くる病
「うちの子、O脚かも…」「周りの子と比べて身長の伸びが遅い気がする」。そんな風にお子さんの成長で気になることはありませんか?その何気ないサインは、成長期の子どもの骨が弱くなる「くる病」という病気かもしれません。
くる病は、骨を丈夫にするために不可欠なビタミンDなどが不足することで発症します。日光浴不足や食生活の変化など、現代ならではの生活習慣が原因となることも多く、近年再び注目されている病気の一つです。
この記事では、くる病の具体的な症状や種類ごとの原因、治療法について詳しく解説します。お子さんの健やかな成長を守るため、まずは病気に関する正しい知識を身につけ、気になるサインを見逃さないようにしましょう。
くる病の概要
くる病は、主に成長期の子どもの骨に起こる病気です。 骨を硬く丈夫にする「石灰化(せっかいか)」という働きが、 何らかの原因でうまくいかなくなることで発症します。
実はこの病気は、発症する年齢によって呼び方が変わります。 医学的には、骨の成長が終わる前か後かで区別されています。
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子ども(骨の成長が終わる前) |
大人(骨の成長が終わった後) |
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病名 |
くる病 |
骨軟化症(こつなんかしょう) |
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主な特徴 |
骨が柔らかく、O脚などの変形が起こりやすい |
骨がもろくなり、痛みが出やすい |
この区別の基準となるのが、骨の両端にある「成長軟骨帯」です。 ここは骨が伸びるための重要な部分で、レントゲン写真では、 「骨端線(こったんせん)」という黒い線のように見えます。
この成長軟骨帯が閉じる(骨の成長が止まる)前に、 石灰化の障害が起きる場合を「くる病」と呼びます。 一方、成長が終わった後に発症する場合を「骨軟化症」と呼びます。
健康な骨は、カルシウムやリンがしっかり沈着して硬くなります。 しかし、くる病ではこの石灰化が不足してしまいます。 石灰化していない柔らかい骨の部分を「類骨(るいこつ)」と呼び、 くる病ではこの類骨の割合が増えるため骨が弱くなるのです。
くる病の種類
くる病と一言でいっても、原因によっていくつかの種類に分けられます。 骨が弱くなるという点は共通ですが、原因が違えば治療法も異なります。 そのため、どの種類のくる病なのかを正しく見極めることが非常に大切です。
くる病の代表的な種類には、以下のようなものがあります。
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種類 |
主な原因や特徴 |
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ビタミンD欠乏性くる病 |
食事での摂取不足や日光浴不足が原因です。くる病の中で、このタイプが比較的多いとされています。体内でビタミンDが足りなくなり、骨の材料を吸収できません。 |
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低リン血症性くる病 |
主に遺伝子の変化が原因で起こる病気です。骨の材料である「リン」という栄養素が、腎臓から尿へ過剰に排出されてしまいます。このタイプはビタミンDの働きも弱くなる特徴があります。 |
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ビタミンD依存性くる病 |
遺伝子の変化により、ビタミンDをうまく使えない状態です。体内にビタミンDはあっても、その働きが不十分になります。タイプによっては、髪の毛が抜けるという特徴が見られます。 |
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その他のくる病 |
肝臓や腎臓の病気が原因で起こることもあります。ビタミンDを体で使える「活性型」という形に変える臓器の機能が低下するために発症します。これを「肝性くる病」や「腎性くる病」と呼びます。 |
このように、くる病は原因によって大きく4つに分類されます。 ビタミンDは、食事から摂った後に肝臓や腎臓で活性型に変わります。 そして、腸でカルシウムやリンの吸収を助けるという重要な働きを担います。
どの段階で問題が起きているのかを特定することが治療の第一歩です。 例えば、ビタミンDそのものが足りないのか、それとも体の中にあっても上手く使えないのかを見極める必要があります。 自己判断でサプリメントなどを摂るのではなく、まずは医療機関で正確な診断を受けるようにしましょう。
くる病の原因
くる病は、骨を硬く丈夫にする「石灰化」という働きが、 何らかの理由でうまくいかなくなることで起こります。 この石灰化には、主に3つの栄養素が深く関わっています。
- ビタミンD
- カルシウム
- リン
これらの栄養素は、チームのように協力して骨を作っています。 中でも、全体の司令塔のような役割を果たすのがビタミンDです。 ビタミンDは、食事で摂ったカルシウムやリンを、 腸から体の中へ吸収するよう促す大切な働きを担います。
もし体内のビタミンDが不足してしまうと、 いくらカルシウムやリンを摂っても体にうまく吸収されません。 その結果、骨の材料が足りなくなり、 柔らかく弱い骨しか作れなくなってしまうのです。
では、なぜビタミンDは不足してしまうのでしょうか。 主な原因として、現代の生活習慣に潜む3つの要因が挙げられます。
- 食事からの摂取不足 ビタミンDは魚やきのこ類、卵などに多く含まれています。 アレルギーによる食事制限や、偏った食生活によって、 食事から摂るビタミンDが不足することがあります。
