舌痛症
鏡で舌を見ても何ともないのに、やけどをしたかのようにヒリヒリ、ピリピリ痛む…。周りに理解されにくいそのつらい症状に、一人で悩んでいませんか?その痛みは「舌痛症(ぜっつうしょう)」かもしれません。
舌痛症は決して珍しい病気ではなく、日本国内には約40万人もの患者さんがいると推定されています。特に50歳代以降の女性に多いとされていますが、誰にでも起こる可能性があります。
その痛みは、単なる舌の問題ではないかもしれません。ストレスや栄養不足、ときには全身に隠れた病気のサインとして現れることもあります。この記事では、あなたのつらい痛みの原因を解き明かし、適切な治療法を見つけるお手伝いをします。
舌痛症の概要
「舌が痛いのに、鏡で見ても何もできていない」。 そんな不思議な症状が、舌痛症(ぜっつうしょう)です。
見た目には傷や口内炎などの異常がないにもかかわらず、 舌に痛みを感じる病気で、周りに理解されにくいこともあります。
痛みは「やけどをしたときのようなヒリヒリ感」や、 「ピリピリする感じ」と表現されることが多く、 このつらい症状が数ヶ月、ときには数年にわたって続くこともあります。
日本国内には約40万人の患者さんがいると推定されており、 決して珍しい病気ではありません。 特に50歳代以降の女性に多く見られますが、 年齢や性別に関わらず誰にでも起こる可能性があります。
また、舌の痛みは、舌だけの問題ではない場合もあります。 例えば、全身に慢性的な痛みが生じる「線維筋痛症」では、 ものを食べたり飲み込んだりしにくくなる摂食・嚥下障害や、 胃酸が食道へ逆流する胃食道逆流症(GERD)を合併することがあります。
ある研究レビューでは、線維筋痛症の患者さんのうち、 51.9%に嚥下障害が、25.9%に胃食道逆流症が見られたと報告されています。 このように、舌痛症は他の体の不調のサインとして現れることもあるのです。
舌痛症の主な特徴
- 舌の見た目
明らかな傷や炎症、できものはありません。 - 痛みの性質
やけどのようなヒリヒリ、ピリピリした痛みが続きます。 - 痛みの変化
食事中や何かに夢中になっているときは、 痛みが和らぐことがあります。 - 伴う症状
味覚がおかしく感じたり、 口が渇いたりすることもあります。
舌痛症の種類
舌痛症とひとくくりにされがちですが、痛みが起きる仕組みによって、いくつかの種類に分けられます。 ご自身の痛みがどのタイプに近いかを知ることは、適切な治療への大切な一歩になります。
舌痛症は、主に以下の3つのタイプに分類されます。
- 侵害受容性(しんがいじゅようせい)の舌痛症
舌の粘膜にできた小さな傷や、合わない入れ歯による刺激などが原因で起こる痛みです。 これは、ケガをしたときに感じる痛みと同じ仕組みで、原因がはっきりしているのが特徴です。 原因となる刺激を取り除くことで、症状が改善することが期待できます。 - 心因性(しんいんせい)の舌痛症
舌には見た目の異常がないのに、ストレスや不安など、心の状態が影響して痛みを感じるタイプです。 脳がストレスによって疲れ、痛みを感じるシステムがうまく働かなくなることで生じます。 心が送るSOSのサインが、舌の痛みとして現れている状態と考えることができます。 - 神経因性(しんけいいんせい)の舌痛症
痛みや味を感じる神経そのものに不調が生じ、痛みとして認識されてしまうタイプです。 神経が「痛くないのに痛い」と勘違いして、脳に間違った信号を送ってしまう状態です。 このため、味覚がおかしいと感じる症状を伴うことも少なくありません。
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種類 |
痛みの主な原因 |
特徴 |
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侵害受容性の舌痛症 |
小さな傷、口内炎、合わない入れ歯など |
痛みの原因が目に見えやすい |
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心因性の舌痛症 |
ストレス、不安、うつ状態など |
心の状態が痛みに影響する |
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神経因性の舌痛症 |
