閉塞隅角緑内障
目の見え方に違和感を覚え、それが病気のサインかもしれないと不安を感じていませんか?閉塞隅角緑内障は、目の排水口が狭まり眼圧が上昇することで視神経が傷つき、視野が欠けることがあります。世界中で不可逆的な失明の主な原因の一つであり、約125人に1人が罹患しているとされています。一度失われた視野は元に戻らないため、早期発見と適切なケアが不可欠です。
この記事では、閉塞隅角緑内障の概要から、症状、原因、具体的な検査・診断方法、そして多様な治療法までを詳しく解説します。
この情報を通じて、ご自身の目の状態を正しく理解し、大切な視力を守るための最適な行動を選択できるようになるでしょう。
閉塞隅角緑内障の概要
閉塞隅角緑内障は、目の奥にある「隅角(ぐうかく)」と呼ばれる水の排出口が狭まったり、完全に閉じたりすることで、目の中の圧力(眼圧)が異常に高くなる病気です。目の奥では「房水(ぼうすい)」という液体が常に作られていますが、この房水が流れ出る道が詰まることで眼圧が上昇し、視神経に大きな負担がかかってしまうと考えられています。
視神経は、目に入ってきた光の情報を脳へ送る大切な役割を担う神経です。高い眼圧が続くとこの視神経がじわじわと傷つき、視野の一部が欠けたり、やがては失明に至る可能性もあります。一度失われた視野は元に戻らないため、緑内障は世界中で不可逆的な失明の主な原因の一つとして警戒されているのです。
閉塞隅角緑内障は決して珍しい病気ではありません。例えば、中国本土では2020年時点で、原発閉塞隅角緑内障の有病率が約0.81%と推定されており、およそ125人に1人の割合で見られます※。この病気は年齢とともに増える傾向があり、特に女性に多く見られることも分かっています※。また、地域や省によって有病率に差があるため、ご自身のお住まいの地域での傾向を把握しておくことも重要です※。
閉塞隅角緑内障は、何も自覚症状がないまま進行することも少なくありませんが、時には急激な眼圧の上昇によって、まるで体調を崩したかのような症状が現れる急性発作を引き起こすこともあります。具体的には、激しい目の痛み、目の充血、かすみ目、吐き気や頭痛といった症状が突然現れ、急激な視力低下を伴うこともあります。このような症状が現れた場合は、緊急で眼科を受診する必要があります。
大切な視力を守るためには、普段から目の状態に意識を向けるとともに、定期的に眼科で検査を受けることが何よりも大切です。早期に発見し、適切な治療を始めることで、病気の進行を抑え、視野を守れる可能性が高まります。
閉塞隅角緑内障の種類
閉塞隅角緑内障は、その原因の違いから大きく分けて「原発性」と「続発性」の2つの種類に分類されます。ご自身の緑内障がどのタイプに当てはまるのかを正しく把握することは、適切な治療方針を決める上で非常に重要です。
それぞれの種類の閉塞隅角緑内内障について、以下に解説します。
1. 原発性閉塞隅角緑内障(PACG)
原発性閉塞隅角緑内障(PACG)は、眼の構造的な問題が原因で「隅角」と呼ばれる房水の排出口が狭くなり、眼圧が上昇するタイプです。このタイプは、白内障手術として広く知られる「水晶体超音波乳化吸引術」と、低侵襲緑内障手術(MIGS:Minimally Invasive Glaucoma Surgery)を組み合わせることで、眼圧を効果的に下げ、緑内障治療薬への依存度を軽減できる可能性が報告されています※。
MIGSには、房水の流れを改善するためのさまざまな手法があります。例えば、
・ゴニオトミー: 隅角の線維柱帯を切開し、房水の排出を促す手法
・iStent(アイステント): 隅角に非常に小さなインプラントを挿入し、房水の流出路を確保する手法
などが挙げられます。特にゴニオトミーは、眼圧を顕著に下げる効果が期待でき、iStentを用いる場合は、他の手法と比較して合併症のリスクが低い傾向にあると考えられています※。
2. 続発性閉塞隅角緑内障
続発性閉塞隅角緑内障は、他の目の病気や全身の病気、あるいは薬の影響によって隅角が閉塞し、眼圧が上昇するタイプです。例えば、糖尿病網膜症などによる新生血管緑内障や、ぶどう膜炎といった炎症性の病気、あるいは特定の薬剤の副作用などが原因となる場合があります。この場合、元となる病気の治療や原因となっている薬剤の見直しが、緑内障治療の鍵となります。
