近視
小学生の3人に1人以上、高校生では約7割が裸眼視力1.0未満――。これは、文部科学省の調査で示された衝撃的な事実です。「うちの子も目が悪いな」と、お子さんの視力低下を心配されている方も多いのではないでしょうか。
「たかが近視」と軽く考えてはいませんか?実は、単に遠くが見えにくいだけでなく、近視が強く進むと、将来、緑内障や網膜剥離といった失明にもつながる深刻な目の病気になるリスクが高まることがわかっています。
しかし、近年では近視の進行を抑えるための新しい治療法の研究が進み、選択肢も増えています。この記事では、近視の種類や原因、そして未来の目を守るための最新治療について詳しく解説します。ご自身やご家族のために、まずは近視の正しい知識を身につけましょう。
近視の概要
「近視」とは、近くのものははっきり見えるのに、 遠くのものがぼやけて見えにくくなる状態です。 私たちの目は、カメラと似た仕組みで物を見ています。 レンズの役割をする「水晶体」で光を曲げて、 奥にあるスクリーン役の「網膜」にピントを合わせます。
近視の多くは、眼球が前後に少し伸びてしまう 「軸性近視(じくせいきんし)」が原因です。 眼球が伸びることで、ピントが網膜より手前で 合ってしまい、遠くのものがぼやけて見えます。
近年、お子さんの近視は非常に増えています。 文部科学省の調査では、裸眼視力1.0未満の割合は 年々増加傾向にあることがわかっています。
- 小学生
3人に1人以上 - 中学生
約6割 - 高校生
約7割
単に視力が悪いだけの問題とは限りません。 近視がとても強く進んだ「強度近視」になると、 将来、緑内障や網膜剥離といった、 視力を大きく損なう病気になる可能性が高まります。
そのため、早い段階から近視の進行を抑えることが とても大切になります。 最近では、近視の進行をゆるやかにするための 新しい治療法の研究が進んでいます。
例えば、複数の研究結果を分析した報告によると、 レンズの周辺部のピントを調整する特殊な ソフトコンタクトレンズが有効とされています。 このレンズは、従来のコンタクトレンズよりも 近視の進行を抑える効果が期待できます。
その効果は、夜間に装用する特殊なレンズ (オルソケラトロジー)と同じくらいであることも 示唆されており、治療の選択肢が広がっています。
近視の種類
ひとくちに「近視」といっても、原因によっていくつかの種類に分けられます。 ご自身の近視がどのタイプなのかを知ることが、適切な対応への第一歩です。
近視は、主に以下の5つのタイプに分類されます。
- 軸性近視(じくせいきんし)
眼球が前後に伸びてしまうことが原因です。 ピントが網膜より手前で合うため、遠くがぼやけます。 近視の人の多くがこのタイプにあたります。 - 屈折性近視(くっせつせいきんし)
眼球の長さは正常ですが、光を曲げる力が強すぎます。 角膜や水晶体といった、目の中のレンズの力が原因です。 - 仮性近視(かせいきんし)
「偽物の近視」とも呼ばれる一時的な状態です。 近くを長く見続けると、目の筋肉が緊張し、 一時的に遠くが見えにくくなります。 - 病的近視(びょうてききんし)
ただの近視ではなく、注意が必要な病気の状態です。 眼球が極端に伸びてしまい、網膜などに異常が起こります。 将来、他の目の病気を引き起こす可能性があります。 - 先天近視(せんてんきんし)
生まれつき、または幼い頃から見られる強い近視です。 遺伝的な要因が関わることがあります。
特に、生まれつきの強い近視には遺伝が関係することがあります。 近年の研究では、近視に関連する遺伝子が特定されつつあります。
例えば、生まれつき網膜の働きに問題がある病気 (遺伝性網膜疾患)を持つ人を対象にした研究があります。 その結果、「NYX」や「IMPG2」といった遺伝子が、 近視と関連することが示唆されました。
こうした研究から、特定の遺伝子が目のつくりに影響を与え、 近視につながる場合があることがわかってきています。
近視の原因
近視がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 生まれ持った「遺伝的な要因」と、生活習慣などの 「環境的な要因」が複雑に関係していると考えられています。
1. 遺伝的な要因
ご両親が近視の場合、お子さんも近視になりやすいです。 これは、目の形や性質が遺伝的に似るためと考えられます。
近年の研究では、特定の病気と近視の遺伝的な関連も 少しずつ明らかになってきました。
- 遺伝性網膜疾患との関連
生まれつき網膜の働きが弱い病気を持つ方を対象とした 研究があります。その結果、「NYX」や「IMPG2」といった 特定の遺伝子が、強い近視と関連することが示されました。 - 体のつくりとの関連
頭の骨の形に生まれつき特徴がある病気のお子さんを 調べた研究も報告されています。 その研究では、対象者の約2割に近視などの 屈折異常が見つかりました。
このように、体のつくりに関わる遺伝的な情報が、 目の成長に影響を与え、近視の原因となる場合があります。
2. 環境的な要因
日々の生活習慣も、近視の進行に大きく影響します。 特に以下の2点が重要です。
- 近くを長時間見つづけること(近業)
本やスマートフォンなどを近い距離で長く見ると、 目のピントを合わせる筋肉が常に緊張します。 この状態が続くと、眼球が伸びやすくなり、 近視が進むと考えられています。 - 屋外で過ごす時間の不足
