髄膜腫
実は、日本で最も多く見つかる脳腫瘍が「髄膜腫(ずいまくしゅ)」であることをご存知でしたか?原発性脳腫瘍の約4つに1つを占め、特に40代以降の女性に多く見られます。「脳腫瘍」と聞くと不安に思われるかもしれませんが、その約9割はゆっくりと成長する良性のものです。
しかし「最近物忘れが増えた」「片方の耳が聞こえにくい」といった症状、もしかしたら年のせいではないかもしれません。良性とはいえ、腫瘍が大きくなることで、こうしたサインが現れることがあるのです。
この記事では、髄膜腫の正体から症状、最新の治療法までを詳しく解説します。ある治療法では95.6%という高い確率で腫瘍の成長をコントロールできたという心強い報告もあります。ご自身の状態を知る第一歩として、ぜひお役立てください。
髄膜腫の概要
髄膜腫(ずいまくしゅ)は、脳を優しく包んでいる「髄膜」という膜から発生する脳腫瘍です。脳そのものからできる腫瘍ではありませんが、脳のすぐ近くで大きくなるため脳腫瘍の一種として扱われます。
実は、日本で最も多く見つかる脳腫瘍がこの髄膜腫で、原発性脳腫瘍(脳やその周りの組織から発生する腫瘍)の約25%を占めると言われています。特に40代以降の中高年の方、そして男性よりも女性に多く見られる傾向があります。
髄膜腫には、次のような特徴があります。
- ほとんどが良性
- おとなしい性質の腫瘍で、とてもゆっくり大きくなるか、大きさが変わらないこともあります。
- 転移はまれ
- 基本的に、体の他の場所に広がっていく(転移する)ことはありません。
ただし、ほとんどが良性とはいえ、ごくまれに増殖スピードが速い「異型性髄膜腫(約4~7%)」や、悪性の性質を持つ「悪性髄膜腫(約1~3%)」も存在します。
治療法は手術や放射線治療など様々です。例えば、放射線治療の一つである「定位放射線手術」という治療法では、ある研究で95.6%という高い確率で腫瘍の成長をコントロールできたと報告されています。まずはご自身の状態を正確に知ることが治療への第一歩です。
髄膜腫の種類
髄膜腫は、その性質によっていくつかの種類に分けられます。 どの種類の髄膜腫かによって治療法が変わるため、とても重要です。
世界保健機関(WHO)は、腫瘍が大きくなる速さや再発のしやすさから、 悪性度を3つの「グレード」に分類しています。
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グレード |
名称 |
特徴 |
割合の目安 |
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グレードⅠ |
良性髄膜腫 |
最も多く、おとなしい性質です。ゆっくり大きくなるため、再発は比較的少ないです。 |
約90%以上 |
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グレードⅡ |
異型性髄膜腫 |
少し活発なタイプです。良性より大きくなる速さが速く、再発しやすい性質があります。 |
約4~7% |
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グレードⅢ |
悪性髄膜腫 |
最も活発で、脳に染み込むように広がることがあります。再発しやすい腫瘍です。 |
約1~3% |
また、髄膜腫はできた場所によっても区別されることがあります。 例えば、聴神経の近く「小脳橋角部(しょうのうちょうかくぶ)」にできた髄膜腫です。 この場所の髄膜腫には、定位放射線手術という治療法が有効です。
ある研究では、この治療法によって95.6%という高い確率で、 腫瘍の成長をコントロールできたと報告されています。 顔の麻痺や聴力低下といった合併症も少なく、安全性の高い治療選択肢の一つです。
どの種類の髄膜腫かを正確に知るためには、手術で取り出した組織を、 顕微鏡で詳しく調べる「病理検査」で最終的な診断を確定させます。
髄膜腫の原因
髄膜腫がなぜできてしまうのか、そのはっきりとした原因はまだわかっていません。 しかし、いくつかの要因が関係しているのではないかと考えられています。
現在、髄膜腫の発生に関わると考えられている主な要因は、以下の3つです。
- 遺伝子の変化 私たちの体の設計図である遺伝子に、何らかの変化が起こることが関係しています。
- ホルモンの影響 髄膜腫は男性よりも女性に多く見られることから、女性ホルモンの影響が指摘されています。
- 放射線 まれですが、過去に頭部へ放射線治療を受けた経験がリスクを高めることがわかっています。
このように放射線は原因の一つですが、治療にも応用されることがあります。 例えば「定位放射線手術」は、腫瘍にピンポイントで放射線を当てる治療法です。
ある研究では、この治療法によって95.6%という高い確率で、 腫瘍の成長をコントロールできたと報告されています。 原因となりうるものが、有効な治療の選択肢にもなっているのです。
とはいえ、ほとんどの髄膜腫はこれらの要因とは関係なく、偶然できると考えられています。 そのため、誰にでも起こりうる病気だと理解しておくことが大切です。