新たな治療の可能性:エンドセリン-1の関与
閉塞隅角緑内障の病態をさらに深く探る研究も進んでいます。最近の研究では、閉塞隅角緑内障の患者さんでは、健常な方と比べて血液中の「エンドセリン-1(ET-1)」という生理活性物質のレベルが有意に高いことが報告されています※。エンドセリン-1は血管の収縮などに関わる物質であり、その異常な上昇が緑内障の発症や進行にどのように関わっているのか、現在も研究が続けられています。
このエンドセリン-1が関わる経路を標的とした新しい治療法の開発が、将来的に閉塞隅角緑内障の治療選択肢を広げる可能性も考えられています。ただし、緑内障の種類によってエンドセリン-1が関わるメカニズムは異なるため、病気のタイプに応じた個別のアプローチが重要となるでしょう※。
いずれのタイプの閉塞隅角緑内障も、その特性を理解し、医師とよく相談しながらご自身に合った治療を進めていくことが大切です。
閉塞隅角緑内障の原因
閉塞隅角緑内障は、目の中を循環する「房水」という液体の排出口である「隅角」が狭くなり、その結果、目の圧力(眼圧)が高まることで発症します。この隅角は、例えるなら目の排水溝のような役割を担っており、ここが狭まると房水がうまく流れず、眼圧が上昇し、大切な視神経に負担がかかるのです。
なぜ隅角が狭くなるのでしょうか。主な原因は、目の構造的な特徴や加齢、特定の薬剤の影響など、いくつか考えられます。
隅角が狭まる主な要因
隅角が狭くなる具体的な要因は、以下のとおりです。
・目の構造的な特徴
生まれつき目の奥行きが短く、隅角が狭い構造をしている方がいます。特にアジア系の人種では、欧米人に比べて隅角が狭い傾向がわかっています。このような目の構造を持つ方は、閉塞隅角緑内障を発症するリスクが高まる傾向にあるため、注意が必要です。
・加齢による変化
年齢を重ねると、目のレンズの役割を果たす水晶体が厚く、大きくなるといわれています。水晶体が肥大すると、目の内部で隅角を前方に押し出すような形になり、房水の流れ道が物理的に狭くなることがあります。これが、房水の排出を妨げ、眼圧上昇につながる原因の一つです。
・特定の薬剤の影響
一部の薬には、瞳孔(黒目の部分)を広げる作用があります。例えば、風邪薬や胃腸薬、抗うつ剤などが挙げられます。瞳孔が広がると、目の構造上、虹彩(茶目)が隅角の方向へせり出し、隅角がさらに狭まります。これにより、房水の流れが急激にせき止められ、目の激しい痛みや頭痛、吐き気などを伴う「急性緑内障発作」を引き起こす可能性があります。服薬中の薬について不安がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
・他の目の病気や全身の病気
糖尿病網膜症による新生血管緑内障や、目の炎症を引き起こすぶどう膜炎など、他の目の病気が原因で隅角が狭まることもあります。また、全身の病気が間接的に影響することもあります。
エンドセリン-1(ET-1)の関与
近年、閉塞隅角緑内内障を含むさまざまなタイプの緑内障の発症や進行に、「エンドセリン-1(ET-1)」という生理活性物質が関わっている可能性が注目されています。
最新の研究では、緑内障患者さんは健常な方と比べて、血液中のET-1レベルが有意に高いことが報告されています※。特に、原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、そして閉塞隅角緑内障の患者さんで、血液中のET-1レベルの上昇が顕著に認められることが明らかになりました※。
ET-1は強力な血管収縮作用を持つ物質です。このET-1が異常に増えることで、目の内部の繊細な血管が収縮し、血液の流れが悪くなる可能性があります。また、房水の産生や排出に関わる組織にも影響を与え、房水の流れを阻害することで眼圧の上昇を招く可能性も指摘されています。
このように、ET-1の異常な増加が、目の内部の血流や房水の流れに影響し、閉塞隅角緑内障の病態に深く関わっていると考えられています。将来的に、ET-1が関わる経路を標的とした新たな治療法の開発につながることも期待されています。
閉塞隅角緑内障の症状
