の概要

ビタミン欠乏症は、体の機能を保つために不可欠なビタミンが足りなくなり、心身に具体的な不調が現れた状態を指します。

ビタミンは、ごく少量で体の調子を整える重要な役割を担っていますが、その多くは体内で作ることができません。そのため、日々の食事から継続的に摂り入れる必要があります。

ここで、「ビタミン不足」と「ビタミン欠乏症」は、似ているようで異なる状態であることを理解しておくことが大切です。

  • ビタミン不足
    体内のビタミンが減っているものの、まだはっきりとした症状は出ていない「かくれ不足」の状態です。
  • ビタミン欠乏症
    不足が進行し、だるさ、皮膚トラブル、口内炎といった具体的な症状として現れている状態を指します。

飽食といわれる現代日本においても、ビタミン欠乏症は決して過去の病気ではありません。
食生活の偏りや極端なダイエット、アルコールの過剰摂取、消化器系の病気による吸収不良など、その原因は多岐にわたります。

特に、栄養の需要が高まる妊娠中や授乳中の女性は注意が求められます。実際、海外の複数の研究を分析した報告では、妊娠可能な年齢の女性や妊婦、授乳中の女性において、ビタミンB12の欠乏が最大で約3割にのぼるとされています。※

特定のライフステージや生活習慣によっては、誰でもビタミン欠乏症に陥る可能性があるといえます。

ビタミン欠乏症の種類

ビタミンは、その性質から「水溶性」と「脂溶性」の2つのグループに分けられます。水に溶けるか、油に溶けるかという違いは、体への吸収のされ方や蓄積のしやすさに直結し、欠乏したときのリスクや注意点も異なります。

水に溶ける水溶性ビタミン(ビタミンB群、Cなど)
血液などの体液に溶け込んで全身に運ばれ、使われなかった分は数時間から1日で尿と一緒に体外へ排出されます。このため体内に溜めておくことが難しく、毎日こまめに食事から補給しなくてはなりません。

特に、エネルギー作りや神経の働きを支えるビタミンB群は、特定のライフステージで不足しがちです。実際、ブラジルの研究をまとめた報告では、妊娠可能な年齢の女性や妊産婦において、ビタミンB12の欠乏が最大で約3割に達する可能性が示されています。※

油に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)
食事中の脂肪分と一緒に小腸から吸収され、主に肝臓や脂肪組織に蓄えられます。水溶性ビタミンと違って体内にストックできるため、毎日摂らなくても欠乏しにくいのが特徴です。

しかし、その分サプリメントなどで過剰に摂取すると体に溜まりすぎて、かえって不調を招くこともあるため注意が求められます。

それぞれのビタミンが不足した場合に起こりうる代表的な欠乏症を、以下にまとめました。

分類

特徴

代表的なビタミン

不足で起こりうる症状・疾患の例

水溶性ビタミン

・水に溶ける

・尿として排出されやすい

・毎日摂取する必要がある

ビタミンB1

ビタミンB12

葉酸

ビタミンC

・脚気:手足のしびれ、むくみ、だるさ

・悪性貧血:息切れ、めまい、手足のしびれ

・貧血:妊婦の場合、胎児の神経管閉鎖障害のリスク

・壊血病:歯ぐきからの出血、皮下出血、疲労感

脂溶性ビタミン

・油に溶ける

・肝臓や脂肪に蓄積される

・過剰摂取に注意が必要

ビタミンA

ビタミンD

ビタミンK

・夜盲症:暗い場所で物が見えにくくなる(通称:鳥目)

・くる病、骨軟化症:骨の変形や痛み

・血液凝固の遅れ:出血が止まりにくくなる

これらはあくまで代表例です。実際には、多くのビタミンが互いに連携しながら、私たちの体を支えています。

ビタミン欠乏症の原因

ビタミン欠乏症は、食事からの摂取不足だけでなく、特定の病気や治療、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に絡み合って引き起こされます。

