眼窩腫瘍
ものが二重に見える、まぶたの腫れが引かない、目が飛び出して見える。その気になる症状、ただの疲れやアレルギーだと思っていませんか?もしかしたら、それは目の奥の限られたスペースにできる「眼窩腫瘍」という病気のサインかもしれません。
眼窩腫瘍には、比較的おとなしい良性のものから、周囲を壊しながら広がる悪性のものまで様々な種類があり、放置すれば視力低下などを引き起こす可能性があります。しかし、不安に思う必要はありません。
近年では、体への負担が少なく、入院期間が平均3日未満というデータもある最新の内視鏡手術も登場しています。この記事では、眼窩腫瘍の原因や症状、そして最先端の治療法までを詳しく解説します。あなたの不安を、確かな知識に変えましょう。
眼窩腫瘍の概要
「眼窩(がんか)」とは、眼球がおさまっている頭の骨のくぼみのことです。 この限られたスペースには、眼球以外にもたくさんの大切な組織があります。
眼窩は、目を動かす筋肉や、ものを見るための視神経、涙を作る涙腺など、 さまざまな組織が複雑に集まって構成されています。 これらの組織のどれか一つに「できもの」ができた状態を眼窩腫瘍と呼びます。
ひとくちに眼窩腫瘍といっても、その性質はさまざまです。
-
良性腫瘍 ゆっくりと大きくなるタイプで、命にすぐ関わることは少ないです。
-
悪性腫瘍(がん) 周りの組織を壊しながら速く大きくなり、治療が必要です。
-
転移性腫瘍 体の他の場所にできたがんが、眼窩に移動してきたものです。
-
先天性の病変 生まれつき存在するもので、成長とともに大きくなることがあります。
治療は、腫瘍の種類や大きさなどに応じて、手術や薬物療法、放射線療法を組み合わせます。 近年では、内視鏡という小さなカメラを使った手術も行われるようになりました。
この方法は、患者さんの体への負担が少なく、傷あとが目立ちにくい利点があります。 ある研究では、入院期間が平均で3日未満と、回復が早いこともわかっています。 ただし、非常に高度な技術が求められるため、専門の施設で慎重に行われます。
眼窩腫瘍の種類
眼窩(がんか)にできる腫瘍には、実はたくさんの種類があります。 性質によって、大きく2つのグループに分けられます。
-
良性腫瘍(りょうせいしゅよう) ゆっくり大きくなる、比較的おとなしいタイプです。
-
悪性腫瘍(あくせいしゅよう) 周りを壊しながら速く大きくなる、いわゆる「がん」です。
また、お子さんと大人では、できやすい腫瘍の種類が違うのも特徴です。
|
お子さんに多い腫瘍 |
大人の方に多い腫瘍 |
|
|
良性腫瘍 |
・類皮腫(るいひしゅ)<br>・乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ) |
・髄膜腫(ずいまくしゅ)<br>・海綿状静脈奇形<br>(かいめんじょうじょうみゃくきけい) |
|
悪性腫瘍 |
・横紋筋肉腫<br>(おうもんきんにくしゅ) |
・リンパ腫<br>・扁平上皮がん<br>(へんぺいじょうひがん) |
良性腫瘍は、すぐに命に関わるものではありません。 しかし、大きくなるにつれて周りの神経や筋肉を圧迫します。 その結果、視力の低下や、ものが二重に見えるなどの問題を引きおこします。
特に大人の方では、脳を包む膜から発生する「髄膜腫」が代表的です。 ある研究では、手術を受けた眼窩腫瘍の患者さんのうち、 8割以上がこの髄膜腫だったという報告もあります。
一方、悪性腫瘍は周りの組織に広がったり(浸潤)、 体の他の部分に飛んだり(転移)する危険な性質を持ちます。 このため、できるだけ早く見つけて治療を始めることが重要です。
このように、眼窩腫瘍と診断されても、その種類はさまざまです。 どの種類の腫瘍なのかを正確に突きとめることが治療の第一歩となります。
眼窩腫瘍の原因
眼窩腫瘍がなぜできるのか、その原因はまだはっきりわかっていません。 しかし、腫瘍ができるきっかけは、いくつか考えられています。 大きく分けると、次の3つのパターンに分類できます。
-
眼窩の中から直接発生する 眼窩の中にある筋肉や神経、涙腺などの細胞が、 何らかのきっかけで異常に増えて、かたまり(腫瘍)になります。 特に大人で多い良性腫瘍が「髄膜腫(ずいまくしゅ)」です。 これは脳や視神経を包む膜から発生する腫瘍です。 ある研究では、手術で取り除かれた眼窩の腫瘍のうち、 約86%がこの髄膜腫だったという報告もあります。
-
眼窩のまわりから広がってくる 眼窩のとなりにある副鼻腔(鼻の奥の空洞)や、 鼻、まぶたの皮膚などにできた腫瘍が大きくなり、 壁を越えて眼窩の中にまで入り込んでくることがあります。
-