閉塞隅角緑内障がどのようなサインを見せるかは、その進行の速さによって大きく二通りに分けられます。突然激しい症状に見舞われる「急性発作」と、気づかないうちにゆっくり進行する「慢性型」です。ご自身の目の状態を正しく理解するために、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。
急性閉塞隅角緑内障の症状
急性型の閉塞隅角緑内障は、眼圧が突然かつ急激に上昇することで、まるで体調を崩したかのような、強い自覚症状が突発的に現れるのが特徴です。
具体的には、次のような症状に注意が必要です。
・激しい目の痛み: 目の奥をえぐられるような、耐え難いほどの激しい痛みに襲われることがあります。
・頭痛: 目の痛みと同じ側、特にこめかみや側頭部に、脈打つような強い頭痛を伴うことがあります。これは、急激な眼圧上昇が三叉神経という神経を刺激するために起こると考えられます。
・吐き気や嘔吐: あまりの目の痛みに、吐き気や嘔吐といった全身症状が出現することもあります。これは目の症状が脳に伝わり、自律神経に影響を及ぼすためです。
・視力低下・霧視(むし): 目の前が霧がかかったようにかすんだり、急激な視力低下を感じることがあります。眼圧が急上昇することで、角膜に一時的な浮腫(むくみ)が生じるためです。
・目の充血: 白目全体が真っ赤に充血し、血走った状態になることもあります。
・虹視症(こうししょう): 光を見たときに、その周りに虹のような光の輪が見える「虹視症」が現れることがあります。これも角膜の浮腫が原因で、光の屈折が変わるために生じる現象です。
これらの症状が一つでも現れた場合は、迷わずすぐに眼科を受診してください。なぜなら、急性発作は放置すると数時間から数日で失明に至る可能性もある、緊急性の高い状態だからです。一刻も早い治療が、大切な視力を守る鍵となります。
慢性閉塞隅角緑内障の症状
慢性型の閉塞隅角緑内障は、隅角がゆっくりと、しかし確実に狭まっていくため、眼圧の上昇も比較的緩やかに進みます。そのため、病気の初期にはほとんど自覚症状がないことが最大の特徴です。
症状は、進行度合いによって以下のように変化していきます。
・初期は無症状: 初期段階では、多くの患者さんが「目に異常がない」と感じています。これは、眼圧が少しずつ上昇するため、体が変化に順応してしまうこと、また、病気が片方の目から進行しても、健康なもう片方の目が無意識のうちに視野を補ってしまうためです。
・視野の欠け: 病気が進行し、視神経の障害が広がると、視野の一部が徐々に欠けていきます。しかし、この視野の欠けは、中心部ではなく周辺部から始まることが多く、さらに両眼で見ている間は、脳が情報をうまく統合してしまうため、自分ではなかなか気づきにくいものです。
・進行後の視力低下: 病気がかなり進行し、視神経の損傷が広範囲に及んで初めて、「見えにくい」「視力が落ちた」と自覚するケースが少なくありません。この段階では、すでに視野の大部分が失われている可能性もあります。
このように、慢性型の閉塞隅角緑内障は、自覚症状が出た時にはすでに病気が進行していることがほとんどです。一度失われた視野は元には戻らないため、症状がなくても定期的に眼科で検査を受け、早期に発見することが何よりも重要となります。
では、なぜこのような症状が起こるのでしょうか。最近の研究では、目の内部の繊細な血管や房水の流れに影響を与える可能性のある「エンドセリン-1(ET-1)」という生理活性物質が、閉塞隅角緑内障の病態に深く関わっている可能性が指摘されています。健常な方と比べて、閉塞隅角緑内障の患者さんでは血漿中のET-1レベルが有意に高いことが報告されており、このET-1が血管を収縮させ、房水の排出経路にも影響を与えることで、眼圧上昇や視神経への負担、ひいては視力低下や視野欠損といった症状の一因となっている可能性が考えられています※。
閉塞隅角緑内障の検査・診断
閉塞隅角緑内障で大切な視力を守るためには、早期に病気を見つけ、適切な診断を下すことが何よりも重要です。なぜなら、一度傷ついた視神経は元に戻らないからです。この病気の診断には、眼圧測定や眼底検査、隅角検査など、複数の専門的な検査を組み合わせ、多角的に目の状態を評価します。
