鼻副鼻腔腫瘍

鼻の奥に「できもの」と聞くと、漠然とした不安を感じるかもしれません。鼻副鼻腔腫瘍は、鼻や顔の骨の中の空洞にできる「できもの」の総称で、良性と悪性(がん)の二種類があります。

初期症状は鼻づまり(鼻閉)が66.7%、鼻血(鼻出血)が47.1%に見られるなど、風邪やアレルギーと似ているため、「いつものこと」と見過ごされがちです。しかし、実はこれらの中に、世界でわずか87例しか報告されていない「血管平滑筋腫」のような珍しい良性腫瘍も隠れていることがあります。

長引く鼻の症状は、単なる風邪ではないかもしれません。本記事では、鼻副鼻腔腫瘍の概要から、見過ごされがちな症状、そして検査・治療法まで詳しく解説します。ご自身の気になる症状と照らし合わせながら、早期発見・早期治療の重要性について理解を深めていきましょう。

鼻副鼻腔腫瘍の概要

鼻副鼻腔腫瘍(びふくびくうしゅよう)は、鼻の奥にある副鼻腔という顔の骨の中の空洞や、鼻の通路にできる「できもの」の総称です。この「できもの」には、大きく分けて二つの種類があります。一つは「良性」と呼ばれ、体に悪い影響を与えにくいタイプです。もう一つは「悪性」と呼ばれ、いわゆる「がん」として注意が必要なタイプになります。鼻の奥にできる「できもの」と聞くと、とても不安に感じるかもしれません。多くの場合は良性ですが、中には悪性のものもありますので、専門の医療機関で詳しく調べることが非常に大切です。

特に「血管平滑筋腫(けっかんへいかつきんしゅ)」は、これまでに世界中で87例しか報告されていない、とても珍しい良性の病気です。この腫瘍は、頭頸部(とうけいぶ)にできる良性のできものの約0.2%を占めます。また、鼻や副鼻腔にできる腫瘍の中でも約2%という稀な割合で発生することがわかっています。平均すると55歳くらいの方に見つかることが多く、15歳から88歳までの幅広い年齢層で確認されています。

この血管平滑筋腫は、主に鼻の真ん中にある仕切り「鼻中隔(びちゅうかく)」に28.4%、または鼻の奥の下にある「下鼻甲介(かびこうかい)」に22.5%の割合でできやすい特徴があります。主な症状としては、鼻が詰まる「鼻閉(びへい)」が66.7%、鼻から血が出る「鼻出血(びしゅっけつ)」が47.1%の患者さんに見られます。風邪で鼻が詰まるのとは違い、長引く鼻の症状は注意が必要です。

治療は手術で腫瘍をきれいに取り除くことが一般的です。過去の報告では、病理学的な再発はわずか0.9%と極めて少なく、一度取り除けば再発することは非常に稀な良性の性質を持っています。2020年のWHO分類でも単一の疾患として認識されており、研究者たちはさらなるデータ収集と研究の必要性を提唱しています。鼻副鼻腔腫瘍は、種類によってその性質が大きく異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診して正確な診断を受けてください。

鼻副鼻腔腫瘍の種類

鼻や副鼻腔にできる「できもの」には、大きく分けて二つのタイプがあります。 一つは「良性(りょうせい)腫瘍」、もう一つは「悪性(あくせい)腫瘍」です。 これらは、性質が全く異なりますので、それぞれの特徴を知っておきましょう。

良性腫瘍

良性腫瘍は、周りの組織を壊しながら広がることはありません。 体に深刻な影響を与えることは、ほとんどありませんので安心してください。 治療を受けることで、症状が改善したり、きれいに治ったりすることが期待できます。 良性の腫瘍にも様々な種類があります。 例えば、一般的に「鼻ポリープ(はなポリープ)」と呼ばれる鼻茸(はなたけ)も良性のできものです。 その他にも、乳頭腫(にゅうとうしゅ)と呼ばれるものなどがあります。