味覚や痛みの神経のトラブル |
味覚の異常を伴うことがある |
また、舌の痛みが全身の病気の一症状として現れることもあります。 例えば、全身に慢性的な痛みが広がる「線維筋痛症」という病気があります。 ある研究レビューでは、線維筋痛症の患者さんのうち、51.9%に食べ物が飲み込みにくいといった嚥下障害が見られたと報告されています。 このように、舌の痛みは他の病気が隠れているサインかもしれません。 自己判断はせず、気になる症状があれば専門の医療機関に相談することが大切です。
舌痛症の原因
舌が痛む舌痛症は、一つの原因で起こるわけではありません。 いくつかの要因が複雑にからみ合って発症すると考えられています。
原因は大きく分けて、以下の3つの場合があります。
- お口の中の問題(局所的な要因)
合わない入れ歯や歯の詰め物、歯ぎしりや食いしばりの癖で、 舌がこすれて小さな傷がつくことが原因になります。 また、唾液が減ってお口が乾くと、舌の粘膜が敏感になり、 痛みを感じやすくなることもあります。 - からだ全体の問題(全身的な要因)
亜鉛や鉄分、ビタミンB群などの栄養不足も原因の一つです。 これらの栄養素は、舌の粘膜を健康に保つために欠かせません。
また、貧血や糖尿病といった全身の病気が隠れていることもあります。 特に、胃酸が食道へ逆流する胃食道逆流症(GERD)は、 逆流した胃酸が口の中を刺激し、痛みを引き起こすことがあります。
ある研究のまとめでは、全身に痛みが生じる線維筋痛症の患者さんのうち、 25.9%に胃食道逆流症が見られたと報告されています。 このように、舌の痛みは他の病気のサインかもしれません。 - こころや神経の問題
強いストレスや不安は、脳の痛みを感じる仕組みに影響を与えます。 その結果、実際には刺激がないのに痛みを感じることがあります。 また、味覚などを伝える神経そのものに不調が生じ、 脳へ「痛い」という間違った信号が送られることも原因となります。
このように舌痛症の原因は多岐にわたるため、 自己判断せず、専門の医療機関に相談することが大切です。
舌痛症の症状
舌痛症は、見た目に異常がないのに舌に痛みを感じる病気です。 痛みや不快感の現れ方は人によってさまざまです。 代表的な症状を知ることで、ご自身の状態を理解する手がかりになります。
主な症状は、舌に感じる慢性的な痛みです。 特に、舌の先端やふちの部分に症状が出やすい傾向があります。
<痛みの特徴>
- 痛みの種類
やけどをした後のような「ヒリヒリ」「ピリピリ」とした、 表面的な痛みとして感じられることが多いです。 - 痛みの変化
午前中よりも、午後から夕方にかけて痛みが強くなる傾向があります。 また、食事中や趣味に集中している間は痛みを忘れ、 食後にまた痛みが現れるという特徴的な経過をたどることもあります。 - 食事の影響
香辛料などの刺激物や、酸味の強い果物などを食べると、 痛みが増すことがあります。
痛み以外にも、お口の中にさまざまな症状を伴うことがあります。 気になる症状がないか、チェックしてみましょう。
【舌痛症の症状チェックリスト】
- □ 舌がやけどをしたようにヒリヒリ、ピリピリする
- □ 舌の先やふちが特に痛い
- □ 口の中の痛みで、夜なかなか眠れないことがある
- □ 何も食べていないのに、苦い味や金属のような味がする
- □ 口の中が乾いて、ネバネバするように感じる
- □ 食べ物や飲み物が飲み込みにくいと感じる
特に「飲み込みにくさ(嚥下障害)」は注意が必要なサインです。 舌の痛みが、全身の病気の一部として現れている可能性もあります。 ある研究のまとめでは、全身に痛みが生じる線維筋痛症の患者さんのうち、 半数以上(51.9%)に嚥下障害が見られたと報告されています。 これらの症状は生活の質に影響するため、早めに専門医へご相談ください。
舌痛症の検査・診断
舌痛症の診断は、まるで探偵のようです。 舌が痛くなる原因は一つではないため、 可能性のあるものを一つひとつ丁寧に調べていきます。
まずは、舌の痛みを引き起こす他の病気がないかを確認します。 そのために、いくつかの診察や検査を組み合わせて進めていきます。
問診:じっくりお話を聞きます
診断で最も大切なのが、患者さんからのお話です。 痛みについて詳しく教えていただくことが、診断の大きなヒントになります。
- いつから痛いですか?
