脳動静脈奇形
「脳動静脈奇形」という言葉に聞き覚えはありますか?私たちの脳では、動脈と静脈が異常な形で直接つながり、血管の塊を形成してしまうこの病気は、生まれつきの脳血管の奇形です。この異常な血管は非常に破れやすく、ある日突然、意識の低下や手足の麻痺、そして時には命に関わる脳出血を引き起こす危険性をはらんでいます。
特に小さなお子さんの場合、治療をしても約3割(29.4%)に再発が見られるという報告もあり、その見守りには細心の注意が必要です。もし、ご自身や大切な方がこの病気と診断されたら、不安を感じるのは当然のことでしょう。この記事では、脳動静脈奇形がどのような病気なのか、その原因や症状、そして検査・治療法から治療後の再発リスクまでを詳しく解説します。大切な脳を守るための知識として、ぜひご一読ください。
脳動静脈奇形の概要
私たちの脳には、心臓から送られた栄養たっぷりの血液を運ぶ「動脈」と、使い終わった血液を心臓へ戻す「静脈」があります。この二つの血管の間には、とても細い「毛細血管」が網の目のように広がっていて、血液がゆっくり流れることで、脳の細胞に酸素や栄養をきちんと届けています。
ところが、脳動静脈奇形という病気では、生まれつきこの毛細血管がうまく作られないことがあります。そのため、動脈と静脈が直接つながってしまい、血管が絡み合って塊のようになります。この異常な血管の塊は、血液が速く流れすぎて血管に大きな負担がかかり、とても破れやすい状態です。
もしこの血管の塊が破れてしまうと、脳の中で出血してしまいます。これを「脳出血」と呼び、突然意識を失ったり、手足が動かせなくなったりするなどの、重い後遺症が残ることがあります。時には命に関わる大変危険な状態になることもあります。
この病気の治療として、手術で異常な血管を取り除くことがありますが、一度手術で取り除いたように見えても、残念ながらまれに再発することがあります。特に、まだ体が成長途中の子どもたち(例えば18歳未満)の場合、手術後も異常な血管が再び現れる可能性が高いことが研究でわかっています。実際、ある研究では、手術を受けた子どもの約3割(29.4%)に再発が見られたと報告されています。
また、初めてこの病気が見つかった時に、すでに脳出血を起こしていた方も、再発のリスクが少し高くなる傾向があります。そのため、手術の後も、異常がないかを継続的に確認するために、定期的に脳の画像検査を受けることがとても大切です。これは、再び大きな出血が起きるのを防ぐための、大切な見守りになります。
脳動静脈奇形の種類
脳動静脈奇形は、脳のどこに、 そしてどのような形で血管の異常なつながりがあるかによって、 いくつかの「種類」に分けられます。 この種類を知ることは、患者さん一人ひとりに合った 治療計画を立てるために、とても大切です。 医師の立場からも、病気の種類を正確に把握することで、 より安全で効果的な治療法を選ぶことができます。
大きく分けると、脳の表面に近い部分にできるもの、 脳の深いところにできるもの、 そして脳を包む薄い膜(これを「軟膜」と呼びます)に できるものなどがあります。 それぞれ、特徴や注意点が異なります。
特に「軟膜(なんまく)動静脈瘻(どうじょうみゃくろう)」は、 脳の表面にある軟膜にできる、比較的珍しいタイプの病気です。 この病気は小さなお子さんに多く見られることが特徴で、 ある研究では、診断されたお子さんの平均年齢は3歳でした。 このタイプの脳動静脈奇形では、心臓に大きな負担がかかるような 合併症を引き起こすこともあるため、注意深く経過を見ています。
脳動静脈奇形の種類が違うと、 異常な血管の塊の大きさや、血液が流れる速さ、 さらに、出血する危険性や、けいれんが起きやすいかどうかなど、 患者さんに現れる症状もそれぞれ異なります。 自分の脳動静脈奇形がどのタイプなのかをきちんと理解することは、 病気と向き合い、今後の生活をより良く送るために、 非常に大切な一歩となります。 もし不安なことや知りたいことがあれば、 遠慮なく担当の医師に尋ねてみてください。
