鈍的眼外傷

目に「ドン!」と強い衝撃を受けたことはありませんか?その時、目の表面に傷がなくても、実は目の奥に深刻なダメージが及んでいるかもしれません。「鈍的眼外傷」は、野球やテニスなどのスポーツ中、あるいは工場や工事現場での作業中に多く発生し、特にスポーツによる目のケガでは半分以上のケースで目の奥にまでダメージが及ぶことが分かっています。

軽い打ち身程度で済むこともあれば、視力低下や最悪の場合、失明につながる可能性も。適切な保護眼鏡で防げるにもかかわらず、その重要性が見過ごされがちです。

この記事では、見過ごされがちな鈍的眼外傷の危険性と、いざという時に大切な視力を守るための情報を詳しくご紹介します。

鈍的眼外傷の概要

目に「ドン!」と強い衝撃が加わって起きるケガを「鈍的眼外傷(どんてきがんがいしょう)」と呼びます。例えば、ボールが目に当たったり、飛んできた物がぶつかったりすることで起こります。このケガは、目の表面に傷がなくても、目の奥に大きなダメージが起きていることがあるので注意が必要です。

このケガは、特に次のような場面で多く見られます。

  • スポーツ中
  • 野球、テニス、サッカーなどの球技中に、ボールが目に当たることがよくあります。
  • 若い男性に多いケガの一つです。
  • ボールの大きさや重さ、スピードによって目のケガの種類が変わることがわかっています。
  • ゴルフボールやペイントボールのように小さくて速いボールは、目に大きな傷をつけやすいです。
  • 大きなボールは、目を強く押しつぶしたり、形をゆがめたりして、目の奥にあるカメラのフィルムのような「網膜(もうまく)」や透明なゼリー状の「硝子体(しょうしたい)」といった大切な部分にダメージを与えることがあります。
  • 特定のスポーツで、目を守る「保護眼鏡(ほごめがね)」を義務付けたら、目のケガがとても減ったという研究結果もあります。
  • 仕事中
  • 工場や工事現場、農作業中に、物が飛んできたり機械がぶつかったりして、目に強い衝撃が加わることが少なくありません。
  • 労働環境における眼外傷は、今も公衆衛生上の大切な問題として考えられています。
  • 男性や、金属加工、建設、製造、化学物質の取り扱い、農業などの特定の仕事をしている人に起こりやすいことがわかっています。

鈍的眼外傷は、軽い目の打ち身で済むこともありますが、時には物を見る力である「視力」を大きく失ってしまう、または全く物が見えなくなる「失明」につながるような重いケガになることもあります。

多くの鈍的眼外傷は、適切な保護眼鏡を使うことで防ぐことができます。しかし、保護眼鏡が不快だったり、顔に合わなかったり、あるいは「自分には必要ない」と気づいていないために使われないこともあります。もし目に強い衝撃を受けたら、たとえ軽い症状に見えても、必ず眼科を受診して、専門のお医者さんに詳しく診てもらうことが大切です。

鈍的眼外傷の種類

目に「ドン!」と強い衝撃が加わることで起こる鈍的眼外傷は、目の表面だけでなく、奥の大切な部分まで傷つけてしまうことがあります。この目のケガは、どのように衝撃が加わったか、そして目のどの部分が傷ついたかによって、いくつかの種類に分けられます。特に多いのは、スポーツ中に起こるケガと、お仕事中に起こるケガです。

スポーツによる目のケガ

スポーツ中の目のケガは、特に若い男性に多く見られます。例えば、ボールが目に当たったり、ラケットやパドルが顔面にぶつかったりすることで起こります。この時、どのようなボールが当たったか、その速さや重さによって、目のケガの種類や重さが変わってくることがわかっています。

  • 小さい・速いボールの場合
  • ゴルフボールやペイントボールのように小さくてスピードのあるボールが目に当たると、その強い衝撃で目の壁が破れてしまうような、とても重いケガになることがあります。これは、目に急激な強い力が加わり、目の組織が直接損傷を受けるためです。
  • 大きいボールの場合
  • バスケットボールのように大きめのボールが当たると、目が強く押しつぶされて、その後に大きく形がゆがみます。この「圧縮(ぎゅっと押されること)」と「拡張(広がる動き)」が、目の奥にあるカメラのフィルムのような「網膜(もうまく)」や透明なゼリー状の「硝子体(しょうしたい)」を引っ張ったり、動かしたりして、傷つけてしまうことがあります。
  • この力で、網膜に裂け目ができたり(網膜弁裂や巨大網膜裂孔)、網膜が目から剥がれてしまう「網膜剥離(もうまくはくり)」が起こりやすくなることもあります。

