霰粒腫

まぶたにできた、痛くはないけれど気になるコロコロとしたしこり。「そのうち治るだろう」と放置したり、「ものもらい」だと思い込んでいませんか?そのしこり、実は原因が全く異なる「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」かもしれません。

霰粒腫は、涙の蒸発を防ぐ油を出す「マイボーム腺」が詰まることで生じる良性のできものです。しかし、まぶたのできものの約80%は良性である一方、残りの約20%には注意が必要な病気が隠れている可能性も。自己判断で放置すると、細菌が感染し、強い痛みや腫れを伴う「急性霰粒腫」に悪化することもあります。

この記事では、霰粒腫の本当の原因から、ものもらいとの決定的な違い、そしてご自身の状態に合った治療法までを詳しく解説します。気になるその症状の正体を突き止め、適切に対処するために、ぜひ最後までご覧ください。

霰粒腫の概要

まぶたにできる、コロコロとしたしこりのようなものです。 これは、まぶたにできる「良性のできもの」のなかで、よく見られるものの一つです。 良性とは、がんのように命に関わるものではないという意味で、基本的には心配いりません。

私たちのまぶたの縁には「マイボーム腺」という器官が並んでいます。 この器官は、涙がすぐに乾いてしまわないように、涙の表面を覆う油を出す大切な役割を担っています。 このマイボーム腺の出口が何らかの原因で詰まると、分泌物が外に出られなくなり、中で炎症が起きて組織の塊ができます。 この塊が、しこりとして感じられる霰粒腫の正体です。

まぶたにできる「できもの」は、実は非常に種類が多いです。 霰粒腫以外にも、見た目が似ていても異なる病気の可能性があります。 そのため、医師はできものの状態をよく観察することがとても大切になります。 いつから症状があるか、大きさは変わるかなどを詳しく確認し、正確に診断します。

詳しく調べる検査が必要になった場合でも、まぶたにできるできものの約80%以上は、霰粒腫のような良性のものであることがわかっています。 しかし、残りの約20%には注意が必要な病気が隠れている可能性も否定できません。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医師へ相談しましょう。

霰粒腫の種類

霰粒腫は、その状態によって大きく2つのタイプに分けられます。 一番の違いは「細菌による急な炎症があるかどうか」です。 この違いによって症状や治療法が変わるため、見分けることが大切です。

  • 霰粒腫(さんりゅうしゅ) 一般的に「霰粒腫」と言うと、こちらのタイプを指します。 炎症が少なく、痛みや赤みはほとんどありません。 涙の油分を出すマイボーム腺が詰まり、じわじわとできます。
  • 急性霰粒腫(きゅうせいさんりゅうしゅ) もともとあった霰粒腫に細菌が感染し、急に炎症を起こした状態です。 赤く大きく腫れあがり、ズキズキとした痛みを伴います。

霰粒腫と麦粒腫(ものもらい)の違い

急性霰粒腫は、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と見た目がそっくりです。 麦粒腫は、一般的に「ものもらい」と呼ばれているものです。 しかし、この2つは原因が根本的に違うため、正確な診断が重要です。

種類

主な原因

症状の現れ方

霰粒腫

マイボーム腺の詰まり

痛みや赤みは少なく、

慢性的にできる

麦粒腫

(ものもらい)

まつげの根元への

細菌感染

(黄色ブドウ球菌など)

赤み、腫れ、痛みが強く、

急にできる

麦粒腫は、私たちの身の回りにいる細菌による急な感染症です。 一方で霰粒腫は、感染ではなく、腺の詰まりが原因で起こります。 まぶたのできものは種類がとても多いため、自己判断はせずに、眼科を受診しましょう。

霰粒腫の原因

霰粒腫ができる一番の原因は、マイボーム腺の出口が詰まることです。 マイボーム腺は、涙が乾かないように油を出す大切な器官です。 この出口がふさがると、油が外に出られずに中で固まってしまいます。 そして、炎症が起きてしこりのような塊(肉芽腫)ができます。

では、なぜマイボーム腺は詰まってしまうのでしょうか。 原因は一つではなく、いくつかの要因が重なっていることが多いです。

  • 体質や生活習慣 ホルモンバランスが乱れたり、脂っこい食事を好んで食べたりすると、 マイボーム腺から出る油の質が変わり、詰まりやすくなります。 また、年齢を重ねることによる体質の変化も原因の一つです。
  • まぶたの衛生状態 汚れた手で目をこすると、マイボーム腺の出口が刺激されたり、 細菌がついたりして、詰まりやすくなることがあります。 また、アイメイクがきちんと落ちていないことも原因になります。
  • 他の病気の影響 ものもらい(麦粒腫)が治った後、しこりだけが残ることもあります。 ものもらいは、腺の詰まりに細菌感染が加わって起こる病気です。