脳動静脈奇形の原因
脳動静脈奇形は、脳の血管が生まれつき少し違う形をしている病気です。なぜこのような状態になるのか、原因について「これがすべてです」と言えるほど、まだはっきりと分かっていない部分もあります。私たち医師も、この病気の謎を解き明かすために、日々研究を続けている段階です。
多くの場合は、お母さんのお腹の中で、まだ赤ちゃんが育っている途中に、脳の血管が作られていく時に「偶然」として起こると考えられています。本来なら動脈と静脈の間に、細かな毛細血管がたくさん作られるはずが、その大切な部分がうまくできなかったために、異常な血管のつながりができてしまうのです。
遺伝子が原因で脳動静脈奇形になる方も、ごくまれにいらっしゃいます。しかし、ほとんどの場合は、ご家族の中に同じ病気の方がいなくても発症します。そのため、「なぜ私の子どもに」と不安に感じるご両親もいるかもしれません。
この病気は、特に小さなお子さんで見つかることが多い特徴があります。ある研究では、診断されたお子さんの平均年齢が3歳であったという報告もあります。これは、体の成長とともに症状が現れたり、検査で偶然見つかったりするためです。
一度治療して異常な血管がなくなった後も、残念ながらまれに「再発」することがあります。特に、まだ体が成長している途中のお子さん(18歳未満)の場合、再発のリスクが高いことが分かっています。実際、ある研究では、手術を受けたお子さんの約3割(29.4%)に再発が見られたと報告されています。
また、初めて脳動静脈奇形が見つかった時に、すでに脳の中に出血を起こしていた方も、再発のリスクが少し高くなる傾向があります。そのため、治療が終わった後も、異常がないかを継続的に確認していくことが、私たちはとても大切だと考えています。定期的な検査で、再発の兆候を見逃さないように見守っていくことが、お子さんを守るための一歩となります。
脳動静脈奇形の症状
脳動静脈奇形が脳のどの部分にできているか、 そしてどのくらいの大きさかによって、 現れる症状は患者さん一人ひとり大きく異なります。 症状がほとんどないまま過ごしている方もいれば、 突然、深刻な症状が現れる方もいらっしゃいます。 私たち医師も、症状の出方から病気の状態を判断しています。
奇形が破裂していない場合の症状
脳動静脈奇形が破裂する前に偶然見つかることもあります。 その際によく見られる症状としては、次のようなものがあります。
- 頭痛: 片頭痛に似た、ズキズキとした頭の痛みが続くことがあります。 また、同じような痛みが何度も起こることもあります。
- けいれん発作: 意識を失ってしまうことがあります。 体の手足の一部が勝手に動いたり、全身がけいれんしたりすることもあります。
- 手足のしびれや麻痺: 体の片側にしびれを感じることがあります。 手足に力が入りにくくなるといった症状が出ることもあります。
- その他の脳機能の異常: めまいを感じやすくなります。 言葉がうまく話せなくなったり、物が見えにくくなったりする症状もあります。
これらの症状は、異常な血管の塊が脳の神経を刺激したり、 周囲の脳に負担をかけたりすることで起こると考えられています。 もし、上記のような症状に気づいたら、 早めに医療機関を受診して専門の医師に相談してください。
奇形が破裂してしまった場合の症状
脳動静脈奇形が破裂すると、脳の中で出血が起こります。 これを「脳出血」と呼び、突然非常に重い症状が現れます。 この状態は命に関わることもあり、緊急での治療が必要です。
- 突然の激しい頭痛: これまでに経験したことのないような、非常に強い頭の痛みが突然起こります。
- 意識の低下: 意識がぼんやりしてしまうことがあります。 呼びかけても反応がないといった状態になることもあります。