主な検査方法は、次のとおりです。
・眼圧検査
眼圧検査は、眼球内部の圧力を測る検査です。目の硬さに相当し、閉塞隅角緑内障では眼圧が上昇する傾向が見られます。ただし、眼圧が正常範囲内でも緑内障が進行するケースもあるため、この検査だけで診断が確定するわけではありません。
・眼底検査
眼底検査では、瞳孔から光を当てて目の奥にある網膜や視神経の状態を詳細に観察します。特に、視神経が眼球から脳へとつながる出口にあたる「視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)」という部分に、緑内障に特徴的なへこみ(陥凹拡大)がないかを慎重に確認します。
・隅角検査
隅角検査は、この病気の診断において特に重要な検査です。「隅角」とは、角膜(黒目の部分)と虹彩(茶目の部分)の間にある、房水(ぼうすい)という液体が排出される目の排水口のような部分です。特殊なレンズを用いてこの隅角の構造を直接観察し、排水路が狭くなっている、あるいは閉じているといった閉塞隅角緑内障特有の状態がないかを詳細に確認します。この検査結果によって、閉塞隅角緑内障かどうかの正確な診断につながります。
・視野検査
視野検査では、視覚が及ぶ範囲、つまり「視野」に異常がないかを調べます。緑内障が進行すると、視野の一部が欠けたり、狭まったりする変化が現れます。自覚症状がない段階で視野の変化を見つけることができるため、病気の進行度合いを客観的に把握する上で不可欠な検査です。
・光干渉断層計(OCT: Optical Coherence Tomography)検査
光干渉断層計(OCT)検査は、眼底の網膜や視神経乳頭の断面を非常に高精細な画像で可視化する検査です。これにより、視神経を構成する線維の厚みをミクロン単位で測定できます。視神経のダメージの程度を客観的な数値で評価できるため、緑内障の超早期発見や、治療効果の判定、進行状況の正確な把握に大きく貢献します。
これらの検査で得られた情報を、医師が総合的に評価することで閉塞隅角緑内障の診断が確定します。
もし白内障を併発している場合は、治療法の選択肢がいくつか考えられます。特に、眼圧を下げることを目的とした外科的治療では、白内障手術である「ファコエマルシフィケーション」と、緑内障の濾過手術である「ファコトラベクレクトミー」という2つの術式が主に検討されます。
近年行われた複数の研究をまとめた報告によると、術後早期に眼圧をしっかりとコントロールし、使用する点眼薬の量を減らしたい場合には、ファコトラベクレクトミーが有利であるとされています※。一方で、術後の合併症のリスクをできるだけ抑えたいという観点からは、ファコエマルシフィケーションの方が安全性が高い傾向にあることが示されています※。ただし、長期的な視力や眼圧の安定性については、どちらの術式でも大きな差はないと考えられています※。
このように、診断が確定した後の治療選択は、患者さん一人ひとりの目の状態や全身の状態、ライフスタイルなどを考慮し、医師と十分な相談の上で決定することが大切です。定期的に眼科で検査を受け、病気の進行を早期に発見し、適切な治療へとつなげることが、かけがえのない視力を守る上で極めて重要であるといえます。
閉塞隅角緑内障の治療
閉塞隅角緑内障の治療目標は、何よりも眼圧を下げ、視神経の損傷を防ぎ、視野の悪化を食い止めることです。一度傷ついた視神経は元には戻らないため、病気の進行を少しでも遅らせ、残された視機能を守ることが治療の重要な目標となります。治療は、まず薬物療法から開始し、効果が不十分な場合や病状の進行が懸念される場合には、外科的治療が検討されます。
薬物療法では、眼圧を下げるための点眼薬が使用されます。これは、目の内部で常に作られている房水(ぼうすい)と呼ばれる液体が作られる量を減らしたり、房水の排出を促したりすることで、眼圧を調整する目的があります。しかし、点眼薬だけでは眼圧のコントロールが難しい場合や、緑内障の進行が止まらない場合には、外科的治療が選択肢に加わることになります。
外科的治療の種類
閉塞隅角緑内障の外科的治療には、患者さん一人ひとりの目の状態や病気の進行度合い、白内障の有無などに応じて、いくつかの方法があります。主な治療法は次のとおりです。