最近人気が高まっているピクルボールでも、顔面にパドルが当たって目の周りの骨が折れる「眼窩骨折(がんかこっせつ)」という重いケガの報告があります。この場合、目の周りのアザ(眼瞼血腫)や、まぶたの傷(下眼瞼裂傷)、白目の充血(結膜下出血)、目の周りの腫れ(眼窩周囲浮腫)などが見られることがあります。スポーツを楽しむ際には、目を守るための保護メガネが非常に大切です。実際に、特定のスポーツで保護メガネの使用が義務付けられてから、目のケガが大きく減ったという研究結果も出ています。安全にスポーツを続けるためにも、ぜひ保護メガネの着用を検討してください。

お仕事中の目のケガ

お仕事中に目をケガすることも、社会全体で解決すべき大切な課題です。工場での作業、建設現場、農作業など、さまざまな職場で目のケガが起きています。これらのケガは、軽いまぶたの擦り傷から、目の奥がひどく傷ついたり、目が破裂してしまったりするような、とても重いものまであります。

特に、次のようなお仕事をしている方に目のケガが多いことがわかっています。

  • 金属加工、建設、製造
  • 高速で飛んでくる小さな破片や、重い物が目にぶつかる鈍的な衝撃でケガをしやすいです。
  • 農業
  • 目に異物が入ったり、土や有機物による感染症を起こしたりするリスクが高いです。
  • 化学物質を扱うお仕事
  • 化学物質が目に飛び散ると、両方の目に影響が出ることが多く、すぐに専門のお医者さんの手当てが必要になることがあります。

目のケガは、男性に多く、また教育水準や収入が低い方、一時的な働き方をしている方、移民労働者の方にもリスクが高いことが指摘されています。多くの場合は、適切な保護メガネを使うことで防げるケガです。しかし、「保護メガネが顔に合わない」「つけると不快に感じる」「必要性を知らない」といった理由で使われていないことも少なくありません。職場では、目の安全を守るための対策をしっかりと確認し、目を守る意識を持つことが重要です。

鈍的眼外傷の原因

目に「ドン!」と強い衝撃が加わると、目の奥にある大切な部分が傷つくことがあります。この鈍的眼外傷は、目の表面に傷がなくても、その衝撃が目の内部に大きなダメージを与えることが特徴です。私たちが日常生活や仕事で遭遇する、さまざまな場面で発生する可能性があります。

例えば、スポーツ中の事故は、鈍的眼外傷のとても一般的な原因です。特に若い男性に多く発生し、半数以上が目の奥にある神経の膜「網膜(もうまく)」や透明なゼリー状の「硝子体(しょうしたい)」といった大切な部分にダメージが及びます。ボールが目に当たった場合、そのボールの大きさや重さ、そして飛んでくる速さによって、目にかかる衝撃の強さが大きく変わります。この衝撃が、永続的な視力喪失や、日常生活に支障をきたすほどの深刻な影響を与えることがあります。

小さなボール、例えばゴルフボールやペイントボールのように速いボールは、目に当たったときに目の壁が破れてしまうような重いケガにつながりやすいです。一方、バスケットボールのような大きなボールが当たると、目はぎゅっと圧縮された後、横に大きく広がるような力が加わります。この「ギュッ」と押される力と「パッ」と広がる動きが、目の奥にある神経の膜「網膜」や、目の中を満たす透明なゼリー状の「硝子体」を引っ張ったり、ずらしたりして傷つける原因となるのです。網膜に裂け目ができたり、最悪の場合、網膜剥離という目の病気を引き起こすこともあります。

また、お仕事中の目のケガも、社会全体で解決すべき大切な問題です。工場での金属加工や建設現場、農業、化学物質を扱う仕事など、さまざまな職場で起こっています。作業中に飛んでくる小さな破片や工具が目にぶつかる事故は少なくありません。農業では、土や有機物による感染のリスクも高く、化学物質が目に飛び散る事故では、両方の目に影響が出て緊急の治療が必要になることもあります。

