こむら返り

夜中に突然の激痛で目が覚める…。多くの人が経験する「こむら返り」は、50歳以上の約3人に1人が悩んでいるという報告もあるほど身近な症状です。しかし、「たかが足がつっただけ」と軽く考えてはいないでしょうか?

その痛みの裏には、単なる筋肉疲労だけでなく、腰の病気や糖尿病といった思わぬ病気が隠れている可能性もあります。実は、こむら返りの原因や治療法にはまだ解明されていない点も多く、自己判断での対処はかえって危険な場合もあるのです。

この記事では、こむら返りが起こる意外な原因から、すぐにできる応急手当、そして医療機関を受診すべきサインまでを詳しく解説します。つらい痛みの正体を知り、日々の不安を解消するための一歩を踏み出しましょう。

こむら返りの概要

「こむら返り」とは、主にふくらはぎの筋肉が、 自分の意思とは無関係に突然けいれんする状態です。

「こむら」は、ふくらはぎを指す昔の言葉です。 筋肉がひっくり返るような痛みから、この名がつきました。

年齢や性別を問わず、多くの人が経験する身近な症状です。 特に、次のような方に起こりやすいことが知られています。

  • 50歳以上の方 50歳以上の約3人に1人が、足のつりに悩んでいるという報告があります。
  • 妊娠中の方 妊娠中の女性の約3〜4割が、夜間にこむら返りを経験すると言われます。
  • 運動をする習慣のある方 スポーツなどで汗をかき、筋肉が疲れると起こりやすくなります。

原因は筋肉の疲れや水分不足、ミネラルバランスの乱れなど様々です。 しかし、原因が一つに特定できないことも少なくありません。

そのため、治療法についてもまだ研究が進められている段階です。 例えば、夜間の足のつりにマグネシウムを補う方法があります。

しかし、その治療効果については、まだはっきりとした結論が出ていません。 こむら返りの原因や治療には、まだ解明されていない点も多いのです。 今後のさらなる研究によって、より詳しいことがわかると期待されています。

こむら返りの種類

こむら返りは、原因によって大きく2つのタイプに分けられます。 はっきりとした病気が原因ではないものと、病気が隠れているものです。

ご自身の症状がどちらのタイプに近いか、確認してみましょう。

1. 特発性(とくはつせい)こむら返り

「特発性」とは、医学的に「原因がはっきりしない」という意味です。 特定の病気が見当たらないのに起こるこむら返りを指します。

実は、こむら返りのほとんどが、このタイプにあたるとされています。 日々の生活習慣が、気づかないうちに引き金になっているのです。

  • 主な要因
  • 筋肉の疲れ 長時間の立ち仕事や運動などで、筋肉が疲労している状態です。
  • 水分やミネラルの不足 汗をかいた後など、体内の水分や栄養のバランスが崩れています。
  • 体の冷え 体が冷えることで血行が悪くなり、筋肉が硬直しやすくなります。

特に、これらの要因が重なりやすい夜間、寝ている間に起こりやすいです。 これを「夜間こむら返り」と呼びます。

2. 症候性(しょうこうせい)こむら返り

「症候性」とは、「何かの病気の症状として現れる」という意味です。 こむら返りが、体からのSOSサインとして出ている状態を指します。

もし、こむら返りを頻繁にくり返す場合は注意が必要です。 次のような病気が原因となっている可能性があります。

  • 原因となりうる病気の例
  • 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう) 背骨の神経の通り道が狭くなる病気です。高齢の方に多く見られます。 歩くと足に痛みやしびれが出て、座って休むと楽になるのが特徴です。
  • 糖尿病 神経に障害が出たり、血行が悪くなったりして起こりやすくなります。
  • 閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう) 足の血管が動脈硬化で細くなり、血流が悪くなることで生じます。

このほか、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)なども原因となります。 痛みが強い、足のしびれなど他の症状もある場合は、一度ご相談ください。

こむら返りの原因

こむら返りは、筋肉が異常に縮んでしまうことで起こります。 筋肉には伸びすぎを防ぐ「筋紡錘(きんぼうすい)」、 縮みすぎを防ぐ「腱紡錘(けんぼうすい)」というセンサーがあります。

このセンサーが何らかの理由で誤作動を起こすことが、 こむら返りの直接的な原因と考えられています。 原因は一つではなく、いくつかの要因が重なって起こることが多いです。

  • 水分やミネラルの不足 汗をかくと水分と一緒に、カルシウムやマグネシウムも失われます。 これらのミネラルは、筋肉や神経の働きを調整するのに不可欠です。 特に夜間のこむら返りとマグネシウムの関係が研究されています。 しかし、サプリで補う効果については、まだ結論が出ていません。
  • 筋肉の疲れや体の冷え 長時間の立ち仕事や運動による筋肉の疲労も、原因の一つです。 また、体が冷えて血行が悪くなると、筋肉が硬直しやすくなります。 その結果、センサーが誤作動を起こしやすくなるのです。
  • 隠れている病気の影響 頻繁にこむら返りが起こる場合は、病気のサインかもしれません。 例えば「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」では、 神経が圧迫され、こむら返りのような痛みが現れることがあります。 この痛みは、立ったり歩いたりすると悪化するのが特徴です。 その他、糖尿病や血管の病気が原因となることもあります。

