FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症
原因不明の骨の痛みや筋力低下、あるいは子どもの成長の遅れやO脚。「歳のせい」「個人差だろう」と見過ごしていませんか。その症状、もしかすると骨の重要な材料である「リン」が体内から失われていく、国の指定難病「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」のサインかもしれません。
この病気は、遺伝などを原因として約2万人に1人の割合で発症し、骨がもろくなる、変形するといった深刻な症状を引き起こします。しかし、近年では原因に直接アプローチする新しい治療法も登場しています。この記事では、くる病・骨軟化症の仕組みから原因、そして最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身やご家族に当てはまる点がないか、ぜひ読み進めてみてください。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の概要
この病気は、血液中の「リン」が不足することで、 骨が弱くなる国の指定難病の一つです。
私たちの体には、リンの量を調節するホルモンがあります。 それが「FGF23」です。 この病気では、FGF23が過剰に作られてしまいます。 その結果、腎臓から大切なリンが尿へ捨てられてしまいます。
リンは骨や歯を丈夫にする大切な材料です。 そのため不足すると、骨がもろくなってしまいます。 この病気の起こる仕組みは、一般的な骨の病気と異なります。 そのため、専門家による特別な注意を払った診断と治療が必要です。
この病気は、骨の成長が終わる前に発症するか、 終わった後に発症するかで、主に2つの状態に分けられます。
- くる病(主に子どもの場合) 成長期の骨が十分に硬くならない状態です。 O脚やX脚のように足の骨が曲がったり、 身長の伸びが遅れたりすることがあります。
- 骨軟化症(主に大人の場合) 骨の質が低下してもろくなる状態です。 ささいなことで骨折しやすくなったり、 骨の痛みや筋力の低下がみられたりします。
リンの量を調節するための研究は続けられています。 患者さんの状態や生活の質をより良くするための、 治療法の進歩が期待されています。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の種類
この病気の原因は一つではなく、いくつかの種類に分かれます。 原因が違えば、治療の方法も大きく変わってきます。 そのため、どの種類なのかを正確に見極めることが大切です。 一般的な骨の病気とは、体の仕組みの違う点が多々あります。 だからこそ、原因の特定が治療の第一歩になるのです。
主に、以下の3つのタイプがあります。
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種類の名前 |
主な原因 |
特徴 |
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遺伝によるもの |
生まれつきの体の設計図(遺伝子)の変化 |
・「X染色体連鎖性低リン血症(XLH)」が代表的です。<br>・約2万人に1人の割合で発症すると考えられています。<br>・親から子へ受け継がれることがあります。 |
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腫瘍によるもの |
FGF23を作り出す腫瘍ができること |
・「腫瘍性骨軟化症(TIO)」と呼ばれます。<br>・体のどこかにできた腫瘍が、FGF23を作りすぎます。<br>・腫瘍はとても小さいことが多く、見つけにくいです。 |
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薬剤によるもの |
特定の薬の副作用 |
・一部の注射で使う鉄のお薬などが、<br>原因となることがあります。<br>・原因の薬をやめると、症状が改善に向かいます。 |
このように、ひとくちにこの病気といっても原因は様々です。 近年、体の中の「リン」をうまく調節するための研究が進んでいます。 それぞれの種類に応じた治療によって、患者さんの生活の質を、 より良くすることが期待されています。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の原因
この病気は、血液中のリンを減らすホルモン、 「FGF23」が体内で増えすぎることが原因です。 では、なぜFGF23は増えすぎてしまうのでしょうか。 その根本的な原因は、主に3つ考えられます。
1. 遺伝子の変化によるもの
私たちの体の設計図である「遺伝子」に、 生まれつき変化があるタイプです。 FGF23の量を調節する遺伝子がうまく働かず、 ホルモンが過剰に作られてしまいます。
- X染色体連鎖性低リン血症(XLH)
- 性別を決めるX染色体にある遺伝子の変化が原因です。
- この病気の中で、最も代表的なものとされています。
- その他の遺伝子によるもの
- 性別に関係のない常染色体の遺伝子変化や、
- 線維性骨異形成といった他の病気が原因で、
- FGF23が増えることもあります。
2. 腫瘍や薬の影響によるもの
生まれた後に、何らかのきっかけで発症するタイプです。 体のどこかにできた腫瘍が、FGF23を過剰に作り出すことがあります。 これを「腫瘍性骨軟化症」と呼びます。
また、頻度はまれですが、注射で使う一部の鉄のお薬が、 原因となる場合もあります。
3. 細胞レベルでのエネルギー不足
最近の研究では、もっとミクロな視点での原因も注目されています。 私たちの細胞の中には「ミトコンドリア」という、 活動エネルギーを作る小さな器官があります。
ミトコンドリアは、骨を作る細胞が元気に働くためにも不可欠です。 このミトコンドリアの機能が低下すると、 骨の質が下がり、骨軟化症につながる可能性が指摘されています。 このように、原因を特定するために専門医による詳しい検査が重要です。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の症状
この病気の症状は、血液中の「リン」が不足することで起こります。 リンは骨を丈夫で硬く保つために、欠かせない大切な材料です。 この大切なリンが足りないと、骨が柔らかく、もろくなります。
症状の現れ方は、骨の成長が終わる前か後かで大きく異なります。 子どもの場合と大人の場合に分けて、具体的に見ていきましょう。
