鼻腔異物
お子さまがおもちゃや食べ物などを鼻に詰めてしまい、どう対処すべきか困っていませんか。特に2歳から3歳のお子さまに多くみられる鼻腔異物は、放置すると片方の鼻からだけ悪臭のする鼻水が出るなど、思わぬ症状を引き起こす可能性があります。
当記事では、鼻腔異物の種類ごとの危険性や、ご家庭で気をつけるべき症状について解説します。特にボタン電池は極めて危険で、海外では鼻に入れたお子さまの13%に重い合併症がみられたと報告されています。
この記事を読めば、ご家庭での危険な対処法を避け、速やかに医療機関を受診する目安がわかります。万が一のときにお子さまを危険から守るための、適切な初期対応につながるはずです。
鼻腔異物の概要
鼻腔異物とは、おもちゃの部品や食べ物などが鼻の穴(鼻腔)に入り、取れなくなった状態を指します。好奇心から鼻に物を詰めてしまう、5歳以下のお子さま、特に2歳から3歳でよくみられます。
放置すると、片方の鼻からだけ悪臭のする鼻水が出たり、鼻詰まりが起きたりします。
なかでも、ボタン電池や磁石は極めて危険です。これらは鼻の粘膜を短時間で傷つけ、鼻の左右を仕切る壁に穴が開く「鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)」などを引き起こすおそれがあります。実際に、鼻にボタン電池を入れたお子さまの13%に鼻中隔穿孔がみられたという海外の報告もあります※。
注意すべきは、異物を入れてもすぐには症状が出ないケースがあることです。ボタン電池が体内に入った事例の約6割は、当初は無症状であったと報告されています※。
ご家庭でピンセットなどを使って無理に取り出そうとすると、かえって異物を奥へ押し込んでしまうかもしれません。最悪の場合、異物がのどに落ちて気管に入り、窒息する危険も考えられます。
鼻の中に異物が入っていることに気づいた場合や、その疑いがある場合は、ご自身で対処しようとせず、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
鼻腔異物の種類
お子さまが鼻に入れてしまう異物は、おもちゃの部品から食品まで、実にさまざまです。好奇心旺盛なお子さまの周りにある、あらゆるものが異物になる可能性があります。
鼻の中に入りやすい異物の具体例は、下記のとおりです。
- おもちゃ類:ビーズ、BB弾、おもちゃの小さな部品
- 食品類:豆、ナッツ、ごはん粒、果物の種
- 日用品:ティッシュペーパー、紙、スポンジのかけら
- その他:小石、虫、パチンコ玉
これらの異物のなかで、とりわけ危険性が高いのが「ボタン電池」と「磁石」です。
ボタン電池
鼻の湿った粘膜に触れると、電池が放電を開始します。すると、化学反応によってアルカリ性の液体が生まれ、鼻の粘膜や軟骨を短時間で溶かしてしまうのです。
その結果、鼻の左右を仕切る壁に穴が開く「鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)」という重い合併症につながるおそれがあります。海外の報告では、鼻にボタン電池を入れたお子さまの13%に鼻中隔穿孔がみられたとされています※。
磁石
複数の磁石を片方ずつ、あるいは両方の鼻の穴に入れてしまうと、鼻中隔を挟んで磁石同士が強力にくっつくことがあります。挟まれた部分の血流が止まり、組織が死んでしまうことで、ボタン電池と同様に鼻中隔穿孔を起こす可能性があります。
また、異物に気づかないまま長期間放置されると、異物の周りに鼻水中のカルシウム成分などが付着し、石のように硬い「鼻石(びせき)」が形成されるケースも考えられます。
鼻腔異物の原因
鼻腔異物の原因は、そのほとんどがお子さまの純粋な好奇心から始まりますが、大人でも起こり得る身近なトラブルです。
特に2歳から3歳くらいのお子さまは、身の回りにある小さなものに強い興味を抱きます。それがどんなものか感触を確かめようと、鼻や耳の穴に入れてしまうのです。海外の研究では、ボタン電池などの異物が体内に入る事例は、男の子や低年齢のお子さまでより多くみられると報告されています。※
また、小さなお子さま以外にも、以下のような状況で鼻腔異物は起こり得ます。
- 小学生同士の悪ふざけ
- 認知症や特定の精神疾患をお持ちの方
- 鼻血を止めるために詰めたティッシュや綿の取り忘れ
このように、鼻腔異物は小さなお子さまだけの問題ではありません。ご本人に自覚がないケースも少なくないため、ご家族など周りの方が変化に気づいてあげることが大切です。
鼻腔異物の症状
鼻腔異物の症状は、異物の種類や鼻の中にとどまっている期間によって大きく異なり、「片方の鼻だけ」に症状が出ることが大きな特徴です。
お子さまが鼻に何かを入れたかもしれない、と感じたときは、次のようなサインがないか観察してください。