体の他の場所からやってくる(転移) 肺がんや乳がんなど、体の他の場所にできたがん細胞が、 血液の流れに乗って眼窩に運ばれてくるケースです。 そこで増殖することで、転移性眼窩腫瘍となります。
このように、眼窩腫瘍の原因はさまざまです。 どこから来た、どの種類の腫瘍なのかを正確に突きとめることが、 適切な治療を選ぶための大切な第一歩となります。
眼窩腫瘍の症状
眼窩腫瘍の症状は、腫瘍ができた場所や大きさでさまざまです。 目の奥の限られた空間にできものができることで、 眼球や周りの神経、筋肉などが圧迫されて症状が出ます。
症状は、大きく「見た目の変化」と「見え方の変化」に分けられます。 ご家族など、周りの人から指摘されて気づくことも少なくありません。
【見た目に現れる症状】
-
眼球突出(がんきゅうとっしゅつ) 腫瘍に眼球が裏から押し出されて、目が前に飛び出して見えます。
-
まぶたの腫れ 風邪やアレルギーとは違う、長引くまぶたの腫れが特徴です。
-
眼の位置のずれ 左右の黒目の位置がずれて、寄り目や斜視のように見えることがあります。
-
眼瞼下垂(がんけんかすい) まぶたを上げる筋肉や神経が圧迫され、まぶたが下がってきます。
【見え方に現れる症状】
-
複視(ふくし) ものが二重に見えます。目を動かす筋肉のバランスが崩れるためです。
-
視力低下 ものを見るための大切な視神経が圧迫されると、視力が落ちます。
-
視野異常 見える範囲の一部が欠けたり、狭くなったりします。
特に眼球突出や複視、視力低下は、代表的な症状です。 ある研究では、手術を受けた患者さんのうち、 複視は約77%、視力障害は約67%で改善したとの報告もあります。
これらの他に、目の奥の痛みや頭痛を感じることもあります。 治療が遅れると、視力が元に戻らない危険性もあるため、 少しでも気になる変化があれば、早めに眼科を受診しましょう。
眼窩腫瘍の検査・診断
眼窩腫瘍が疑われる場合、まず詳しい検査を行います。 腫瘍の場所や大きさ、性質などを正確に知ることが、 適切な治療法を選ぶための大切な第一歩になるからです。
1.問診と基本的な診察 はじめに、医師が症状について詳しくお話をうかがいます。 いつからどんな症状があるか、見え方の変化などを確認し、 視力や眼球の動きに異常がないかを丁寧に診察します。
2.画像検査 次に、体の内部を画像で見る検査で、腫瘍の姿を捉えます。 これらの検査で、腫瘍がどこにあり、どれくらいの大きさで、 周りの大切な組織を圧迫していないかなどを調べます。
-
CT検査 X線を使い、体の断面図を撮影する検査です。 特に骨の状態や、腫瘍の広がりを把握するのに役立ちます。
-
MRI検査 磁石の力で、体の内部をより詳しく見る検査です。 筋肉や神経といった、柔らかい組織の状態を鮮明に映し出せます。
3.病理検査(生検) 画像検査だけでは、腫瘍が良いものか悪いものかの判断は困難です。 そこで、最終的な診断のために「病理検査」を行います。 これは、腫瘍の組織をほんの少しだけ取ってきて、 顕微鏡で詳しく調べる、いわば「答え合わせ」の検査です。
最近では、まぶたの裏などから小さなカメラ(内視鏡)を使い、 組織を採る方法も行われるようになりました。 この方法は傷が小さく、体への負担が少ないのが特徴です。 ある研究では、入院期間が平均で3日未満と短いこともわかっています。 ただし、とても高い技術が必要なため、 専門の知識と設備がある施設で慎重に行われます。
これらの検査結果をすべて合わせて、一人ひとりの状態に合った、 最適な治療の方針を決めていきます。
眼窩腫瘍の治療
眼窩腫瘍の治療は、腫瘍の性質や大きさ、できた場所など、 いろいろなことを考えて、その人に一番良い方法を選びます。 治療の大きな目的は、目の働きや見た目をできるだけ守り、 腫瘍が原因で起こる症状を良くすることです。
主な治療法は、手術、薬物療法、放射線療法の3つです。 これらを一つだけ行うことも、組み合わせることもあります。
-
手術 腫瘍そのものを取り除くことを目指す治療法です。 最近では、内視鏡という小さなカメラを使う手術があります。 まぶたの裏など、目立たない所を少しだけ切って行います。 そのため、顔に傷が残りにくく、体への負担が少ないのが特徴です。
ある研究では、この手術後の入院は平均で約2.4日と短く、 回復が早いことがわかっています。 また、目が飛び出す「眼球突出」は、ほぼ全員で改善し、 ものが二重に見える症状も約77%で良くなったと報告されています。 ただし、とても高度な技術が必要なため、 専門の施設で慎重に行われる手術です。 -
薬物療法・放射線療法 お薬の力や放射線を使って腫瘍と戦う方法です。 腫瘍を小さくしたり、大きくなるのを防いだりします。 ものを見るための大切な神経などを傷つけないよう、 精密な計画を立てて、丁寧に進められます。