子どもの場合(くる病)
成長期の骨に影響が出ることが、子どもの場合の大きな特徴です。 骨が十分に硬くなれないため、様々なサインが現れます。
- 骨の変形
体重を支える足の骨が、重みに耐えきれずに曲がります。 その結果、O脚やX脚といった足の変形が見られます。 - 成長の遅れ
骨が健やかに伸びないため、身長の伸びが遅れがちになります。 同年代のお子さんと比べて、背が低いことが目立つ場合があります。 - 歩き方の異常
歩き始める時期が遅れたり、アヒルのように揺れながら歩いたりします。 これは骨の変形や、筋力の低下が影響しています。 - 歯の問題
歯も骨と同じく、リンを材料として作られています。 歯の表面を覆うエナメル質が弱くなり、虫歯になりやすいです。
大人の場合(骨軟化症)
大人の場合は、骨の質が低下し、痛みや骨折が主な症状です。 気づきにくい症状もあるため、注意深く観察することが大切です。
- 骨の痛みや筋力の低下
背中や腰、足の付け根などに、鈍い痛みが続くことがあります。 また、力が入りにくくなったり、疲れやすさを感じたりします。 - 骨折・偽骨折
骨がもろくなるため、軽い衝撃でも骨折しやすくなります。 特に、完全には折れていない「偽骨折」が起こりやすいです。 この偽骨折は、あばら骨や足の骨にできやすく、強い痛みを伴います。 - 関節の痛みと動きの制限
股関節や膝などの関節が固くなり、動きにくくなることがあります。 これにより、歩行や日常生活の動作に支障が出ることもあります。
このような症状の背景には、細胞レベルでの問題も隠れています。 私たちの細胞には「ミトコンドリア」という器官があります。 これは、細胞が活動するためのエネルギーを作る重要な働きをします。
骨を作る細胞も、このミトコンドリアが元気でなければ働けません。 近年の研究では、骨軟化症ではミトコンドリアの機能が低下し、 骨細胞のエネルギーが不足することが、症状の一因とされています。 エネルギー不足の細胞では、健康で丈夫な骨を維持できないのです。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の検査・診断
この病気を正しく見つけるためには、いくつかの検査が必要です。 症状や診察で病気の可能性が考えられた場合、 体の状態を詳しく調べて、診断を確定していきます。
診断の決め手となるのは、主に以下の3つのポイントです。
- 血液中のリンが少なくなっていないか
- 血液中のFGF23というホルモンが多くないか
- レントゲン写真で骨に特徴的な変化がないか
これらの手がかりを見つけるために、次のような検査を行います。
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検査の種類 |
この検査でわかること(一例) |
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血液検査 |
・骨の材料である「リン」や「カルシウム」の量<br>・原因となるホルモン「FGF23」の濃度<br>・骨の状態を示す酵素(アルカリホスファターゼ)の値 |
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尿検査 |
・腎臓から、おしっこへ捨てられているリンの量 |
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レントゲン検査 |
・O脚やX脚といった足の骨の変形<br>・骨の端が毛羽立ったように見えないか<br>・骨折や、ひびのような線(偽骨折)の有無 |
これらの基本的な検査に加えて、骨の健康状態をより詳しく、 数字で評価するために、骨密度を測定することもあります。
また、最も確実な診断方法として「骨生検」があります。 これは骨の一部を少しだけ採って、顕微鏡で直接観察する検査です。 骨の状態を非常に正確に評価できる、信頼性の高い方法とされます。
ただし、体への負担も考えて、必要な場合にのみ行われます。 海外の専門家たちは、この骨生検の結果の伝え方を統一し、 誰が見ても同じように判断できるよう、努力を続けています。
この病気は、体の仕組みが一般的な骨の病気とは異なります。 そのため、特別な注意を払った診断がとても大切になります。 これらの検査結果を専門医が総合的に判断し、診断を確定します。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療
この病気の治療目標は、骨を丈夫にすることです。 血液中のリンの量をちょうど良い状態に保ちます。 そして、骨の痛みや変形を防ぎ、毎日を元気に過ごせるようにします。
治療法は、病気の原因によって大きく変わります。 一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を選びます。
原因に合わせた治療
まずは、病気の根本的な原因に直接アプローチします。
- 腫瘍が原因の場合
体の中に、リンを減らすホルモンを作り出す腫瘍があれば、 手術でそれを取り除くことが、一番の治療になります。 - お薬が原因の場合
ある種の鉄のお薬などが原因であれば、そのお薬をやめます。 原因がなくなれば、骨の状態は少しずつ改善していきます。
お薬による治療
腫瘍が見つからない場合や、遺伝子が原因の場合は、 お薬を使って、体の中のリンの量を調節します。
- 足りないものを補う治療(従来の方法)
不足している「リン」そのものと、リンの吸収を助ける、 「活性型ビタミンD」というお薬を飲みます。 体に足りない材料を、外から補給してあげる方法です。 - 原因ホルモンの働きを抑える治療(新しい方法)
病気の原因である「FGF23」の働きを直接邪魔する、 「抗FGF23抗体医薬」という注射のお薬を使います。 リンが腎臓から捨てられてしまうのを防ぎ、効果が期待できます。
その他の治療と未来
骨の変形がひどく、歩くのが難しいこともあります。 その場合は、骨の形をまっすぐにする手術を行うこともあります。
近年、リンの量を調節するための研究は、世界中で進んでいます。 新しいお薬の開発も進んでおり、治療の選択肢は増えています。 こうした治療法の進歩は、患者さんの生活の質を、 より良くすることが期待されています。
どの治療法を選ぶかは、患者さんの状態をよく見て決めます。 定期的に検査をしながら、お薬の量を調整することが大切です。 特に、成長期のお子さんは、体の大きさに合わせて、 こまめにお薬の量を見直す必要があります。