- どんな痛みですか?(ヒリヒリ、ピリピリなど)
- 食事中や何かに夢中のときは痛みが変わりますか?
- 他に病気はありますか?飲んでいるお薬はありますか?
お薬についてお聞きするのは、お薬の副作用で口が渇き、 痛みの原因になっていないかなどを確認するためです。
視診:お口の中を拝見します
次にお口の中をライトで照らし、詳しく観察します。 舌に傷や口内炎がないか、入れ歯が合っているかなどを確認します。
詳しい検査
問診や視診で原因がわからない場合、さらに詳しい検査を行います。 患者さんの状態に合わせて、必要な検査を選びます。
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検査の種類 |
何を調べるの? |
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血液検査 |
鉄分や亜鉛、ビタミンなど、粘膜に必要な栄養が足りているか調べます。 |
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唾液の検査 |
唾液の量を測り、お口の渇きが痛みの原因ではないか確認します。 |
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味覚の検査 |
味を感じる神経に、不調がないかをチェックします。 |
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心理テスト |
心のストレスが痛みに影響していないかを、質問紙などで評価します。 |
これらの診察や検査で痛みの原因となる病気が見つからない場合に、 「舌痛症」と診断されます。
また、舌の痛みは全身の病気のサインである可能性も考えます。 ある研究のまとめでは、全身に痛みが出る線維筋痛症という病気の方のうち、 約4人に1人(25.9%)に胃酸が逆流する病気が見られたと報告されています。 胃酸がお口の中を刺激し、痛みの原因になることがあるのです。
このように、さまざまな角度から原因を探っていくことが、 適切な治療への第一歩となります。
舌痛症の治療
舌痛症の治療は、まず痛みの原因を探すことから始まります。 一人ひとり原因が違うため、治療もオーダーメイドが基本です。
治療は、主に2つの方向からアプローチしていきます。
- 痛みの原因を取りのぞく治療
- 痛みそのものをやわらげる治療
1. 痛みの原因を取りのぞく治療
痛みを引き起こしている可能性のある原因に対して、治療を行います。 原因は、お口の中にある場合と、からだ全体にある場合があります。
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原因の場所 |
具体的な原因と治療法 |
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お口の中の問題 |
・口の渇き(ドライマウス) 唾液を出しやすくするお薬や、お口を潤す保湿ジェルなどを使います。 ・栄養不足(亜鉛・鉄・ビタミンなど) 食事のアドバイスや、お薬で足りない栄養を補います。 ・合わない入れ歯や詰め物 歯医者さんで調整したり、作り直したりします。 |
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からだ全体の問題 |
・胃食道逆流症(GERD) 胃酸がのどまで上がってくる病気です。胃酸を抑えるお薬を使います。 ・その他の病気 糖尿病や貧血など、隠れている病気の治療を優先します。 |
特に、胃酸が逆流する病気は、舌の痛みと関係することがあります。 ある研究のまとめでは、全身に痛みが出る線維筋痛症という病気の方のうち、 約4人に1人(25.9%)にこの病気が見られたと報告されています。
2. 痛みそのものをやわらげる治療
原因がはっきりしない場合や、原因を取り除いても痛みが続くときは、 痛みを感じる仕組みに直接働きかける治療を行います。
- お薬による治療
不安やストレスを軽くするお薬(抗不安薬)や、 脳の痛みの感じ方を調整するお薬(抗うつ薬など)を使います。 神経の過剰な興奮を落ち着かせるお薬が使われることもあります。 - こころのトレーニング(心理療法)
認知行動療法という方法で、痛みとの上手な付き合い方を学びます。 「また痛い」とネガティブに考えるのではなく、 痛みの捉え方を変えていく心のトレーニングです。
舌痛症の治療は、一つの方法だけでよくなることは多くありません。 いくつかの治療を組み合わせ、症状の改善を目指していきます。 つらい症状を我慢せず、まずは専門の医療機関にご相談ください。