外で過ごす時間が少ないことも、近視の要因です。 太陽の光を浴びると、目の中で近視の進行を抑える 働きのある物質が出ることがわかっています。 1日2時間程度、外で過ごすことが推奨されています。
遺伝的に近視になりやすい素質を持つお子さんが、 近視になりやすい環境で生活することで、 近視が発症・進行すると考えられています。
近視の症状
近視の最も代表的な症状は、遠くのものがぼやけることです。 ピントを合わせる機能にズレが生じている状態といえます。 日常生活では、以下のようなサインとして現れることが多いです。
【お子さんの近視チェックリスト】
- 黒板の文字が見えにくい 黒板の文字を読むために、席を前に移動したがります。
- 遠くの景色や人がぼんやりする 遠くにいる友達の顔がわからず、あいさつできないことがあります。
- 目を細めてものを見る 無意識に目を細めることで、ピントを合わせようとします。
- テレビに近づいてしまう 気づくとテレビ画面のすぐ近くで見ています。
ピントを合わせようと目が無理をすると、目の疲れも感じます。 その結果、頭痛や肩こりにつながることも少なくありません。
また、単なる近視ではない可能性も考える必要があります。 まれに、他の病気が原因で近視の症状が出ることがあるからです。
実際に、頭の骨の形に特徴があるお子さんを調べた研究があります。 その報告では、対象者の約2割に近視などの屈折異常が見られました。
特に、お子さんの「見えにくい」という訴えは重要です。 放置すると、視力の発達が妨げられてしまう「弱視」という状態に つながる危険性があります。
弱視になると、将来メガネをかけても視力が十分に出ません。 気になるサインがあれば、自己判断せずに眼科へご相談ください。
近視の検査・診断
「遠くの黒板が見えにくい」と感じたら、眼科で検査を受けましょう。 それが本当の近視なのか、一時的な目の疲れなのかを調べることが大切です。
眼科では、主に次のような検査で近視の状態を正確に診断します。
- 視力検査
「C」のマークがどの向きを向いているか答える、おなじみの検査です。 どれくらいはっきりと物が見えているか、基本的な状態を確認します。 - 屈折検査
気球の絵などを見ている間に、機械が自動で目のピントのズレを測ります。 この検査で、近視や乱視の度数を客観的な数値で知ることができます。 - 調節麻痺薬(ちょうせつまひやく)を使った検査
お子さんの場合、目の筋肉が緊張して一時的に近視に見えることがあります。 この「仮性近視」の可能性を調べるため、筋肉の緊張をほぐす目薬をします。 目薬の後に改めて屈折検査をすることで、本当の近視の度数がわかります。
また、大人になってから視力矯正手術を考える際には、さらに詳しい検査をします。 例えば、目の表面にある角膜(かくまく)の形や厚みを精密に測定します。
ある研究では、手術前の検査の数値だけでは、手術後の見え方を 完全に予測することは難しい、という結果も報告されています。 だからこそ、自己判断せず、眼科で正確な診断を受けることが大切です。
近視の治療
近視の治療は、目的によって大きく2つに分けられます。 一つは「見え方を良くする治療(視力矯正)」です。 もう一つは「近視の進行を抑える治療」です。
特に、成長期のお子さんの場合は、後者が非常に重要です。 将来、目の病気になるリスクを減らすことにつながります。
見え方を良くする治療(視力矯正)
低下した視力を補い、快適な生活を送るための方法です。
- 眼鏡 最も安全で手軽に視力を良くすることができます。
- コンタクトレンズ 見た目が自然で、スポーツをする方などに向いています。 ただし、正しいお手入れと定期的な検査が欠かせません。
近視の進行を抑える治療
最近、お子さんの近視の進行をゆるやかにするための 新しい治療法の研究が進み、選択肢が増えています。
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治療法の種類 |
内容 |
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薬物療法 |
低濃度の「アトロピン」という目薬を毎日使います。近視の進行を抑える効果が報告されています。 |
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オルソケラトロジー |
夜寝る間だけ特殊なコンタタクトレンズをつけます。角膜の形を整え、日中の視力を改善します。 |
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特殊なソフトコンタクトレンズ |
レンズの周辺部のピントを調整する特殊な設計です。日中につけて近視の進行抑制を目指します。 |
特に、日中につける特殊なソフトコンタクトレンズは、 夜間に装用するオルソケラトロジーと同じくらい、 近視の進行を抑える効果が期待できると報告されています。 日中の生活スタイルに合わせて選べる選択肢の一つです。
定期的な検査が未来の目を守る
治療を進める上で、定期的な検査は欠かせません。 最近の研究では、その重要性を裏付ける発見がありました。
目の奥には「脈絡膜(みゃくらくまく)」という、 目に栄養を送る大切な組織があります。 この脈絡膜の厚さが短期間でどう変化するかを調べることで、 将来の近視の進み具合を予測できる可能性が示されました。
このような目の奥の細かな変化は、眼科の機械でしかわかりません。 ご自身に合った治療法を見つけるためにも、 半年に1回は眼科で検査を受け、専門家と相談しましょう。













