ウイルス性出血熱

高熱とともに全身から出血を引き起こす「ウイルス性出血熱」。エボラ出血熱に代表されるこの病気は致死率が極めて高く、日本では法律で最も危険な「一類感染症」に指定されています。「海外の病気だから自分には関係ない」と考えていませんか?

しかし、そのウイルスはコウモリやネズミ、マダニといった動物を介して人に感染します。ある研究では、調査対象のマダニの約6.0%がウイルスを持っていたという報告もあり、海外へ渡航する機会があれば誰にとっても無関係ではありません。

この記事では、ウイルス性出血熱の知られざる種類ごとの原因や症状、そして万が一の際の治療法までを詳しく解説します。見えない脅威から身を守るための正しい知識を、ここで手に入れてください。

ウイルス性出血熱の概要

ウイルス性出血熱は、特定のウイルスに感染することで、 高熱や体の様々な部分からの出血を引き起こす病気の総称です。 1つの病名ではなく、下記のような病気が含まれます。

  • エボラ出血熱
  • マールブルグ病
  • ラッサ熱
  • クリミア・コンゴ出血熱
  • 南米出血熱

これらの病気の多くは、ウイルスを体に持つ動物が原因です。 コウモリやネズミ、またそれらの動物の血を吸うマダニなど、 野生動物を介して人に感染することがあります。

例えば、クリミア・コンゴ出血熱に関する海外の研究では、 ウイルスを運ぶ可能性のあるマダニを詳しく調べています。 複数の報告を分析した結果、調査対象となったマダニのうち、 約6.0%が実際にウイルスを持っていたことがわかっています。

また、感染した人の血液や体液などに触れることによって、 人から人へとうつる可能性も指摘されています。 ウイルス性出血熱は命の危険が非常に高いものも多く、 日本では感染症法という法律で厳しく管理されています。 最も危険度が高い「一類感染症」に指定されているため、 国内での発生時には感染拡大を防ぐ厳重な対応が取られます。

ウイルス性出血熱の種類

「ウイルス性出血熱」は1つの病気ではなく、原因となるウイルスの違いによっていくつかの種類に分けられます。 日本ではあまり馴染みのない病気ですが、世界では今も発生しています。 その危険性の高さから、特に注意が必要なものとして、主に次の5つが知られています。

これらはすべて、日本の法律(感染症法)において、最も危険度が高い「一類感染症」に指定されています。

病気の名前

主な流行地域

主な感染源

エボラ出血熱

アフリカ中央部・西部

オオコウモリなどの野生動物

マールブルグ病

アフリカ

オオコウモリなどの野生動物

ラッサ熱

アフリカ西部

ネズミの仲間(マストミス)

クリミア・コンゴ出血熱

アフリカ、アジア、東欧

マダニ、感染した動物

南米出血熱

南米

ネズミの仲間

このように、ウイルスの種類によって流行している地域や、感染の原因となる動物が異なります。 例えば、クリミア・コンゴ出血熱は、ウイルスを持つマダニに咬まれたり、感染した動物の血液に触れたりすることでうつります。

海外の複数の研究を統合して分析した信頼性の高い報告があります。 それによると、調査されたマダニのうち、約6.0%がこのウイルスを持っていたことがわかっています。 また、ウイルスを持つマダニは、標高がやや高く涼しい場所や、湿度の高い環境に多く生息する傾向も明らかになりました。 海外へ渡航する際は、渡航先の流行情報を確認し、野生動物やダニに近づかないようにすることが非常に重要です。

ウイルス性出血熱の原因

ウイルス性出血熱は、その名の通り「ウイルス」が原因です。 このウイルスは、普段は野生動物の体の中に静かに潜んでいます。 しかし、何かのきっかけで動物から人へと感染してしまいます。

主な原因となる動物は、ウイルスの種類によって異なります。 代表的な感染のきっかけをいくつか見てみましょう。

  • コウモリが原因となるウイルス
  • エボラ出血熱やマールブルグ病のウイルスは、
  • オオコウモリの仲間が体の中に持っていると考えられています。
  • ネズミが原因となるウイルス
  • ラッサ熱や南米出血熱のウイルスは、特定のネズミが持っています。
  • ネズミのおしっこやフンに汚れたホコリを吸い込むことで感染します。
  • マダニが原因となるウイルス
  • クリミア・コンゴ出血熱は、ウイルスを持つマダニに咬まれてうつります。
  • 複数の研究をまとめた信頼性の高い報告によると、
  • 捕まえられたマダニの約6.0%がウイルスを持っていたとされます。
  • ウイルスを持つマダニは、少し標高が高く涼しい場所や、
  • 湿気の多い環境を好む傾向があることも分かっています。

また、ウイルスに感染した人の血液や汗、だ液などに直接触れることでも、 人から人へとうつる可能性があります。 皮膚の小さな傷や、目・口・鼻の粘膜からウイルスが体に入り込みます。 海外へ行く際は、むやみに野生動物に近づかないことが非常に大切です。

ウイルス性出血熱の症状

ウイルス性出血熱の症状は、最初は風邪とよく似ています。 突然の高熱や頭痛、筋肉の痛みなどから始まることが多いです。 そのため、ただの体調不良だと思ってしまう危険があります。