主な原因は、大きく以下の3つのパターンに分けられます。

  • 摂取不足:食事から摂るビタミンの絶対量が足りない
  • 吸収不良:ビタミンを摂っても体内でうまく吸収できない
  • 需要増大:体の消費量が摂取量を上回っている

それぞれの原因について、具体的に見ていきましょう。

食事からの摂取不足

最もイメージしやすい原因が、食事から十分な量のビタミンを摂取できていないケースです。

  • 食事量そのものの減少
    高齢になって食欲が落ちたり、食べ物を噛んだり飲み込んだりする力が弱まったりして、食事の量自体が減ってしまう状態がこれにあたります。
  • 栄養バランスの偏り
    自己流の極端なダイエットや好き嫌いによる偏食、インスタント食品や外食中心の食生活などによって、摂取する栄養素が偏ってしまうことも大きな原因といえます。

体内での吸収不良

食事でビタミンを摂っていても、体内でうまく吸収されなければ欠乏症につながります。その背景には、以下のような原因が考えられます。

  • 消化器系の病気
    例えば、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)の患者さんでは、腸の慢性的な炎症によって栄養の吸収機能が低下するため、ビタミンやミネラルが欠乏しやすいことが知られています。※
  • 消化器系の手術後
    胃や腸の手術によって栄養を吸収する部分が物理的に短くなると、ビタミンの吸収効率が低下します。特に、重度の肥満に対する減量手術の中には、体重を大きく減らす効果が期待できる一方で、ビタミンD欠乏症などの栄養障害のリスクがより高まる術式も報告されています。※
  • アルコールの過剰摂取
    アルコールを分解する過程では、エネルギー代謝を助けるビタミンB1などが大量に消費されます。さらに、アルコールは腸の粘膜を傷つけて栄養の吸収を妨げるため、二重の意味で欠乏を招きやすくなります。
  • 薬の長期服用
    胃酸の分泌を抑える薬や一部の抗菌薬などを長期間使用している場合も、ビタミンの吸収に影響が出ることがあります。

必要量の増大

普段通りの食事を心がけていても、体の状態によっては通常より多くのビタミンが必要になることがあります。

ビタミンの需要が高まる代表的な時期や状態は、以下のとおりです。

  • 妊娠中や授乳中
  • 体の大きな成長期
  • がんや甲状腺機能亢進症など、体のエネルギー消費が激しい病気
  • 重いケガや手術からの回復期

これらのタイミングでは、体づくりのため、あるいは回復のためにビタミンの消費量が増えるため、意識的に摂取量を増やさないと需要に追いつかなくなってしまう可能性があります。

ビタミン欠乏症の症状

ビタミン欠乏症のサインは、どのビタミンが足りないかによって、体のあらゆる場所に現れます。
だるさや肌荒れといった身近な不調から、神経や骨の病気にまでつながることもあり、その内容は多岐にわたります。

体に現れるサインは、不足しているビタミンの種類によってさまざまですが、代表的な症状を体の部位ごとに見ていきましょう。

  • 全身に現れるサイン
  • なんとなく体がだるい、疲れやすい
  • 食欲がない
  • 皮膚・粘膜・目に現れるサイン
  • 肌荒れ、カサつき
  • 口内炎、口角炎(唇の両端の荒れ)
  • 歯ぐきからの出血
  • 暗い場所で物が見えにくくなる(夜盲症)
  • 目が乾く
  • 神経や骨に現れるサイン
  • 手足のしびれ、感覚が鈍くなる
  • 骨がもろくなる、骨に痛みを感じる

これらの症状は、特定の病気や治療がきっかけで現れることもあります。

例えば、重度の肥満に対する減量手術の中には、体重を大きく減らす効果が期待できる一方で、術後にビタミンDなどの栄養素が吸収されにくくなる術式があります。海外の10年以上にわたる追跡調査では、ある種の減量手術を受けた患者さんでビタミンD欠乏症や骨密度の低下がより多く見られたことが報告されています※。