髄膜腫の症状
髄膜腫はゆっくりと大きくなるため、腫瘍が小さい間は症状が全くないことも珍しくありません。 しかし、腫瘍が大きくなるにつれて、その「大きさ」と「できた場所」に応じたサインが現れます。 症状は大きく分けて、頭全体の症状と、脳の特定の場所が圧迫される症状の2種類です。
1. 頭全体のSOSサイン(頭蓋内圧亢進症状) 腫瘍が大きくなることで、閉ざされた頭蓋骨の中の圧力が高まり、次のような症状が出ます。
- 朝方に強くなる頭痛
- 吐き気や嘔吐
- ものがかすんだり、ぼやけて見えたりする
2. 脳の場所ごとのSOSサイン(局所症状) 腫瘍が脳の特定の部分を圧迫することで、その部分が担う機能に障害が起こります。 どの場所にできたかによって、現れる症状は全く異なります。
【もしかして?場所でわかる症状チェックリスト】 □ 前頭部(おでこのあたり) 物忘れが増える、やる気が出ない、性格が変わったと言われる □ 頭頂部(頭のてっぺん) 手足がしびれる、動きにくくなる、けいれん発作が起こる □ 頭蓋底(脳の底のほう) 視力が落ちる、ものが二重に見える(複視)、匂いがわからない □ 小脳橋角部(耳の奥の、神経が集まる場所) 片方の耳が聞こえにくい、耳鳴りがする、顔がしびれる
特に、聴力や顔の感覚を司る神経が集まる「小脳橋角部」に腫瘍ができると注意が必要です。 ある研究では、この場所の腫瘍によって、顔の麻痺や感覚の異常(三叉神経感覚障害)、聴力損失、ものが二重に見えるといった症状が起こることが報告されています。 これらの症状はゆっくり進行するため「年のせいかな」と見過ごされがちです。 気になる症状があれば、放置せずに専門の医療機関へご相談ください。
髄膜腫の検査・診断
髄膜腫が疑われる場合、まずは頭の中を詳しく見るための画像検査を行います。 まるでカメラで頭の中をのぞくように、腫瘍があるか、どこにあるかを調べます。
主な検査方法は、CT検査とMRI検査の2つです。
- CT検査 X線を使って頭の断面を撮影します。特に、腫瘍の中にカルシウムが石のように固まった部分(石灰化)を見つけるのが得意です。多くの場合、「造影剤」というお薬を注射して、腫瘍の輪郭をはっきりさせてから撮影します。
- MRI検査 強力な磁石と電波を使って、さらに詳しく頭の中を調べます。腫瘍の形や大きさだけでなく、腫瘍のせいで周りの脳がむくんでいる状態(脳浮腫)までわかります。こちらも造影剤を使うことで、より鮮明な画像が得られます。
これらの検査で腫瘍の状態を正確に知ることが、治療法を決める上でとても大切です。 例えば、手術が難しい場所に腫瘍ができていても、「定位放射線手術」という選択肢があります。 ある研究では、この治療法で95.6%という高い確率で腫瘍の成長を抑えられたと報告されています。
他にも、必要に応じて以下のような検査を追加することがあります。
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検査の種類 |
目的(何がわかるの?) |
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脳血管撮影 |
腫瘍に栄養を送っている血管(栄養ルート)を調べ、手術の計画を立てます。 |
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トラクトグラフィー |
手足の動きに関わる大事な神経の通り道と、腫瘍との位置関係を地図のように映し出します。 |
ただし、これらの画像検査だけでは「髄膜腫の疑い」という段階です。 最終的な診断は、手術で取り出した腫瘍の一部を顕微鏡で詳しく調べる「病理検査」によって確定します。
髄膜腫の治療
髄膜腫の治療法は、腫瘍の大きさやできた場所、 症状の有無やあなたの健康状態から総合的に決めます。 主な選択肢は「経過観察」「手術」「放射線治療」です。
腫瘍が小さく症状がない場合は、定期的な検査で、 様子を見る「経過観察」を選ぶことがあります。 髄膜腫は成長がゆっくりなことが多いため、 体に負担をかけずに見守ることが可能です。
症状がある場合や、腫瘍が大きい場合の基本は手術です。 頭の骨を少し開け、顕微鏡で腫瘍を丁寧に取り除きます。 大事な血管や神経を傷つけそうなときは、 後遺症を防ぐため、あえて一部残すこともあります。
手術が難しい場所や、手術で取り切れなかった場合は、 放射線で腫瘍の成長を止める治療を検討します。 特に「定位放射線治療」は、腫瘍だけに狙いを定め、 多方向からビームを集中させて治療する方法です。 周りの正常な脳へのダメージを最小限にできます。
ある研究では、この治療法によって95.6%という、 非常に高い確率で腫瘍の成長を抑えられたと報告され、 顔の麻痺や聴力低下といった合併症も少ないです。
どの治療法が最適かは、一人ひとり異なります。 担当の医師とよく相談し、納得のいく治療方針を、 一緒に決めていくことが何よりも大切です。