- 日光浴の不足 ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで、 私たちの皮膚でも作られます。 しかし、屋外で過ごす時間の減少や過度な紫外線対策により、 皮膚で作られるビタミンDが不足しがちです。
- 完全母乳栄養 母乳は赤ちゃんにとって素晴らしい栄養源ですが、 含まれるビタミンDの量は多くありません。 そのため、母乳だけで育つ赤ちゃんは、 ビタミンDが不足しやすいことが知られています。
このほか、遺伝子の変化が原因となるくる病もあります。 例えば、腎臓からリンが過剰に尿へ排出されてしまう場合や、 体内にビタミンDはあっても、うまく活用できない場合などです。 このように原因は様々であるため、自己判断はせず、 まずは医療機関で正確な診断を受けることが重要です。
くる病の症状
くる病は、骨を硬くする「石灰化」がうまくいかない病気です。 そのため骨が柔らかくなり、成長と共に体に様々なサインが現れます。 お子さんの成長段階に合わせて、注意深く観察することが大切です。
気になる症状がないか、以下のリストで確認してみましょう。 これらは、骨の石灰化が不足していることを示すサインかもしれません。
【お子さんに見られる主な症状チェックリスト】
- あたま 頭の骨が柔らかく、指で押すとピンポン玉のようにへこむことがあります。 これを「頭蓋癆(ずがいろう)」と呼びます。
- おくち 乳歯が生えてくるのが、同年代の子と比べて遅れることがあります。 また、歯の質も弱くなるため、虫歯になりやすい傾向が見られます。
- あし O脚(オーきゃく)やX脚(エックスきゃく)のように、足が曲がります。 これは、柔らかい骨が体重を支えきれずに変形してしまうためです。 歩き始めるのが遅かったり、歩行時に体が左右に大きく揺れたりします。
- からだ全体 身長の伸びが緩やかになり、成長障害が見られることがあります。 手首や足首の関節、肋骨がこぶのように膨らむこともあります。 骨に痛みを感じたり、筋力が低下して転びやすくなったりします。
これらの症状は、骨の成長が活発な乳幼児期に特に現れやすいです。 一つでも気になるサインがあれば、自己判断せずにご相談ください。 複数の症状が当てはまる場合は、特に注意が必要です。
骨の成長が終わった大人で同じ病気が起こった場合は、「骨軟化症」と呼ばれます。 大人の場合は骨の変形は少ないですが、骨が弱くなることで、 背中や腰、関節などに慢性的な痛みを感じることが主な症状となります。
くる病の検査・診断
くる病が疑われる場合、診断は丁寧なステップを踏んで進めます。 まずはお子さんの普段の生活について詳しくお話をうかがいます。 その上で診察を行い、必要な検査で診断を確定させていきます。
診察では、くる病に特徴的な体のサインがないかを慎重に確認します。 これらは骨の石灰化がうまくいっていないことを示す大切なヒントです。
- 骨の変形 O脚やX脚の程度、頭の骨の柔らかさ(頭蓋癆)などを確認します。
- 胸の形 肋骨が数珠のようにポコポコと盛り上がっていないかを見ます。 これを「肋骨念珠(ろっこつねんじゅ)」と呼びます。
- 関節の腫れ 手首や足首など、骨の成長が盛んな部分が腫れていないかを確認します。
診察でくる病の可能性が高いと判断した場合、さらに詳しい検査に進みます。 骨や血液の状態を調べることで、診断をより確実なものにします。
- X線(レントゲン)検査 手首やひざなど、成長が活発な部分の骨を撮影します。 骨の端がカップのようにお椀状に広がったり、ギザギザになったりする、 くる病に特徴的な変化がないかを調べます。
- 血液検査 血液中の骨の材料(カルシウム、リン)や、 その吸収を助けるビタミンDの量などを測定します。 また、骨の代謝を示す「アルカリホスファターゼ(ALP)」という酵素の値も重要です。 くる病では骨作りがうまくいかないため、このALPが異常に高くなります。
特にお子さんの血液検査は、大人とは基準値が大きく異なります。 月齢や年齢によっても細かく変わるため、小児科医の専門的な判断が不可欠です。 これらの結果を総合的に評価し、くる病の診断を確定します。
くる病の治療
くる病の治療は、原因を正確に見極めることが何よりも大切です。 骨を丈夫にするために、体に不足している栄養素を補うのが基本です。 早期に適切な治療を開始すれば、骨の変形や成長の改善が期待できます。
治療の中心は、原因に合わせたお薬の内服です。 くる病の種類によって、使うお薬がまったく異なるためです。 自己判断でサプリメントなどを摂ることは絶対に避けてください。
ビタミンD欠乏性くる病の治療
このタイプは、ビタミンDそのものが体に足りていません。 そのため、お薬で直接ビタミンDとカルシウムを補給します。 「天然型」のビタミンD製剤を内服するのが一般的です。
ただし、お薬の量が多すぎると体に良くない影響を及ぼすことがあります。 そのため、定期的に血液検査で体の状態を確認し、 お子さんに合った適切な量に調整していくことが非常に重要です。
低リン血症性くる病の治療
このタイプは、遺伝子の変化が主な原因で少し複雑です。 腎臓から骨の材料である「リン」が尿へ過剰に漏れ出てしまいます。 さらに、ビタミンDを体で使える形(活性型)にする力も弱まっています。
そのため、食事で摂るような「天然型」のビタミンDでは良くなりません。 治療では、以下の二つのお薬を組み合わせて内服します。
- リン製剤 尿から失われるリンを直接補うためのお薬です。
- 活性型ビタミンD製剤 体の中ですぐに働くことができる特別なビタミンDです。
最近では、リンが漏れ出る原因物質の働きを抑える、 新しい注射薬(抗FGF23抗体)も治療の選択肢となっています。
適切な治療を行えば、血液検査の数値やレントゲン写真に見られる骨の変化は、 多くの場合、半年以内に改善に向かいます。 再発を防ぐためにも、治療後も食事や日光浴など、 生活習慣を見直していくことが大切です。 気になることがあれば、いつでもご相談ください。