このようなお仕事中の目のケガは、男性の方に多く、特に教育水準が低い方や低収入の方、あるいは一時的な働き方をしている方、海外から来られた労働者の方にもリスクが高いことがわかっています。多くの目のケガは、適切な保護メガネを使うことで防げますが、「メガネが合わない」「つけると不快だ」「必要性を知らない」といった理由で使われていないことも少なくありません。目を守る意識と対策は、皆さんの大切な視力を守るために非常に重要です。

鈍的眼外傷の症状

目に強い衝撃が加わると、見た目にはわかりにくいですが、目の奥までダメージが及ぶことがあります。この鈍的眼外傷では、目の外側だけでなく、内側にもさまざまな症状が現れます。私たち眼科医が最も心配するのは、目の奥にある大切な部分が傷つくことです。

まず、目の外側では、次のような症状が見られることがあります。

  • まぶたや目の周りの変化
  • 「眼瞼血腫(がんけんけっしゅ)」といって、まぶたの周りに青あざができることがあります。
  • 目の周りが腫れる「眼窩周囲浮腫(がんかしゅういふしゅ)」もよく見られます。
  • 白目の部分が赤くなる「結膜下出血(けつまくかしゅっけつ)」は、まるで血走ったように見えます。
  • 場合によっては、まぶた自体が切れてしまう「下眼瞼裂傷(かがんけんれっしょう)」が起きることもあります。
  • 目の周りの骨の折れ(眼窩骨折)
  • ピクルボールなどのスポーツ中に、顔面にパドルが当たったことで、目の周りの骨が折れる「眼窩骨折(がんかこっせつ)」が起こることが報告されています。
  • この骨折では、物が二重に見える「複視(ふくし)」という症状が出ることがあります。ある報告では、54歳の男性がパドルで顔面を打撲し、まぶたの青あざや白目の出血、目の周りの腫れが見られ、目の周りの骨がわずかに折れていたとされています。

次に、目の内側に起こる症状についてお話しします。

  • 目の痛みや見えにくさ
  • 目に強い痛みを感じたり、視界がぼやけて物が見えにくくなる「視力低下」が主な症状です。
  • 職場での事故で釘が目に当たった場合など、強い衝撃で茶色い部分「虹彩(こうさい)」の一部が切れる「虹彩裂傷(こうさいれっしょう)」が見られることがあります。
  • これによって、瞳孔(ひとみ)の形が、通常はきれいな丸なのに、丸ではないいびつな形(不正円形瞳孔)になってしまうこともあります。
  • 目の奥の大切な部分の損傷
  • スポーツボールなどによる強い衝撃が目の奥、つまり「後部セグメント」と呼ばれる部分にまで達することがあります。
  • 私たちの目の中でカメラのフィルムのような役割をする「網膜(もうまく)」にダメージが及ぶと、視力に重大な影響が出ることがあります。
  • 網膜が目から剥がれてしまう「網膜剥離(もうまくはくり)」や、網膜に大きな裂け目ができる「網膜弁裂(もうまくべんれつ)」や「巨大網膜裂孔(きょだいもうまくれっこう)」が起こる危険性があります。
  • これらの硝子体や網膜の損傷は、永続的な視力低下、ひいては失明につながる可能性もあります。
  • また、物を見る中心部分である「黄斑(おうはん)」に穴が開く「外傷性黄斑円孔(がいしょうせいおうはんえんこう)」ということもありますが、これは自然に治ることが多いとも言われています。

これらの症状は、軽い打ち身のように見えても、目の奥では深刻なダメージが進行している可能性があります。目に衝撃を受けたら、すぐに眼科を受診し、専門家であるお医者さんに詳しく診てもらうことが、大切な視力を守るために非常に重要です。

鈍的眼外傷の検査・診断

目に強い衝撃を受けた後、「なんだか目が変だな」と感じたら、すぐに眼科を受診することが大切です。見た目には変化が少なくても、目の奥には大切な部分が傷ついている可能性があります。私たちお医者さんは、患者さんの目の状態を正確に把握するために、いくつかの大切な検査を行います。

まず、目の見え方を示す「視力」や、目の中の圧力である「眼圧(がんあつ)」を測る基本的な検査を行います。次に、「細隙灯(さいげきとう)顕微鏡」という特別な機械を使って、目の表面から奥の方まで、小さな傷や異常がないか詳しく観察します。特に、野球やテニスなど球技中にボールが目に当たった場合、目の奥にある「網膜(もうまく)」や透明なゼリー状の「硝子体(しょうしたい)」といった、物を見るためにとても重要な部分が傷ついていないかを専門の医師が丁寧に調べます。