- 吐き気や嘔吐: 激しい頭痛とともに、強い吐き気を感じて吐いてしまうことがあります。
- 体の麻痺: 体の片側の手足が全く動かせなくなることがあります。
- 言葉の障害: 言葉が話せなくなったり、相手の言うことを理解できなくなったりする 「失語症(しつごしょう)」と呼ばれる症状が出ることがあります。
このような症状が急に現れた場合は、 すぐに救急車を呼ぶか、緊急で病院を受診してください。
小さな子どもに特有の症状と再発のリスク
特に小さなお子さんの場合、大人とは少し違う症状や、 治療後の注意点があります。 脳の表面に近い部分にできる「軟膜動静脈瘻(なんまくどうじょうみゃくろう)」は、 比較的珍しいタイプですが、小さなお子さんによく見られます。 ある調査では、このタイプの病気と診断されたお子さんの平均年齢は3歳でした。
この軟膜動静脈瘻では、血液がとても速く流れるため、 心臓に大きな負担がかかることがあります。 その結果、「高拍出性心不全(こうはくしゅつせいしんふぜん)」という、 心臓が疲れてしまう状態になることもあります。 もし心臓に大きな負担がかかってしまうと、 残念ながら治療がうまくいかないケースもあることがわかっています。
また、この病気が最初に見つかったときに、 すでに脳の中に出血を起こしていた若い患者さんは、 治療が終わった後も再発しやすい傾向があります。 特に、まだ体が成長している18歳未満の子どもたちの場合、 手術などで異常な血管を取り除いたとしても、 残念ながら約3割(29.4%)の子どもに再び異常な血管が現れる可能性があると報告されています。 そのため、治療後も定期的に検査を受け、 再発の兆候がないかを確認していくことが、とても大切です。
脳動静脈奇形の検査・診断
脳動静脈奇形を詳しく知るためには、精密な検査が欠かせません。この病気は、症状がなくても健康診断などで偶然見つかることもあります。また、症状が出てから検査で異常が見つかることもあります。患者さんの状態に合わせた治療計画を立てるために、異常な血管の位置や大きさ、血液の流れ方などを一つ一つ丁寧に調べていきます。
脳の様子を調べる画像検査
主に、次の3つの検査が行われます。
- 頭部CT(シーティー)検査
- 脳の内部の様子を画像で確認する検査です。
- 脳動静脈奇形からの出血がないか、石灰化と呼ばれる変化がないかなどを調べます。
- 短時間で終わるため、緊急時にも最初に広く行われる検査の一つです。
- 頭部MRI(エムアールアイ)検査
- CT検査よりもさらに詳しく、脳の構造や血管の状態を観察できます。
- 奇形そのものの形や、周りの脳にどう影響しているかを評価します。
- 造影剤という薬を使いながら検査をすると、血管の様子がより鮮明にわかります。
- 脳血管造影(DSA)検査
- 脳動静脈奇形を最終的に診断し、その特徴を把握するために最も重要な検査です。
- 足の付け根などから細い管(カテーテル)を血管に入れ、脳の血管に造影剤を流します。
- レントゲン撮影を行いながら、奇形の正確な位置や大きさ、血液の流れ方を詳細に確認できます。
- 小さなお子さんの血管奇形の診断でも、このDSAが標準的な検査方法として用いられています。
治療後の大切な見守り
脳動静脈奇形は、一度治療で異常な血管を取り除いたように見えても、まれに再び現れることがあります。これを「再発」と呼び、特に注意が必要です。
- 再発しやすいケース
- まだ体が成長している18歳未満のお子さん
- 最初に脳出血を起こして見つかった方
ある研究では、手術を受けたお子さんの約3割(29.4%)に再発が見られたと報告されています。また、小児の稀なタイプである非Galen静脈型軟膜動静脈瘻では、診断時年齢中央値が3歳と非常に小さく、心臓に大きな負担がかかることもあるため、慎重な経過観察が求められます。