中でも、「血管平滑筋腫(けっかんへいかつきんしゅ)」はとても珍しい良性の腫瘍です。 これまでに世界中で報告された例は、わずか87例しかありません。 これは、首から上の部分にできる良性の「できもの」全体のおよそ0.2%に当たります。 さらに、鼻や副鼻腔にできる「できもの」の中でも、約2%という稀な割合で発生します。 平均すると55歳くらいの方に見つかることが多いですが、15歳から88歳までの幅広い年齢層で確認されています。

血管平滑筋腫は、特定の場所にできやすい特徴があります。

  • 鼻中隔(びちゅうかく)
  • 鼻の真ん中にある仕切りです。約28.4%の割合で発生します。
  • 下鼻甲介(かびこうかい)
  • 鼻の奥の下の方にある部分です。約22.5%の割合で発生します。 主な症状は、鼻が詰まる「鼻閉(びへい)」が約66.7%、鼻から血が出る「鼻出血(びしゅっけつ)」が約47.1%の患者さんに見られます。 風邪ではないのに鼻の症状が長く続く場合は、専門医への相談が大切です。 治療は手術で腫瘍をきれいに取り除くことが一般的です。 一度手術で取り除けば、再発する確率はわずか0.9%と極めて低い良性の性質を持っています。 この珍しい血管平滑筋腫は、2020年のWHO(世界保健機関)分類でも一つの病気として認識されています。 しかし、まだデータが少ないため、研究者たちは今後のさらなる研究の必要性を提唱しています。

悪性腫瘍

一方、悪性の腫瘍は、いわゆる「がん」と呼ばれるものです。 良性腫瘍とは異なり、周りの組織を壊しながらどんどん増えていきます。 体の他の部分に転移(てんい)する可能性もあります。 そのため、悪性腫瘍は、早期に発見し、適切な治療をすぐに始めることがとても重要です。 鼻や副鼻腔にできる悪性腫瘍には、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんや腺がん(せんがん)など、いくつかの種類があります。 鼻の症状が長引いたり、いつもと違うと感じたりしたら、迷わず耳鼻咽喉科を受診し、詳しく調べてもらいましょう。

鼻副鼻腔腫瘍の原因

鼻や副鼻腔にできる「できもの」(腫瘍)は、なぜできてしまうのか、原因が全てはっきりわかっているわけではありません。患者さんは「どうして自分にできたのだろう」と不安に感じるかもしれません。しかし、現在も世界中の多くの医師や研究者が、そのメカニズムについて調べています。

私たちの体はたくさんの小さな細胞でできています。これらの細胞は、普段は決まったルールに従って増えたり減ったりしています。しかし、何らかの理由でそのルールが壊れてしまうことがあります。具体的には、細胞の中にある「設計図」のような遺伝子に変化が起こるのです。

この遺伝子の変化がきっかけで、細胞が異常に増えすぎてしまい、「できもの」、つまり腫瘍ができると考えられています。なぜ遺伝子に変化が起こるのかは、生まれつきの体質や、毎日の生活習慣、そして周りの環境など、さまざまな要素が関係していると言われています。

鼻副鼻腔腫瘍の中には、その原因がまだ詳しくわかっていないものも多くあります。例えば、「血管平滑筋腫」という珍しい良性の腫瘍があります。これはこれまでに世界中で87例しか報告されていません。平均すると55歳くらいの方に見つかることが多いですが、15歳から88歳まで幅広い年齢の方に発生する可能性があります。なぜ特定の場所にできるのかなど、詳しい原因については、さらなる研究が必要です。

また、別のがんの治療で放射線治療を受けた後に、鼻の周りの組織に影響が出ることがあると報告されています。例えば、涙の通り道が詰まる「涙道閉塞(るいどうへいそく)」という状態です。放射線治療後、平均で9.5ヶ月ほどで症状が出始めることがわかっています。しかし、この放射線治療が直接、鼻副鼻腔腫瘍を引き起こすかどうかは、さらに詳しい研究が進められている段階です。