スポーツで目に強い衝撃を受けた場合、私たちの目の奥、特に視力にとって大切な「網膜」や「硝子体」と呼ばれる部分が傷つくことがよくあります。実際に、スポーツによる目のケガでは、半分以上のケースで目の奥にまでダメージが及んでいることが分かっています。このような目の奥の損傷は、残念ながら、見え方に永続的な影響を与えたり、場合によっては失明につながるような深刻な状態になることもあります。

そのため、網膜が目から剥がれてしまう「網膜剥離(もうまくはくり)」などが起こっていないかを、時間をかけて詳しく診る必要があるのです。

また、ボールが顔面に強く当たった場合は、目の周りの骨、これを「眼窩骨(がんかこつ)」と呼びますが、この骨にひびが入ったり、折れていないかを確認することも非常に重要です。最近人気のピクルボールでも、パドルが顔に当たって目の周りの骨が折れたケースが報告されています。50代の男性が、チームメイトのパドルで顔を打撲し、目の周りの骨が折れていた例も実際にありました。

目の周りの骨の骨折が疑われるときは、「CT検査」という画像診断を行って、目の周りの骨の状態を詳しく調べます。これらの検査を通じて、目のケガの種類や重さを正しく判断し、その後の治療方針を決めるための大切な情報が集められます。早期に適切な検査を受け、正確な診断をすることが、皆さんの大切な視力を守るために非常に重要です。

鈍的眼外傷の治療

目に強い衝撃が加わったとき、治療はケガの場所や重さによって大きく変わります。皆さんの大切な視力を守るため、どんな治療が一番良いかを慎重に考えます。

軽いケガであれば、炎症を抑える目薬や飲み薬を使います。目を安静に保つことで、多くの場合、自然に良くなるでしょう。しかし、目の奥に深刻なダメージがある場合は、手術が必要です。

目の奥のケガを治す手術

特にスポーツ中にボールが目に当たった場合など、目の奥の大切な部分が傷つくことがあります。放っておくと、一生ものの大切な視力を失うことにもつながりかねません。実際に、スポーツによる目のケガでは、半分以上のケースで目の奥までダメージが及んでいます。

もし、目の奥の「網膜(もうまく)」が剥がれる「網膜剥離(もうまくはくり)」が起きたら、手術で網膜を元の位置に戻す必要があります。この目の奥の手術では、「トリアムシノロンアセトニド」という、炎症を抑える強いお薬を使うことがあります。

このお薬は、手術中に目の奥の細かい部分をはっきりと見やすくします。これにより、より正確な手術が行えます。また、手術後に目がむくんだり、目の奥に別の悪いものができるのを防ぐ働きも期待できます。

ただし、このお薬を使うと、一時的に目の圧力が上がったり、目が濁る「白内障(はくないしょう)」になることがまれにあります。そのため、お医者さんが患者さんの状態をよく見て、慎重に治療を進めていきます。

白内障や瞳孔の形の変化を治す手術

目に強い衝撃を受けたことで、目のレンズが濁る白内障になったり、茶色い部分の「虹彩(こうさい)」が破れて、瞳孔(ひとみ)の形が丸くなくなる「虹彩裂傷(こうさいれっしょう)」になることがあります。

このような場合、濁ったレンズを取り除き、新しいレンズ(眼内レンズ)を入れる手術を行います。最近では、遠くも近くも見える特別な眼内レンズも選べるようになりました。

ある報告では、釘による目のケガで虹彩が破れた患者さんに、この特別なレンズを入れました。破れた虹彩を元に戻す手術も行ったところ、視力だけでなく、見た目も改善し、患者さんはとても満足されたそうです。

手術後に一時的に目の圧力が上がったり、白内障ができてしまったりすることもあります。しかし、これらは適切な治療で対応できますので、ご安心ください。

治療後の大切なこと

目のケガの治療は、手術が終わって終わりではありません。大切な視力を守り、安心して生活していただくため、治療後も定期的に目の状態をチェックすることが重要だと考えています。

目に強い衝撃を受けたら、たとえ軽い症状に見えても、必ず眼科を受診してください。専門のお医者さんに詳しく診てもらうことが、皆さんの視力を守るための第一歩です。