そのため、治療が終わった後も、異常がないかを継続的に確認していくことがとても大切です。定期的に脳の画像検査を受け、万が一再発したとしても早期に発見し、再び大きな出血が起きるのを防ぐための、大切な見守りとなります。
脳動静脈奇形の治療
脳動静脈奇形が見つかった場合、どのような治療が必要になるのか、皆さんは不安に感じるかもしれません。治療の主な目的は、脳の中で突然の出血が起きるのを防ぎ、今ある症状を和らげることです。私たち医師は、皆さんの大切な脳を守るために、一人ひとりの状態をよく見て、最適な治療法を一緒に考えていきます。
治療法は、奇形がある場所や大きさ、そして症状の有無によって異なります。ご家族としっかり話し合い、納得できる選択をすることがとても大切です。
治療の主な方法
脳動静脈奇形の治療には、大きく分けて3つの方法があります。それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。
- 1. 血管内治療(カテーテル治療)
- 細い管(カテーテル)を血管に通して行う治療です。
- 足の付け根などからカテーテルを入れ、脳の異常な血管の場所まで慎重に進めます。
- そこで、特殊な接着剤や、コイルという細い糸のようなものを異常な血管の塊に詰めます。
- これにより、異常な血液の流れを止めることができます。
- 特に小さなお子さんの治療では、この方法が非常に有効で、良い治療結果が得られることが報告されています。
- 「Onyx(オニキス)」や「EvOH(エボフ)」と呼ばれる液体塞栓物質を使用すると、高い確率で良好な状態に至ることが期待できます。
- しかし、まれに、心臓に大きな負担がかかる「高拍出性心不全(こうはくしゅつせいしんふぜん)」という状態を合併しているお子さんでは、治療が難しいケースもあることが分かっています。
- このような場合は、治療前に担当の医師と十分な相談が必要です。
- 2. 外科的摘出術
- 頭の骨を開けて、脳の中にある異常な血管の塊を直接取り除く手術です。
- 奇形がある場所や大きさが、手術によって安全に完全に切除できる場合に選ばれます。
- この手術は、異常な血管を根本からなくすことを目指します。
- 3. 定位放射線治療
- 脳を開く手術が難しい場所にある奇形や、大きさが比較的小さい奇形に対して行われる治療です。
- 高いエネルギーの放射線を、異常な血管の塊に集中的に照射します。
- 放射線を当てられた血管は、時間をかけてゆっくりと閉じていきます。
- これにより、異常な血流を止める効果が期待できます。
治療後の再発と大切な見守り
- 脳動静脈奇形は、治療によって異常な血管がなくなったと判断されても、残念ながらまれに再び現れることがあります。
- このことを「再発(さいはつ)」と呼び、特に注意が必要です。
- 私たち医師の研究では、再発しやすい特徴がいくつか分かっています。
- 再発しやすいのはどんな時?
- 特に、まだ体が成長している18歳未満のお子さんでは、再発のリスクが成人よりも高くなります。
- 実際、ある研究では、手術を受けたお子さんの約3割(29.4%)に再発が見られたと報告されています。
- また、初めてこの病気が見つかった時に、すでに脳の中に出血を起こしていた方も、再発のリスクが少し高くなる傾向があります。
- 再発は、若年であることや、初回診断時に出血性発症を伴うことと関連が深いことが分かっています。
- 再発による出血を防ぐために、治療が終わった後も、異常がないかを継続的に確認していくことがとても大切です。
- 定期的に脳の画像検査を受け、万が一再発したとしても、早期に発見できる体制を整えましょう。
- これが、再び大きな出血が起きるのを防ぐための、大切な見守りになります。
- どの治療法を選ぶか、そして治療後の見守り方についても、私たち医師とじっくり話し合い、納得して進めていきましょう。