こむら返りの症状

こむら返りの代表的な症状は、筋肉が突然「ギュッ」と収縮することです。 自分の意思とは関係なく、筋肉がけいれんして硬くなります。

このけいれんには、多くの場合、突き刺すような激しい痛みが伴います。 痛みは数秒から数分でおさまりますが、その後も違和感が残ることがあります。

こむら返りは、体のさまざまな筋肉に起こる可能性があります。 ご自身の症状がどこに現れるか、確認してみましょう。

  • 症状が現れやすい部位
  • ふくらはぎ 最も一般的に症状が現れる場所です。
  • 足の指や裏(土踏まず) ふくらはぎと同様に、足の筋肉にもよく起こります。
  • 太ももやすね
  • 手や腕、首、肩、背中など

また、他の病気が原因で「こむら返りのような痛み」を感じることもあります。 例えば「腰部脊柱管狭窄症」では、次のような特徴的な痛みが現れます。

この病気では、腰からお尻、足にかけて焼けるような痛みを感じます。 痛みは立ったり歩いたりすると悪化し、座ったり前かがみになると和らぎます。 もし、このような症状が続く場合は、一度専門医にご相談ください。

こむら返りの検査・診断

こむら返りを何度もくり返す、痛みが強いといった場合は、 「たかが、こむら返り」と考えず、一度ご相談ください。 思わぬ病気が隠れているサインかもしれないからです。

診察では、まず患者さんから詳しくお話をお伺いします。 原因を探るために、次のような質問をすることが多いです。

  • 症状が起こる状況 寝ている時か、歩いている時かで原因の推測が変わります。 もし歩くと悪化し、座って休むと楽になる場合は、 腰の病気が原因の可能性も考えられます。
  • その他の症状 足のしびれや腰の痛みなど、他の症状がないかお聞きします。
  • 持病やお薬について 治療中の病気や、服用中のお薬が影響することもあります。

次にお体の状態を詳しく調べ、原因をさらに探ります。 足のむくみや血行を確認したり、神経の反応を見たりします。

必要に応じて、より詳しい検査を行うこともあります。

  • 血液検査 筋肉や神経の働きに必要なミネラルのバランスや、 糖尿病などの病気が隠れていないかを確認します。
  • 画像検査 超音波(エコー)で、足の血管の血流を調べます。 また、腰の病気が疑われる場合はMRI検査が役立ちます。 MRIは、背骨の中にある神経の通り道が、 狭くなっていないかを詳しく確認できるためです。

これらの結果を総合的に判断し、診断につなげていきます。

こむら返りの治療

こむら返りが起きた際は、あわてずに対処することが大切です。 治療には、ご自身でできる「応急手当」と、 医療機関で行う「根本的な治療」の2つの側面があります。

応急手当:まずは痛みを和らげましょう

突然の激しい痛みに襲われたら、まずは痛みを和らげることが最優先です。 以下の方法を、落ち着いて試してみてください。

  • 筋肉をゆっくりと伸ばす つっている側の足のつま先をつかみ、ゆっくりと体の方へ引き寄せます。 ふくらはぎの筋肉が心地よく伸びるのを感じながら、数十秒保ちましょう。 急に強く伸ばすと筋肉を傷める恐れがあるため、やさしく行うのがコツです。
  • 手が届かない場合は タオルを足の裏にかけ、両手で手前に引く方法も有効です。 また、壁に向かって立ち、つっている方の足を後ろに引いて、 かかとを床につけたまま壁を押すようにしても、ふくらはぎを伸ばせます。
  • 患部を温める ストレッチで痛みが和らいだら、蒸しタオルなどでふくらはぎを温めます。 血のめぐりが良くなることで、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。

医療機関での治療

応急手当をしても頻繁にくり返す場合や、痛みが強い場合は、 何らかの病気が隠れている可能性も考え、医療機関を受診しましょう。

  • お薬による治療 こむら返りには「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という、 漢方薬が処方されることがあります。筋肉のけいれんを鎮めるお薬です。 服用後、平均6分ほどで効果が現れるという報告もある、即効性が期待できるお薬です。
  • 原因に対するアプローチ こむら返りの原因として、マグネシウムなどのミネラル不足が挙げられます。 しかし、夜間のこむら返りに対してサプリでマグネシウムを補う効果は、 研究でもまだ、はっきりとした結論が出ていないのが現状です。 自己判断でサプリを飲むのではなく、まずは医師に相談することが大切です。

もし、こむら返りの裏に腰の病気や糖尿病などが隠れている場合は、 その原因となっている病気の治療が、根本的な解決につながります。 つらい症状を我慢せず、一度クリニックにご相談ください。