もし霰粒腫を何度も繰り返す場合は、注意が必要かもしれません。 背景に「酒さ」という皮膚の病気や「糖尿病」などが隠れていることも。 このように、細菌が直接の原因ではありませんが、生活習慣が深く関わります。

霰粒腫の症状

霰粒腫の代表的な症状は、まぶたにできるしこりです。 指でそっと触ると、コロコロとした硬い塊があることに気づきます。 多くの場合、細菌の感染はないため、痛みやかゆみはほとんどありません。 ものもらい(麦粒腫)のように、急に赤く腫れることは少ないのが特徴です。

具体的には、以下のような症状が現れることがあります。

  • まぶたのしこり まぶたの内側に、米粒からあずきくらいの大きさの硬い塊ができます。 ゆっくりと時間をかけて大きくなることがあります。
  • まぶたの腫れ しこりができた影響で、まぶた全体が少し腫れぼったく見えます。
  • 目のごろごろ感 目に何かが入っているような、ごろごろとした違和感を覚えることがあります。
  • 視力への影響 しこりが大きくなると、黒目の部分を圧迫することがあります。 その結果、ものがゆがんで見える「乱視」が起こる場合があります。
  • まぶたが重く感じる しこりの重みでまぶたが下がってくる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」に似た状態になることも。

ただし、しこりに細菌が感染すると、急に症状が変わることがあります。 これは「急性霰粒腫」と呼ばれ、赤みや腫れ、ズキズキとした痛みが現れます。 ものもらい(麦粒腫)とよく似た、つらい症状が出るのが特徴です。

まれに、霰粒腫と似た症状が、別の病気のサインである可能性もあります。 例えば、神経線維腫という病気が、霰粒腫のようなしこりとして現れることも。 気になる症状があれば、自己判断せずに眼科を受診して、正確な診断を受けることが大切です。

霰粒腫の検査・診断

まぶたにしこりを見つけたら、まずは眼科を受診してください。 見た目が似ている他の病気の可能性もあるため、自己判断は禁物です。 医師が丁寧に診察し、しこりの正体を正確に突き止めます。

診察では、まず問診で患者さんから詳しいお話を聞きます。 しこりがいつからあるか、痛みはあるかなどを確認する大切な時間です。 次に視診や触診で、しこりの硬さや大きさ、色などを直接見ます。

より詳しく調べるために、特殊な顕微鏡を使う検査も行います。

  • 細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査 光を当てながらまぶたを拡大して観察する機械です。 肉眼では見えないマイボーム腺の詰まり具合などがわかります。

霰粒腫は、ものもらい(麦粒腫)と間違われやすい病気です。 また、ご高齢の方や症状が長引く場合は、まれな病気も考えます。 そのため、慎重に診断を進めることがとても重要になります。

最近は、かかりつけ医が眼科専門医へオンラインで相談する仕組みもあります。 ある研究では、この方法でも93%という高い精度で診断が一致しました。 専門医の判断を迅速に得られるため、より安心につながる方法です。 これらの検査結果を総合的にみて、最終的な診断を確定させます。

霰粒腫の治療

霰粒腫の治療は、しこりの大きさや炎症の有無で決まります。 大きく分けて「薬で様子を見る方法」と「手術でしこりを取る方法」があります。 一人ひとりの状態に合わせて、最適な治療法を選んでいきます。

薬で様子を見る方法(保存的治療)

しこりが小さい場合や、症状が軽い場合に選ばれることが多い治療法です。

  • まぶたを温める 清潔なタオルを温め、1回10分ほどまぶたの上に乗せます。 詰まった油を溶かし、外に出しやすくする効果が期待できます。
  • 点眼薬や軟膏 細菌が感染して赤みや痛みが出ている「急性霰粒腫」の場合に使います。 抗生物質やステロイドという薬で、つらい炎症を抑えます。

手術でしこりを取る方法(外科的治療)

薬で良くならない場合や、しこりが大きい場合に考える治療法です。

  • 切開・摘出術 まぶたの裏側などを少しだけ切り、原因の袋ごと中身を取り出す手術です。 手術時間は10分から15分ほどで終わることがほとんどです。 小さなお子さんの場合、安全のために全身麻酔で日帰り手術を行うことも。 ある研究では、全身麻酔での霰粒腫の日帰り手術は、合併症も少なく、 とても安全な方法だと報告されており、再発もまれです。
  • ステロイド注射 しこりの中に直接ステロイド薬を注射する方法です。 薬の力で炎症を抑え、しこりを小さくします。 手術に抵抗がある場合に選択肢となることがあります。

どの治療が最適かは、ご自身の症状によって異なります。 自己判断せずに、まずは眼科を受診して医師に相談しましょう。