このように、鼻副鼻腔腫瘍の原因にはまだ不明な点が多いのが現状です。大切なことは、体からの「いつもと違う」というサインに気づき、見過ごさないことです。気になる症状がある場合は、迷わず耳鼻咽喉科を受診し、専門の医師に相談してください。早期に診断を受け、適切な対応を始めることが、ご自身の安心と健康を守る第一歩となります。

鼻副鼻腔腫瘍の症状

鼻の奥にある「できもの」である鼻副鼻腔腫瘍は、小さいうちはなかなかご自身では気づきにくいものです。 しかし、腫瘍が少しずつ大きくなると、鼻や顔にさまざまな「困ったサイン」が現れ始めます。 「まさか、こんな症状が腫瘍のせいだとは…」と感じる方も少なくありません。

特に多くの患者さんに見られるのは、次の二つの症状です。

  • 鼻づまり(鼻閉)
  • 腫瘍が鼻の空気の通り道をふさいでしまうために起こります。
  • 風邪でもないのに、いつも鼻が詰まっていると感じることはありませんか。
  • 特に片方の鼻だけが詰まりやすい、という場合は注意が必要です。
  • 実は、非常に珍しい良性の鼻副鼻腔腫瘍「血管平滑筋腫」でも、約66.7%の患者さんに鼻づまりが見られます。
  • 鼻血(鼻出血)
  • 腫瘍の表面が弱くなっていたり、血管がたくさん集まっていたりするため、普段よりも鼻血が出やすくなります。
  • なかなか止まらない鼻血や、量が多い鼻血には気をつけましょう。
  • 血管平滑筋腫の場合、約47.1%の患者さんに鼻血の症状が見られると報告されています。

これらの症状は、風邪やアレルギー性鼻炎でも起こることがあります。 しかし、「いつもの風邪とは違う」「症状が長く続いている」と感じるときは、少し立ち止まって考えてみてください。 腫瘍が原因の場合、放置すると症状がどんどん悪くなることもあります。

また、腫瘍ができた場所によっては、鼻以外にも症状が出ることがあります。 鼻の奥、副鼻腔は、目や脳にとても近い場所です。 そのため、腫瘍が大きくなると、次のような影響が出ることがあります。

  • 顔の痛み
  • 鼻の周りや頬、おでこなどが痛むことがあります。
  • 目の周りの腫れ
  • 腫瘍が目の近くに広がると、まぶたが腫れたり、目つきが変わったりすることがあります。
  • 物が二重に見える(複視)
  • 目の動きを助ける神経や筋肉に影響が出ると、このような症状が起こることがあります。
  • 頭が重く感じる、頭痛
  • 鼻の奥の圧迫感が、頭全体のだるさや痛みに繋がることがあります。
  • においの感覚が鈍くなる(嗅覚障害)
  • 鼻の奥にあるにおいを感じる部分が腫瘍によって塞がれると、においが分かりにくくなります。

これらの症状は、ご自身の体からの大切な「メッセージ」です。 長く続く症状や、だんだんひどくなる症状は、見過ごさないでください。 「もしかしたら」と思ったら、迷わず耳鼻咽喉科を受診し、専門の先生に相談することが大切です。 早めに診てもらうことが、安心した生活を送るための第一歩になります。

鼻副鼻腔腫瘍の検査・診断

鼻の奥に「できもの」が疑われるとき、「一体どんな検査をするのだろう」「何がわかるのだろう」と、不安に感じるのは当然のことです。ここでは、先生がどのようにして「できもの」の正体を突き止めていくのか、段階を追ってわかりやすく説明します。

まず、先生はあなたのお話(問診)をじっくり聞きます。

  • どんな症状がありますか
  • いつからその症状が続いていますか
  • 痛い場所はどこですか

といった質問を通して、症状のヒントを探します。

次に、「鼻腔内視鏡(びくうないしきょう)検査」を行います。

  • 細いカメラを鼻の穴から入れて、鼻の奥や副鼻腔の入り口を直接観察します。
  • このカメラを使うと、腫瘍があるか、その形や大きさ、出血しているかどうかが、目の前で確認できます。