しかし、病気が進むとウイルスごとに特有の症状が現れます。 体の様々な場所から出血が見られるのが大きな特徴です。 ウイルスの種類ごとの主な症状を以下にまとめました。

病気の名前

主な症状

エボラ出血熱

はじめの症状<br> 突然の高熱、ひどい頭痛、のどの痛み、だるさなどです。<br>進行後の症状<br> 吐き気や下痢、そして目や鼻、歯ぐきなどからの出血が起こります。

マールブルグ病

はじめの症状<br> 高熱、頭痛、筋肉の痛みなどが出ます。<br>進行後の症状<br> 赤く盛り上がる特徴的な発疹や、激しい下痢、出血が見られます。

ラッサ熱

はじめの症状<br> ゆっくりと始まる熱、頭痛、のどの痛みなどです。<br>進行後の症状<br> 顔のむくみ、口や鼻からの出血、難聴が起こることがあります。

クリミア・コンゴ出血熱

はじめの症状<br> 発熱、頭痛、関節や腰の痛みが出ます。<br>進行後の症状<br> 皮膚に赤い点々(点状出血)ができ、消化管からも出血します。<br> 海外の複数の研究を分析した信頼性の高い報告によると、<br> ウイルスを運ぶマダニの約6.0%がウイルスを持っていたとされます。

南米出血熱

はじめの症状<br> 発熱、悪寒、筋肉の痛みなどです。<br>進行後の症状<br> 特徴的な歯ぐきからの出血に始まり、手のふるえなども見られます。

このように、初期症状だけで病気を見分けるのは非常に困難です。 流行地域への渡航歴があり、気になる症状が出た場合は、 自己判断せず、すぐに専門の医療機関へ相談してください。

ウイルス性出血熱の検査・診断

ウイルス性出血熱の診断は、まず詳しい問診から始まります。 なぜなら、初期症状が急な発熱など風邪とよく似ており、 症状だけでは見分けるのが非常に難しいからです。

そのため、医師は次のような点を特に注意深く確認します。

  • 最近の行動について アフリカや南米など、この病気が流行している地域へ行きましたか?
  • 動物との接触について 野生動物に触ったり、マダニに咬まれたりしませんでしたか?
  • 周りの人の状況について 同じような症状の人が、周りにいませんか?

これらの質問で感染の可能性が高いと判断されると、 原因を特定するための詳しい検査に進みます。 主な検査は、少量の血液を採って調べるものです。

検査の中心となるのが「遺伝子検査(PCR法)」です。 これは血液の中に、ウイルスの設計図である遺伝子がないか、 特殊な方法で探し出すとても精密な検査です。 この検査で、エボラウイルスなど原因ウイルスを特定します。

また、なぜこのような病気の検査が重要なのでしょうか。 例えば、海外のある研究では、マダニを詳しく調査しました。 その結果、捕獲したマダニの約6.0%が、 クリミア・コンゴ出血熱のウイルスを持っていたと報告されています。 さらに、ウイルスを持つマダニは、少し標高が高く、 涼しくて湿度の高い場所に多いことも分かっています。

こうした地道な研究が、どの地域で注意が必要かを知らせ、 多くの人の命を未来で救うための大切な情報になるのです。

ウイルス性出血熱の治療

ウイルス性出血熱にかかった場合、治療は時間との勝負です。 残念ながら、全てのウイルスに効く特効薬はまだありません。 そのため、治療は主に2つの方法を組み合わせて行われます。

  • ウイルスに直接作用する治療 ウイルスの増殖を抑えることを目指します。
  • 症状を和らげるための治療(対症療法) 患者さんの体の負担を減らし、回復を助けます。

ウイルスに直接作用する治療

一部のウイルスには、増えるのを邪魔する薬が有効です。 「抗ウイルス薬」という種類の薬が使われることがあります。

病気の名前

主な治療薬

ラッサ熱

リバビリン(抗ウイルス薬)

クリミア・コンゴ出血熱

リバビリン(抗ウイルス薬)

南米出血熱

・リバビリン(抗ウイルス薬)<br>・回復した人の血液(回復期血清)

これらの病気では、できるだけ早く治療を始めることが大切です。 「リバビリン」という薬で、ウイルスの活動を抑え込みます。 また、病気に打ち勝った人の血液から作る特別な薬(回復期血清)を使い、 回復に必要な「戦う力」を借りる治療法もあります。

症状を和らげるための治療(対症療法)

特効薬がないエボラ出血熱などでは、この治療が中心です。 患者さん自身の「病気と戦う力」を助けることが目的です。 体がウイルスに勝てるよう、全力でサポートしていきます。

  • 水分や栄養の補給 脱水を防ぐため、点滴で水分などを補います。
  • 呼吸のサポート 息が苦しい時は、酸素を送って呼吸を助けます。
  • 血圧の管理 血圧が下がりすぎないよう、薬で調整します。
  • 出血への対応 出血がひどい場合は、輸血をすることもあります。

海外のある研究では、クリミア・コンゴ出血熱のウイルスを持つマダニが、 調査対象のうち約6.0%もいたと報告されています。 だからこそ感染予防と、感染した場合の迅速な治療が重要なのです。 ウイルス性出血熱は命に関わるため、特別な病院で、 感染が広がらないよう厳重な管理のもとで治療が進められます。