また、ライフステージによっても、特定のビタミンが不足しやすくなります。特に、妊娠可能な年齢の女性や妊婦さん、授乳中の女性ではビタミンB12が欠乏しやすいことがわかっています。ブラジルの女性を対象とした複数の研究をまとめた報告によると、ビタミンB12の欠乏率は最大で約3割に達していたとされています※。

ここに挙げた症状は、ビタミン欠乏症以外の病気が原因で起こることも少なくありません。「たかがビタミン不足」と自己判断せず、気になる不調が続く場合は一度医療機関で相談することが大切です。

ビタミン欠乏症の検査・診断

ビタミン欠乏症の診断は、丁寧な問診と身体診察で原因を探り、血液検査によって不足しているビタミンを特定するという流れで進められます。

「だるい」「肌が荒れる」といった症状からビタミン不足を疑っても、どのビタミンが足りないのか、そもそも本当にビタミンが原因なのかを自分で突き止めるのは困難です。一般的な健康診断では、通常、血液中のビタミン濃度を測定する項目は含まれていません。

そのため、ビタミン欠乏症が疑われる場合は、まず以下のような診察を通して原因を絞り込んでいきます。

  • 問診
    現在の症状はもちろん、食事の内容や量、飲酒の習慣、持病、服用中のお薬などについて詳しくお聞きします。これは、症状の背景にある原因が「摂取不足」「吸収不良」「需要の増大」のどれにあたるのかを推測するための重要な手がかりとなります。
  • 身体診察
    皮膚の乾燥や荒れ、口内炎の有無、爪の状態などを直接目で見て確認します。ビタミンの種類によっては、体に特徴的なサインが現れるため、これも診断のヒントになります。

これらの診察から特定のビタミン欠乏症が強く疑われる場合に、診断を確定させる目的で血液検査を行います。血液検査では、どのビタミンが、どのくらい不足しているのかを客観的な数値で把握できます。

自己判断でサプリメントを摂取する前に、まずは医療機関で検査を受けることが大切です。なぜなら、不足しているビタミンが見当違いだったり、過剰摂取でかえって体調を崩したりする可能性があるからです。

実際に、特定の病気(炎症性腸疾患)を持つ患者さんの中でも、ビタミンが欠乏していない方々が市販のマルチビタミン剤を飲んでも、感染症の予防効果は認められなかったという研究報告もあります※。

やみくもに補うのではなく、ご自身の体の状態を正確に把握することこそが、的確な治療への第一歩といえるでしょう。気になる症状が続く場合は、一度クリニックにご相談ください。

ビタミン欠乏症の治療

ビタミン欠乏症の治療は、不足しているビタミンを特定し、その原因に応じて適切に補うことが基本です。

治療の第一歩は、多くの場合、食生活の見直しから始まります。
どの食品にどのビタミンが多く含まれているかを理解し、バランスの取れた食事を意識するだけで、軽度のビタミン不足は改善が期待できます。

しかし、食事だけでは改善が難しい場合や、すでに欠乏による症状がはっきりと出ている場合には、サプリメントや医薬品を用いた補充療法が必要になります。
どのビタミンを、どのくらいの量、どのくらいの期間補給すべきかは、血液検査の結果や症状の重さ、そして欠乏の原因によって一人ひとり異なります。

特に、ビタミン欠乏症の背景に何らかの病気や治療が隠れている場合は、原因そのものへのアプローチが欠かせません。

例えば、重度の肥満に対する減量手術の中には、体重を大きく減らす効果が期待できる一方で、栄養障害のリスクが高い術式も存在します。
海外の研究では、ある種の減量手術(十二指腸スイッチ術)を受けた患者さんは、別の術式(ルーワイ胃バイパス術)と比べて、10年後のビタミンD欠乏症の発生率が高かったことが報告されています※。

このように、特定の治療が原因でビタミンを吸収しにくくなっている場合は、単に食事に気をつけるだけでは不十分であり、専門的な補充療法が不可欠です。

自己判断で市販のサプリメントを大量に摂取することは、過剰症による健康被害を招く危険性もあるため避けるべきです。
気になる症状があれば、まずは医療機関を受診し、ご自身の体の状態を正確に把握することから始めましょう。