体の内側をさらに詳しく調べるために、「画像検査」も欠かせません。

  • CT検査(シーティー検査)
  • 骨の状態や石のように硬くなっている部分を見つけるのが得意です。
  • 腫瘍が周りの骨にどう影響しているかなどがわかります。
  • MRI検査(エムアールアイ検査)
  • 腫瘍の詳しい性質や、周りの柔らかい組織にどれくらい広がっているかを詳しく見ることができます。
  • これらの検査は、腫瘍が良性か悪性か、ある程度の予測を立てるのに役立ちます。

そして、腫瘍の種類を最終的にはっきりとさせるため、「病理検査(びょうりけんさ)」を行います。

  • これは「生検(せいけん)」とも呼ばれる検査です。
  • 内視鏡を使い、腫瘍のごく一部を小さく採取します。
  • 採取した組織を顕微鏡で詳しく調べます。
  • この検査で、「できもの」が良性なのか、それとも「がん」である悪性なのかを確定させます。
  • たとえば、これまでに世界中で87例しか報告されていない珍しい「血管平滑筋腫(けっかんへいかつきんしゅ)」のような良性の腫瘍も、この病理検査によってはじめて正確な診断ができます。

これらの検査の結果をすべて合わせて、先生があなたの「できもの」について最終的な診断を下します。不安な症状があるときは、ためらわずに専門のクリニックを受診してください。正確な診断が、適切な治療への第一歩となります。

鼻副鼻腔腫瘍の治療

鼻や副鼻腔にできた「できもの」の治療は、一人ひとりの状態によって最適な方法が異なります。 具体的には、腫瘍の種類が良性か悪性か、どれくらいの大きさか、そしてどのくらい広がっているかなどを詳しく調べ、治療法を決めていきます。 「どんな治療になるのだろう」と不安に感じるかもしれませんが、医師がしっかりと説明し、患者さんと一緒に最適な治療計画を立てていくので安心してください。

治療の中心となるのは、多くの場合「手術」で腫瘍を取り除くことです。 特に、良性の腫瘍の場合、手術でしっかりと病巣を取り除くことができれば、その病気が完全に治ることが期待できます。 例えば、「血管平滑筋腫」という珍しい良性腫瘍は、これまで世界で87例しか報告されていませんが、手術で切除した後の再発率はわずか0.9%と非常に低いことがわかっています。

悪性の腫瘍、つまり「がん」の場合には、手術に加えて「放射線治療」を行うこともあります。 放射線治療は、腫瘍に強い光のような放射線を当てることで、がん細胞を攻撃し、小さくしたりなくしたりする治療法です。 しかし、放射線治療には注意が必要な点もあります。

治療を受けた後、涙の通り道が塞がってしまう「涙道閉塞(るいどうへいそく)」という合併症が起こることがあります。 放射線治療を受けてから、平均で9.5ヶ月ほどで涙が止まらなくなるといった症状が出始めることが報告されています。 この涙道閉塞に対して、一般的なシリコンチューブを入れる治療法は、残念ながら効果が低いことが研究でわかっています。 改善が見られるのは、わずか10%程度です。

もし涙道閉塞が起きてしまった場合には、次のような専門的な治療が検討されます。

  • 結膜涙嚢鼻腔吻合術(C-DCR)とジョーンズチューブを用いた治療
  • この方法では、約67%の患者さんに症状の改善が見られています。
  • 涙嚢鼻腔吻合術(DCR)
  • 鼻の奥にある涙の通り道が詰まっている場合に有効な治療法です。

患者さん一人ひとりの病状や体の状態に合わせて、どのような治療が一番良いのかを医師が詳しく説明します。 「もしも」の時にも、様々な治療法がありますので、心配なことや疑問に思うことがあれば、いつでも担当の医師に相談してください。