- 片方の鼻からだけ出る、嫌なにおいのする鼻水
- 膿(うみ)や血が混じった鼻水
- 鼻づまり
- 鼻の痛みや違和感を訴える
- 鼻血
異物によって鼻水の通り道が部分的に塞がれると、溜まった鼻水の中で細菌が繁殖し、膿のような鼻水や独特の嫌なにおいの原因になります。
特に危険性が高いボタン電池や磁石の場合、短時間で鼻の粘膜を傷つけ、より重い症状を引き起こすおそれがあります。実際に、鼻に入ったボタン電池による合併症として最も多いのは、鼻の左右を仕切る壁に穴が開く「鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)」であると報告されています。※
注意すべきは、お子さまが異物を鼻に入れても、すぐには症状が現れないケースも少なくない点です。ある海外の報告では、ボタン電池が体内に入ったお子さまの約6割は、当初は無症状であったとされています。※
症状がないからといって、決して安心はできません。異物が鼻の奥に移動して気管に落ちると、窒息につながる危険もあるため、疑わしい場合はすぐに医療機関を受診してください。
鼻腔異物の検査・診断
鼻腔異物の検査・診断では、まず問診で状況を詳しくお伺いし、鼻鏡(びきょう)という器具で鼻の中を直接観察します。特にお子さまの場合、ご本人やご家族から「何が」「いつ」「どのように」鼻に入ったのかをお聞きすることが、その後の検査や処置をスムーズに進めるための重要な第一歩です。
診察では、主に以下の流れで検査を進めていきます。
- 1. 視診(鼻鏡)
先端が丸くなった鼻鏡という器具で鼻の穴をそっと広げ、中を直接のぞき込みます。この視診で、異物の有無、種類、そしてどの位置にあるのかを大まかに把握します。 - 2. 内視鏡検査
鼻鏡で異物が見つからない場合や、もっと奥にあると疑われるときには、先端にカメラがついた細い内視鏡(ファイバースコープ)を使います。モニターに鼻の奥を映し出すことで、見えにくい場所も隅々まで詳しく観察できます。 - 3. 画像検査(レントゲン・CT)
内視鏡でも全体像がつかめないケースや、複数個の異物が疑われる場合は、レントゲンやCTなどの画像検査で、より正確な位置や数を特定します。
特に、木片のような有機物は注意が必要です。入ってすぐのCT検査では体液と同じように写ってしまい見つけにくいのですが、時間が経つにつれて周囲の組織とはっきり区別できるようになる、という特徴が報告されています※。そのため、状況に応じて検査のタイミングを判断することもあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、異物の種類や位置、患者さまの状態に合わせた最も適切な取り出し方を計画します。
鼻腔異物の治療
鼻腔異物の治療では、鼻の奥に入った異物を安全かつ確実に取り除くことを目指します。ご家庭でピンセットなどを使って無理に取り出そうとすると、かえって異物を奥へ押し込み、のどに落ちて窒息する危険がともないます。異物を見つけたり、疑ったりした際は、ご自身で対処せず、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
クリニックでは、異物の種類や位置、患者さまの状態に合わせて、主に次のような方法で異物を取り除きます。
- 器具による摘出
鼻鏡(びきょう)という器具で鼻の穴を広げて中をよく観察し、鉗子(かんし)や吸引管などを使って異物を慎重に取り出します。鼻の入り口近くにある、比較的つかみやすい異物に対して行われる基本的な方法です。 - 陽圧法(mother’s kiss法など)
異物が入っていない方の鼻の穴を指でふさぎ、口から「フッ」と強く息を吹き込んでもらうことで、その圧力で異物を外に押し出す方法です。小さなお子さまで、丸くて軽い異物の場合に試みられることがあります。 - 内視鏡を用いた摘出
異物が鼻の奥深くにある場合や、見えにくい場所にはまっているケースでは、先端にカメラが付いた細い内視鏡(ファイバースコープ)が力を発揮します。モニターで鼻の奥を直接見ながら処置できるため、周囲の粘膜を傷つけるリスクを抑えつつ、安全かつ効果的に異物を取り除けると考えられています※。
治療中にお子さまが怖がって動いてしまうと、鼻の中を傷つけてしまうおそれがあります。そのため、安全を最優先し、全身麻酔で眠っている間に処置を行うケースも少なくありません。
特に注意が必要なのが、ボタン電池と磁石です。これらは鼻の粘膜に触れると化学反応や圧迫によって組織を短時間で傷つけ、鼻の左右を仕切る壁に穴が開く「鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)」という重い合併症を引き起こす可能性があります。そのため、一刻も早い除去が求められます。