・レーザー治療(レーザー虹彩切開術など)
レーザー虹彩切開術は、レーザーを使って虹彩(茶目の部分)にごく小さな穴を開ける手術です。この穴を通じて房水の流れを改善し、房水の排出口である隅角(ぐうかく)が狭くなるのを防ぐことを目的とします。特に、急激な眼圧上昇を伴う「急性緑内障発作」を予防する効果が期待できます。
・白内障手術(ファコエマルシフィケーション)
白内障が進行して水晶体(目のレンズ)が厚く大きくなると、それが原因で隅角が狭まり、眼圧が上昇することがあります。このような場合、白内障手術によって濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入することで、隅角が広がり眼圧が安定するケースが少なくありません。
白内障手術単独で行うファコエマルシフィケーションは、術後早期の眼圧コントロールや緑内障治療薬の減量効果の点では、濾過手術(トラベクレクトミー)に比べて効果が限定的となる可能性が指摘されています※。しかし、術後の合併症のリスクは比較的低い傾向にあることが報告されており※、安全性の高い治療選択肢の一つと考えられます。長期的な眼圧や視力の安定性においては、トラベクレクトミーとの間に大きな差は認められないとされています※。
・低侵襲緑内障手術(MIGS:Minimally Invasive Glaucoma Surgery)
MIGSは、従来の緑内障手術に比べて体への負担が少ない手術の総称です。特に、白内障を併発している患者さんに対しては、白内障手術と同時にMIGSを行う「MIGS-phaco」が有効な選択肢として注目されています。MIGSは持続的に眼圧を下げ、使用する点眼薬の数を減らす効果が期待でき、良好な安全性も示されている治療法です※。
MIGS-phacoは、単独の白内障手術と比較して、緑内障治療薬の負担を軽減する点で優位性を示し、眼圧低下においても単独白内障手術より効果が高い可能性が示唆されています※。全体的な合併症発生率は、一過性で自然に治る前房出血(ぜんぼうしゅっけつ:目の前側に血液が溜まること)を除けば約16%と報告されており、良好な安全性プロファイルを持つといえます※。
MIGSには、房水の排出口である隅角の線維柱帯(せんいちゅうたい)やシュレム管(かん)に働きかけるいくつかの種類があります。
・ゴニオトミー: 隅角の線維柱帯を切開することで房水の排出を促します。原発性閉塞隅角緑内障(PACG)において、白内障手術と併用することで顕著な眼圧低下効果を示すことが報告されています※。
・iStent(アイステント): 隅角に非常に小さなステント(管状の医療機器)を挿入し、房水の流出路を確保します。ゴニオトミーと比較して、合併症発生率が低い傾向にあるとされています※。
・Ab Interno Trabeculotomy (AIT): 眼内から線維柱帯を切開する手術です。他のMIGSと比較して、眼圧低下と薬剤負担軽減の両方において優位性を示す場合があることが指摘されています※。
軽度から中等度の閉塞隅角緑内障で白内障を併発している患者さんには、MIGSはより侵襲的な外科的アプローチの前に十分に検討すべき治療選択肢といえるでしょう※。
・濾過手術(トラベクレクトミーなど)
濾過手術は、より進行した緑内障や、他の治療で十分な効果が得られない場合に検討される、より積極的な手術です。この手術では、白目の部分に新しい房水の排出口(濾過胞:ろかほうと呼ばれる房水の通り道)を作り、眼圧を効果的に下げます。
濾過手術であるトラベクレクトミーは、白内障手術と比較して、術後早期に眼圧をコントロールし、緑内障治療薬の使用量を減らす効果が高いとされています※。しかし、白内障手術単独の場合と比べると、術後の合併症のリスクはやや高くなる傾向があることも理解しておく必要があります※。
どの治療法を選ぶかは、患者さん一人ひとりの眼圧の高さ、隅角の状態、白内障の有無、病気の進行度、そして全身の状態やライフスタイルなどを総合的に考慮して決まります。医師と十分に話し合い、それぞれの治療法の効果や起こりうる合併症について理解し、納得した上で治療を進めることが、大切な視力を守るための第一歩です。













